学園イベント「七不思議討伐戦」
七不思議討伐戦
『戦うRPには興味があるけど、模擬戦ほどがっつりやるのは気後れするな。難しいな』という人へ気軽に後腐れなく殴れるサンドバッグが用意されました。
それが七不思議討伐戦です。
七不思議と戦ってみようというイベント企画になります。
七不思議って?
MM学園には七不思議があります。
これから日常スレッドや個別スレッドなど、様々な場で思い浮かべられ、あるいは遭遇することがあるかもしれません。
なかには生徒に対して有益な七不思議もあるでしょう。
しかしながら生徒に有害な七不思議は間違いなく存在しました。
そのひとつが「学園敷地内で不意に出現する入り口のない謎の建物」です。
まだ名前はありません。今後誰かがどこかのスレッドで名前を知るかもしれません。
イベントの目的は?
簡易的でお手軽な戦闘RPをすることができます。また、一般生徒を守るRPも自由に行えます。
また、他生徒の戦うRPを見ることができるでしょう。今後のRPに役立てていただければと思います。
先日の『【イ】私立MM学園レリックハンター24時』では多くの生徒が新しいアイテムを取得しました。これらのなかで武器になるもの、戦いの役に立つものは少なくないでしょう。そういったアイテムや新しいパラドクスのお披露目や、RPの方向性、新しい人間関係の開拓にいかがでしょうか。
イベントの概要は?
攻撃するRPをし、ダイスで効果を求めるスレッドを用意します。ひとつのスレッドで完結する形式を想定しています。
イベントへの参加は無制限で、学園生徒ならどなたでも何回でもRPをすることができます。
また、無事に討伐が完了したら七不思議は消滅します。wikiに討伐済みの七不思議として記録されるかもしれません。
いつやるの?
9/26(日) 21時より開始予定です。当日の状況により多少前後するかもしれませんがご了承ください。
今回戦う相手は?
「学園敷地内で不意に出現する入り口のない謎の建物」です。
謎の建物の壁に亀裂が入り、亀裂から異形の怪物が多数出現して一般生徒を襲おうとします。もし実際にスレッドを運用するまでにこちらの七不思議に設定が追加された場合、採用することがあります。
討伐戦の演出に難しい設定は採用を見合わせることがあります。ご了承ください。
現在判明している設定
- 謎の建物の周囲には昆虫植物を問わずすべての生物の気配がありません
- だんだんと目撃例が増えてきています(日常スレッド等で遭遇することがあるかもしれません)
質問したいよ or 設定追加したいよ
三隅彩乃(@232Ayano)までご連絡ください。
チェインパラドクス内でのお手紙でもTwitterのDMでも大丈夫です。
討伐完了
多くの生徒の奮闘により、入り口のない建物は完全に消滅して二度と出現することがなくなりました。
事件当時の一般生徒の様子
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1~10 |
1
「うわ!?」
開いた窓の向こう側にいた一般生徒は、己に向けて飛びかかる生物に腰を抜かし、そしてそれが途端に姿を消したことにもまた驚きました。何が起きたのかは声を聞いてようやく理解します。誰かがあの生き物を追い払ってくれたのです。
「……」
恐る恐る窓から外を覗き込んでみると。真下に大きな大きな黒いシミがありました。番長が守ってくれたと、遅れて理解しました。あれは確か白の番長の声だったはずです。
2
「あんた、それが痛くないのか……?」
突然の自傷を目撃して、男子生徒は女子生徒をまじまじと見ます。大きな鎌と傷ついた左腕、たなびく包帯。しかし傷口から血液でなく炎が吹き出したことで男子生徒は目を丸くします。
「燃えてる……」
でも、獣は女子生徒を待ってはくれません。ぐるりと取り囲んで、一斉に飛びかかればいかに少女が不思議な力を使えるとしてもひとたまりないでしょう。そのはずでした。
爆音にあわてて目をつむった男子生徒がゆっくり目を開けていくと、小さく飛び散った敵の残骸が見えました。
3
「あ、おい……」
一般生徒のひとりが、黒い熊からまるで逃げようともしない様子の生徒を見つけて声をかけようとします。馬鹿なことはよせと、一緒に逃げろと。なぜなら人間は普通、熊なんかには勝てません。
だというのに、直後に見せられた光景にはただぽかんとするしかありません。
「熊を殴ったァ!?」
ほぼ裏声でした。人が熊を殴ったこと、さらにその熊を吹き飛ばしたこと。こんなのもう驚くしかないじゃないですか。
4
え、銃?
