| 生年月日 |
宇宙新暦4500年 |
| 年齢 |
15アストラ歳(星年齢) 共立公暦1000年時点 |
| 出生地 |
聖玄羅連邦 大炎帝国 |
| 民族 |
護族 |
| 所属 |
環星羅府 |
| 主な階級 |
当代皇将 七道将星(龍衛大将) |
| 爵位 |
大玄公 |
| 異名 |
鳳凰赤瞳 |
概要
麗華瑞(れいかずい)は、
聖玄羅連邦の元首である。中央の合議を主宰し、意見の拮抗した局面では最終の裁定を下す。
聖道巫術では変換の振動を扱う系統に属し、精気の巡りを外界から切り離す永生の術によって不老の身となった。
自己紹介
……はい、こちらでよろしいのですね。麗華瑞と申します。改めて、こうして名乗るとなりますと、どうも落ち着かないものでございますね。名の字をお尋ねになる方が時々おられます。麗が生家の姓、華は開くもの、瑞はめでたきもの。火を扱う家に付ける名としては、いささか穏やかに過ぎましょう。それでも、名付けた者の願いがそのまま残っているようで、私はこの名を気に入っております。人とお話しするときは、なるべく先に伺うことにしております。私から申し上げることは、たいてい後からでも間に合いますから。それに、聞いているほうが楽しゅうございます。困りごとをお持ちの方には、すぐに何かできるとは限りませんけれど、聞くだけならいくらでもお付き合いいたします。……ああ、そうそう。朝は早うございます。茶を淹れて、湯気の消えるまで眺めてから机に向かう。これだけは、どれほど立て込んでも崩さずにおります。妙な話とお思いでしょうけれど、あの時間があるとないとでは、その日の顔つきがまるで違うのでございますよ。この程度でよろしいでしょうか。長くなってもいけませんね。それでは、どうぞよしなに。
来歴
生涯の記録は宇宙新暦の暦法で始まり、共立公暦に移る改暦を挟んで現在まで続いている。
焔を継ぐ
炉の火を守る役目は、生家が代々引き受けており、麗華瑞の寝かされた部屋にも火は入っていた。四つを数えた年、留守を任された幼い手が薪の継ぎ足しを忘れ、炉の底で熾が白く痩せる。祖母は叱る代わりに、消えかけた熾に息を吹き込む手順を無言で見せた。掌に伝わった熱の記憶は、後年の稽古の底にも残っている。二十年を過ぎた頃、天璇恒星域の修行場へ入り、焔霊術の実技を課程の順に踏み始めた。最初の一年は火の扱いから遠ざけられ、呼吸の法だけが日課を占める。掌の内側で小さな焔を保つ稽古に移ってからは、量の加減が身体に馴染むまでに一世紀ほどの時が流れた。焼けた掌の皮が剝がれるたび、師は加減の目安を数で示す道を避け、翌朝も同じ課題を出している。
実技と口述の審査を通って天華巫師の位を得た後、修法は変換の振動を押し上げる方向に定まった。放出の速さで諸流の先頭に立つ焔鬼琉の課程は、制御を外れた熱が術者自身を灼く危うさを抱える。門人の名簿から名の消える理由は破壊力を求めて霊格の段を飛ばした結果に集まっており、華瑞は段の順序を守りながら、精気の絞り方を測る稽古に日課の大半を充てた。精気の環を身の内側へ閉じたのは、修法が一つの区切りに達した夜である。老いの進みは精気の散逸の速さに沿うため、火の系統を極める道は寿命との競り合いを伴う。施術の卓に横たわった時点で、華瑞は自身に残る年数を符の反応から読み取っていた。環が組まれた瞬間、外界の気脈から切り離された身体には、風の当たる感覚だけが薄く残ったという。以後の千数百年、環の補正は施術者の手に預けられたままである。天の理に戻る道を残す方式を連邦が選んだ以上、環はいつでも解ける。解く選択が今日まで先送りされてきた理由について、本人は口を閉ざしている。
