「しなかった事を“出来なかった”と言いたくないから!」
虚ヶ谷・ワチカ
パーソナルデータ |
名前 |
虚ヶ谷・ワチカ |
称号 |
Cantarella |
性別 |
少女 |
種族 |
人間 |
ジョブ-01 |
錬金術師 |
ジョブ-02 |
ワールドハッカー |
クラス |
白のクラス |
部活 |
おひるね部 |
生年月日 |
2006年10月18日 |
年齢 |
17歳(2023年11月28日時点) |
身長 |
152.4cm(2023年11月28日時点) |
体重 |
平均。だが緻密に言えば21g軽い |
わっちの事がしりたいの?
ただの人間。ただの魔女の末裔。
ただのちっぽけな女の子。いずれ『洗礼の魔女』となる小さな卵。
ちょっと一人称と髪と瞳の色が変なだけで、突出したものは毒の知識くらい。
魔女が産声をあげるとき、原罪の鐘が鳴るだろう。
両親は刻逆の後に死んでしまったけれども、生まれや育ちが変わった訳ではなく各段に恵まれている部類。
世界が変わる訳でもない。ただ、超常が一人増えるという其れだけの話だ。
毒が好き。薬が好き。
たとえ最初の動機が親への殺意であっても、
其れが許せなくて悪意を刻逆の時に全て削ぎ落してしまっても、
其れだけは揺るがない。
父が、母が、愛してくれなくても。わっちはわっちを愛してあげたい。
そうして彼女はディアボロスとして、世界の為に戦う事を選んだ。
弱くても。
強くなくても。
何か出来るって、信じてる。
わっち、全部思い出したよ。
でも――何にも変わらない。わっちはわっちでいたいンだ。
出来る事
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『再定義』 |
既にあるものを別質のものとして定義する能力。
前提として再定義されるための何かがなければ意味がない。
例えば撃ち出された弾丸があったとして、其の着弾先を変更する事が出来る。
其の大きさを変える事が出来たり、速度を変える事が出来たりする。
だが、弾丸が撃ち出されたという事実は変えられない。
在るべきものを、在るべき場所へ。
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+
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『空間把握』 |
本人は何故できるのか判っていない。
広大な空間を把握し、壁や廊下を『再定義』する事で道や小部屋を作る能力。
バイト先ではこの能力を悪用 利用してセーフハウスを幾つも作っている。
其れは例えるなら、アリの巣を観察するかのように。
いつだって手の中に収めている。キミが何処にいるか、ずっと見てるよ。
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持ってるもの
+
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... |
五指に付けている銀の指環。
世界をハッキングする、わっちが世界に干渉するための手段。
いつから持ってたかは知らないけど、なんとなくずっと付けてる。
これがなくてもワールドハックって出来るのかな。怖くて試した事ないや。
白銀の拳銃。
名前の意味は…そうだな。「眠ってばかりの人」って言えば良いかな。
大事な友達から貰った拳銃。誰かを傷付ける為の道具。
何も出来なかったと嘆く事をしたくないから。
わっちは科学薬品は門外漢なんだ。
生物毒、植物毒、そういうものを扱ってる。
例えばスズランは動物に毒だろ?
でも、巧く弱毒化すればみんなの能力を上げたりできるンだ。
そういう風に出来たら、……良いんだけどね。
なかなか巧くいかないや。
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つくったもの
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薬品リスト |
SBbe2-SD (Sakura Blizzard bee Sweet Dreams)
桜色と白のカプセルに金で桜柄が描いてあるカプセル。
ねむれば桜吹雪の夢を見る。なお、一緒に何が現れるかは人による。
SBbe2-SD.改 (Sakura Blizzard bee Sweet Dreams Mod 2)
白色のカプセルに金で桜柄が描いてあるカプセル。
ねむれば桜の夢を見る。しかしやっぱり、一緒に何が現れるかは人による。
CMbe2-NmC (Cough Medicine bee No more Cry)
爽やかな風味がするトローチ式の咳止め。
出来る限り薬効を強く、負荷を弱く抑えたもの。
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その他のものリスト |
べろべろばーガム(噛むと舌の色が変わる! 青と緑で選べるぞ!)
超バッチバチラムネ(口の中で爆発が起こったみたいにバッチバチ!)
ロシアンボールキャンデー(3個セット。1つだけはちゃめちゃに辛いエキスが入っているぞ!)
ハツコイ毒(白と桃のカプセル。弱興奮作用を及ぼす事で心拍数を上げる薬)
疑似Alc.丸薬(紅い丸薬。お酒を呑んだ気分になれる! でも、気持ちがふわふわしてうっかり秘密を喋っちゃうかも?)
ヘアカラーインクセット(黒・桃・水色・金・白の5種! お湯で落ちます)
激!グミ(激甘かも?激辛かも?或いは劇臭!?…激!な味が貴方を待っています。一袋10個入)
練れば練るほど丸々ゼリー(粉末に液体を入れて掻き混ぜよう!ぷるぷるころころの丸いゼリーが出来上がり!)
