らき☆ロワ @ ウィキ

大都会交響楽(裏)

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集

大都会交響楽(裏) ◆BOMB.pP2l.



教えてあげよう。人生の喜びを、悲しみを、そして終焉を。



人と人の縁。
相対したり同じ方を向いていたりまたは全然違う方を向いていたり、
触れ合ったりかすりもしなかったりあるいは全然気付くこともなかったり、
同じ場所にいるのに全然関係なかったり、違う時間にいたのに強く関係していたり、

人と人との間にある縁――運命は、俯瞰の視点で見れば時に”交差点”と例えられることがある。

それに気付いてみよう。
これはあの一時。交差点を通り過ぎた十人の人間のすぐ傍を掠めた、ある一人――11人目の少年の小さな物語。





〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


三村信史 編 ~The wrong man 三~】


[06:00]

捲れ上がり畑の様に耕されたアスファルト。暴風が吹き荒れたかの様にまとめて薙ぎ倒されている街路樹。
大小様々に散乱したコンクリート塊に、キラキラと陽光を跳ね返すガラス片の数々。
まるで怪獣が通り過ぎたかの様な酷い有様の市街地。
その影。目立たない路地の奥に学生服を着た一人の少年の姿があった。

「――どういうことなんだ?」

少年――三村信史は誰に向けてでもなく呟く。
彼の手には一本の鉛筆。そしてもう片方の手には丁寧に印を打たれた参加者名簿と地図があった。

「殺せた……んじゃあ、なかったってことなのか」

名簿の中にある”柊かがみ”という欄には脱落を意味する線は引かれてはいない。
殺したはずの彼女が名乗った”クールなロリスキー”という名前の欄についてもそれは同じだった。
つまり、それは殺したはずだと思っていた彼女の名前が放送で呼ばれなかった――まだ生きているということに他ならない。

「今からでも止めを……いや」

三村は路地の中から出て通りの南の方を見やり、そして首を振った。
相手がどういった状況であろうと化物であることには違いない。
となれば切り札を使い切り金属バット一本しかないという現状ではそれは死に行く様なものだ。
ダメージを与えた――という結果で納得し、追撃の機会を欲張らないのがCOOLな男の行動というものだろう。

「ヘバっていれば禁止エリアに捕まって死ぬかも知れないしな」

フッと三村は鼻で笑う。
柊かがみが倒れた橋の上は後一時間足らずで禁止エリアに指定される。
彼女が気絶などをしていればそのままボンッだ。そうでなくと放送を聞き逃すだけでも構わない。
三村からしたらツいている。逆に柊かがみからすればツいてない。そういう事実だった。

「……しかし、川田が死んだのか」

素性の怪しい得体の知れない同級生ではあったが、ここでなら共闘もありえたかと思うと彼の死は残念だった。
もっとも、それで取り乱してしまうなどとはCOOLではないので、彼は10人と言う死者の数に対しても冷静に受け止める。
はなからそうではあったが、これは最早プログラムでもなんでもないのだ。
ならば、三村信史はそれを打破するためにサードマンとしてただこの舞台の上で全力を尽くすのみである。

「COOLだ……COOLに行く」

唯一の武器である金属バットを握りなおし、三村は放送局を目指し通りを北へと向けて歩き始める。


 ★ ★ ★


[06:15]

大通りに沿って北上し、風景が破壊されたものからそうでないものへと変わった所らへんで三村は”それ”に気付いた。

「足跡……?」

アスファルトの上に残った赤色の足跡を三村は指先で触れる。それは 【 血痕 】 であった。
見てみれば、それは南から北へと向かい微かながら点々と続いている。


 【TIP】 「血痕」
 暴走した小早川ゆたかの一撃により致命傷を負った十代が流し、地面に残ったもの。
 足跡は彼を背負う忘却のウッカリデスのもので、丁度今頃彼らは例の交差点へと差し掛かっているあたりである。


