「殺し合い……随分と予定が狂わされてしまったわ。」
闇夜に紛れる黒衣に身を包んだ少女、マーヤは不機嫌そうに夜の森を闊歩していた。
「計画を立て直す必要があるわ。古砂夢、本当に余計なことを……。」
調達したユーシフト族の兵士たちはこの場にいない。戦士の太刀から掘り出したナイフも没収されてしまった。ゲームの一種と言わんばかりに殺し合いと銘打つからには、参加者たちを同じ条件に揃えたいという目論見なのだろうか。
――ふざけるな。
この状況の、何が平等か。短い手足、非力さを象徴する体格。私と大鳥希を分ける、たったひとつの隔たり。だけどその差異は、殺し合いでは決定的な勝敗の差になる。
時間をかけて準備していた計画や物資。それらが白紙に返った現状は、私を不利に貶めるものでしかない。広瀬兄弟や大鳥希も巻き込んでいる以上、主催者が私の味方なのか敵なのかも読めないのがさらに不気味だ。
「でも、このナイフはなかなか良いわね。」
喜ぶべき点があるとすれば、支給された武具はなかなかの代物だということだ。魔法の力を宿したローブもさることながら、一緒に入っていた宝飾の成された短剣はとりわけ気に入った。ただの宝剣というわけではなく、とても強い怨念が篭っている。
大鳥希の側にも同じような強力な武器が渡っている可能性もあるため、それひとつで殺し合いが優位に働くとは限らないが、それでも手に馴染む武器があればテンションも上がるというものだ。それに殺し合いに悲観してばかりいても、状況は悪化するばかり。逆に考えれば、誰もが他人に牙を向け得るこの状況は大鳥希を追い詰めるチャンスにもなり得る。
「考えようによっては悪いことばかりでもないわね。さっそくどうするか考えないと……」
大鳥希を殺す。これは絶対条件。
実力では勝てないけれど、憎々しいことに向こうは私のことなんて意識していない。アイツを生み出すための犠牲となった142人のお姉様のことも、私のことも、都合の悪いことは全部忘れて好きなこと、やりたいことに興じていた。
実力では勝てないけれど、憎々しいことに向こうは私のことなんて意識していない。アイツを生み出すための犠牲となった142人のお姉様のことも、私のことも、都合の悪いことは全部忘れて好きなこと、やりたいことに興じていた。
きっとそこに、私が付け入る隙はある。大鳥希の悪評を積極的にばら撒くんだ。広瀬凪曰く、現にあいつは10年前に地球<アルシャ>の港を開き、様々な宇宙人の襲来を手引きした外敵。その事実ひとつで孤立させ、他の参加者たちと戦わせることができる。
あいつがのうのうとしている間に、私はあいつを殺すためだけに動き続けてやる。あいつにはなくて私にはある執念。大鳥希と私を分かつ最大の要素。
「……不安があるとするなら、凪との協力かしら。」
この殺し合い、生き残れるのはひとりだけ。優勝したら死者の蘇生をも叶えてくれるという言葉を仮に真と置いたとしても、生きて帰れるのは最大でふたり。
凪は弟に固執している。広瀬岬一の身体を乗っ取って希と戦わせた時も、弟だけは助けてくれと私に懇願してきたほどだ。私としても、凪が悲しむ姿は見たくなかったし、岬一をあえて殺したいような理由もなかったため承諾したが、この世界だと話は別だ。私と凪と岬一と、3人が生き残ることはできない。凪の優先順位を考えて、その3人の中で最初に切り捨てられるのは誰なのか――その先はあまり、考えたくない。
凪との協力についてはいったん保留。合流していない以上は取らぬ狸の皮算用であるし、そんな考えにうつつを抜かすより、大鳥希を敵として集団に吹聴するのを急ぐ方が有意義だ。
と、行動指針を固めた、その時だった。
(――シクシク……。)
森の奥から、すすり泣くような声が聞こえる。
(……誰か、いるわ。)
最初に浮かぶのは、警戒。私の幼い身体では、身体能力で優位を取れない。もし相手が殺し合いに乗っている相手だったら、容易く殺されてしまうかもしれない。