庇われた一般生徒は襲いかかる怪異と、守ってくれるように立つ生徒の得物を見て声をこぼします。なんせ化け物と銃です。こんなの映画の中でしか見たことがありません。しかし銃口から連続する発砲音は作り物の比ではなく、現実だと思い知らされます。
「やばい……映画みたい」
サブマシンガン二丁。まるでいつかのハリウッド映画じゃないですか!
発砲音。マズルフラッシュ。硝煙の匂い。銃口が往復するたびばたばたと化け物が倒れていく光景に、心躍らないわけがないのです。
5
「はぁ?」
黒い生き物の姿を見ていた生徒は情けない声をあげます。なぜって突然それらが一斗缶の姿に置き換わったのです。さらにさらに惑星の姿に置き換わっています。科学の教科書でしか見たことがないような光景がありました。土星、水星と名前を唱えることもできます。
直後に爆音、爆風。
驚きと衝撃に生徒は知り餅つき、あまりの光景に手で顔を覆って笑いだしてしまいました。
6
窓から顔を出していた一般生徒は、不意に横を向いてぎょっとします。なんと校舎の壁を人が走っているではありませんか。しかも窓枠に足をかけているわけじゃありません、壁から垂直に立って走っているのです。いったいどういうことなのでしょう。
「ど……ど、……」
どういう。などと言うより先にすぐそばで何かが握りつぶされていました。黒い化け物。生徒はようやく己の命が危機的状況に合ったことを思い知るのです。
7
「吸い込まれてる……?」
そのとき生徒は不思議な光景を目にしました。なんと地を駆けていたものの体がふわっと浮いて、女子生徒の腕へと吸い込まれています。
どうやって? などと問うのはきっと野暮なのでしょう。生徒にわかるのはその驚くべき吸引力のみです。
現実感のない光景にしばらくぼうっとしていましたが、直後に女子生徒の腕が傷つけられる様子を見て顔面を蒼白にしてしまいました。
8
教室の奥で友達と抱き合っていた生徒は不意に黒い生き物たちの動きが鈍るのを悟ります。まるで目眩でも起こしたかのようにふらつき、ときには転倒。またあるときは胸を掻きむしっていました。
「なに……?」
ぽろっと口をついて言葉でしたが、その直後にもっと問いたくなる光景がありました。獣が光線を受けてばたりと倒れていくのです。
9
ふと、緑のクラスの一般生徒は空を見上げて、そこに馴染み深いものを見つけました。電子回路のような軌跡があったのです。しかしよく見れば回路とは違って折れ曲がっていて、梯子ともどうやら違う。
「……もしかして」
それがあみだくじだと気付くころには、真下に大穴ができて黒いタールのシミができていました。
10
グラウンドから逃げ出す体操服の生徒はふと何かとすれ違ったのに気づきます。
すれ違う? それはおかしいじゃないですか。一体誰があの黒いライオンに向かうというのでしょう。信じられない思いで振り返った生徒は、小さな小さな悪魔を見つけます。
「……いた、ほんとにいた」
大きな敵と小さな味方。生徒は悪魔とその主である少女の無事を祈って、校舎へ駆けていくしかできません。聞こえたうめき声に唇をかみしめながら。
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11~20 |
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気合のこもった声とともに一般生徒の手から武器が放たれます。果たしてそれはゆるい放物線を描きながら眼下の黒い生物の群れへと落ち、そして爆発的に熱と風を撒き散らしました。
校舎三階の教室に集っていた生徒達は喜色を露わにしています。ディアボロスではない自分たちが一矢報いることができた、それのなんと嬉しいことでしょう。
ですが、窓際にいた生徒は突然勢いよく後ろへ引き倒されました。直後、生徒の頭のあった位置を化け物の牙が薙ぎ、しかして小さな悪魔に蹴り飛ばされていくのです。
「ごめん……助かった」
「……そういやなんで都合よく手榴弾がこんなにあるんだ?」「趣味で作ったってよ」「あいつ実はヤベーやつなんじゃね?」
