目次
Part37
1つ目(>>55)
今日はポッキーの日
イチオグ、タマモニは例の如くイチャつく
稲荷とクリークはかたや微笑ましくかたや呆れながら見守る
そして、ゴルシ・ナカヤマ・サトノから誤った知識を得たグリちゃん
立派なジェダイの騎士になるべくベリちゃんをお供にポッキーを咥えてまだ見ぬ強者たちに挑むのだった。
銀河の歴史がまた一ページ
Part38
1つ目(>>44)
今回ピックアップのクラウンちゃん
手品っ娘
モニ「また、強い個性の子がいるわね」
イチ「手品なら私たちもできるわよ?」
モニ「まじ?」
イチ「ええ! ここにある蜜柑を消してみせるわ」
イチ「オグリ」
キュオッ!!
イチ「ほら消えた」
モニ「ええ……」
2つ目(>>120)
クリスマス
トナカイの格好したオグリとタマ、少しセクシーな格好のイチちゃんとモニーがプレゼントを配る
近くには監督するエアグルーヴとブライアン
そして、去年と同じくクリスマスツリーの格好をした会長
料理を振舞うクリーク率いる料理得意勢とそれを手伝うイナリ
料理を堪能するベリグリといつもの大食い娘たち
3つ目(>>138)
年末、夕食を済ませて炬燵に身体を突っ込むイチとオグリ
大掃除と言わんばかりに冷蔵庫の残り物と棚の食材を平らげたオグリ
新年から買い物して食材を揃えないとと苦笑するイチ
テレビに映る未だ現役タレントのファルコやカレンを見ながらただ黙ってテレビを見る二人
ふと机の上に置かれた手の指先に熱を感じる
横目に見やれば触れているのはオグリの指先
触れたり離したり指を絡めたり
不意にどちらからともなく笑い声が溢れる
外から聞こえてくる鐘の音
あけましておめでとう
しっかりと指を絡めながらお互いの目を見つめていた
今年もいい年になりますように
Part40
1つ目(>>182)
もしかしたらあるかもしれないイチちゃんのIF世界線
いつも通り友人たちとカフェテリアで談笑を楽しむイチちゃん
世間はすっかりクリスマスと有馬記念で話題が持ち切りになっていた。
晴れて自身もOPウマ娘になったものの自分には到底縁のない話だなと思っていると、友人の一人からふざけた調子でイチも出れるんじゃない?と言われる。
そんなわけないでしょと一蹴するものの憧れがないと言えば嘘になる。なにせ、アイツと同じ舞台に立つということだ。かつて、アイツが何度も駆け抜けたレースを自分も走る。
それはどんなに素晴らしいことなのだろう。有馬記念を走る自分の姿を想像していれば、カフェテリアの扉が勢いよく開かれて周囲の視線を一挙に集める。
自分もそちらに目をやってみれば馴染のある男性──イチちゃんのトレーナーが肩で息をしながら立っていた。
あまりの出来事に困惑していると、イチちゃんの姿を捉えたトレーナーはヘロヘロになりながらイチちゃんの下へとやってくる。
困惑するイチちゃんをよそにトレーナーは手に握っていた書類をイチちゃんに見せてきた。
そこに書いてあったのは有馬記念の人気投票結果であった。錚々たる顔ぶれの中、上位10人の中に馴染みのある名を見つけて戦慄する。
それもそのはずその馴染のある名前は──
続きはwebで
2つ目(>>185)
もしかしたらあるかもしれないイチちゃんのIF世界線その2
上位十名のうち最下位にではあったもののそこに書かれていた名前は紛れもなく自分の名であったイチちゃん。
なぜ? どうして? と疑問が渦巻くのもよそに友人たちやトレーナーは大はしゃぎで称える。
気づけばカフェテリア内にいる娘達がお祭り騒ぎの状態で誰も彼もが両手で拍手を送ってくる。
突然の事態についていけないイチちゃん。
それからというものどこへ行っても調子の狂う日々。
馴染の商店街に顔を出せば店主や店員から応援の声や 有馬記念選ばれてよかったな! だの、投票した甲斐があっただの。どこへ顔を出しても期待の声。
クラスのみんなはもちろんのこと、オグリとタマやイナリ、クリーク、ブラッキーにチヨノオー、ヤエノ、アルダン、バンブーといった面子から応援の声が送られた。(ブラッキーからは半ばやけくそ気味なのとどこかこっちを気遣ったものであったが)
突然世界が変わってしまったかのような状態、寮に戻って部屋で一息ついている頃。背中からモニーの一声が。
「平気なの?」 どこか不安そうな声に対してイチちゃんは「どうってことないわよ」といかにも強気に返して見せるのだった。
──震える膝を隠しながら。
記録はここで途絶えている。
3つ目(>>187)
もしかしたらあるかもしれないイチちゃんのIF世界線その3
イチの様子がおかしい。そう一番に気付いたのはオグリだった──きっかけはイチと同室のモニーからの相談だった。