だけど、他人と関わるリスクを避けていては、希を悪人に仕立て上げることもできない。多少のリスクを受け入れてでも、ここは進む以外の選択肢は無かった。
木々の向こうにいるその相手へと身を晒す。同時に、木々に隠されていた相手の姿が顕になる。
目にしたのは、帽子を被った子供。背丈は私と同じぐらい、或いは帽子で高く見えているだけで実態は私よりも低いだろうか。その帽子を、私よりも短い手でぐいと抑えてうずくまっている。
その姿勢のせいで顔が見えないのだと、最初はそう思った。だが、違う。私の気配に気付き、顔を上げたその子を見た瞬間、私は一歩たじろいだ。
その子の顔は、夜の闇に完全に紛れてしまうかの如く、真っ黒だったのだ。辛うじてそれを顔と認識できたのは、ライトのように不気味に光る黄色い目からだった。
(アルシャの人間じゃなかったわね。どの星の生物か……ううん、生物なのかどうかも分からない。)
私に気付いても、その子は項垂れたまま動こうとしない。光源を貼り付けたような目からは、感情らしきものも読み取れない。
「……なにが。」
だから、脳内にふと浮かんできたこの言葉は――
「なにがそんなに、悲しいの……?」
――きっと、理性とか本能とか、そんな理屈で説明できるものではなく。言うなれば、運命とでもいうものなのだろう。
目の前の子は項垂れたまま、口を開く。
「おじちゃんが、死んじゃったんだ。」
「おじちゃん?」
「うん……スタイナーのおじちゃん。
お城のホールで、夢って人にやられて……。」
「ああ、あの時の。」
「おじちゃん?」
「うん……スタイナーのおじちゃん。
お城のホールで、夢って人にやられて……。」
「ああ、あの時の。」
この殺し合いに大鳥希や広瀬兄弟が呼ばれているように、あの時反抗して殺された二人にも知り合いはいたということなのだろう。
「ワニのおじちゃん?」
「ううん、もう一人のおじちゃん。」
「鎧のおじちゃんの方ね。」
「鎧の……うん……。」
「そう、大切な人と死に別れるのは辛いわよね。」
「ううん、もう一人のおじちゃん。」
「鎧のおじちゃんの方ね。」
「鎧の……うん……。」
「そう、大切な人と死に別れるのは辛いわよね。」
――この子は利用できる。
私は内心ほくそ笑んでいた。
大切な人を失った悲しさを――孤独を抱えた者は弱い。
その弱みにつけ込めば、私を信用させることも難しくはないだろう。
大切な人を失った悲しさを――孤独を抱えた者は弱い。
その弱みにつけ込めば、私を信用させることも難しくはないだろう。
「あなた、名前は?」
「えっ……。」
「私はマーヤっていうの。お姉ちゃんが付けてくれた、大切な名前なのよ。あなたの名前も、教えてくれるかしら?」
「……ビビ。」
「ふぅん、ビビっていうのね。」
「えっ……。」
「私はマーヤっていうの。お姉ちゃんが付けてくれた、大切な名前なのよ。あなたの名前も、教えてくれるかしら?」
「……ビビ。」
「ふぅん、ビビっていうのね。」
希も、誰かと手を組む際には情報共有として、少なからず私が敵だと言いふらしていることだろう。だが、そのために自分を信頼させるための小細工をしようとするほどの執着は私に対して持っていないはず。最後に信用度合いの勝負となった時には、事前準備の有無が差を分ける。
「ねぇ、ビビ。私ね、殺し合い以外の方法でこの世界を脱出する方法を探しているの。よかったら、一緒に行動しない? ひとりぼっちじゃ心細いの。」
「う、うん……。よろしく……。」
「う、うん……。よろしく……。」
他人との接触は賭けみたいなものだったけど、ビビに取り入るのは何とかなった。ひとまずは幸先がいい。二人で行動していれば、他人に信用してもらいやすくなる。