12
「ウワー!」
男子生徒は走っていました。一心不乱に走っていました。なにせ授業でグラウンドを走っていたら突然黒い変なのが出てきて襲いかかってきたのですから。それはもう命ある限り全力で走ります。
「ウワー!!」
ですが生徒は前方から押し寄せてくるものを見て、さらに叫び声をあげさせられました。白い骸骨が武器を振り上げて走ってくるのです。これはもう進退窮まってますね。
前方からは鋭利な刃。後方からは剣呑な爪。生徒は絶望の表情を浮かべて蹲ります。誰でもいいから助けてくれと涙さえ滲ませて。
しかし救いの手はありました。いいえ、白の刃こそが救いでした。骸骨の振るう剣は生徒へと襲いかかろうとしていた獣の爪を断ち切ったのです。
13
転んだところに駆けてくる黒い獣達。ああ、もうだめだと女子生徒は目を閉じます。
目を閉じて、しばらくと閉じていて、一向に何も起きないことを不思議に思っておそるおそる目を開けてみると、なんとそこには獣の残骸ばかり。一体何が起きたのかと周囲を見回すと、黒い獣達が銃か何かで撃たれたようにどんどん残骸に変えられていくじゃないですか。
「誰かいるの……?」
遠くから撃っているわけではないようでしたが、発射音や息遣いはまったく聞こえません。
でも、そこに誰かがいることはわかりました。誰かが敵を倒していることだけはわかるのです。
「あり、がとう」
14
初めに、その生徒は蛸が現れたのかなと思いました。グラウンドで突然細長い円錐形のものがうねって伸びて、黒い生物をつぎつぎと押さえつけてしまったからです。
でもよく見ればそれはまるで木の根のようでした。上の方を見れば枝と葉があり、間違いなく樹木そのものでした。木々の根は枝は、幾重にも複雑に折り重なって敵を押さえつけてしまいます。
「いったい誰が……?」
どんなすごいディアボロスがやったのだろう。生徒は木々の主を探します。するとなんだか木々の枝の伸びる先に、女の子がいました。女の子は木々に怒鳴っていました。
「あれは違いそうだなぁ」
15
小さな女の子が黒い獣に食べられてしまう!
一般生徒はぎゅっと目を瞑り、凄惨な現場から顔を背けました。血が地面を汚す音、肉の裂ける音が一般生徒の精神を苛みます。なぜ助けなかったと、なぜ見捨てたんだと批難されているように聞こえてしまうのです。
でもしょうがないじゃないですか。あんな奇怪な獣の前には小さな女の子も自分もただの餌でしかないのですから。
やがて咀嚼音がやみ、一般生徒は恐る恐る目を開きました。女の子の亡骸なんて見たくもないですが、せめてもの贖罪にと思ったのです。
「は……?」
何事もなく立っている少女と、地面を汚す黒い粘液が見えて、生徒から呆けた声が出てしまいます。実際の捕食者は女の子のほうだったのです。
16
あ、死んだわ。父ちゃん母ちゃんごめん。
廊下の端まで追い詰められ、真後ろで黒いゴリラが拳を振り上げたとき、一般生徒はふと両親のことを考えてしまいました。
ですが直後の展開で一気に現実へ引き戻されます。ゴリラが真横に吹き飛んで壁で弾けたのです。
目の前には女子生徒の背中、空中に浮かび上がるディスプレイ、その奥からやってくるたくさんの黒い狼、そして。
「魔法陣……?」
たくさんの魔法陣がありました。
父ちゃん母ちゃん、俺まだ生きてるわ。あっという間に廊下中で標本のように槍で縫い留められた敵を見て、生徒はぽろりと言葉をこぼすのでした。
17
いまに襲いかかるはずだった黒い獣が急に進路を変えたので、男子生徒は助かったのだと安堵しました。
そして安心するような状態ではなかったことをすぐに思い知ります。なぜなら近くで女の子に獣が群がっていたからです。尋常な集まり方ではありません。その場にいたすべての獣が呼び寄せられていくような、まるで見えない手が無理矢理に掴んでいくような有様。
鋭い後悔が男子生徒の胸を掻きむしりました。なぜ自分は安心してしまったのでしょう。あそこで小さな女の子が襲われたというのに!