(ベリー味/ラムネ味の2種)
意識ふわふわ薬(意識がふわふわ、気分が良くなる合法のお薬)
ナイチンゲール薬(なんと、飲んだら歌いながら喋る事しか出来ません!効力は10分)
FSbe2-SD (Four Seasons bee Sweet Dreams)
(桜、向日葵、紅葉、雪が降り注ぐ夢を見られる安眠グッズ。ただし夢の細部までは保証致しかねます)
毛髪染色薬・改(蓋に付属したブラシを液体に浸し、髪の毛をなぞるだけ!色はぬるま湯で落ちる簡単仕様!)
(色:赤、青、翠、紫、ミックス 計5種)
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であったひと
両親に愛されなかった少女
――虚ヶ谷・ワチカが能力を最初に使ったのは、“自分自身”にだった。
“わっちは幸せな家庭で育った、普通の子”。
そう塗り替えるに至るまでの、取るに足らぬ足跡。
+
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滲んだ記憶 |
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ごめんなさい |
「左右の視力に問題はないそうだ」
「そう……」
「この色の違いは、天然のものだと」
「……」
「……」
「貴方は、医者でしょう?」
「……どうしたんだ、今更」
「例えば貴方が“愛人に産ませた子を取り換えて”も、私は気付けないわよね」
「何を……! 君も知っているだろう! 生まれて直ぐに取り違えが起こらないように赤ん坊にはバンドが付けられるんだぞ!」
「貴方が浮気をしている事を、私が気付かないとでも思っていたの!? 貴方が仕事だと出ていった日のどれだけが浮気相手とのデートだったか、調べないとでも!?」
「……ッ、其れを言うなら、君もだろう」
「え?」
「君が浮気相手の子どもを身籠った! 其れが一番想定しやすい結論じゃないか! 相手は誰だ? 教員か? 最近は外国語教師もいるからな、口説き落とされでもしたんじゃないか」
「言って良い事と悪い事があるわよ!! 私はそんな軽い気持ちで教師をしていないわッ!」
「私だって、そんな軽々しい気持ちで医者をしている訳ではない!!」
「……」
「……」
「……どうしても駄目なら、」
「捨てないわ」
「……」
「私が妊娠したことを、職場も近所の人も知ってる。其の子どもがいないだなんておかしいでしょう。世間様に後ろ指を指されて生きていくのは嫌よ」
「……」
「小さい頃なら色々と隠しようはある。まだ生まれたばかりだもの、そうよ、色が戻るかもしれない……普通の子に。普通の子に、なってくれるかも」
「……そうだな」
――名前は、和知香。
――和を知る子に、なって欲しいから。
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+
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ごめんなさい、ごめんなさい |
「和知香」
「なあに、お母さん」
「今日から貴方は、目にこれを付けるのよ」
「……? これ、なあに?」
「貴方を普通にしてくれる、魔法の道具よ」
「まほう!」
「それから、あとでお風呂場に行きましょう」
「?」
「髪を真っ黒にするの。そうすれば、貴方は本当に普通の子。誰にも普通じゃないなんて言わせないわ」
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+
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ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい |
「和知香」
「……ごめんなさい」
「転んで、コンタクトが外れたんですって?」
「……うん」
「なんで転ぶような真似をしたの? 走ったり乱暴な事はしちゃ駄目って、お母さん言ったわよね」
「……」
「其れから、外ではお父さんの事をお父さんって呼んじゃ駄目って言ったわよね。病院で其れを破ったのは誰?」
「あ、あれは、つい……!」
「ついじゃないわよ!!」
「ッ」
「貴方の其の色で誰が迷惑してると思ってるの!? 貴方は普通じゃないの、普通にならなきゃいけないの!! ああ、これでまた転園しなくちゃいけないわ……!! 教師には口止め料を払わなきゃ……!! 貴方が、貴方が普通でさえいれば、私たちだって……」
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+
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いやだもういやだ、ごめんなさい |
「和知香、この成績は何だ」
「……ごめんなさい」
「お前はいつもお母さんを怒らせて、たまには喜ばせてやろうと思わないのか? テストで良い点を取って、お母さんがお前を誇らしいと思ってくれるようにしようとは思わないのか」
「……」
「宿題もろくに出来ていないらしいじゃないか。どうしてだ? 言ってみろ」
「……お父さんたちが、わちかを、ベランダに、出すから」
「……」
「ベランダ、寒くて。べんきょうなんて、できない……」
「甘えるな!!」
「ッ!」