殺し合いに乗っている者も、徒党を組んでいる相手を襲うのはリスクがあるから寄って来にくい。あとはとんとん拍子に人を集めて、情報交換の流れで大鳥希の悪評を流すだけ。
「……あの。マーヤは、ボクがこわくないの?」
「ビビが? 別に怖くないわよ。気弱だし、身体も私よりちっちゃいし。」
「ビビが? 別に怖くないわよ。気弱だし、身体も私よりちっちゃいし。」
当初はドキドキでいっぱいだった内心を隠してそう言うと、隣で少し肩を落とす仕草を見せたビビ。
「ごめんごめん、ちょっとイジワル言ったかしら。」
「ううん。こわくないって言ってくれて、うれしい。」
「ううん。こわくないって言ってくれて、うれしい。」
少しだけ間を置いて、ビビは続ける。
「でも……黒魔道士をこわがらない人、あまりいないから。」
「黒魔道士?」
「うん……。もしかして、見たことない?」
「見たことないっていうか、知らないわ。みんなはどうして怖がっているの?」
「……。」
「黒魔道士?」
「うん……。もしかして、見たことない?」
「見たことないっていうか、知らないわ。みんなはどうして怖がっているの?」
「……。」
そう聞くと、ビビは少しの間黙り込んでしまった。
「話しにくいなら、話さなくても……」
「……ううん、大丈夫。黒魔道士は……ボクは……人殺しの道具としてつくられたんだ。」
「……人殺しの、道具。」
「……ううん、大丈夫。黒魔道士は……ボクは……人殺しの道具としてつくられたんだ。」
「……人殺しの、道具。」
俯いたまま、複雑そうに語られたその言葉。その事実とどのように向き合って、受け入れてきたのか分からないけれど。
「そういう風には、見えないわ。」
役割が伴う自分の出生――そう簡単に逆らえるようなものでも、受け入れられるものでもないのは、分かる。
「ボクはプロトタイプだから、他の黒魔道士より小さいみたい。」
「そういう意味じゃなくて。あなた、泣いてたじゃない。」
「そういう意味じゃなくて。あなた、泣いてたじゃない。」
信頼を稼ぐためには親密になる必要があるだとか、他人と戦うことを想定するならメンタルがボロボロなのは良くないとか、そんな打算も少なからずあった。
「だってボク……ううん、ボクだけじゃない。こころに目覚めた黒魔道士たちはみんな……戦いたいなんて思ってなかったから。」
だけど、何より――
「……そ。なら大丈夫、私はあなたを怖がったりしないわ。」
――役割に逆行する生き方を貫こうとするその気持ちに、共感を覚えてしまったから。
「それに、ビビってのは製造番号じゃない、誰かがくれた、あなただけの名前なんでしょ? だから黒魔道士は黒魔道士、ビビはビビよ。」
「う、うん……!」
「う、うん……!」
使い捨てにされた142人のお姉ちゃん達がくれた、『マーヤ』という私だけの名前。
まだ私は『マーヤ』になりきれていない。大鳥希のために戦い、そして果てる役割を呪われた故郷に与えられた『143』のまま。
ビビはきっと、それを乗り越えたいつかがあったのだろう。だからその境遇を呪わずに、前を向けている。私には、まだその時が来ていないから。その時は、大鳥希を倒したその時に与えられるものだから。
「マーヤは、おじちゃんと同じこと、言ってくれるんだね。」
「なぁに? ジジくさかったかしら?」
「えっ、いや、そういうことじゃなくて……」
「何よ、もうちょっとはっきり言いなさいよね。」
「うう……。」
「なぁに? ジジくさかったかしら?」
「えっ、いや、そういうことじゃなくて……」
「何よ、もうちょっとはっきり言いなさいよね。」
「うう……。」
胸中に燃え滾る大鳥希への憎悪の炎――そこにふと、小さく温かさを覚えたような気がした。
私は、きっと気のせいね、なんて声に漏らして、その気持ちに蓋をした。
【E-7/森/一日目 深夜】
【マーヤ@ひとりぼっちの地球侵略】
[状態]:健康