ですが。
「うそだろ……」
その女の子は血まみれになってよろめいてなお、ずっと獣達と戦い続けるではありませんか。
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運動着のままグラウンドから逃げる生徒は、ふと視界に赤色を見つけました。すわ誰かの血液かと思えばそうではありません。赤色は風のような速さで動いていて、ついに生徒とすれ違います。
「……いまの」
一瞬見えた白、赤、そして光。白と赤は巫女装束に違いなく、光は陽の光に照らされた刃に違いありません。
振り返れば、もう刃が黒い獣の頭へ深々と突き刺さってるではありませんか。視界に映る黒い獣と紅白の獣。しかして紅白の獣は随分と可愛らしい女の子の姿をしていて、自分たちに逃げるよう呼びかけていました。
19
黒い獣の飛び掛かる様子が窓越しに見えて、小学部の生徒は頭を抱えて悲鳴を上げました。
一秒後には窓が突き破られ、あの大きな牙に自分は食べられてしまうのでしょう。
「え……?」
しかし、実際の生徒は食べられることなく、ただぽかんと驚愕に塗りつぶされていました。獣もまた驚いています。
黒い大きな腕がありました。獣のようにねばねばした質感でなく、つるりとした金属のようなそれでした。
腕は獣を握りつぶし、窓が飛沫で黒く汚れます。小さな白髪の女の子が汚れの隙間から見えていました。
20
その生徒にはすべてがスローモーションのように見えました。
自分めがけて勢いよく飛びかかってくる黒いワニ。大きく開いた顎。白く並んだ鋭い歯。そして、ワニを覆い隠すように翻った黒いコート。
誰、なんて問う間もありません。ただ息を呑むことしかできません。
凄まじい踏み込みで舞い上がる砂利。一瞬だけ弾けた稲妻。体をくの字に折り曲げたワニ。あとはもう視界が真っ白になって何もわかりませんでした。
わかるのは直後に告げられた言葉だけ。そうだ避難しなきゃと、生徒は大慌てで駆け出しました。
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21~30 |
21
「がんばれ……がんばれ!」
一般生徒が必死に応援する先で、ひとりの男子生徒が黒い獣達と戦っていました。彼の左腕は目を背けたくなるほどにぼろぼろで、血が滴っています。あの傷は先程獣に噛みつかれてできたものでした。自分がもたもたしたせいで負わせた傷でもありました。
強い後悔と感謝が胸の内でぐるぐると混ざって、声援の形で喉から飛び出していきます。
迸る雷撃と弾けてゆく敵に一般生徒は手を合わせます。どうか彼が勝ちますように、それ以上傷つきませんように、と。
22
大きな衝撃音とともに男子生徒の頭は真っ白になりました。何が起きたのかわかりません。なぜ自分が校舎から落ちそうになっているのかもわかりません。さっきまで窓にいたはずの黒い猛禽の行方さえも。ただ大きく開いた教室の穴の、その縁に捕まっていないと真下まで落ちることだけはわかります。
そんなときに救いの手が現れました。大きな大きな手が自分を子猫のように掴み、教室へと戻してくれました。
「あ、ありがとう……」
助けてくれた女の子に男子生徒は礼を言いますが、なんだか反応が妙ですね。
「……いまの爆発、もしかして君がやったりした?」
23
生徒は驚きのあまり尻もちを付いてしまいました。なぜなら窓へ向けて鷲型の黒い獣が突っ込んできたのです。そして直後に緑色の熊手のようなものが獣を捕らえたのです。登場はパニック映画のように唐突、サイズはトラックのように巨大。敵は大型の猛禽のはずでしたが、さらに巨大な食虫植物の前では小蝿扱いでした。
「なんだ、これ……。俺食われる?」
生徒の疑問とは裏腹に、食虫植物は人間に見向きもしません。その代わりに近づいてきた獣のことごとくを捕食していきます。
「黒い何かよりヤバそう……」
24
屋上にいるやつ。
突然の大音量に一般生徒たちは思わず屋上を見上げました。屋上に何があるのか気になりましたし、声も屋上から聞こえていたからです。そして視線の集まる屋上から言葉が続きました。
