◇
イリヤは、その光景から目を離せないでいた。
今しがた放送で呼ばれた名前。
クロ、ルヴィアさん、バゼット、藤村先生。
多すぎる、知った者達の名が呼ばれたことに衝撃を受けているイリヤの目の前で。
多すぎる、知った者達の名が呼ばれたことに衝撃を受けているイリヤの目の前で。
いきなり消滅したかのようにその手に込めた力がふわっと抜けたように見えた士郎が。
セイバーの一閃を受けて地に伏したのだから。
セイバーの一閃を受けて地に伏したのだから。
「え…」
舞い散る赤い何かを目にし、虚ろだった意識が一気に覚醒する。
何かの間違いではないか、もしかしたら夢なのではないかと心のどこかで否定しているのに。
その目の前で起きていることは、紛れも無く、あまりにも現実で。
その目の前で起きていることは、紛れも無く、あまりにも現実で。
「…嘘」
セイバーが士郎から視線を外してこちらを向くことも気にならない。
そのまま倒れて動かない士郎から、視線を離すことができない。
そのまま倒れて動かない士郎から、視線を離すことができない。
「嘘…でしょ…」
いくら頭の中で否定しても、現実は全く変わらない。
そのまま倒れたままでいると、本当に動くことが無くなってしまいそうな予感があって。
そのまま倒れたままでいると、本当に動くことが無くなってしまいそうな予感があって。
イリヤは、思わず声を張り上げて叫んでいた。
「――――お兄ちゃん!!!!!」
◇
「…クソッ」
「………」
「………」
一歩ずつ、ゆっくりと移動を続ける巧とL。
そんな彼らの元に放送が聞こえてきたのはつい今のこと。
そんな彼らの元に放送が聞こえてきたのはつい今のこと。
Lは呼ばれた名の中に、夜神月やメロや夜神総一郎、草加雅人や鹿目まどかといった知った名がいないことにひとまず胸を撫で下ろし。
それとは対照的に、巧は悔しそうに顔を歪めていた。
それとは対照的に、巧は悔しそうに顔を歪めていた。
佐倉杏子。
ほんの短い間だったがゼロと戦うために共闘した、気に食わなかったけど悲しい瞳をした魔法少女。
ほんの短い間だったがゼロと戦うために共闘した、気に食わなかったけど悲しい瞳をした魔法少女。
バゼット・フラガ・マクレミッツ。
バーサーカーとゼロから逃げる際、殿を務めた女。
バーサーカーとゼロから逃げる際、殿を務めた女。
クロエ・フォン・アインツベルン。
確かイリヤの姉妹で、自分に矢を仕掛けた少女の名だったと思う。士郎を助けるために一人あのバゼットの戦う場所近くに残っていた子だ。
確かイリヤの姉妹で、自分に矢を仕掛けた少女の名だったと思う。士郎を助けるために一人あのバゼットの戦う場所近くに残っていた子だ。
呉キリカ。
あの時自分たちに襲いかかってきた黒い魔法少女。重傷を負っていたため長生きはできないだろうと思っていたが、実際に名前を呼ばれることとなった。
あの時自分たちに襲いかかってきた黒い魔法少女。重傷を負っていたため長生きはできないだろうと思っていたが、実際に名前を呼ばれることとなった。
他にも幾つか人づてで聞き覚えのある名が聞こえた気がしたが、今はそれらに思考を裂くことはできなかった。
「辛い気持ちは分かります。しかし今は私達は立ち止まっているわけにはいかないのです」
「誰が…立ち止まってるってんだよ」
「誰が…立ち止まってるってんだよ」
ゆっくりとだが一歩ずつ、北崎の去っていったであろう方向、士郎達も逃げただろう場所へと足を進めていく二人。
追いつくことができるかと言われたら、正直厳しいと言わざるを得ないほどにゆっくりとした歩みだ。
焦る気持ちとは裏腹に、蓄積したダメージで満足に動かない体に苛立ちを覚える。
焦る気持ちとは裏腹に、蓄積したダメージで満足に動かない体に苛立ちを覚える。
そんな時だった。
―――――――――お兄ちゃん!!!!!
周囲に響いたのは大きな叫び声。
その声の主を、巧は知っている。
その声の主を、巧は知っている。
そして、その声はそう遠くない場所から響いている。
「何かあったようですね。急ぎましょう」
「ぐ、おい、俺から一旦離れろ」
「ぐ、おい、俺から一旦離れろ」
巧はそう言って、Lを密着した自分から引き離した。
よろめき、膝をつきながらも一人で起き上がった巧は、気合を入れるかのように吠えた。
その瞬間、体を灰色の肉体が包み、人ならざる姿へと変化させる。
その変化に若干驚いていたLに向かって巧が声をかける。
「掴まれ」
「巧さん、体の方は大丈夫なのですか?」
「ああ、大丈夫だ」
「巧さん、体の方は大丈夫なのですか?」
「ああ、大丈夫だ」
そうは言ったが、実際のところこうして変身しているだけでも意識が消し飛びそうな状態だ。
それでも変身できたのは、痛みに耐える精神力、そして仲間への想いがあってのものだろう。
それでも変身できたのは、痛みに耐える精神力、そして仲間への想いがあってのものだろう。
Lはその全身に刃の生えた体の中で、それが少ない場所を掴み。
そのまま狼の脚力を持って走りだした。
そのまま狼の脚力を持って走りだした。
生身で車にでも縛り付けられたかのような速さにしがみつくのが精一杯のL。
しかし巧はまた、肉体の疲労とダメージで想像以上の速度が出ないことに焦れていた。
しかし巧はまた、肉体の疲労とダメージで想像以上の速度が出ないことに焦れていた。
風に髪をボサボサにされつつも、しがみついて移動すること数十秒。
たどり着くことができた目的の場所。
体が限界を迎えた巧は、人間の姿に戻って倒れこみ。
たどり着くことができた目的の場所。
体が限界を迎えた巧は、人間の姿に戻って倒れこみ。
「へえ、追い付いてきたんだ。まさかL、君も一緒なんてね。
今おもしろいものやってるからちょっと見てみなよ」
「北崎さん…!」
今おもしろいものやってるからちょっと見てみなよ」
「北崎さん…!」
それでも意識を保ったまま、前を見た巧の目に映ったもの。
北崎に抑えられたイリヤとルビー。
北崎に抑えられたイリヤとルビー。
こちらを見据えた黒い騎士。
そして。
「士郎!!!!」
肩から胴にかけて袈裟懸けに斬られた士郎が、血を流しながらも立ち上がろうとしている姿だった。
◇
不思議と痛みはなかった。
それでも斬られたのだと気付いた時、俺はもう死んでしまったのだと感じた。
それでも斬られたのだと気付いた時、俺はもう死んでしまったのだと感じた。
なのに、耳に聞こえてくるのはこちらから離れていくセイバーの足音。
それが知覚できるということは、まだ生きているということだろう。
あの挙動はセイバーにとっても予想外だったようで、それ故に剣筋がはっきりとしたものではなかったのが救いだったのかもしれない。
それが知覚できるということは、まだ生きているということだろう。
あの挙動はセイバーにとっても予想外だったようで、それ故に剣筋がはっきりとしたものではなかったのが救いだったのかもしれない。
だというのに。
痛みを感じなかったのが不思議だった。
痛みを感じなかったのが不思議だった。
いや、一番不思議なのは、彼女の名が放送で呼ばれたことに対して、ここまで驚いていることだ。
藤村大河。
例えばの話、名が呼ばれたのがイリヤスフィールでも、間桐桜であったとしても、こうはならなかっただろう。
ここまで、傷の痛みすらも感じないほどに、彼女の死に動揺している自分がいた。
ここまで、傷の痛みすらも感じないほどに、彼女の死に動揺している自分がいた。
つまるところ、自分は藤村大河という存在が死ぬことを、完全に想定していなかったのだ。
彼女が殺しても死なない、のではない。
彼女が死ぬはずがない、という固定概念を、自分の中に持っていたのだ。
彼女が殺しても死なない、のではない。
彼女が死ぬはずがない、という固定概念を、自分の中に持っていたのだ。
それほどに、藤村大河の存在は日常になくてはならないもので。
衛宮士郎という存在を支えていたものだったのだから。
衛宮士郎という存在を支えていたものだったのだから。
そして、その衛宮士郎という存在を支えていた柱が無くなったと、そう認識してしまった今。
正義の味方、桜の味方という以前に。
正義の味方、桜の味方という以前に。
衛宮士郎として、立ち上がることができなくなっていた。
そして、立ち上がることもしないこんな自分をしばらく見据えたセイバーは、そのままこちらから視線を外し。
イリヤを、そして彼女を捕まえ離さない北崎の方に向いた。
イリヤを、そして彼女を捕まえ離さない北崎の方に向いた。
ああ、その判断は正解だろう。
きっと、衛宮士郎という男はここで死ぬ。
斬られた傷は深く、気を抜けば意識を落としてしまいそうになっている。
きっと、衛宮士郎という男はここで死ぬ。
斬られた傷は深く、気を抜けば意識を落としてしまいそうになっている。
そして、ここで意識を落とせばもう二度と起き上がることはないだろう。
そのまま、漂白した状態から回復することもなく、士郎の意識は闇へと沈んでいくのを感じ。
何もない、深い無の中へ――――――――――――――
何もない、深い無の中へ――――――――――――――
―――――――――お兄ちゃん!!!!!