辺境の灯
辺境の恒星域に回された務めは、貢納の割り当てを検め、霊場の傷みを現地で確かめる仕事であった。中央の帳簿に載る数字と現地の倉に残る量は桁の一つ分だけ食い違い、差の出た村へ二度目の足を運ぶ習慣が、赴任の初めに作られている。帳面を閉じてから住民の話を聞く手順も、同じ頃に定まった。数百年の間に踏んだ集落の数は記録から漏れており、当人の覚えている村の名も、今では数えるほどに減っている。資源の配分は中央に近い恒星域へ厚く寄り、辺境の倉は端境の季節ごとに底を見せた。是正を求める上申は幾度も送られたものの、返る決裁は、いつも次の会期に回された。変換の脈が地表を破ったのは、赴任の年月が半ばに達した頃である。噴き出した熱の帯は谷筋を伝って集落の裏手に迫り、中央の増援が届くまでには数十日の航程を要した。華瑞は退避の順路を先に決めてから脈の口に立ち、焔で編んだ壁を谷の幅いっぱいに立ち上げる。壁を保つあいだ精気の蓄えは底に近づき、掌の皮は幾度も剝がれた。住民の最後の一群が尾根を越えた時点で壁は落ち、谷は熱に呑まれている。焼け跡に残ったのは家屋の礎であり、人の側の名簿は、赴任の前と同じ数のまま閉じられた。顛末を綴った検分の写しは帝国の巫師団を経て皇統の書庫に納められ、後年、推挙の理由を組む段で最初に読み返される書き付けとなる。
湖水の疫
湖水の域を震源とする霊的汚染が広い範囲に疫病を招いた年、大炎帝国の皇帝・蒼焔静は巫師団を編んで浄化の指揮を執った。辺境の任にあった華瑞は召還を受け、汚染の濃い岸辺の区画を割り当てられている。岸には病者の仮小屋が幾棟も並び、術者には枕元を一人ずつ回る当番が課された。焔の熱で気を灼く手順は病者の身体を痛めるため、術者は出力を絞ったまま長い時間を保つ工程に切り替えた。湖の水を媒体に取り、変換の振動に浸透の振動を重ねる型が浄化の場で形を得ていったのも、この年月にあたる。華瑞は岸辺の区画で幾度も型を組み替え、灼く強さに癒す速さを合わせる釣り合いを、掌の感覚で測り続けた。組み替えの手控えは巫師団の記録に綴じられ、後の課程を組む土台となっている。汚染の源は湖底に沈んだ気脈の澱にあり、水を隔てた位置から術を通す試みは幾度も跳ね返される。華瑞は湖に潜り、魂の一部を燃料に替える技を初めて解いた。水を伝った熱が澱を裂き、岸の巫師団は退いた気の隙間に浄化の術式を差し込む。引き上げられた身体は数日にわたって高熱に沈み、幻の内側には焼けた谷が繰り返し現れた。焔喰らいの病が生活に影を落とし始めたのは、この発作からである。皇帝は快癒を待って褒詞を下しており、以後、帝国の皇統は彼女の名を府へ通す機会を計り続けた。
中央への召し
中央へ召し出されたのは、鎖国の末期にあたる。皇将丞の任にあった麗雲翔は、
転移者の血を引く出自から偏見を浴び続けた人物であり、辺境恒星域の疲弊を是正の筆頭に据えていた。初対面の席で差し出されたのは、華瑞が二百年前に送った上申の写しである。処理の遅れを詫びる言葉は省かれており、代わりに、同じ案件を通すための手順が上から順に示された。府内の連絡調整を差配する立場が動かせるのは書類の順序までであり、雲翔の差し出した道筋も、滞った上申を審議の卓に載せる一点に限られている。