直線に入るなよ。
直線とはどういうことか、首をかしげる一般生徒たちですが直後にどよめきがあがります。屋上で何かの爆発が起きて、破片が雨のように降り注いできたのです。
粘度の高い黒色の液体。それは間違いなく黒い獣達の残骸でした。
25
獣達から隠れようと自販機の影にいた女子生徒は、不意の風にスカートを押さえました。
ただの風なら不思議なものではありません。でも、風が服と同時に周囲が静かになっていれば様子を伺いたくなるものです。
始めに見えたのは歪に節くれだった鎌。続いてひとりの女の子の後ろ姿と、刃先からぽたぽたと垂れる黒い粘液。彼女の大きな左手は何かを掴んでいて、ぐしゃっと握り潰しています。
「あ……」
女子生徒はようやく気づきました。周囲に散乱する大小様々な黒い欠片と粘液が何だったのかを。
26
教室の窓からグラウンドを不安げに見ていた一般生徒は、なぜかすぐ目の前にきた黒い獅子と目が合いました。なぜこんなところに獅子が、ここは二階だぞと驚き慌てていると、獅子は自由落下していきます。
見下ろせば、獅子だった黒い液体と足を振り上げた男子生徒がいたではありませんか。驚くべきことに獅子はこの高さまで蹴り上げられていたのです。
「なんだ、あいつ……」
見ているうちに男子生徒は何かを投げる様子を見せます。投げたものは見えません。しかし、その先にいた獣の数々が波紋の広がるかのように続々と黒いタールへと変じていきました。
「何をしたんだ!?」
気がつくと一般生徒は彼の挙動に釘付けとなっていました。
27
黒、紫、黒。
それが一般生徒の見た光景です。一体何なのか整理が理解が追いつきません。黒はいままさに自分へ襲いかかろうとしていた獣で、紫はその獣を撫でるように走った線でした。最後の黒は獣の体から飛び出した飛沫です。
「え、え……?」
次に見えたのは、白。それが刀だと理解できるのに数秒の時間が掛かっていて。自分を守ってくれた男子生徒はその数秒でいくつもの敵を斬り伏せていました。
どこからか笑い声が聞こえます。獣の叫びがこだまする恐ろしい戦場でしたが、不思議とよく聞こえてしばらく耳に残り続けました。
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「こっちだ! がんばれー!」
廊下の端から一般生徒の声が飛びます。呼びかける相手はいままさに獣から追われているひとりの少年でした。もう少しで追いつかれてしまいそうです。ヘッドホンが重いのでしょうか。
「もっと速くはし……えっ」
その直後のことです。ふわふわしたものが獣へ投げられるやいなや、突然の発光。そして青白い蛇が廊下中で激しくのたうち回りました。蛇に見えたものの正体は雷です。廊下のほとんどを駆け巡っていました。そして廊下にいた獣たちはすっかり焼け焦げた様子でぐずぐずと崩れてしまうのです。
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運動着の一般生徒の前で、ひとり黒い獣に襲われてしまいました。獣の如き俊敏性で駆け、獣にはありえない挙動で暴力を振るう敵には誰からも逃れることはできません。そのはずでした。
でもよく見れば襲われたはずの生徒に獣の牙は届いておらず、空中で何かとせめぎ合うように静止しています。
「何かの紋様……?」
一般生徒にはそれが何なのかわかりません。しかしそれが齎す破壊力はまざまざと見せつけられました。円から出たものが凄まじい勢いで敵を吹き飛ばし、後方の敵ごと押しつぶしています。ボーリングを思い出してしまう光景でした。
後にはただ大きな大きな黒い染みしか残らないのです。
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一般生徒たちが黒い生物から逃げ惑うなか、逆に生物へと立ち向かうディアボロスは彼らの希望でした。特にそれが帯刀した可愛らしい少女であれば特に男子生徒なんて目を離さずにいられません。