沈むはずだったのに。
そんな、イリヤの叫び声を聞いて、意識が浮かび上がるのを感じた。
そんな、イリヤの叫び声を聞いて、意識が浮かび上がるのを感じた。
(―――――――っ)
それと同時に、自分の痛覚が痛みを訴えているのを感じ取り。
まだ生きている、という認識を覚まさせた。
まだ生きている、という認識を覚まさせた。
ああ、そうだ。
俺には、まだやらなければいけないことがある。
俺には、まだやらなければいけないことがある。
もう、この命は俺一人のものではないのだ。
例え”衛宮士郎”としての支えがなくなったとしても。
例え”衛宮士郎”としての支えがなくなったとしても。
今俺が背負っているのは、自分の理想だけではない。
今の俺には、衛宮士郎として守らなければいけないものがある。
桜が、そして、イリヤが。
だから。
「――――――ぉ」
体を無理やり起こす。
血が流れるのを気にもとめず、立ち上がる。
血が流れるのを気にもとめず、立ち上がる。
こんなところで。
「――――――――おおおおおおぉぉぉぉぉ!」
くたばってなど、いられないのだから。
◇
「別に君が戦うっていうんなら構わないけどさ、まだ後ろの彼やる気のようだよ?」
「何?」
「何か面白いものが見られそうな予感があるから、戻ってきなよ。今だけは待ってあげるからさ」
「何?」
「何か面白いものが見られそうな予感があるから、戻ってきなよ。今だけは待ってあげるからさ」
そう言ってニヤニヤと笑みを浮かべながらこちらを眺め続ける北崎。
思わず振り返り。
そこで士郎が起き上がっていたことに、最も驚いたのはセイバーだった。
そこで士郎が起き上がっていたことに、最も驚いたのはセイバーだった。
あの一撃は、即死ではなくとも致命傷に間違いのないものだったのだから。
そして、振り返ったセイバーの目に映ったのは。
傷口から血を流しながらも、立ち上がろうとしている衛宮士郎の姿。
傷口から血を流しながらも、立ち上がろうとしている衛宮士郎の姿。
肉体は満身創痍のはずなのに、その目の戦意は衰えるどころか先よりも増している。
「士郎、今のあなたの傷は命に関わるものだ。しかしおとなしくしているのであれば、早急の手当で延命はできる可能性はある。
それなのに、まだあなたは起き上がるのですか、?
まだ、私と戦おうというのですか?」
「―――――ああ、そうだ」
「イリヤスフィールを守るために?」
「ああ」
「…何があなたを、そうさせるのですか?」
それなのに、まだあなたは起き上がるのですか、?
まだ、私と戦おうというのですか?」
「―――――ああ、そうだ」
「イリヤスフィールを守るために?」
「ああ」
「…何があなたを、そうさせるのですか?」
セイバーには分からなかった。
今の衛宮士郎を、何がそこまで奮い立たせるのか。
今の衛宮士郎を、何がそこまで奮い立たせるのか。
彼には、あのイリヤを守る理由はないはずなのに。
何故そこまで傷ついてまで、守ろうとするのか。
何故そこまで傷ついてまで、守ろうとするのか。
「――――昔、世界の皆が幸せになってほしいって、そんな願いを持って戦った男がいた。
そいつは、自分の大切なものを全部切り捨てて、それでも一人でも多くの人が幸せになれるように戦ってた、らしい。
たくさんの人を救うために、少しの犠牲を切り捨てる、そんな、…正義の味方になろうとした男が」
そいつは、自分の大切なものを全部切り捨てて、それでも一人でも多くの人が幸せになれるように戦ってた、らしい。
たくさんの人を救うために、少しの犠牲を切り捨てる、そんな、…正義の味方になろうとした男が」
それは、小さな少女と一人の男への追想。
まるでそれが自分のことのように。
遠い過去を思い出すかのように。
静かに語る。
まるでそれが自分のことのように。
遠い過去を思い出すかのように。
静かに語る。
「そのために、その男は自分の最も守りたかったものを、守ることができなくて。
今でもその子は、その男のことを恨んでる。自分を捨てた、と。
要するに、自分の信じた道を往くために、自分の大切なものを選ぶことができなかったんだ、その男は」
今でもその子は、その男のことを恨んでる。自分を捨てた、と。
要するに、自分の信じた道を往くために、自分の大切なものを選ぶことができなかったんだ、その男は」
前を向く士郎。
その先にはセイバーがいる。しかし見ているのはさらにその先。
今にも泣き出しそうな顔をした、銀髪の少女。
その先にはセイバーがいる。しかし見ているのはさらにその先。
今にも泣き出しそうな顔をした、銀髪の少女。
「だけど、俺思ったことあるんだよ。もしそんな親と子が、幸せに暮らしてる世界があったら。
蟠りも何もなく、親は親として子供を愛して、その子供も親の愛情を受けて幸せに暮らしていけたら、それはどんなに幸福なことなのか、って」
「…………それは、キリツグとイリヤスフィールのことか?」
「ああ」
蟠りも何もなく、親は親として子供を愛して、その子供も親の愛情を受けて幸せに暮らしていけたら、それはどんなに幸福なことなのか、って」
「…………それは、キリツグとイリヤスフィールのことか?」
「ああ」
息子なのだから。父親の幸せを願うのは当然だろう、と。
そう言って、士郎は続ける。
そう言って、士郎は続ける。
「桜の笑顔も、俺が守らなきゃいけない。だけどイリヤも守る。
桜の味方としての俺、衛宮切嗣の息子としての俺、どちらかを取ることなんてできない。
―――それなら俺は、両方を選ぶ。二人とも、死なせはしない」
桜の味方としての俺、衛宮切嗣の息子としての俺、どちらかを取ることなんてできない。
―――それなら俺は、両方を選ぶ。二人とも、死なせはしない」
だから、その理由さえあれば。エミヤシロウはまだ戦うことができる。
立ち上がることが、できる。
立ち上がることが、できる。
「………あなたの覚悟は分かりました。
これで本当に最後です。この戦いが終われば、共に立っている、ということは有り得ないでしょう」
「ああ」
「もしあなたの持っている、2つの”聖杯”を得る、という望みが本気であるのなら。
―――――私の屍を越えて進むがいい」
これで本当に最後です。この戦いが終われば、共に立っている、ということは有り得ないでしょう」
「ああ」
「もしあなたの持っている、2つの”聖杯”を得る、という望みが本気であるのなら。
―――――私の屍を越えて進むがいい」
士郎は思考する。
この体はあとどれくらい動けるか。
セイバーに打ち勝つには、何が必要か。
この体はあとどれくらい動けるか。
セイバーに打ち勝つには、何が必要か。
可能性はもはや絶望的なもの。
だが、そこにほんの僅かだが、光を見いだせるものがある。
だが、そこにほんの僅かだが、光を見いだせるものがある。
「―――お兄ちゃん…っ!ダメ…!」
『士郎さん!いけません!』
「止めろ!士郎!」
『士郎さん!いけません!』
「止めろ!士郎!」
そんな士郎を止めようとする声が3つ。
彼の耳に届く。
彼の耳に届く。
イリヤ、ルビー、そして巧。
(無事だったん、だな。巧)
あの北崎が追い付いてきた時、巧がどうなったのか、気がかりではあった。
無論、肉体的には無事ではないだろう。しかし、まだ生きて自分の身を案じてくれている。
無論、肉体的には無事ではないだろう。しかし、まだ生きて自分の身を案じてくれている。
それが嬉しくて、同時に申し訳無さもあった。
ここから先は、もう彼らのことを考えることなどできないだろう。
だから、最後に彼らに会えて、良かった。
だから、最後に彼らに会えて、良かった。
そんな感謝の気持ちを心の中で述べ、セイバーをまっすぐ見据えた士郎は。
肩に手をかけ。
―――――――赤き聖骸布を、一気に剥ぎ取った。
◇
これは2度目だった。
己の中で世界が崩壊するのは。
生命の存在を許さないだろうこの突風のような流れ。
ボロボロの肉体が、まるで高質量の液体の激流に揉まれていくかのような衝撃。
一度目は無意識であった。だからこそ、流されてしまった。
だが、今は。
耐える。この肉体を、精神を破壊するようなこの激流に。
前に進む。一歩ずつ。
今度は、耐えなければならない。
そうだ、例え他の誰に負けることがあっても、自分にだけは負けられない。
だから、決して屈しはしない。
だから、決して屈しはしない。
無理にでも前に出ようと進み。
しかしその度に体をすり減らされ押し返され。
それでも、諦めることなく前進を続ける中で。
しかしその度に体をすり減らされ押し返され。
それでも、諦めることなく前進を続ける中で。
ふと、赤い外套が見えた気がして。
その瞬間、思考が完全にクリアになった。
俺では立っていられないような突風の中で。
ただ一人、じっと立ち続けるその男は。
ただ一人、じっと立ち続けるその男は。
こちらに目をくれることもなく。
こう問いかけてきたのだから。
こう問いかけてきたのだから。
――――――――ついてこれるか?