「お父さんとお母さんは、冷房も暖房もない環境で勉強して来たぞ!! お父さんなんて、その日食べるものに困った事もあった! 其れでも勉強をし続けて、そうしてお前達をこうして食べ物に困らないようにしてやれているんじゃないか!! ちょっと暑い、ちょっと寒いくらいでうだうだいって、自分が怠ける理由にするんじゃない!!」
「……ごめんなさい、お父さん」
「もうお前はお父さんと呼ばなくて良い。お父さんはお前の事はもう知らない。――…あいつも、浮気をさっさと認めていれば良いものを……俺の金がそんなに大事か? 医者の妻という地位がそんなに大事か? くそ、くそ……ああ、どけ!! さっさと自分の部屋に帰れ!!」
「部屋、なんて」
「外だ!!! 判らないのか!!! 布団なら後で持って行ってやる、ベランダで待ってろ!!」
|
+
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いやだ、いやだ、ごめんなさい |
「和知香」
「お母さん?」
「髪を切りに行きましょう」
「え?」
「これからは、好きな髪型をして良いわ。まだ子どもだから黒髪でなきゃ駄目だけど、……括ったり、アレンジしたり、色々出来るのよ」
「ほんとう?」
「ええ、ほんとうよ。美容院は明日に予約してあるから、楽しみにしていなさいね」
「うんっ」
「……あの」
「何ですか?」
「本当に良いんですか……? 女の子ですよ?」
「其の子の髪は普通じゃない。染色も出来ないんです。染めても次の日には落ちてしまって……もう、こうするしかないんです」
「……わかりました」
「……」
「髪の付け心地はどう?」
「……お母さん」
「なあに?」
「わたし、わたし、……髪の毛、なくなっちゃっ……」
「あら、髪の毛ならあるじゃない。こんなに黒い、綺麗な髪が。そうだ、明日はお母さんが括ってあげましょうか。二つでも、一つでも」
「……」
●●●
「あっ」
「へへ、……あ!? うわ、こいつハゲだ!」
「ほんとだー!! じゃあこの髪なんだ? ニセモノか?」
「わははは、ハゲー!」
「や、やめて……! かえして……!」
「お坊さんじゃん! なむあみ~とか言えねえのかよ!」
「そらよ、パース!」
「かえして……かえして……!」
「こっちこっち!」
「ちょっと男子、こっち持って来ないでよ」
「あ? こいつの味方すんのか?」
「違うわよ。……いつ洗っているか判らないじゃない」
「……」
「うっわ! きたねー!!」
「一年とか洗ってねえんじゃねえの! うわ、投げるなよばっちいな!」
「髪……髪…!」
「きたねー」
「ばっちい」
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+
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わたしは、わっちになるんだ |
ベランダは、寒い。
夏は、暑い。冬は、寒い。
かじかむ指で、ページをめくる。
毒、毒。お父さんが時々くれるお小遣いを溜めて、こっそり買った毒の本。
植物の中には、食べるだけで死んでしまうものもあるんだって書いてある。
……お父さんとお母さん、食べてくれるかな。
私が毒草を混ぜたら、気付かずに食べてくれるかな?
……。無理だよ。
そんな事、出来ないよ。
だって、私にとってたった二人のお父さんお母さんだもん。
どんなに酷くされても、普通じゃないって言われても、それでも、私、いつか優しくして貰えるって……
「……ぅ…」
本当は判ってる。
お父さんとお母さんが、私に優しくしてくれる日なんて来ないって事。
私の居場所なんて、生まれた時から此処になかったんだって事。
……逃げよう。
今ならお父さんもお母さんもいない。
普通じゃない私でも、受け入れて貰える何処かへ。
普通じゃない私でも、仲良くしてくれる誰かのところへ。
行くんだ。逃げるんだ。今のうちに。
……おかしくて笑ってしまった。
いままで大人しくベランダで寝食していた自分が、馬鹿みたいだった。
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誰も知らない記憶 |
「……駄目だ、携帯も通じない…」
「貴方。新宿は本当に島になってしまったの?」
「ああ。そのようだ……訳の分からない事ばかりだ。少し歩けば海が見える。……日本は新宿だけになってしまったのか? 其れとも四国や北海道に、生き残りがいるのか……」
「……でも、きっと沈むのも時間の問題だわ」
「……」
「ねえ、私、沈むのは嫌よ。其れならいっそ」
「……ああ」
「ねえ、」
「何だ?」
「私、本当に……浮気なんてしていなかったのよ」
「……」
「今更みたいだけど、……もう、普通じゃないから……あの子の事も、気にしなくて良いのよね?」
「そうだな。……新宿が沈んでしまう前に……自分の手で、蹴りを付けよう」
夫婦は縄を用意して、梁に括り付ける。
リビングから持ってきた椅子に乗り、首に縄を掛けた。
不思議と、恐ろしくはなかった。このまま“普通ではない事”に巻き込まれ続ける方が、遙かに恐ろしかった。
彼らの頭の中には、一人娘の姿など影も形もない。ただただ彼らは、“普通”を追いかけ続けて――椅子を、蹴り飛ばした。
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