昊龍の乱の記録を読むよう勧めたのも雲翔であり、統治の腐敗が版図を割った筋道は、官の編んだ写本を通じて頭に入った。皇統からの推挙が府に届いたのは、鎮邦司の席が空いた年である。将星の候補は構成国の統治者もしくは学術機関の推薦を起点とし、環星羅府の審査と投票を経て定まる。大炎帝国の皇統は湖水の浄化の記録に辺境の検分の写しを添え、政務の実績を推挙の骨として挙げ、軍事の素養にも一節を割いた。審査の席で長く論じられたのは、増援の届く前に単独の判断で壁を張った件である。中央の統制を離れた術の行使を咎める意見が並び、住民の名簿を守り抜いた事実を採る意見も同じ数だけ立った。票の帰趨は、最後の一巡まで動き続けている。
雲焔峰
雲焔峰の頂は、年を通じて雲の層に閉ざされている。投票の期日を前に、麗華瑞は供を退けて峰へ登り、雲の内側で幾夜も瞑想に沈んだ。変換の脈が地殻から噴き出す要衝であり、玄陽真道の修行の場に選ばれてきた土地でもある。七夜目の未明、雲が渦を巻いて視界の抜けた瞬間に、気脈を伝った影が岩の上に結んだ。統合幕府の評定に巣くう腐敗を糾弾して兵を挙げ、捕縛の後に結界へ封じられた軍大名の意識である。影は名乗りを省いており、赤い虹彩を長く見据えてから、三つの試練を口にした。向かった先は、幕府が航路の要衝に構えた番所の廃墟である。風化した天華文字の残る石垣の前で、華瑞は乱の記憶と向き合い、同じ過ちを断つ覚悟を問われた。蒼焔星の地下に降りた際には、
変異キメラの系統に連なる妖魔が異種族との共存そのものを条件に据えている。
力の行使を措いて対話で道を拓く手順は、封印の底から世を見上げた者の視点に立って、ようやく像を結んだ。天華神殿の霊石に掌を当てた瞬間、変換の振動だけが突出して跳ね返り、肉体を灼く熱が全身を走ったと伝えられる。試練を経て峰に戻った華瑞の前に、守護軍を率いて乱を鎮めた蒼嵐の霊が現れた。学んだ上で戦場に立つ覚悟の有無を問う声は、昊龍の課した問いを裏側から反復するものである。戦場では冷静な心が要り、熱い魂も同じだけ要ると告げた将は、そのどちらも磨り減ると付け加えた。磨り減った後に何が残るかが本性であると言い置いて、姿は夜明けとともに消えている。授けられたのは陣の運びであり、味方の損耗を先に計って刃を配る手順が、湖水で組んだ癒しの型と噛み合った。理想に殉じれば現実が崩れ、現実に徹すれば理想が枯れる。下山の朝、華瑞は峰の霊場に符を一枚納め、書き付けた字は昊龍の檄文の一句であった。
開国
共立公暦600年、投票は決し、麗華瑞は龍衛大将の席に着いた。鎮邦司の長として内政を所管し、構成国の間に立つ調整を引き受ける務めが、龍衛軍の先頭に立つ職掌と一つの席に束ねられている。辺境恒星域の是正は、就任の年から手を付けた案件であった。貢納の割り当てを検める人員を域ごとに置き、霊場の補修を公役の順に組み込む手続きが、鎮邦司の卓で組み直される。雲翔の掲げた筋を引き継いだ形であり、決裁の滞りを断つ仕組みも同じ年月のうちに整えられた。就任からの五十年は開国の是非を巡る議論が沸騰した時期にあたっており、保守の側は抵抗を強め、改革の側は焦りを募らせて、合議の席は毎度もつれる。雲翔が倒れたのは、天河機の再稼働に向けた最終の詰めが始まった年である。病床で交わした最後の会話は記録から失われ、翌朝、華瑞は再稼働の日程を合議に諮っている。同650年、境界の番所は往来を検める役目に戻り、閉ざされていた門が開いた。翌年、七道将星の互選によって当代皇将の位が定まり、合議の主宰は麗華瑞の務めとなる。票を集めた理由は、五十年をかけて鎖国の解除を合議に通した実績にあった。門の外側の版図について府が握っていたのは、番所の帳面に残る往来の記録である。通商の取り決めを一つずつ積み上げる方針が固まり、懐遠司の使節は境界の外縁で接触を重ねていった。