[装備]:ガテリアの宝剣@ドラゴンクエストXオンライン 黒のローブ@FINAL FANTASY Ⅸ
[道具]:基本支給品、不明支給品0~1
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに反抗する者たちの集団に溶け込み、優勝を狙う
1.大鳥希の悪評をばら撒く。
2.広瀬凪と協力できるかはいったん保留。
【マーヤ@ひとりぼっちの地球侵略】
[状態]:健康
[装備]:ガテリアの宝剣@ドラゴンクエストXオンライン 黒のローブ@FINAL FANTASY Ⅸ
[道具]:基本支給品、不明支給品0~1
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに反抗する者たちの集団に溶け込み、優勝を狙う
1.大鳥希の悪評をばら撒く。
2.広瀬凪と協力できるかはいったん保留。
※参戦時期は39話(8巻)より後、44話(9巻)の襲撃より前です。
【ビビ@FINAL FANTASY Ⅸ】
[状態]:健康
[装備]:フェルンの杖@葬送のフリーレン
[道具]:基本支給品、不明支給品0~2
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合わず、この世界を脱出する
1.マーヤに対する信頼。
2.おじちゃん……。
[状態]:健康
[装備]:フェルンの杖@葬送のフリーレン
[道具]:基本支給品、不明支給品0~2
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合わず、この世界を脱出する
1.マーヤに対する信頼。
2.おじちゃん……。
※少なくともザ・ソウルケージ討伐後からの参戦です。
※まだ名簿を見ていません。
※まだ名簿を見ていません。
【支給品紹介】
【ガテリアの宝剣@ドラゴンクエストXオンライン】
マーヤに支給された短剣。
原作だと、「必殺チャージ+1%」の特殊効果を持つ短剣。作中で主人公が扱えるのは約3000年前のガテリア皇国の技術を用いて現代に造られた武器だが、本ロワにおいてはガテリア皇国が存続していた当時に使われていた武器であり、ウルベア大魔神によって焼き払われた兵士たちの怨念が篭っている。それにより具体的にどのような効力が発生するかは、後続の書き手に一任する。
【ガテリアの宝剣@ドラゴンクエストXオンライン】
マーヤに支給された短剣。
原作だと、「必殺チャージ+1%」の特殊効果を持つ短剣。作中で主人公が扱えるのは約3000年前のガテリア皇国の技術を用いて現代に造られた武器だが、本ロワにおいてはガテリア皇国が存続していた当時に使われていた武器であり、ウルベア大魔神によって焼き払われた兵士たちの怨念が篭っている。それにより具体的にどのような効力が発生するかは、後続の書き手に一任する。
【黒のローブ@FINAL FANTASY Ⅸ】
身体用防具。闇属性強化の効果を持つが、火属性が弱点になる。付与アビリティは「MP20%アップ」「フレア」「リフレク倍返し」の3つ。どのアビリティの適性がマーヤにあるのかは、後続の書き手に一任する。
身体用防具。闇属性強化の効果を持つが、火属性が弱点になる。付与アビリティは「MP20%アップ」「フレア」「リフレク倍返し」の3つ。どのアビリティの適性がマーヤにあるのかは、後続の書き手に一任する。
【フェルンの杖@葬送のフリーレン】
フェルンが幼少期にハイターから貰い、それ以降手入れされ続けてきた上質な杖。
一度破壊され、リヒターからの修復を受けている。
フェルンが幼少期にハイターから貰い、それ以降手入れされ続けてきた上質な杖。
一度破壊され、リヒターからの修復を受けている。
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