少女の鞘から幾重にも剣閃が迸ったとき、男子生徒の盛り上がりは最高潮でした。
が、あまり効果のなさそうな様子にスン、と落ち着きます。再び声が上がりますが今度は悲鳴。黒い獣の牙が少女を掠めるところでした。
少女が避けるたび、斬るたび逃げるたびに男子生徒のテンションは二転三転。自分が襲わているでもないのにハラハラしながら見守リ続けてしまいます。
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31~39 |
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もうだめだ。黒い獣に寸前まで迫られた女子生徒は目を閉じ、恐怖で体を硬直させてしまいます。しかし予想された痛みはいつまでもやってきませんでした。
その代わりに全身で感じたものは暖かさ。ゆっくりと目蓋を開けるとそこにゆらめく炎があります。そして傷口の燃え上がる獣が伏しています。帽子を被った小さな少女の背中も。
自分を守ってくれた少女の、その炎を纏う刀は黒い獣たちよりも幻想的だったかもしれません。
波のように押し寄せる安心感と、可愛らしく威嚇する姿に女子生徒は小さく笑い出してしまいました。
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文化校舎そば。黒い生物たちから逃れようと慌てふためく足音とは対象的に、規則的で軽やかな足音がありました。
校舎へと駆け込もうとする生徒は、思わずその場違いな足音に顔を向けてしまいます。
ちょうど空色の美しい髪と白い翼へ、黒い虎が飛び込むところが見えました。
あぶない。喉を突いて出かけた言葉は「たたん」という足音に押し留められます。可愛らしい少女がくるりとターンをしていました。
少女のすぐ横を掠めるように通り過ぎた虎はなんと喉がぱっくりと裂けていて、そして踊る少女の手のなかでナイフがぎらりと煌めくのです。
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耳元を掠める暴力の気配に、男子生徒の肌が粟立ちました。黒い狼の牙は間一髪のところで生徒を通り過ぎていきます。
「セーフ!!」
敵が攻撃を外してくれた幸運に感謝しながら男子生徒は友人とともに校舎へと駆け込みました。狼がふたたび飛び掛かる前に大慌てで金属製の重い扉を閉めます。がすん、と直後に重い音。
友人と無事を喜びながら扉の窓から狼の様子を見てみると、何やら足元に落ちているものを忌々しげに睨んでいました。
「氷……?」
雹でしょうか。こんな天気に? こんな時期に? 仮に雹だったとして、どうして狼は雹へ怒りを露わにしているのでしょう。
思わず空を見上げた少年は、そこで屋上から落ちる小さな氷塊に気付くのです。
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なにか黒いものが宙を舞います。それが自分を襲おうとしていた獣だと数秒かけてようやく一般生徒は理解しました。
校舎へと進めていた脚を思わず止めて振り返ります。すると体に深々と剣の刺さった獣が、震えながら起き上がろうとするところが見えました。
しかし獣は起き上がることができません。ひゅっという風切り音の後に頭部を斧で割られてしまったからです。
「な、なんだ……?」
剣と斧がどこからきたのかとグラウンドを見回した生徒は金髪の女の子を見つけました。彼女の後ろで広く展開された数々の武器も。
女の子の合図を皮切りに、武器はいくつもの軌跡を描いて獣達へ殺到しました。
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校舎が大きく揺れて、廊下を走る男子生徒は転んでしまいました。見れば窓の向こうに大きなクジラが校舎の壁へ突進していたではありませんか。