静かに脳裏に響くその声に。
思わず叫び返していた。
思わず叫び返していた。
「――――――――――――――――――――――ついてこれるか、じゃねえ」
「てめえの方こそ、ついてきやがれ――――――!!」
「てめえの方こそ、ついてきやがれ――――――!!」
◇
地を踏みしめる。
風はもう途絶えた。
風はもう途絶えた。
騎士王、アルトリア・ペンドラゴン。
今は黒きイングランドの王との距離は数メートル。
今は黒きイングランドの王との距離は数メートル。
思考し、分析する。
今必要なものは何か。
今彼女の手にあるのは魔剣グラム。
アーサー・ペンドラゴンの宝具、約束された勝利の剣ではない。
アーサー・ペンドラゴンの宝具、約束された勝利の剣ではない。
しかしその技量は健在。
弓による攻撃は不可。隙があまりに大きすぎる。
今必要なものは、彼女の剣とまともに打ち合うことのできる剣。
いや、彼女に”隙”を作りうる攻撃。
構えるは、干将莫耶。
まだ投影する必要はない。
この宝具は、双剣は、まだ戦う力を残しているのだから。
まだ投影する必要はない。
この宝具は、双剣は、まだ戦う力を残しているのだから。
こちらの武装を確認したセイバーもまた、片手に構えた剣を両手に持ち直す。
そのままの体勢で、ほんの数秒ほど時間も世界も止まったかのような静寂に包まれる。
そのままの体勢で、ほんの数秒ほど時間も世界も止まったかのような静寂に包まれる。
ほんの数秒だった静止した時、しかしそれが永遠に近い時にも感じられた。
そして。
「「―――――――!」」
駆け出すのはほぼ同時だった。
―――――!
激しい金属音を奏でながら全力で叩きつけられる魔剣。
正面から受け止めるにはあまりに大きすぎる一閃。
それを、この腕は防いでいた。
それを、この腕は防いでいた。
腕、正確にはこのアーチャーの持っていた記憶が、経験が受け継いだ中に存在したセイバーが。
それが俺の知るセイバーの技量と合わさり、彼女の攻撃のクセをかろうじて掴んだのだ。
それが俺の知るセイバーの技量と合わさり、彼女の攻撃のクセをかろうじて掴んだのだ。
しかし、そんなもの初撃の数度を受け止めることができれば幸いという程度のもの。
いくら相手の技量を知っていようと、その程度で対応できるならば彼女は剣の英霊などと呼ばれてはいない。
いくら相手の技量を知っていようと、その程度で対応できるならば彼女は剣の英霊などと呼ばれてはいない。
だからこそ、次の一手を思考する。
せめて一撃を入れる、決定的な隙さえ作れればいいのだから。
せめて一撃を入れる、決定的な隙さえ作れればいいのだから。
グラムを払い、軋みを上げる干将莫耶。
それを、セイバーの目の前で、投擲した。
それを、セイバーの目の前で、投擲した。
不意打ち、というにはあまりにも雑なそれを、セイバーは難なく回避。
手に武器のなくなった俺に向かって容赦なく剣を振るい。
手に武器のなくなった俺に向かって容赦なく剣を振るい。
――――――ガキィン
その一撃を、俺は咄嗟に肩に未だ持ち続けていたバッグで防ぐ。
バッグの中身が散乱する中、グラムを受け止めたのはその中から姿を現した一本の黄金の西洋剣。
バッグの中身が散乱する中、グラムを受け止めたのはその中から姿を現した一本の黄金の西洋剣。
「―――!私の剣…!」
勝利すべき黄金の剣(カリバーン)。
かつてアーサー王が持っていたとされる、選定の剣。
かつてアーサー王が持っていたとされる、選定の剣。
何という皮肉だろうか。
かつてアーサー王が所持していた選定の剣を自分が振るい。
今セイバーが持っているのは、自身にとって天敵となる竜殺しの特性を備えた、そのカリバーンの原点でもある最強の魔剣。
本来であればこの戦いで互いに持つべきは逆であるべきだろうというはずの2本の剣が、こうして主を違えてぶつかり合っているのは。
かつてアーサー王が所持していた選定の剣を自分が振るい。
今セイバーが持っているのは、自身にとって天敵となる竜殺しの特性を備えた、そのカリバーンの原点でもある最強の魔剣。
本来であればこの戦いで互いに持つべきは逆であるべきだろうというはずの2本の剣が、こうして主を違えてぶつかり合っているのは。
だがしかし。例えカリバーンであっても、相手はその原典である魔剣。
加えて干将莫耶によって受けていた、僅かながらもステータスアップの効果も今はない。
加えて干将莫耶によって受けていた、僅かながらもステータスアップの効果も今はない。
だからこそ、セイバーの一閃を正面から受け止めきることなど、不可能。
だが逆に言えば。
この咄嗟に近い一撃だけは、受け止めることができる。
この咄嗟に近い一撃だけは、受け止めることができる。
そしてそれだけの時間があれば十分。
「――――――!!」
セイバーはそれで俺の狙いに気付いたのか。
引くこともなく、思い切り剣を振るい、こちらを吹き飛ばす。
引くこともなく、思い切り剣を振るい、こちらを吹き飛ばす。
後退する体、隙だらけのその体勢に、セイバーは追い打ちをかけることもなく。
―――――!!