といっても、モニーから直接イチの様子が変だと聞かされたわけではない。モニーから相談ついでに頼まれたのは、イチのことだから張り切りすぎて無理をしないように注意しておいてくれといったものだった。
頼まれた当初、オグリもイチの念願だったG1レース出走に湧き上がっており自分のできることで役に立ちたい思いでいっぱいだった。
明確に異変に気づいたのはいつものようにお弁当を堪能している時だった。いつものやり取りとしてはお弁当に舌鼓を打ちながら他愛のない会話をしていたのだが、その日はオグリがなにか言ってもイチ自身はどこか遠くに思いを馳せているかのような上の空。会話を聞き逃す素振りが目立つ。
おまけにぜったい普段はしないような卵焼きに殻が僅かに混ざっていたり漬物が切れておらず繋がっていたり。
特に目を引いたのはイチの指先。真新しいバンドエイドが巻かれていた。
有馬記念が不安なのだろうか。オグリがそう聞くとムキになって否定するイチ。大丈夫だからそう言って立ち上がると足早に去っていくイチ。
握りしめた拳が震えているのをオグリは見逃さなかった。
【体験版はここまでとなっています。続きは本編で】
Part41
1つ目(>>31)
もしかしたらあるかもしれないイチちゃんのIF世界線その4
有馬記念の投票結果が出て周りに押されるように参加してしまったイチちゃん。
それからというもの調子が著しくよろしくない。なんでもないミスは増えるわ、小さな怪我はするわ。
お弁当づくりで指先を深く切ってしまったときなんてクリークさんが青ざめながらパニックになってしまったくらいだ。
寮内を引っ繰り回すんじゃないかってくらいの勢いでバンドエイドを求めて奔走していたのは正直痛みを忘れるほどイチちゃんをあっけに取らせた。
幸い寮にいたフジキセキのお陰で台風一過を避けることはできたが、そのフジにも心配をかけてしまう。
それでもイチちゃんは強がって平気だと強く言い切ってしまうのだ。
ひとつは根っからの良心で心配をかけたくないという理由。そしてもう一つは──失望されるのを恐れているからだた。
とまあ、これだけでも生真面目なイチちゃんにはかなりのダメージなのだが、極めつけにとびっきりイチちゃんにダメージを与えた物がある。
それは自身のタイムが悪化の一途をたどっていることだった。
いつも通りに走っているつもりなのにまるで走り方を忘れてしまったかのように身体が硬直する。自由が効かなくなる。
どれだけ気をつけて走ってもタイムが改善されることはない。ひどいときはそれ以上に悪化するくらいだ。
さすがにトレーナーもこの異変に気がつきトレーニングを一旦切り上げ仕切り直そうとするが、イチちゃんがそれを許さない。
有馬記念が迫っているというのに、応援してくれたみんな──こんな自分に投票してくれたみんなに情けない走りを見せたくない。
それでもトレーナーはトレーニングを切り上げる。今は一度気持ちの切り替えをしたほうがいいと言うと一人事務所へと向かっていった。
残されたイチちゃんの影がすっかり傾いた日差しによってターフに長く伸びていた。
【──to be contenue】
2つ目(>>33)
自分が出ないレースに挑むイチちゃんを応援するオグリ
タイムが中々縮まらず苦戦するイチちゃんを見て助けようとするオグリだけど
「それでアンタが負けたらアタシの気持ちの立つ瀬がないじゃない!」「安心して待ってなさいよ」ってギラギラした感じで練習に戻る
大丈夫かな…と毎日のように見守るんだけど、色々な人や同レースの出走者から良い刺激をもらいつつ
本番ではなんと1着を取るイチちゃん
とっても嬉しいのに、なんだかずくずく胸が痛んで「ここに居たくない」って思ってしまって、背を向けるようにしてターフから離れていくオグリ
「待ちなさいよ」なんて後ろから声をかけられて振り向いたら、汗も泥も勝負服もそのままなイチちゃんが立っていて
「見たでしょ!?アタシの走り!勝ち逃げなんて許さないわよ!?」ってレース後のハイになった笑顔で言われるものだから
「あぁ…!」と最高の笑顔で返すオグリ
みたいなの見たい
3つ目(>>64)
もしかしたらあるかもしれないイチちゃんのIF世界線その5
あんなのレスアンカーワンじゃない。そう憤りを隠せずにいるグレイベリコース。
彼女とはオグリを奪い合うライバルだった。走りでは引けを取ってないと豪語する彼女ではあったがそれ以外の要素では一歩届かないと思わせる相手。素朴さの中にお淑やかさや華を感じさせ知れずに人を惹き付けさせるウマ娘。それこそが彼女のはずだ。
なら、いま目の前で見るも痛々しくなるほどにボロボロになっている彼女はいったい誰だ?