星海を灼く
共立公暦732年、
ユミル・イドゥアム連合帝国の過激派が皇帝の制止を押し切って出航し、玄羅の境界航路へ艦隊を差し向けたところから
湧羅戦争は始まっている。戦時令の発令に聖裁を下した時点で七道将星の指揮権は各自の部隊に移り、麗華瑞は龍衛軍を率いて接舷の局面に備えた。合議の席で交わされた言葉は、記録の残る限りで数えるほどである。開国を進めた当人が、開国のもたらした最初の刃を受け止める段になったのだと、後年、当時の司丞が書き残している。軌道に取りついた分遣隊の掃討では、投入の順序が指揮所の議題に上がった。先に降りた隊の被る損害は、算盤を弾くまでもなく明らかである。華瑞は数刻のあいだ図に目を落とし、それから順序を口にした。声は平坦であり、記録係の筆も同じ速さで動き続けている。
掃討の完了した報が届いた後、彼女は旗艦の私室に退いており、扉の前に立った副官は、三度の呼びかけを諦めて持ち場に戻ったと手記に書いている。翌朝、私室から出てきた顔に前夜の痕跡は残らず、順序の判断を本人が語った場面を記した文書も、府の記録から漏れたままである。終盤、指揮系統を断つ一撃を自ら引き受けた。龍炎旋風の渦が敵の重戦艦を呑み込み、反転攻勢の下令を見届けた直後、甲板で膝を突いた身体を高熱が襲う。焔喰らいの発作であり、意識の朦朧とする状態は数日続いた。勝利の式典の席は空のまま置かれ、幻覚の内側で彼女が見ていたものについては、看護に当たった侍医が口を閉ざしている。病床から政務に戻った華瑞が最初に発した指示は、捕えた帝国軍人を礼をもって送り返せというものであった。
文明共立機構が連合帝国を裁く構えを見せた際にも異議を申し立て、両軍の名誉を保つ一点に講和の条件を寄せている。降下の順序を記した図面は、現在も私室の棚に納められたままである。
人物
長い黒髪と赤みの差した虹彩を備え、瞳の色は焔喰らいの発作に応じて濃さを変える。平時にも揺らぐ焔を映したかすかな光が虹彩の奥に残り、対面した者が最初に目を留めるのは、この一点である。装いは深紅を基調とした長い外套であり、裏地には天華文字の刺繍が施されて、歩みに合わせて翻る裾から字の一端が覗く。外套の下には五行の紋様を縫い取った装束をまとうものの、全容が人目に触れる機会は戦場か儀式の場に限られ、平素は外套に包まれた姿で通した。外面に漂う穏やかさは、生まれ持った気質から離れた、歳月が鍛えた抑制の産物である。千五百年を重ねる間に、同じ時代を歩いた者たちを幾度も見送ってきた。親しい者が老いを深め、やがて息を引き取る過程を繰り返し目にするうちに、感情を表に出すことの痛みが骨身に刻まれ、表情の裏に感情を畳む術が身についている。側近の中には穏やかさを慕う者がいる一方、内側の読めなさを畏れる者もおり、評価は二つに割れたままである。笑みを浮かべる頻度は高く、その笑みが眼の奥まで届いていると感じた者は稀であると、ある側仕えの回想に記されている。
戦場では感情の抑制が判断の冷たさに転じる。部下の命を数として扱う手つきと、数の一つひとつに重みを覚える感性が同居しており、矛盾を抱えたまま指揮を執り続けてきた。作戦の終わった後に私室で沈黙に沈む時間は長く、面会の申し出を後回しにする癖も、この習性から生じている。外交の席では穏やかな態度と洞察が各国の指導者の信を集めた一方、退席の後には長い瞑想が続き、羅雲鏡都の庭園で風に吹かれたまま佇む姿が幾度も目撃された。庭園に立つ時間は、過去の判断を繰り返し検める作業に費やされる。