そのまま背後から迫った2本の剣を弾き飛ばす。
それは今しがた俺の投擲した、干将莫耶。
それは今しがた俺の投擲した、干将莫耶。
弧を描く軌道に放たれたそれは、互いを引き合う性質によって引き寄せられ、セイバーの立っていた場所へと旋回し舞い戻ったのだ。
だが、セイバーの直感もまた化け物。
剣の投擲とカリバーンで受け止めたという事実だけで、こちらの狙いに気付いたのだから。
弾き返された干将莫耶は砕け散り、精錬された双剣はただの鉄クズへと成り果てる。
しかし、それもまた予想範囲内。
この程度のこと、彼女ならば難なく対処してくれる。
この程度のこと、彼女ならば難なく対処してくれる。
振り返ったセイバーは、後退した士郎へと更なる追撃を駆けるために跳ぶ。
アーチャーの腕を持った自分が、距離を空ければ何をするか。分からないわけがないのだから。
だからこそ。
ここで弓を穿ちはしない。そんな暇は、今はない。
ここで弓を穿ちはしない。そんな暇は、今はない。
「投影――――開始(トレース、オン)」
使う魔力は最小限、かつ弓を射ずとも離れた相手に攻撃できる武器。
元より剣に特化した体。剣でなければ魔力の消費は上がる。
その中でも射ることなく瞬時に射出可能な、魔力消耗の少ない剣。
元より剣に特化した体。剣でなければ魔力の消費は上がる。
その中でも射ることなく瞬時に射出可能な、魔力消耗の少ない剣。
そう、俺は知っている。
相手の切り札に反応して因果を逆転させる、飛翔する魔剣の存在を。
相手の切り札に反応して因果を逆転させる、飛翔する魔剣の存在を。
それは、衛宮士郎が本来の歴史では決して会うことのなかった執行者の持つ、神代の魔剣。
その存在をこの目で見た。
その存在をこの目で見た。
そして、それを使う持ち主、バゼット・フラガ・マクレミッツの姿も、脳裏に焼き付いている。
ならば作れる。それが剣であるのならば。
使用法、効果、形、それら全てを模して、つくり上げることができる。
ならば作れる。それが剣であるのならば。
使用法、効果、形、それら全てを模して、つくり上げることができる。
パキン
その瞬間、何かが割れるような感覚が脳内に走った。
しかし、問題はない。
戦うことに、支障はない。壊れた箇所は、腕が補強する。
戦うことに、支障はない。壊れた箇所は、腕が補強する。
後より出て先に断つ者(アンサラー)の軌道詠唱。不要。
作り出しさえすれば、後は放つだけだ。
作り出しさえすれば、後は放つだけだ。
投影すると同時に浮遊した短剣に拳をつがえ。
「――――斬り抉る戦神の剣(フラガラック)!」
手が焼ける感覚と共にその名を開放、閃光となって飛翔する一本の短剣。
それは相手の切り札に反応して、相手を穿つ光線を放つ迎撃宝具。
エクスカリバーを持たぬ彼女に、因果を逆転させる効果を発動させることはできない。
エクスカリバーを持たぬ彼女に、因果を逆転させる効果を発動させることはできない。
しかしそれでも、セイバーに迫るその光線は低ランクとはいえ宝具の光。
例え高対魔力、高耐久力を持つ彼女であっても、受けていいものではない。
例え高対魔力、高耐久力を持つ彼女であっても、受けていいものではない。
心臓を穿つ光を、セイバーは直進しつつ受け止める。狙いさえ分かっていれば受け止めることは容易い。因果逆転が発動しないならなおさらだ。
しかし、それでも受け止めた光は必殺の威力を持った宝具。その一撃はセイバーの前進を食い止める、のみならず衝撃で後ろへと跳ね飛ばす。
ピキッ、と。受け止めたグラムはその刀身に僅かに傷を作る。
そのまま目標を穿ちもしなかった短剣は、それだけで役目を終えるように消滅し。
しかし、それでも受け止めた光は必殺の威力を持った宝具。その一撃はセイバーの前進を食い止める、のみならず衝撃で後ろへと跳ね飛ばす。
ピキッ、と。受け止めたグラムはその刀身に僅かに傷を作る。
そのまま目標を穿ちもしなかった短剣は、それだけで役目を終えるように消滅し。
その瞬間、士郎の次の一手の布石が揃った。
「―――――――投影、装填(トリガー・オフ)」
フラガラックの射出と同時に、その手に持った黄金の剣から全ての情報を読取る。
真名開放直後の、投影魔術。
魔術回路の酷使にも近い行為を、体内に眠る27の魔力回路を、そしてこの腕を総動員して成し遂げる。
魔術回路の酷使にも近い行為を、体内に眠る27の魔力回路を、そしてこの腕を総動員して成し遂げる。
セイバーはそのただならぬ様子に気付き、距離を詰めようと一気に駆け出そうとしたところで。
思い直すように彼女もまた剣を構える。
思い直すように彼女もまた剣を構える。
そして、この剣に蓄えられた全ての知識を、情報を読取ったこの体で。
この聖剣の真名を、開放する―――――
この聖剣の真名を、開放する―――――
「全工程投影完了(セット)――――是・勝利すべき黄金の剣(カリバーンブレイドワークス)」
読み取るは聖剣の記憶。騎士王の戦いの記録。
基本骨子を、構造を、経験を、魔術構成を。その全てを読み取り、その真名を開放する。
基本骨子を、構造を、経験を、魔術構成を。その全てを読み取り、その真名を開放する。
聖剣に収束していく魔力が、カリバーンに黄金の光を纏わせ。
「―――はあっ!」
そのまま振り下ろした聖剣は、黄金の波を放ちながら、セイバーへと迫った。
対してセイバーも、その様子を目にしながら。
退くこともなく、素早い動きで剣に魔力の霧を渦巻かせる。
退くこともなく、素早い動きで剣に魔力の霧を渦巻かせる。
そう、距離を詰めれば逆に至近距離からあれを食らう可能性があった。
ならばそれよりも、士郎のあの一撃を今出せる全力を持って受け止めるべきだと、セイバーの中の何かは告げていた。
ならばそれよりも、士郎のあの一撃を今出せる全力を持って受け止めるべきだと、セイバーの中の何かは告げていた。
濃密に渦巻く魔力の刃は、エクスカリバーを、そして風王結界を喪失した彼女の持つ、切り札には届かずとも最大威力にして唯一である技。
そう、あの光は己の所持していた聖剣の光。
故に、ことあの聖剣のことであれば彼女以上に知っている者などいない。
故に、ことあの聖剣のことであれば彼女以上に知っている者などいない。
だからこそ、あの剣にだけは、敗れるわけにはいかない。
それがあの剣の所有者としての誇りだ。
それがあの剣の所有者としての誇りだ。
そう言わんばかりに魔力を魔剣につぎ込み。
渦巻く黒い魔力は、巨大な剣のように形作り。
黄金の光を迎え撃つ―――
渦巻く黒い魔力は、巨大な剣のように形作り。
黄金の光を迎え撃つ―――
「卑王鉄槌(ヴォーディガーン)――――!!」
巨大な波動の刃は一瞬、黄金の光を打ち止め。
しかし直後に光に押されて崩壊させる。
しかし直後に光に押されて崩壊させる。
その光を前に、セイバーは再度瞬時に魔力を剣に集中させる。
纏っていた黒き鎧、その魔力を剣に集め。
纏っていた黒き鎧、その魔力を剣に集め。
「――――ハッ!」
振り下ろした剣を再度、同じ形で打ち上げた。
鎧を魔力へと変換し再度放った卑王鉄槌。
それをもってしてなお、黄金の光は止まらない。
今のセイバーが持ちうる最大の攻撃を持ってしても、その光を破ることはできない。
それをもってしてなお、黄金の光は止まらない。
今のセイバーが持ちうる最大の攻撃を持ってしても、その光を破ることはできない。
しかしセイバーは、その様子に動揺することもなく、振り上げた剣を流れるような動作で地面に突き立てた。
光が彼女を覆い尽くすと同時に、濃密な霧がセイバーの周囲を守るように防壁へと形を変える。
防壁ごと光に覆い込まれるセイバー。
防壁ごと光に覆い込まれるセイバー。
――――シュン
一瞬の後、閃光を一閃するかのように剣風が走り、光が消滅。
奥から現れたセイバーは、前進を魔力に焼かれ纏った服はボロボロに焼け焦げている。
奥から現れたセイバーは、前進を魔力に焼かれ纏った服はボロボロに焼け焦げている。
2度の卑王鉄槌、そして魔力の霧による防御。それらは確かにカリバーンの光を打ち消すことはできなかったが、決して意味がなかったわけではない。
幾度の障害を通じ、その威力はセイバーの対魔力と耐久力を持ってすれば耐えられるほどまでに威力を相殺されていた。