他者を寄せ付けないほど鬼気迫る表情で無理なトレーニングをする彼女はいったい誰なんだ?
いつも天真爛漫なに無邪気な笑みを崩さないドゥアスグリザリアですら不安げに顔を歪ませているほどだ。
その様子をフジ寮長に相談するもいつもの余裕のある笑みはなく困り果てた表情を浮かべる始末。
聞けば門限の時間を過ぎても走っていることが増えているらしく、フジの目を盗んで裏口から部屋に戻っているようだ。同室のモニーですら止めることができずにいる。
どうにかできないのか。悶々と悩みを渦巻かせながら歩いていると、ふと声が耳に入ってきた。
空耳だろうか。すぐ後ろについて来ていたベリコースに目をやると、どうやら彼女にも聞こえていたらしい。
声がしたのは近くの空き教室からだった。グリザリアと二人で息を潜めて中を覗いてみると中には数人のウマ娘が談笑していた。
その会話に耳を立てていれば純粋な彼女たちにとって到底信じられないような話だった。
その内容といえば、やれ最近のレスアンカーワンの不調っぷりを見てざまあみろだの、実力もないくせにオグリの腰巾着をやっていて気に入らないだの、挙げ句には──そんな実力不足のやつを有馬記念に担ぎ出して大勢の前で無様をさらさせてやろうだの。
一層、盛り上がりを見せる彼女たち。それとは正反対に息を詰まらせる二人。
どうやら、レスアンカーワンにそんな邪な思わくで投票した彼女たちの話を聞いて怒りで握りしめた拳が震える。
もう我慢ならない。怒鳴り込もうと立ち上がったその瞬間──彼女の口は後ろから素早く差し伸べられた手に塞がれた。
【次回に続く】
4つ目(>>106)
もしかしたらあるかもしれないイチちゃんのIF世界線その6
突然口を覆われたために身を硬直させるベリコース。グリザイアかと思ったが視界にわずかに映るその手は彼女のものではないとわかる。「静かにしろ。余計なことすんな」とそう聞き覚えのある声が耳元で囁かれると少しして手が離れた。慌てて相手の姿を確認すれば驚きで目をまんまるにしているグリザリアの隣に立っていたのは不機嫌そうに眉をひそめたブラッキーエールだった。短く舌打ちをするとブラッキーエールはベリコースとグリザリアの手を掴むと有無を言わさず引っ張っていった。
すっかり件の教室が遠ざかり校舎から出たあたりでようやくその手を振りほどいたベリコースは抗議の声を上げる。
何故止めたのか。なんであれほどまで酷いことを言わせたまま引き下がらなきゃいけないのか。なんでイチのために怒りをぶつけてはいけないのか。耳を引き絞りながらブラッキーの背に怒気をぶつけるベリコース。そのあまりの剣幕におろおろと怯えるばかりで止めることができずにいるグリザリア。
ひとしきり怒鳴ったあとでブラッキーが振り返る。その目を見て二人は思わず青ざめた。その表情が──何よりもその目が凄まじい殺気を放っていたからだ。
この場にいる誰よりも怒りを覚えていたのは彼女だった。なら、何故何も言わずにあの場を去ったのか? そんなベリコースの疑問に答えるようにブラッキーは口を開いた。
曰く、「あの場であいつらに衝突して問題起こして一番迷惑を被るのは誰だ? 他でもないイチだろうが」、「そもそもアイツにそんなこと一言でも頼まれたのか?」、「自身のせいで問題起こさせたってアイツに負い目を追わせたいのか」、「それ以前に後輩にそんなことさせてアイツの面子に泥を塗るだけだろうが」
その一つ一つを聞いて思わず俯くベリコース。たしかにそうだ。下手をすれば自分が良かれと思ったことのせいでレスアンカーワンをさらに追い込みかねなかったのだ。自らの浅慮さに思わず唇を噛む。
そんな様子を見てため息をひとつ吐いたかと思えばブラッキーは 踵を返しどこかへ去ろうとする。どこに行くつもりか尋ねてみれば「さあな?」ぶっきらぼうに返された。