焔喰らいの病は、周期をもって生活に影を落とす。兆候が現れると高熱が数日続き、幻覚の内側には過去の戦場と喪った者たちの姿が浮かぶという。発作の間は政務を皇将丞の蒼鳳麟に委ね、私室へ籠もって回復を待つ。重い時期には身体の内側から灼かれる痛みが走り、巫術の行使にも手が届かなくなる。精気の環が命を留め置くため、病が死に至る筋道は断たれている。それでも苦痛そのものは残り、発作を重ねるたび消耗が積み上がった。上層部の内側では持病の存在が共有されている一方、公にはされておらず、発作中の不在は祈祷のための斎戒として説明されてきた。三つの主要な種族の間に生じる摩擦を調停する際には、特定の側に肩入れする形を避け、双方の誇りを保つ落としどころを探る姿勢を貫いている。匙加減が常に正しかったかどうかは、本人にも判じがたい。昊龍の理想と蒼嵐の現実主義を同時に背負った以上、片方に寄せた判断は、必ずもう片方を削る。削った分の重さを数え直す習慣が、庭園の時間を長くしてきた。
戦闘能力
火の系統に偏った術理と、その偏りが術者本人に返す代償が、麗華瑞の戦い方を形づくっている。
火行の理
麗華瑞が修めたのは、精気を瞬時に熱に移す技法を核とする
聖道巫術の一系統である。放出の速さで諸流の先頭に立つ焔鬼琉の課程を踏み、単発の破壊力は連邦の術理のうち最も高い水準に置かれた。近い間合いでは刃に焔を纏わせて斬撃を通し、離れた位置からは焔を鞭や渦の形に練り上げて敵の隊列を薙ぐ。霊符を媒介とする術式が、届く距離を最も長く取る手立てにあたる。湖水の浄化で組み上げた型は蓮癒術の系統に連なり、変換の振動と浸透の振動を一つの術式の内側で拮抗させる。攻撃の裏側で癒しの気脈が走るため、味方の損耗を抑えたまま戦線を押し上げる運びが成り立つ。気脈の揺らぎを読む感応の深さも戦場の判断を支えており、敵の陣形の変化と砲撃の軸線を短い先まで掴んで、部隊配置の修正が即座に下される。
火の系統を主軸に据えた戦い方には、瞬間の火力と、焔そのものが敵の士気に与える圧迫という二つの強みがある。障壁を立てて防御に転じる運用も、同じ属性の内側で成り立った。長時間の行使は霊力の蓄えを速く削り、制御の綻びは味方への延焼を招く。湿潤な環境と水属性の対抗術式の前では威力が目に見えて落ちるため、地形と敵の属性を読んだ上での術式の配分が、行使の前提に置かれた。最も重い代償は、自らの魂を消耗して最大級の火力を引き出した際に焔喰らいの病が進む点にある。高熱と幻覚に加えて身体の内側から灼かれる痛みが発作として現れ、進んだ病状は、その段で固まったまま推移する。華瑞は術式ごとの負荷と自身の閾値を精密に見極めながら、行使の可否を戦場で判断し続けてきた。
主な特技
焔凰乱舞(えんおうらんぶ)
説明: 両手に焔を灯し、舞の足捌きで連続の斬撃を繰り出す。刃が弧を描くたび軌跡に焔が残り、複数の敵を同時に切り裂く。踏み込みの拍は焔霊舞の型を下敷きとしており、足の運びが刃の間合いを決める。
特性: 軌跡に残った焔が敵の視界を惑わせる副次の効き目を生む。舞い続けるほど術者の体力は削られ、長引かせた分だけ自らの首を絞める諸刃の技にあたる。乱戦での使用には、退き際を先に決めておく手順が伴う。
火焔障煌(かえんしょうこう)
説明: 術者の前方に焔で編んだ壁を立ち上げ、飛来する物体を受け止める。壁面に触れた者に高熱が伝わり、突入を図る敵は押し返される。焔の色は精気の純度を映し、青みの強い層ほど熱の伝わりは鋭い。