幾度の障害を通じ、その威力はセイバーの対魔力と耐久力を持ってすれば耐えられるほどまでに威力を相殺されていた。
そして、目の前の士郎を見据えたセイバーは、今度こそ目を見張ることとなった。
「なっ?!」
構えているその武器は弓。
アーチャーの持っていた黒弓。それはいい。
アーチャーの持っていた黒弓。それはいい。
問題は、そこに矢として構えられている武器。
黒い弓とは対照的に、その手に構えられた一本の剣。
まさかと思ったその瞬間、その剣はこちらへ向けて射出。
黒い弓とは対照的に、その手に構えられた一本の剣。
まさかと思ったその瞬間、その剣はこちらへ向けて射出。
矢から手が離れると同時に一歩前に出たセイバーは、射出されたそれを咄嗟に全力で弾き飛ばして。
その直前、目の前でそれを見て、セイバーの驚愕は決定的なものとなる。
その直前、目の前でそれを見て、セイバーの驚愕は決定的なものとなる。
士郎はこともあろうに、勝利すべき黄金の剣を、自分の宝具を使い捨ての矢として射出したのだから。
そう、あのカリバーンですらも、ただの一手にすぎない。
セイバーがカリバーンを耐えぬくことなど、想定していたのだから。
セイバーがカリバーンを耐えぬくことなど、想定していたのだから。
カリバーンを最も知っているのがセイバーであるなら、―――――セイバーを他の誰よりも知っているのは俺なのだから。
だからこそ。彼女の直感はこの攻撃を予知し得ない。
予知できたとしても、起こり得ることとして捉えることができない。この一撃は、英霊に対する一つの冒涜でもあるのだから。
予知できたとしても、起こり得ることとして捉えることができない。この一撃は、英霊に対する一つの冒涜でもあるのだから。
ぶつかり合った衝撃で軋みをあげる魔剣グラム。奇しくも傷のついた部位がその一撃を受け止めたことで、刀身の傷は小さな罅へと変化する。
弾かれたカリバーンは、そのまま上空へと打ち上がり大爆発を引き起こす。
ランクにしてAクラスの宝具の、壊れた幻想(ブロークンファンタズム)。
そんなものが爆発すれば周囲に振りかかる熱は、爆風は計り知れない。
ランクにしてAクラスの宝具の、壊れた幻想(ブロークンファンタズム)。
そんなものが爆発すれば周囲に振りかかる熱は、爆風は計り知れない。
轟音と共に吹き荒れる爆風。
あまりに予想外の事態に、乱れるセイバーの直感。
そしてそんな現象の至近距離に近い場所に位置し、先のカリバーンに勝るとも劣らぬ強烈な爆風に覆われながらも、セイバーは笑っていた。
あまりに予想外の事態に、乱れるセイバーの直感。
そしてそんな現象の至近距離に近い場所に位置し、先のカリバーンに勝るとも劣らぬ強烈な爆風に覆われながらも、セイバーは笑っていた。
士郎は本気だと。
自分の武器を打ち捨ててなおも、自分と戦っているということに。
自分の武器を打ち捨ててなおも、自分と戦っているということに。
あの、鍛錬では自分に一本も入れることが出来なかった少年が、こうまで自分を越えようとしている事実に。
喜びと楽しみを感じている自分を、セイバーは感じ取っていた。
それこそ、今この時だけは現マスター、桜のことも、イリヤスフィールのことも忘れられるほどの。
喜びと楽しみを感じている自分を、セイバーは感じ取っていた。
それこそ、今この時だけは現マスター、桜のことも、イリヤスフィールのことも忘れられるほどの。
ああ、だからこそ惜しい。
次の士郎の一手が、この戦いに決着をつけてしまうだろうことを、直感していたから。
魔力の混じった爆風で周囲の状況もロクに掴めぬ空間。
そんな中で、視界の端に何かが映る。
「来るか、士郎―――――」
視界の端に映った剣を、瞬時に受け止め。
(――――違う!)
それは、干将莫耶の片割れ、陽剣・干将。
しかし、剣の担い手はそこにはいない。
しかし、剣の担い手はそこにはいない。
これはあくまでも投擲されたものに過ぎない。
思考より先に体が動く。
これが投擲されたということは、もう一方も自分に食らい付こうと迫ることは火を見るより明らかなのだから。
これが投擲されたということは、もう一方も自分に食らい付こうと迫ることは火を見るより明らかなのだから。
それを知っていたからこそもう一方、逆側から飛来した陰剣・莫耶をギリギリのところで受け止めることができた。
迫った剣にグラムを振るい粉々に砕く。
爆風の中であってもその直感をもって的確に対処し、干将莫耶による一撃を完全に回避し。
爆風の中であってもその直感をもって的確に対処し、干将莫耶による一撃を完全に回避し。
「―――――!」
それ故に、目の前に迫ってきた彼の次なる手を、防ぐ機会を失うことになる。
目の前で光るその手を見据えながら、その一撃を避けることができない、と見たセイバーは。
「っ!はああああああああああああ!!」
それでも退くこともなく、その一撃を、正面から迎え撃ち。
「セイ、バー――――――――…………!!!!!!」
その衝撃は周囲に一陣の風を巻き起こし。
爆風が完全に晴れた先にあった光景は。
互いの体が交差し、背を向け合う二人。
セイバーの振り下ろした剣と、士郎の投影した武器が、共に互いの体を捉え。
セイバーの振り下ろした剣と、士郎の投影した武器が、共に互いの体を捉え。
全身から生えた刃だらけの体で、胸から腹にかけて深く斬られて血を流す士郎と。
胸に一本の刃を刺されたセイバー。
胸に一本の刃を刺されたセイバー。
その二人が、共に倒れる姿だった。
◇
「――――――お兄ちゃんっ!」
イリヤ自身、どこにそんな力が残っていたのか分からない。
ボロボロでロクに力も入らないはずの体だったのに、その光景を見ただけで北崎の拘束を振りほどいて走りだしていた。
ボロボロでロクに力も入らないはずの体だったのに、その光景を見ただけで北崎の拘束を振りほどいて走りだしていた。
「お兄ちゃ…ゴホッ」
体の中で、治りかけていた傷が開きかけたのを感じ取る。
口の奥からせり上がってくる鉄の臭い。体の内側から走る、鋭い痛み。
口の奥からせり上がってくる鉄の臭い。体の内側から走る、鋭い痛み。
なのに、その足は止まることなく士郎の元へと駆け出していた。
『い、イリヤさん!』
叫ぶルビーの声にも。
「あーあ、相打ちかぁ。面白くないなぁ」
あくびを出す北崎の声にも反応することなく。
「お兄ちゃん…、お兄ちゃん!」
よろめきながらも走るが、体は正直だった。
傷ついた内臓の発するは身体機能を大きく低下させ、たった数十メートルの距離を満足に走らせない。
傷ついた内臓の発するは身体機能を大きく低下させ、たった数十メートルの距離を満足に走らせない。
やがて足がもつれ、地面に転がり込む。
「つっ…、お、お兄ちゃん…」
それでも、地を這うように動かぬ兄の元にたどり着くイリヤ。
「目を開けて!お願いだから!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
揺らそうと呼びかけようと、倒れた兄は反応しない。
「嫌…、嫌だよ…、こんなの…。嫌ああああああああああああ!!!」
絶叫するイリヤ。
そんな様子を見ながら、北崎はゆっくりと立ち上がる。
嫌な予感を感じたLは、咄嗟に北崎を静止する。
嫌な予感を感じたLは、咄嗟に北崎を静止する。
「北崎さん…!」
「……」
「……」
しかしそんなもの、彼にとって何の障害にも成り得ない。
腕の一振りで跳ね飛ばされるLの身体。
腕の一振りで跳ね飛ばされるLの身体。
ゆっくりと、倒れた二人と泣き叫ぶイリヤの元に、オルフェノクの身体へと変化させながら近付く。
「士郎!おい士郎!しっかりしろ!」
未だ起き上がることができない巧は、必死で士郎の名前を呼び続ける。
それが、無駄なことだと分かっていながら。
それが、無駄なことだと分かっていながら。
「クソッ、動け、動けよ俺の脚!!」
起き上がろうとしても、脚に力が入らない。
ボロボロの身体でオルフェノクの力を酷使したこの身は、まだ一人で起き上がることもままならない。
ボロボロの身体でオルフェノクの力を酷使したこの身は、まだ一人で起き上がることもままならない。
「お前、そこから逃げろ!!速く!」
せめてもの行為として、イリヤにそこから逃げるように叫ぶ。
しかし、イリヤは士郎の傍を、離れることはなく。
しかし、イリヤは士郎の傍を、離れることはなく。
