─1─
グラーディア国、
ポケモニア大陸で最大の規模を誇る大国。
「氷焔」はグラーディアの首都「セントラ」に存在している。
リリ達は
シリウス王国からグラーディア国に向かうため、国際列車を利用することにした。
こうしてリリ達の長い列車の旅が始まった。
─2─
「わぁ、すごい」
窓から見える景色が次々に変わってゆく。
その光景にリリは目を輝かせていた。
「リリ、そんなに列車に乗ることは珍しいことなのか?」
その様子を見た
バーンが彼女に声をかける。
「私田舎者だから列車なんて乗ったこと無かったの、だからとてもワクワクして」
「ふっ、その様子じゃセントラに着いたらどうなってしまうのだろうね」
フブキが微笑みながら小声で呟いた。
リリが窓を眺めていると遠くの方に塔のような建物が見えてくる。
「フブキさん、あの建物は?」
リリは見慣れない建物について尋ねた。
城にしては異様に細いし、塔にしてはやたらと光り輝いている。
「あれはビルといって最新の技術を集めて作られた建物さ」
「へぇー、すごいなぁ!」
リリは更に目を輝かせた。
もしかしたら尻尾の玉よりも輝いているかもしれない。
「そうだ、今のうちに氷焔のメンバーに挨拶しておくといいぞ」
バーンがリリに提案する。
確かにこれから任務を共にするであろう仲間になるのだ。
他の依頼の為列車に乗ってないメンバーも多いが、氷焔本部に戻るメンバーも多数存在している。
「よし! 俺が案内してやろ…… がはっ」
バーンがリリの手を取ろうとした瞬間フブキの拳がバーンの腹部にめり込んでいた。
「え、えと…… 私だけで挨拶してきますので」
─3─
「はじめまして、こんにちは」
リリはだるだるに太ったパッチールに話しかける。
「……」
「あ、あの……」
無言を貫くパッチールにリリは困惑する。
「ああ、彼女は『
だるぱち』と呼ばれているよ」
そこにフブキの助け舟が入る。
「だるぱちさん…… ですね、よろしくお願いします」
リリの言葉にだるぱちも困惑する。
もっと気軽に話しかけてほしいと言わんばかりの表情でリリに返した。
数秒お互いに無言状態が続いた後、だるぱちがリリにそっとモモンのみを手渡す。
「あ! 私甘いもの大好きなんです!」
リリはモモンのみをちぎって口にした。
するとだるぱちの表情が明るくなる。
「ありがとうだるぱち、よろしくね!」
だるぱちはリリに手を振ると再びモモンのみを取り出し口にした。
「じゃ、次は自分で何とかできるね」
「はい!」
フブキの問いかけにリリは返した。
─4─
リリが他のポケモンに話しかけようと思ったその時だった。
突然コイル達が窓ガラスを破り、それに続いて無数の鳥ポケモンが車内に侵入してくる。
「皆構えろ! 敵襲だ!!」
フブキの号令で今までの空気が嘘のように張り詰めた。
リリはすばやく槍を構え周囲を確認する。
車内に侵入したのはざっと2、30体といったところか、車外にも車内に向かって数百体の鳥ポケモンがむかっていた。
「よし、俺に任せろ!」
バーンが拳に炎を宿し、コイルに激しく叩きつける。
その衝撃でコイルが窓の外に吹っ飛ばされた瞬間、バーンはポッポやオニスズメの群れに包囲された。
「はぁぁっ!」
フブキが激しく大剣を横に振りかぶる。
大剣から発せられた青白い氷の波動がバーンを包囲していた鳥ポケモンの翼を凍らせ自由を奪った。
「おい、俺まで斬るつもりかよ!」
「それくらいかわせずにどうする、さっさと片付けるよ!」
バーンとフブキは言い争いながらも敵を確実に打ち倒していく。
その時フブキの死角に向かって1体のチルットが激しく突進してきた。
「危ない!」