みしみし、ぴきりぴきり。聞こえてきた嫌の音にはっとすれば、柱と天井に大きな亀裂が走っています。
「ウッソだろおい!?」
崩れてくる。反射的に目を閉じてしまった生徒は、しばらく経っても何も起きないことを疑問に思いながら目を開けました。不思議なことに亀裂はもうどこにも見えませんでした。
いいえ、視界の端にはまだ残っています。でも、瞬く間に不思議なビビットカラーのモザイクが割れ目を囲んで消していくのです。
「誰かが、直してる……?」
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未整備区画で授業をサボっていた生徒は冗談のような物を見つけてしまい、廃墟の影で息を殺しながらサボりを後悔しました。
熊です。この時代の新宿に大きな大きな熊がいて、さらに目があってしまったのです。
しかし、黒い熊はすぐに生徒を襲うようなことはしませんでした。それよりもなにか恐ろしいものを目にした様子で体を硬直させています。
熊の視線の先には大きな独楽がありました。その独楽はなんと、大きなワニを掴んで回転した生徒会員らしく、周囲の一切合切をめちゃくちゃに破壊していました。
「ええ……」
これには男子生徒もびっくりです。むしろドン引きです。熊と生徒はしばらくそのまま独楽を見続けてしまいました。
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凄まじい音が未整備区画を駆け抜けていきました。偶然そこにいた男子生徒は耳を抑えてしまいます。ビリビリと腹の底に響き、周囲の埃や塵が舞い上がって、さらには古いガラスが割れてしまうほどの音量でした。
何が起きたのかと音のほうを見れば、ひとりの女子生徒が立っているではないですか。男子生徒はそこである事実に気付くのです。
「いまの、人の声だったのかよ……」
彼女の周りには黒い獣たちがいて、ぷるぷると震えて硬直しています。近距離であのような大音量を浴びてはひとたまりもないでしょう。
「……あ」そう思っていたのですが、獣たちは何事もなかったかのように動き出してしまいます。
「うおおおあれ大丈夫か!?」大丈夫ではありませんでしたね。
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バチバチと弾ける音に、未整備区画で人間を探すべく徘徊していた黒い液体の熊は顔を上げました。
そして突然の強い光に目が眩んで尻もちを付いてしまいます。続いて焦げる匂いを感じ取ります。多数の同胞が一気に消え去る気配もありました。
黒い熊は目を瞬かさせて瓦礫の隙間から光の方角を覗くと、匂いの正体がすぐにわかりました。焼け焦げた同胞が辺りに散らばっています。
そして、その中央には少年がひとり。愉快げに笑っているではありませんが。
熊の背筋に本能的な恐怖が走ります。決して目を合わせてはいけない、見つかってはいけない存在と戦力差が大きく横たわっていたのです。
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べしゃり。何かが地面に落ちてきて黒い獅子は空を仰ぎまします。すぐ目の前を翼を失った猛禽が落ちて、地面に黒いシミを増やしていきます。
下手人は大鎌を持った人間の少女でした。彼女は空から瓦礫の上に着地していました。
獅子は水溜りとなった同胞を吸収して一回りも二回りも大きくなり、少女へと距離を詰めます。瓦礫の影の潜みながら、足音を立てずに。
ついに好機はやってきました。少女が新たに同胞を切り裂くべく大鎌を投げたのです。数多の同胞が形を失い液体へと戻ってゆく、その瞬間に獅子は駆けました。全身の牙が剥き出しになり、少女の白い肌を狙います。
ですが、獅子は直後に信じがたいものを見ました。赤い縄が少女の手と鎌を結んだのです。鎌は瞬く間に元へ戻ってしまいました。
そして少女がこちらに振り向きました。
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