やがてドラゴンオルフェノクは、3人の元へと辿り着く。
じっと二人の身体を見渡し。足で軽く揺さぶって。
何の反応もないことを確認した北崎は。
何の反応もないことを確認した北崎は。
「相打ちかぁ…。このパターン正直イラつくんだよねぇ。僕の関われないところで楽しそうなことしてさ」
士郎の身体にすがりついたイリヤに目を向ける。
その視線に、そして今の状況にようやく気付いたイリヤは。
その視線に、そして今の状況にようやく気付いたイリヤは。
「ひっ…!」
小さく怯える声を上げ。
それを楽しそうに北崎は眺め。
それを楽しそうに北崎は眺め。
「それじゃあ、この戦いは僕の勝利ってことで、この子を好きにしてもいいんだよね?」
そう言って、手をイリヤへと差し伸ばし。
「じゃあね。運が良ければ生き返れるかもしれないけど。さよなら、白いお人形さん」
その手から、細い触手を彼女の心臓めがけて打ち出した。
―――――――ザクッ
◇
投影するたびに大切なものが消えていった。
思い出が、記憶が、大切な人達への想いが。
何故戦っているのか、遠くで俺の名前を呼んでいるのは誰なのか。
何故戦っているのか、遠くで俺の名前を呼んでいるのは誰なのか。
俺がなりたかったもの、守りたかったもの。
それが、少しずつ零れていった。
傷口からは刃が擦れる音を鳴らし。
ああ、俺はもう人間じゃないんだな、と思いながら。
それでも死を迎えようとしている自分を、とても冷静に見直しているやつがいた。
ああ、俺はもう人間じゃないんだな、と思いながら。
それでも死を迎えようとしている自分を、とても冷静に見直しているやつがいた。
確か、誰だったかな。さっき、自分の大切な誰かの名前が呼ばれたような気がする。
ダメだ、名前が出てこない。
だけど、とても大切な人だったんだとは思う。
だけど、とても大切な人だったんだとは思う。
(………---、ごめんな、俺、もうすぐそっちへ行くと思う)
誰なのかは分からないのに、きっと怒られるんだろうなって感じた。
だから、たぶん先に待っているその人に対して何て謝ろうかなんて、そんなことを考えていた。
だから、たぶん先に待っているその人に対して何て謝ろうかなんて、そんなことを考えていた。
俺の名前を必死で呼んでいる少女の声が聞こえる。
確か、名前は―――そうだ、イリヤだ。
何となく、その声に涙が混じっているようですごく申し訳ない気持ちになっていた。
妹を泣かせるなんて、兄として最低の行為じゃないかと思った。
だけど、この涙のあとは、きっと彼女はそれを埋めるような笑顔を浮かべられるだろうと。
今はその悲しみに泣くことがあっても、いずれきっと、その数十倍の笑顔を浮かべられるようになるから。そう信じてるから。
だから、君は生きてほしいと。
彼女には届かないと思いながらも、そう願いを込めた。
だけど、この涙のあとは、きっと彼女はそれを埋めるような笑顔を浮かべられるだろうと。
今はその悲しみに泣くことがあっても、いずれきっと、その数十倍の笑顔を浮かべられるようになるから。そう信じてるから。
だから、君は生きてほしいと。
彼女には届かないと思いながらも、そう願いを込めた。
あと、他に名前を呼ぶ男がいる気がする。
名前は―――――出てこない。
だけど、何となく覚えている。
ぶっきらぼうだけど本当は優しい心を持ったやつ。
人を傷つけるのを恐れて、人を自分から遠ざけようとする、自分と比べてまっすぐにみんなの笑顔を守れるだろう、そんなやつ。
名前は―――――出てこない。
だけど、何となく覚えている。
ぶっきらぼうだけど本当は優しい心を持ったやつ。
人を傷つけるのを恐れて、人を自分から遠ざけようとする、自分と比べてまっすぐにみんなの笑顔を守れるだろう、そんなやつ。
俺の夢を守ってくれると言ってくれた時は本当に嬉しかった。
なのに肝心の俺がいなくなってしまうというのは、謝罪する言葉も見つからない。
なのに肝心の俺がいなくなってしまうというのは、謝罪する言葉も見つからない。
それでも。あんたならきっと。
俺の夢を、守ると言ってくれた、桜の笑顔を含む、皆の笑顔を守ってくれるって、信じてる。
俺の夢を、守ると言ってくれた、桜の笑顔を含む、皆の笑顔を守ってくれるって、信じてる。
そして――――桜。
俺が守らなきゃいけない、大きな罪を背負った女の子。
彼女のことだけが、俺にとってほぼ唯一の心残りだった。
俺が守らなきゃいけない、大きな罪を背負った女の子。
彼女のことだけが、俺にとってほぼ唯一の心残りだった。
俺がいなくなって、---もいなくなって、--もいなくなって。
彼女は笑顔を浮かべられるようになるのか。
きっと、とても悲しむだろうなと思った。
彼女は笑顔を浮かべられるようになるのか。
きっと、とても悲しむだろうなと思った。
だから、せめてあの子を一人にしないために。
もう生きていることができない俺の代わりに悲しむ彼女を、支えてやれるように。
もう生きていることができない俺の代わりに悲しむ彼女を、支えてやれるように。
だから、俺は
最も守りたかったものを。守るべきものを。その全てを。
最も信頼した存在に、託す。
最も信頼した存在に、託す。
だから桜を――――
「頼んだぞ、セイバー」
もはや声も出ないはずの身体で、それだけはっきりと、口にできた気がした。
◇
―――――――ザクッ
鋭い音とともに、突き出されたそれはその肉体を貫いていた。
目を見開くイリヤ。
じっと動かないドラゴンオルフェノク。
じっと動かないドラゴンオルフェノク。
いや、動かないのではない、動けなかった。
イリヤに伸ばした触手は、その数ミリ前で停止し。
触手の主の首からは、後ろから貫くように鋭い一本の剣が生えていたのだから。
触手の主の首からは、後ろから貫くように鋭い一本の剣が生えていたのだから。
北崎には、何が起こったのか理解することもできず。
もはや声を出すことも、身動き一つとることも叶わなかった。
もはや声を出すことも、身動き一つとることも叶わなかった。
ただ、自分のすぐ後ろに何者かの気配を感じ。
「――…その穢れた手で、彼女に触れるな。下郎」
その存在が震えるような声を、こう発したような気はした。
そしてその言葉を最後に。
首に刺さった刃が動かされ。
首に刺さった刃が動かされ。
浮遊感に包まれて飛び上がったような感覚に包まれた北崎は。
何か大きな身体のようなものが青い炎で燃え上がっているのを見て。
何か大きな身体のようなものが青い炎で燃え上がっているのを見て。
それが、闇に落ちる北崎の意識が最後に見たものとなった。
◇
イリヤの目の前で、ドラゴンオルフェノクの頭が飛んでいき。
青い炎に包まれてその身体が崩壊していくのを見届けたイリヤ。
それと共に、まるで竜を殺したことで役目を終えたかのように根本から折れ飛んでいく刃。
青い炎に包まれてその身体が崩壊していくのを見届けたイリヤ。
それと共に、まるで竜を殺したことで役目を終えたかのように根本から折れ飛んでいく刃。
そんな彼女の視界に入ったのは。
胸に刃物を突き立てられた金髪の女剣士だった。
胸に刃物を突き立てられた金髪の女剣士だった。
彼女は柄だけになった剣を投げ捨て。
胸に刺さった刃を引き抜く。
胸に刺さった刃を引き抜く。
それは剣ではなく短剣程度の大きさの刃物。
なのに、その刃の部分はギザギザな線を描いた奇妙な形をしている。
なのに、その刃の部分はギザギザな線を描いた奇妙な形をしている。
そして、イリヤはそれを知っている。
「ルールブレイカー…?」
そう、ここに来たばかりの時、呪術刻印を消すために使った宝具。
それが、セイバーの胸に突き立っていた。
それが、セイバーの胸に突き立っていた。
その歪な刃が抜き取られると同時、セイバーの肉体から発されていた黒い魔力が消失。
ボロボロな黒いドレスの色は青く変わっていき、真っ白だった肌は生きている人間のそれと大差ない色へと変わる。
ボロボロな黒いドレスの色は青く変わっていき、真っ白だった肌は生きている人間のそれと大差ない色へと変わる。
その変化に驚くイリヤの目の前で。
セイバーは静かに士郎に近づき、その肉体を返して顔を上に向ける。
セイバーは静かに士郎に近づき、その肉体を返して顔を上に向ける。
「……っ、あなたは…、どうしてこんなものを、私に…!