「歩幅がいやに狭い。それにこの血の量……重傷を負っているってことか」

地面に残された僅かな痕跡から三村は冷静に情報を読み取る。
そこから想像できるのは怪我を負った人間。あるいはそれを背負った人間が北へと向かっているということ。
敵となるか味方となるかは不明だが、敵ならば追い打つ好機。味方ならば助ける必要がある。
それを追わない理由は彼の中には存在しなかった。


 ★ ★ ★


[06:35]

追っていた血痕は元々それほど目立つものでもなく程なくして見えなくなってしまった。
血とは乾きやすいものであるし、常時垂れ流してでもいない限りそれは当然のことだろう。
しかしそれで三村がその足跡の主を見失ったかというとそんなことはない。

「怪我してて、この方角っていうなら病院だろう」

地図を見直して正しくそう推測する。頭をCOOLに働かせればそれは造作もないことだ。
放送局へと向かうことを一旦置いて、三村は更に通りを北へと進んでゆく。
その視線の先に負傷した少年を背負う細身の青年の姿が見えたのはそれよりほどなくしてだった。

「見た感じ、負傷した仲間を……って風だな。悪いやつらじゃあなさそうだ」

しかし油断は禁物。あくまでCOOLに物事を見定めるぜ。と、三村はすぐには接触しようとはせずその様子を伺う。
目の前を行く青年の足取りは頼りない。いくら人を背負っているといってもフラフラとしすぎだった。
同じ学生服に身を包んでいるがあっちはがり勉タイプか?
じゃあ、そろそろ話しかけて手を貸してやるか。と、三村が足を速めたと同時に前を行く青年が足を止めた。

「(気付かれた!?)」

罠か? と、三村はぴたりと足を止める。
がしかしそれは思いすごしだったらしい。見れば通りに面した家の窓に彼らを呼び止める少女の姿があった。
三村のいる場所まで声は届いてこないがどうやら互いに既知の間柄である様に見える。
ならば殺し合いに乗っていない人間かと判断し、三村も近づこうとして……そして、気付いた。

「(――あの制服! まさかっ)」

窓から青年を呼び止めた少女の着ている制服があの柊かがみの物と同一であることに気付き三村の足が止まる。
魔女である柊かがみ。その妹であり恐怖の対象である柊つかさ。そして先程見た同じセーラー服の化物少女。
そしてあの最初の場所で見た不可解な力を使い、そして殺されたこれも同じセーラー服の少女。

柊かがみが口にしていた 【 泉こなたと地球破壊爆弾 】 という名前から彼女に仲間がいると推測するのは容易い。
そして、彼女自身と最初の場所、瓦礫の中で見た少女が揃って同じセーラー服を着ていたことをCOOLな三村が見過ごすはずがない。
あのセーラー服を着ている者は魔女。明晰な頭脳を持ってすればそれを推測することは容易かった。


 【TIP】 「泉こなたと地球破壊爆弾」
 COOLな三村は気付いていないが、目の前にいる少女がまさに柊かがみ(だと思っているクールなロリスキー)が
 名前を出した泉こなたと地球破壊爆弾本人である。
 この時、彼女達が三村に気付かなかった(?)のは十代の血の匂いに気を取られていたから。


よく観察すれば窓の中には他にも人間がいるらしいと解る。
そしてその内の一人が窓から顔を出していた少女とそっくりだと気付き、しかも血塗れであることに三村は驚いた。
だが血塗れの少女が怪我を負っている様子はない。平気な風に立ち上がっている。つまりは――

「(返り血ってわけか)」

――そういうことに違いない。COOLな頭脳はここにきて冴え渡っていた。どんな 【 些細なことも見落とさず 】 答えを導き出す。

「(あの男の血も必ずしも自分の物とは限らないよな。
 背負われているのは寝ているだけかも知れない。迂闊に声をかけようとせず大正解だったぜ!)」

三村はにやりとほくそ笑むと物陰へと移り、いくらかの情報を得るためそっと彼らが潜む民家へと近づいた。


 【TIP】 「些細なことも見落とさず」
 些細なことかどうかは各々の主観によるところもあるが、チャイナドレスを着ている6/氏が男だとは三村は気付かなかったらしい。
 その存在の特異性ゆえに外見描写が省かれがちな彼ではあるが、だからと言って気付かないのはちょっとKOOLなのかもしれない。