去り際に「ただ、一言言ってやらねえといけねえ相手ができた」と言い捨てながらずんずん足を進めるブラッキー。一瞬、呆然とした二人だったが慌てて彼女のあとを追うのだった。
三人がたどり着いたのはトレーニング場だった。生徒たちはそれぞれトレーニングを終えたらしく姿を消していた──ただ一人を除いて。
夕日に照らされ伸びる影がひとつ。相変わらず満身創痍の走りを見せていたレスアンカーワンだ。
見るも痛々しい光景に口の中が苦々しいものでいっぱいになるベリコース。走りを止めて肩で息をするレスアンカーワン。そんな彼女にブラッキーは遠慮なしに近づく。
自らの視線の先に自分のものでない影が映ったのか顔を上げるレスアンカーワン。「よう」と悪戯じみた声色で声をかけるブラッキー。いったい何を言うつもりなのか。激励でもするのだろうか。彼女の思惑を測りかねながらその背を見つめるベリコースとグリザリア。
だが、彼女の口から出てきたのは二人の想像をばっさり切り捨てるほどレスアンカーワンにとって残酷な一言だった。
「みっともねえ走りだな田舎娘の腰巾着」
思わず呆気に取られて言葉を失うベリコースたち。そんな後ろの二人を無視してブラッキーはなおも言葉を続ける。
「とても有馬記念を走ろうとするウマ娘の走りとは思えねえな。いや、今のお前の走りならOP戦はおろかデビュー前のやつらにすら劣るだろうよ」
瞬間、目を鋭く尖らせて相手を射殺さんばかりに睨みつけるレスアンカーワン。だが、すぐに顔を背けると「うっさい、私はいま暇人のアンタにかまってる余裕はないの。邪魔すんならとっとと消えて」と吐き捨ててトレーニングを再開しようとした。
「まあ、聞けよ」そうおどけた調子で言いながら、素早くレスアンカーワンの正面に移るブラッキー。対峙する二人。しばしの間、にらみ合いが続いたがやがて折れるようにブラッキーが肩すくめて口を開く。情け容赦のない言葉を。
曰く、レスアンカーワンに投票した者の中にはあえて晴れの舞台で彼女を貶めようと画策する者たちがいたこと。それどころか投票した大半は懸賞目当てでちょうどいいウマ娘が思い浮かばずなんとなく頭に思い浮かんだ程度の投票でしかない──つまり、オグリキャップありきの人気でしかないということ。そして、それらの意味することはごく一部の親しい者たちを除いて誰もレスアンカーワン自身を本当の意味で応援していないということ。
なんてことを言うんだろう。改めてそう憤りを覚えるベリコース。なんでそんな残酷な現実を彼女に突きつけなきゃいけないのか。言い出した当の本人は「結局のところお前さんに追い風なんか吹いちゃいねえ。いつもどおり向かい風の中だ」と笑っていた。
さすがにもう我慢ならない怒鳴りつけようとしたその時──何処かから笑い声がこぼれた。
レスアンカーワンが笑っていた。お腹を抱えて大声で。
呆気に取られる二人。平然としていたのはブラッキーエールだけだった。
ひとしきり笑い終えると彼女は「なんだ、そういうことか」とだけ呟いてブラッキーに向けて何かを放り投げた。何事もなく軽々キャッチするブラッキー。その手に握られていたのはストップウォッチだった。
困惑するベリコースたちをよそに位置につく二人。まるで慣れ親しんだような所作。
ブラッキーが手を挙げるとレスアンカーワンが構える。そこには直前までの張り詰めてガチガチになった彼女はなく、理想的なまでに脱力した彼女がいた。
風の吹き抜ける音だけが場を支配していた。喉を鳴らす音がひどく大きく聞こえた時。
──ブラッキーの手が振り下ろされた。
それとほぼ同時にスタートを切るレスアンカーワン。なんてきれいなスタート。寸分の遅れもなく実に理想的だ。そんな感想を抱いていれば彼女はすでに第一コーナーに突入し、あっという間に第二コーナーへ。
さっきまでの走りはなんだったのか。そう思わせるだけのきれいなフォーム。そして余計な力が一切ない走り。
第三コーナーをぬけて第四コーナーへ。身体に一切ブレはない。