あなたを殺した私に、生きろというのですか…!?」
あなたを殺した私に、生きろというのですか…!?」
あの最後の一撃。
あそこで投影していたのが干将莫耶だったなら、その双剣でもってこの身を切り裂いたのだったなら。
間違いなくこっちの刃は士郎に届かず、彼に勝利をもたらしただろう。
あそこで投影していたのが干将莫耶だったなら、その双剣でもってこの身を切り裂いたのだったなら。
間違いなくこっちの刃は士郎に届かず、彼に勝利をもたらしただろう。
なのにこの刃を、彼はこの身に刺した。
結果、負けたはずの自分が生き、衛宮士郎はその生命を終えた。
結果、負けたはずの自分が生き、衛宮士郎はその生命を終えた。
例え届かなくても、何故そんな選択をしたのか。
問い詰めようと思う心がはやり士郎へと詰め寄った。
問い詰めようと思う心がはやり士郎へと詰め寄った。
なのに。
士郎の顔は、まるで何かをやり遂げたような顔をしていた。
士郎の顔は、まるで何かをやり遂げたような顔をしていた。
「何故あなたは…、悔いを残したはずなのにそんな顔で死ぬことができるのですか」
そんな顔を見せられたら、怒るに怒れなくなってしまうではないか。
「桜やイリヤスフィールを、あなたの代わりに私に守れ、というのですね…?」
もう、答える者のいないはずのない問いかけ。
なのに、その言葉に頷かれたような感覚を、どこからともなく感じ取っていて。
なのに、その言葉に頷かれたような感覚を、どこからともなく感じ取っていて。
「あなたと、いう人は…」
今の自分に涙を流す資格などない。
だからこそ、そんな心を切り離すかのように、士郎を地面に横たえ。
だからこそ、そんな心を切り離すかのように、士郎を地面に横たえ。
「…分かりました。これより私は、あなたの剣として、イリヤスフィールを、桜を、必ず生きて連れ帰りましょう」
黒き泥の呪縛から解き放たれた騎士王は、かつての主へと一つの誓いを立て。
自分が離れると同時に士郎に近付くイリヤを見送りつつ、離れた場所で倒れた者達へ向けて、歩みを進めた。
◇
自分には何もできなかった。
何となくあの黒い騎士に従うことは間違いだと思っていながら、最後まで逆らうことができず。
何となくあの黒い騎士に従うことは間違いだと思っていながら、最後まで逆らうことができず。
なのに目の前では、ただの人間に見える少年が、あのとても強い騎士さんと戦って死んでいった。
勝てないはずの相手に、一歩も退かずに立ち向かって。
勝てないはずの相手に、一歩も退かずに立ち向かって。
自分は、あのオルフェノクに立ち向かうことも、騎士に従わずに立ち向かうこともできなかったのに。
何となく、そんな自分の理想のために真っ直ぐ、強くあった少年の姿に。
一人の、心優しく強く、それでいて理想を願うオルフェノクを連想していた。
一人の、心優しく強く、それでいて理想を願うオルフェノクを連想していた。
「ユカ、大丈夫ですか?」
「え、っと…、セイバーさん、ですよね…?」
「え、っと…、セイバーさん、ですよね…?」
セイバーからそんな優しい言葉をかけられたことのなかった結花は、戸惑いを隠し切れない。
「…はい。安心してください。今の私はあなたを力で縛ろうとは思いません」
そう言って手を差し伸ばし、結花を起き上がらせたセイバー。
そして周囲を見回し、二人の男を見つけた。
傷ついた一人を、もう一人が肩を貸して起こしているようだ。
傷ついた一人を、もう一人が肩を貸して起こしているようだ。
「えっ、乾…さん?」
「知り合いですか?でしたら話は早い。一緒に来てくれませんか?」
「知り合いですか?でしたら話は早い。一緒に来てくれませんか?」
『士郎さん…、あなたは…』
「な、何だ、どういうことだよ…?!」
「な、何だ、どういうことだよ…?!」
何かを悟ったようにつぶやくルビーに対し、混乱する巧。
無理もないだろう。目の前で士郎と戦っていた剣士が、いきなり起き上がったと思ったら北崎の首を刎ね、そのままイリヤに何をすることもなく士郎の死体に問いかけていたのだから。
無理もないだろう。目の前で士郎と戦っていた剣士が、いきなり起き上がったと思ったら北崎の首を刎ね、そのままイリヤに何をすることもなく士郎の死体に問いかけていたのだから。
「…………」
そしてLもまた混乱こそしていたものの、頭は状況把握に努めようときわめて冷静だった。
咲世子の仇も取れず、一人の危険人物の手綱を握ることに失敗し、こうして死人まで出す事態になってしまった。
しかし、だからこそLは今するべきことをしなければならない、と。
しかし、だからこそLは今するべきことをしなければならない、と。
そんな中、未だ状況の掴みきれない二人と一本の元についさっきまであの少年と剣を交えていた少女が、こちらへと向かって歩いてきた。
「大丈夫ですか?」
「ええ、私は大丈夫ですが、彼が重傷です。せめてどこか休める場所へ移動したい」
「…おい、待てよあんた。こいつのことを信用するのかよ」
「ええ、私は大丈夫ですが、彼が重傷です。せめてどこか休める場所へ移動したい」
「…おい、待てよあんた。こいつのことを信用するのかよ」
信用するかのようにセイバーに話しかけるL。
そんな様子に意義を申し立てたのは巧だった。
そんな様子に意義を申し立てたのは巧だった。
「今の彼女からは敵意を感じません。それに、私の見立てでは彼女は騙して人に取り入り、闇討ちするような人にも見えません」
「信用できると思ってんのかよ」
『少なくとも彼女の言葉に嘘はないでしょうと私は思います』
「間違っていた時は私が責任を取りましょう。
…すみません、今は色々なことが立て続けに起きて私自身状況の整理ができていません。一旦どこかの施設に移動する、ということでよろしいでしょうか?」
「信用できると思ってんのかよ」
『少なくとも彼女の言葉に嘘はないでしょうと私は思います』
「間違っていた時は私が責任を取りましょう。
…すみません、今は色々なことが立て続けに起きて私自身状況の整理ができていません。一旦どこかの施設に移動する、ということでよろしいでしょうか?」
そう言ったLの言葉に、巧は顔をしかめつつも反論はせず、セイバーもまた頷いていた。
問題は、士郎の傍から動こうとしないイリヤだったが。
「反論は、ありません。ただ、その前に一つだけお願いが」
「何でしょうか?」
「何でしょうか?」
と、セイバーはかすかに迷うように顔を伏せ。
その願いをLへと告げた。
その願いをLへと告げた。
「…シロウを、埋葬させてください」
【E-4/一日目 日中】
【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(大)、肋骨骨折、両腕両足の骨にヒビ、内臓にダメージ(中、優先的に治癒中)、悲しみ
[装備]:カレイドステッキ(ルビー)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:クラスカード(キャスター)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本:?????
1:お兄ちゃん…!
[ルビー・思考]
基本:イリヤさんを手助けして、殺し合いを打破する
1:イリヤさんを落ち着かせつつ、まずは目の前の人達と話をする
[備考]
※2wei!三巻終了後より参戦
※カレイドステッキはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません
※ルビーは、衛宮士郎とアーチャーの英霊は同一存在である可能性があると推測しています。
[情報]
※衛宮士郎が平行世界の人物である
※黄色い魔法少女(マミ)は殺し合いに乗っている?
※マントの男が金色のロボットの操縦者、かつルルーシュという男と同じ顔?
[状態]:疲労(大)、肋骨骨折、両腕両足の骨にヒビ、内臓にダメージ(中、優先的に治癒中)、悲しみ
[装備]:カレイドステッキ(ルビー)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:クラスカード(キャスター)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本:?????
1:お兄ちゃん…!