 ★ ★ ★


[06:55]

「やっぱり……あいつら」

怪しげな六人組が病院の中へと入っていったのを見送り三村は舌打ちをした。
気付かれない為に距離を置いて尾行していた為に会話の内容までは読み取れなかったが、
一番後ろを歩いていた 【 赤毛の女 】 がしきりに柊かがみの名前を口走っていたのを彼は聞き逃さなかったのだ。


 【TIP】 「赤毛の女」
 結城奈緒のこと。中学三年生であり、何気に三村信史と同い年であったりする。
 そして柊かがみや泉こなたは高校三年生。見た目じゃわからないものですよねー。


そして、小学生の様に小さなセーラー服の少女が眠っている少年を軽々と背負い運んだことも彼は見逃しはしない。
最初に背負っていた男があんなにフラフラだったのは、その少年が見た目によらずよほど重たかったのだろう。
それをあの小さな身体で軽々と……もはやそれは間違うことなく魔女の証だ。
本性は先程見た化物少女と同一なのだろうと容易に想像することができる。

「あいつらが根城にするっていうなら、火でもつけてやるか? ……それともどっかで爆弾を作れば」

三村は離れた位置から病院を見ながら思案する。
先程も言ったが現在の手持ち武器は金属バット一本のみ。これでは例え相手が普通の人間でも六人相手じゃ無謀すぎる。
そして勿論あの六人組は尋常でない魔女の眷属なのである。となれば真っ当な手段で打ち崩すことは不可能だろう。
それこそ魔女狩りよろしく建物に火をつけるなりするしかない。
確実を喫するならば爆弾……いや、それよりもはるかに強力な武器が欲しいところだ。

「とりあえずは放送局に向かってあいつらの危険性を……と、肌寒いな。海風か……?」

日が照ってきたというのに妙に寒い。と、三村は空を見上げようとして”それ”に気がついた。気がついてしまった。

「………………~~~~っ!!」

虫。 【 蜘蛛 】 と形容すべきような何かが病院の白い壁の上を徘徊していた。
四本の節くれ立った脚を器用に動かして垂直の壁の上をまるで地面の上であるかのようにすいすいと動いている。
クラスの女子みたいにただの虫に悲鳴をあげるような三村ではなかったが、しかしその虫は異様で大きかった。


 【TIP】 「蜘蛛」
 バルキリースカートを装着した桂言葉のこと。
 ヤンデレ全開の言葉がバルスカ使って壁を登っていたら、どれだけCOOLな男であろうともビビる。
 ちなみに、この時言葉をつけていた長門有希は一足先にこなた達へと接触し爆弾が十代にかけた情報操作を解除していた。
 ゆえに長門と三村は互いにその存在に気付いていない。


本能が最大級の警鐘を脳内に鳴らしていた。自分の中で自分の逃げろと言う声が幾重にも反響する。
だが、蛇に睨まれた蛙とはこのことを言うのか三村の身体は震えるばかりで、全く自分の意思に従ってはくれなかった。
できることと言えば、悲鳴をあげてこちらに気付かれてしまわないように口を両手で塞ぐことぐらい。

”…………コトクンマコトクンマコトクンマコトクンマコトクンマコトクンマ…………”

風に乗ったのかその何かの発する音が三村の耳へと少しだけ届く。
それは聞く者から正気を奪うような底知れぬ不の感情が含まれており、悪魔を召喚する呪文の様でもあった。
この後、三村に出来たのは蜘蛛の様な何かが視界の外へと消えるまで必死に正気を保つことだけだった。


 ★ ★ ★


[07:15]

病院から通りを南へと、COOLさの欠片もなく全力疾走する三村の姿があった。
その端正な顔は恐怖に強張り、手足はバスケットをプレイしている時とは全く違うぎくしゃくとした動きを見せている。
みっともない遁走……そうとしか言えない様な情けなさである。そこにCOOLなサードマンの面影はない。