特性: 堅牢さは注ぎ込む精気の量に比例し、維持の時間が延びるほど消耗も嵩む。壁ごと前方へ押し出して敵の退路を塞ぐ応用は、麗華瑞の代で編み出された。艦隊戦では層を幾重にも重ね、砲撃の一斉射を跳ね返す用法が採られている。
龍炎旋風(りゅうえんせんぷう)
説明: 焔を渦巻かせて竜巻の形に練り上げ、周囲の敵をまとめて呑み込む。巻き込まれた側は灼熱と暴風の二重の打撃を受け、隊列は崩れに向かう。渦の径は精気の注ぎ方で伸縮し、狭めた場合の貫通力は艦の装甲にも届く。
特性: 発動に要する集中の度合いは他の術式を大きく上回り、強風の下では軸が揺らいで制御を逸する恐れが生じる。
湧羅戦争で敵の重戦艦に向けた際には、術後に焔喰らいの病の発作が引き起こされた。
焔鞭鋭撃(えんべんえいげき)
説明: 手から伸びる焔の鞭で遠方の敵を打ち据える。鞭は触れた瞬間に灼熱を叩き込み、間合いの外にいる相手を牽制する。鞭身の長さは精気の送り出しに応じて変わり、複数条を同時に操る形も課程に含まれた。
特性: 射程の長さゆえに乱戦では味方を巻き込む危うさが付き纏い、軌道を精密に操るには相応の修練が要る。兵站の船腹を焼いた接舷の作戦では、警備を突き崩す切り込みの一撃に用いられた。
鳳凰烈閃(ほうおうれっせん)
説明: 霊力を極限まで練り上げ、焔で鳳凰の形を象った巨大な力場を呼び出す。翼が広がると同時に無数の焔刃が扇状に放たれ、前方の広い範囲を薙ぎ払う。展開の途上では周囲の気温が跳ね上がり、味方の退避線が先に引かれる。
特性: 一度放てば霊力の大半が消し飛ぶため、行使は戦闘一度につき一回に限られてきた。形を保つ工程は精神を極度に研ぎ澄ます要求を伴い、集中の途切れが術式の暴発を招く。
焔心魂耗(えんしんこんこう)
説明: 魂の一部を燃料として焔の出力を跳ね上げる、禁忌に近い技。周囲一帯を焼き尽くす火力が一瞬で解き放たれ、放出の口を絞る工程は省かれる。永生の環に閉じた精気を直接削る形を取るため、施術者による補正は術後の数日を要した。
特性: 行使の後には焔喰らいの病の症状が噴き出し、高熱と幻覚が数日にわたって術者を苛む。魂の消耗は不可逆であり、使うたび、差し出したものは失われたまま残る。麗華瑞は切り札の語を避け、「最後の借金」の言い方を用いた。
語録
「お茶が冷めるのを眺めるのが好きなのです。湯気が立ち昇り、やがて静かに消えていく。あれは時間の形をしていると思いませんか」
「若い巫師に言うことはいつも同じです。『術を覚えるより先に、術を使わずに済ませる方法を考えなさい』と。聞いてくれた者は、まだおりませんが」
「交渉の席で最も手強い相手は、怒っている者ではございません。笑っている者です。怒りには形がありますが、笑みの裏は底が見えない」
「料理は正直でよろしい。火加減を間違えれば焦げる。味付けを誤ればまずい。政治もこのくらい素直であれば、どれほど楽なことか」
「花を活けるのは苦手です。どう挿しても一本だけ横を向く。直そうとすると別の一本がそっぽを向く。国の治め方に似ている、と言ったら花師に怒られました」
「炉の火を絶やさぬのが生家の役目でございました。千五百年、まだ一度も消しておりません。もっとも、途中から人に任せておりますが」
「手紙を書くのは好きですが、届いた返事を開けるのには毎度少し勇気が要ります。相手が何を思っているか、知るのが怖いのではございません。自分の言葉が相手にどう届いたか、それを知るのが怖いのです」
「眠れぬ夜には星を数えます。数え終わる前に夜が明ける。いつも途中で終わるところが、星の良いところです」