[ルビー・思考]
基本:イリヤさんを手助けして、殺し合いを打破する
1:イリヤさんを落ち着かせつつ、まずは目の前の人達と話をする
[備考]
※2wei!三巻終了後より参戦
※カレイドステッキはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません
※ルビーは、衛宮士郎とアーチャーの英霊は同一存在である可能性があると推測しています。
[情報]
※衛宮士郎が平行世界の人物である
※黄色い魔法少女(マミ)は殺し合いに乗っている?
※マントの男が金色のロボットの操縦者、かつルルーシュという男と同じ顔?
【乾巧@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(特大)、肩から背中に掛けて切り傷、全身に重度の打撲+軽度の火傷
[装備]:なし
[道具]:共通支給品、ファイズブラスター@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:木場を元の優しい奴に戻したい
0:マミの事が少し心配
1:士郎…、何でだよ…
2:二人の元から離れたいが、仕方がないので協力する
3:暁美ほむらを探して、魔法少女について訊く
4:マミは探さない
5:セイバーに対して警戒心
[備考]
※参戦時期は36話~38話の時期です
[情報]
※ロロ・ヴィ・ブリタニアをルルーシュ・ランペルージと認識?
※マントの男が金色のロボットの操縦者
[状態]:疲労(中)、ダメージ(特大)、肩から背中に掛けて切り傷、全身に重度の打撲+軽度の火傷
[装備]:なし
[道具]:共通支給品、ファイズブラスター@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:木場を元の優しい奴に戻したい
0:マミの事が少し心配
1:士郎…、何でだよ…
2:二人の元から離れたいが、仕方がないので協力する
3:暁美ほむらを探して、魔法少女について訊く
4:マミは探さない
5:セイバーに対して警戒心
[備考]
※参戦時期は36話~38話の時期です
[情報]
※ロロ・ヴィ・ブリタニアをルルーシュ・ランペルージと認識?
※マントの男が金色のロボットの操縦者
【L@デスノート(映画)】
[状態]:右の掌の表面が灰化、疲労(中)
[装備]:ワルサーP38(5/8)@現実、
[道具]:基本支給品、スペツナズナイフ@現実、クナイ@コードギアス 反逆のルルーシュ、ブローニングハイパワー(13/13)@現実、 予備弾倉(9mmパラベラム×5)、シャルロッテ印のお菓子詰め合わせ袋。
[思考・状況]
基本:この事件を止めるべく、アカギを逮捕する
1:目の前の少女、セイバー達と情報を共有するために移動する
2:月がどんな状態であろうが組む。一時休戦
3:魔女の口付けについて、知っている人物を探す
4:3or4回目の放送時、病院または遊園地で草加たちと合流する
[備考]
※参戦時期は、後編の月死亡直後からです。
※北崎のフルネームを知りました。
※北崎から村上、木場、巧の名前を聞きました。
※メロからこれまでの経緯、そしてDEATH NOTE(漫画)世界の情報を得ました。しかしニア、メロがLの後継者であることは聞かされていません
※Fate/stay night世界における魔術、様々な概念について、大まかに把握しました。しかし詳細までは理解しきれていないかもしれません。
[状態]:右の掌の表面が灰化、疲労(中)
[装備]:ワルサーP38(5/8)@現実、
[道具]:基本支給品、スペツナズナイフ@現実、クナイ@コードギアス 反逆のルルーシュ、ブローニングハイパワー(13/13)@現実、 予備弾倉(9mmパラベラム×5)、シャルロッテ印のお菓子詰め合わせ袋。
[思考・状況]
基本:この事件を止めるべく、アカギを逮捕する
1:目の前の少女、セイバー達と情報を共有するために移動する
2:月がどんな状態であろうが組む。一時休戦
3:魔女の口付けについて、知っている人物を探す
4:3or4回目の放送時、病院または遊園地で草加たちと合流する
[備考]
※参戦時期は、後編の月死亡直後からです。
※北崎のフルネームを知りました。
※北崎から村上、木場、巧の名前を聞きました。
※メロからこれまでの経緯、そしてDEATH NOTE(漫画)世界の情報を得ました。しかしニア、メロがLの後継者であることは聞かされていません
※Fate/stay night世界における魔術、様々な概念について、大まかに把握しました。しかし詳細までは理解しきれていないかもしれません。
【セイバー@Fate/stay night】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、全身に切り傷と軽い火傷(回復中)、魔力消費(大)
[装備]:無し
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:シロウの願いを継ぎ、桜とイリヤスフィールを守る
1:まずは目の前の参加者と話す
2:シロウ…
[備考]
※破戒すべき全ての符によりアンリマユの呪縛から開放されセイバーへと戻りました
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、全身に切り傷と軽い火傷(回復中)、魔力消費(大)
[装備]:無し
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:シロウの願いを継ぎ、桜とイリヤスフィールを守る
1:まずは目の前の参加者と話す
2:シロウ…
[備考]
※破戒すべき全ての符によりアンリマユの呪縛から開放されセイバーへと戻りました
【長田結花@仮面ライダー555】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(中)、翼にダメージ(オルフェノク態のダメージ)、仮面ライダー(間桐桜)に対する重度の恐怖
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×3、ゴージャスボール@ポケットモンスター(ゲーム) 、穂群原学園の制服@Fate/stay night、お菓子数点(きのこの山他)、
スナッチボール×1@ポケットモンスター(ゲーム)、魔女細胞抑制剤×1@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー、ジグソーパズル×n、呉キリカのぬいぐるみ@魔法少女おりこ☆マギカ、不明支給品0~3
[思考・状況]
基本:???
1:私は、どうしたら…?
2:え、乾さん…?
[備考]
※参戦時期は第42話冒頭(警官を吹き飛ばして走り去った後)です
[状態]:ダメージ(大)、疲労(中)、翼にダメージ(オルフェノク態のダメージ)、仮面ライダー(間桐桜)に対する重度の恐怖
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×3、ゴージャスボール@ポケットモンスター(ゲーム) 、穂群原学園の制服@Fate/stay night、お菓子数点(きのこの山他)、
スナッチボール×1@ポケットモンスター(ゲーム)、魔女細胞抑制剤×1@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー、ジグソーパズル×n、呉キリカのぬいぐるみ@魔法少女おりこ☆マギカ、不明支給品0~3
[思考・状況]
基本:???
1:私は、どうしたら…?
2:え、乾さん…?
[備考]
※参戦時期は第42話冒頭(警官を吹き飛ばして走り去った後)です
【衛宮士郎@Fate/stay night 死亡確認】
【北崎@仮面ライダー555 死亡確認】
【北崎@仮面ライダー555 死亡確認】
※干将莫耶、勝利すべき黄金の剣、グラムは破壊されました。
そこは、月が綺麗な夜の、静かな庭の縁側。
座った自分の隣には、一人の男が静かに佇んでいた。
座った自分の隣には、一人の男が静かに佇んでいた。
「なあ、爺さん」
呼びかけても、隣の男は静かに目を閉じたまま動かない。
「俺さ、正義の味方にはなれなかった。それどころか、妹も、守るって決めた女の子も守れなかった。
優しくしろって言われてたのに、結局泣かせちまったんだ」
優しくしろって言われてたのに、結局泣かせちまったんだ」
「………」
「まだ、やらなきゃいけないことも後悔も沢山あったけどさ。
それでも、やらなきゃいけないことは、俺なりにやり切ったと思うんだ」
それでも、やらなきゃいけないことは、俺なりにやり切ったと思うんだ」
父親の希望は、小さな妹に。
夢は、一人の男に。
そして、守りたい大切な存在は、最も信頼した少女に。
夢は、一人の男に。
そして、守りたい大切な存在は、最も信頼した少女に。
風が静かにそよぐ。
庭の草花がそれに揺らされ、小さく音を立てる。
庭の草花がそれに揺らされ、小さく音を立てる。
しばらくの沈黙をもって、隣の男に問いかけた。
「爺さん、俺、間違ってなんてなかったよな?」
「………」
「………」
男は答えない。沈黙を保ったままだ。
小さな不安に包まれる心。
そんな時、微動だにしなかった男は、静かに俺の頭に手を乗せ、クシャクシャと乱雑に、しかし優しく撫でた。
そんな時、微動だにしなかった男は、静かに俺の頭に手を乗せ、クシャクシャと乱雑に、しかし優しく撫でた。
その意味が分かった時、俺はなんとなく、心からの笑みを浮かべられたような気がした。
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