リリが槍を振りかざすと槍の先端から発せられた雷がチルットを撃ち抜く。
その直後リリの背後で何かが落ちる音がした。
「君、隙だらけだぞ」
そこには金属製の左耳と尻尾の付け根につけた緑色のリボンが特徴的なイーブイがいた。
そしてそのイーブイが倒したであろうオニスズメがリリのすぐそばで倒れていた。
「あ、ありがとう あなたは?」
「僕はイヴ、自己紹介は後でするよ」
「うん!」
お互いがうなずくとリリとイヴは背中合わせになる。
その時だった、天井から轟音が鳴り響いたのは。
リリとイブがとっさにその場から離れると、そこに緑色のバンダナが特徴的なルカリオが落ちてきた。
「あははごめんごめん、ドジっちゃった」
戦いの最中、緊張感の無い口調で話すルカリオ。
「あの…… あなたは?」
「僕はキース、よろしくね!」
しかし和んだ空気も長続きはしなかった。
天井の穴からも無数の鳥ポケモンが侵入してきたから。
「よーし、ここは僕が!」
キースはどこに隠し持っていたのか、黄色い縁と稲妻の紋様が描かれた一冊の本を敵の群れに思いっきり投げつける。
すると敵の群れの中で本はばらばらになり、一枚一枚の紙からそれぞれ敵に向かって電撃を放った。
「どうだ、これが僕のでんきショック乱れ撃ちだ!」
キースは得意げな笑顔を浮かべながら言った。
─5─
グラーディア国の国境トンネルが見えてきた。
そこに到達するまで持ちこたえれば敵を振り切ることができる。
そんな中フブキが突如号令をかけた。
「全員、防御体勢に入れ! 『りゅうせいぐん』を使ってくるぞ!」
フブキが叫びながら天井の穴から飛び降りてくる。
リリは『まもる』を使い敵の攻撃に備えた。
その瞬間、先ほどの轟音と比にならない音が周囲に鳴り響いた。
無数の隕石が一斉に列車に目掛けて降り注いだのだ。
「……!」
列車の窓ガラスだけでなく壁や天井をも突き破って降り注ぐ。
(こんな強力な『りゅうせいぐん』なんて見たこと無い……!)
その衝撃に守りの体勢が崩れそうになりながらもリリは『まもる』を維持した。
リリを始めとする様々なポケモン達が『まもる』の効果が切れかかった頃に『りゅうせいぐん』が収まった。
どうやら国境トンネルに到達したようだ。
リリが目を開けると列車は何とか機能を維持しつつも無残な姿になっていた……
「フブキさん、今の技は……?」
するとフブキは難しい顔をしながら答えた。
「あれは普通の『りゅうせいぐん』じゃない、竜鳥の星の首領『ガリウ』『ロンド』兄弟が同時に放つ『りゅうせいぐん』だ」
竜鳥の星、チルタリス兄弟率いる空中戦を得意とする盗賊団。
彼らによる被害は恐ろしく、特に首領兄弟のダブルりゅうせいぐんは群を抜いた破壊力を持つ。
また、その配下におけるポケモンの数も計り知れない。
そして活動範囲も非常に広く機動力も高いため、その尻尾をつかむ事すらままならない現状だ。
─6─
周囲がざわついている。
セントラに着いた列車は既に原形をとどめていなかった。
ボロボロになった列車によるものでもあるが、それ以上にセントラが活気に溢れた都市であることも理由の一つだろう。
「……すごい」
リリはシリウス王国とは全く違う風景に思わず言葉を漏らした。
歩いているポケモンの数も、周囲の建物も比にならないほど多い。
「さて、氷焔本部に向かうけどいいかい?」
周囲の景色に夢中になっているリリにフブキが声をかける。
「あ、はい!」
「アンタは氷焔初めてだろう? 歓迎するよ」
我に返ったリリはフブキ達と氷焔に向かった。
周囲の哀れみを込めた眼差しに気づくことなく……
最終更新:2010年08月19日 21:19