「子供に名前の由来を聞かれたことがございます。答えたら、『変な名前』と言われました。あの子の正直さは、私には眩しうございました」
「若い頃は、決裁の判を押すたび指が震えました。今は震えません。震えなくなったことのほうが、よほど恐ろしゅうございます」
「雨の日に傘を差さずに歩くことがございます。濡れると叱られますが、水の冷たさが肌に触れる感覚は、生きている証のようで手放しがたいのです」
「我が焔、鳳翼と成りて星海を灼かん。全軍、我が背を踏みて征け。退路は燃やした、前にしか道はなくてよ」
「もう嫌。四百年、書類が減った日が一日でもあったかしら。……ああ、この決裁の仕組みを作ったの、私だったわね。自業自得だわ」
「黙れ。……いえ、失礼いたしました。ただ、その損耗率の中に、私に不味い握り飯を食わせた馬鹿がいるの。……まだ、お返しもしてないのよ」
「……やめてちょうだい。戦死者の名前を、そんなふうに会議の駒みたいに並べないで。お願いだから」
「……泣いてないわよ。煙が目に沁みただけ。火を扱う女の宿命なの。だから、そんな顔で見ないで」
エピソード
- 決裁の手順を簡略にする案を、自ら書いて提出する。自分で定めた順路を半年かけてたらい回しにされ、修正の要ありで戻ってきた。付箋を握りしめたまま、しばらく口をきかなかった。
- 名を伏せて天華星辰祭の武術大会に飛び入り出場。焔の使用を禁じられ、名も知らぬ少年に足を払われて初戦敗退。以後、規定の不備について語り出すと止まらない。
- 開国後に取り寄せた異国の炭酸紅茶をいたく気に入り、これほどの品を独り占めするのは惜しいと寺に奉納する。その夜、太玄が降臨し、二度とやるなと警告を下した。ここで震え上がるのが普通の反応だが、「神が直々に足を運ばれるほどの飲み物」と解釈。翌週、銘を大書した木札まで添えて再奉納した。濁流混じりの怒りの雷を頭から浴び、外套が炭になった。曰く、『玄羅の水に勝るもの、天が下に在らず。汝、舌を洗ひて出直せ』。なお、味の評価は今も変わっていない。
- トローネ皇帝からの親書が届くたび、封を切る前に深呼吸を三度する。中身は大抵、次の土産の催促と近況の雑談である。返信の下書きは毎回、五通ほど破り捨てられるという。
- 羅雲鏡都の霊社の猫に、なぜか嫌われている。干した小魚で買収を図るも魚だけ持ち逃げされ、猫は隣に座った書記の膝へ。書記は平謝りしている。
- 装備の更新を巡って天雷元帥と口論。三日のあいだ廊下ですれ違うたびに顔を背け合った末、仲裁役が双方の言い分を並べてみたところ、中身はほぼ同じだった。先に噴き出したのは、こちらである。
- 泳げない。水練の課程で沈み、焔の術で浮こうと図って池を沸かし、魚を全滅させた。教官の説教は半刻に及んだらしい。
- 骨牌の通算成績を、神機将軍にすべて把握されている。都合の悪い議題が出るたび負け越しの数字をちらつかされ、そのたび渋々譲歩しているとか。
- 皇将丞の小言が長引いた日、面倒になって「では貴殿が皇将をやりなさい」と言い放つ。真顔で辞退された。気まずい。
- 夢に蒼嵐の霊が出てくる晩がある。判断の甘さを延々と説教され、翌朝の機嫌は目に見えて悪い。側仕えは、その日の茶を濃く淹れる。
- 世間では穏やかな元首として通っている。実際、怒鳴ることは滅多にない。ただし「そう」と短く返された司丞は、日暮れまでに書類を三度書き直した。
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最終更新:2026年09月02日 16:38