「……ハァハァ、……ハァハァ、……ここまでくれば」

交差点へと差し掛かったところで三村は足を止めて額の汗を拭う。
若さとスポーツの経験のおかげか、あの病院より1キロメートルほど離れるのにも時間はそうかからなかった。
もっとも、それが逃げ足だけは速い……などと評されては不名誉極まりないことだが。

「ぎ、逆に考えるんだ……あの化物同士が潰しあえば俺の手間が省けるってな」

ただ逃げるしかなかったという事実を覆い隠すかのように三村は言い訳めいた理屈を並べ立てる。
相手の人数が多かった。相手は化物揃いだ。こっちはただの人間。武器は金属バット一本しかない。
化物同士をぶつけ合えば労せずして漁夫の利が得られる。それは冴えたやり方。無謀と勇気は同じ意味ではない。

「……俺には、まず魔女の危険性をみんなに伝えるって仕事があるんだ。一人で戦うことじゃあない」

COOLな脳内で生み出される理屈はどれも間違いではない。
頭が回る人間ならば誰であっても彼と同じ様に考え、そして同じように動いたであろう。
だがしかし、その選択が恐怖に追われたからのものであり、その恐怖に屈したという事実は決してCOOLとは言えなかった。

「ハァ……、放送局はこっちか……と、うわぁ……っ!」

東の方へと歩き出そうとして三村は何かに足を滑らせてそこにしりもちをつく。

「な、なんだ……これ? ベトベトするし、なんか嗅ぎ慣れた匂いが……?」

手やズボンについた 【 白濁液 】 を拭いながら、三村は運命の交差点を東へと独り抜け出してゆく。
そして歩き始めて数分後。大きな音を背後に聞き、 【 信号機が倒れる 】 のを目撃すると今度は逃げ……走り出した。


 【TIP】 「白濁液」
 阿部さんが交差点の真ん中で自家発電した際に排出された液体。
 別に身体に害のあるものではないが、匂うし乾くとガビガビになるので洗濯するならお早めに、と言いたい。

 【TIP】 「信号機が倒れる」
 三村が交差点を抜けた直後にやってきたラッド・ルッソの仕業によるもの。
 今回の小さなな物語はこれに終了するが、かのように三村の運命は幕間を縫うようなギリギリのものであった。
 物語は書き綴られることでその可能性を収束させる。とすれば一つのシーンは一つの奇跡なのかもしれない。





 【C-6/市街地・放送局付近/1日目-午前】

 【三村信史@漫画ロワ】
 [状態]:健康、学ランが白濁液まみれ、KOOL
 [装備]:金属バット@ニコロワ
 [持物]:デイパック、支給品一式、光の護封剣@ニコロワ
 [方針/行動]
  基本方針:魔女の犠牲者を出さない。
  1:放送局に向かい、放送を利用して魔女の危険性を広く伝える。
  2:自分に同調する仲間を集め、魔女達に対抗できるようにする。
  3:魔女やその仲間は殺す。

 [備考]
  ※登場時期は漫画ロワ185話「誰がために」の直後からです。
  ※柊かがみが自分と同じ殺し合い(漫画ロワ)から来ていると思い込んでいます。
  ※柊かがみと同じ制服を着た者は全て魔女かその仲間だと思いこんでいます。
  ※現在、以下の人物を魔女やその仲間だと認識しました。
   [魔女]:柊かがみ
   [名前を聞いた]:柊つかさ、泉こなた、地球破壊爆弾No.V-7
   [姿を見た]:小早川ゆたか、泉こなた、地球破壊爆弾No.V-7、6/氏、結城奈緒、忘却のウッカリデス、遊城十代
  ※クールなロリスキーのことは柊かがみ本人だと思いこんでいます。


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


こうして、ある一時の11人目の交差は一区切りを終えた。
しかしそれはやはり区切りを終えただけということで交差を抜けたKOOLな彼の物語はこの後も続く――……


089:Dawn(暁、夜明け)(後編) 投下順 091:後夜祭
089:Dawn(暁、夜明け)(後編) 時系列順 091:後夜祭
065:彼 ら の 行 方 三村信史 114:RHK(らきロワ放送協会)



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー