……静かだ。やけに静かすぎる。
その日、氷焔には余り大きな依頼もなかったのだが、それにしてもやたらに静かすぎる。
何かあったのだろうか…?

自己紹介がまだだったな。
俺の名はライト、ご覧のとおりライチュウだ。
実は今回、ここにいる全員がある一抹の不安を抱えていたのだが…

「みんな!今日の昼飯はあたしが作るよ!」

フブキ姐さんに任せて大丈夫なんだろうか…
いや、ある意味覚悟はしておいたほうがいいかもしれない…

「おー、なんだなんだ?」
もう料理ができたらしく、ゾロゾロとロビーに集まってくる。
先頭を切ったのは緑色のバンダナを巻いたルカリオ、キースだ。
どうやら彼は姐さんの料理が何たるかをまだよく知らないらしい。

「さぁみんな、今日はフブキ特製カレーだ!」
「なんか真っ黒なんだけど」
一同が口々にカレーを批判したりしている中、キースは開口一番、
「…おなかすいたしいいじゃん、早速いただき☆」
と言って真っ先にカレーをよそり、嬉しそうに食べ始めた。

…この時だった…彼を悲劇が襲ったのは。

「うおぉっ!?」
「き、キース!?」
突然キースが苦しみだし、次の瞬間床に倒れてしまったのだ!
キースの傍にいたブラッキーのツキカゲが慌てた様子でキースを抱きかかえる。
そしてそのまま、左耳に包帯を巻いたピカチュウ…千春の方を向きツキカゲは叫んだ。

「メディック(衛生兵)!メディーック!」
そんなにひどいのか?という雰囲気が漂い始める。
まずい、このまま姐さんをほうっておいたらそのうち死者が出るやも知れん。
なんとかしなければ…と思ったそのときだった。

「なるほど、これが伽厘(カリー)というものか、今度の料理の参考になれば…」
左目に包帯を巻き、袴を着たアブソルが現れた。フツさんだ。
どうやらカレーというものを作ってみたくてたまらないといった様子だった。
でも…あのカレーはさっき、キースを撃墜した恐るべき兵器…。もしアレを食べれば…!

「やめろっフツさん!そのカレーは食べちゃダメだ!」
俺は勇気を振り絞って叫んだ。もしフツさんがアレを食べたら大変なことに…
「何を言っているんだライト君、料理を研究するのは当然のことだろう」
……あのね。
「いや、だから俺が言いたいのはそこじゃn」
…しかしフツさんは俺の話なんて効く様子もなくカレーを食べ始めた。
その次の瞬間だった。

……フツさんが暫く固まる。
スプーンを持った手は小刻みに震え、左目の包帯には血がにじみ始めていた…
そして…食いしばった歯茎からも何故か出血が…
一体何が起こったのかと思い暫く見ていると…

「ぐはぁっ!」
と、尋常じゃない量の血を吐きながらフツさんは床に倒れこんでしまったのだ。
「フツ!?おい!フツ!!」
たまたま傍に居合わせたバーン兄貴が倒れたフツさんを抱え上げて目を覚まそうとする。
…そんなにひどいのか…恐るべし姐さんのカレー。

「大変だ!このまま放っておいたらフツは失血多量で…」
「おい!フツ!しっかりしろ!フツ!!」
「……アマテ……約束、果たせそうに…ない……」
「カレー如きで逝くなぁぁぁぁぁあああ!!!」

とか言っている間にとうとう俺の番がきてしまったようだ。
結局姐さんは俺の言ったことなんて聞かない様子でカレーを振舞っている。

おいおい、冗談じゃないぞ。
これを食すということはいわば、死刑判決執行猶予なしってとこじゃねえか。
俺が何の罪を犯したって言うんだ?
…まぁ、出された以上は喰わなきゃいけないって義理もあるし、
なんつーか、周りのやつらが殆んど倒れてしまったせいで他の料理は望めそうにないし…。
しょうがない、食うか…。

……

 ご ふ ぅ っ ! ! !

「ライトが倒れた!メディック!メディーック!!」

(おまけ)
リンフー「まったくなってないわね、これの何をどうやったらあんな殺人カレーができるのよ」
フブキ「仕方ないじゃないか、あたしは本来こういう細かいことは苦手なんだ」
リンフー「しょうがないわね…それじゃあみっちりコーチしてあげるから、少しは料理くらい出来るようになりなさいよね」
フブキ「…はいはい」

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最終更新:2009年04月26日 22:32