そして、最終直線に入ってラストスパート──あっという間にゴール位置を駆け抜けていった。
そうか、これが本当の彼女なんだ。
再び肩で息をするレスアンカーワン。傍らでストップウォッチを握るブラッキーに「どうだった?」と声をかける。
ストップウォッチの画面をしばらく見つめたあとため息ひとつ吐いて「ま、悪くねーんじゃねえの」と画面を彼女に見せる。
タイムを見たあとレスアンカーワンは「まったく、素直に褒めればいいのに」とからかえば「うっせ!」と悪態つくブラッキー。
すぐにどちらかともなく笑い出し、ハイタッチの乾いた音が場内に響いた。
5つ目(>>138)
グリチャンはどこかで聞いた曲を気に入ったら歌ってそう
「3がつ~は正月~で酒が飲めるぞ~、酒が飲める飲めるぞ~、酒が飲めるぞ~」
一斉に吹き出すイチ、ベリ、モニー
「あ、あなた!! いったいどこでそんなの覚えて来ましたの!?」
「Oh! 商店街のおじさんに教わりマシター!! いいリズムデスネー!!!」
「酒屋のおじさん……」
「いや、別にいいけどあらぬ誤解受けるわよねこれ」
Part42
1つ目(>>30)
日本らしいものが食べたいグリちゃん
今の季節旬はなんだろうと料理上手なクリークに尋ねてみるとつくしだと教わる
すぐさま土手に駆けていってつくしを収穫するがなかなか集まらない
しばらくして心配になったのかベリちゃんもなんやかんや言い訳しながら手伝ってくれることに
それでも一食賄うには少ない
すると偶然通りがかったウララとキングが手伝ってくれることに
さらに、どこからかやってきたゴルシやキタサンが参加して大所帯でつくし採取。
つくしだけじゃなく色とりどりの春の山菜をバケツいっぱいに採ってホクホク顔でトレセンへ帰宅するのだった。
帰宅後、泥だらけの顔を見られて吹き出されるのはお約束
2つ目(>>53)
「モニ、オグリがやってた焼き肉ゲームをやるわよ」
「どうせまた『ゲームが下手そうなオグリに焦げた焼き肉押し付けて泣かせてやるわゲギャギャギャギャ〜!』って思ってんでしょ」
「何よその悪役みたいな笑い方…まぁ見てなさいよ。3人じゃ足りないからグリベリの2人にも声かけておこうかしらね」
「上手くいく訳ないのに」
―――
「オグリ先輩待ってて下さいね!このベリが最高のお肉を…あっやば」
「もう!また焦がしてる!このゲーム火力強くてすぐ焼けるからあんまり沢山置かないの!ひっくり返すのが間に合わないわ!」
「イチ、この肉取ってもいいのか」
「それまだ返してない!返しといて!」
「やっぱり癖が出ちゃってるよ。結局こうなるんだからさ〜、まぁイチも肉食べてゲームを楽しみなって」
「モニあんた焦げた肉寄越すんじゃないわよ!!!」
「これが噂に聞いたニッポンのナベブギョー…」
3つ目(>>55)
タイタニック見ながらふと思いついた概念 恋愛シーンを見たときの反応
イチちゃん
平気そうな顔をしていかにも平然と振る舞っているものの段々と顔の赤みが増していき身体が震えだす。終わったあとベッドの中で枕に顔を押し付けて悶える。なんならオグリと自分でそういうシーンを【何故か】想像してしまい暴れる。そして、モニちゃんに枕を投げつけられる
モニちゃん
動じない お菓子をかじりながら「よくもこんな歯の浮くようなセリフを素面で吐けるもんだわ~」と間の 抜けた感想を漏らす。最近はタマ先輩をからかうのに使えそうなものを参考にする。たいていクロスカウンターを食らうのだが。
ベリちゃん
ただの初心じゃねえぞ。超弩級の初心だ。そんなシーンが匂おうもんならすぐに顔真っ赤にして倒れそうになる。顔を手で覆いながらも指の隙間から見てそう。
グリちゃん
目を輝かせて夢中になる。かなりのロマンチスト。セリフのひとつひとつにいちいち感動してそう。
4つ目(>>69)
もしかしたらあるかもしれないイチちゃんのIF世界線その7
ついにやって来てしまったレース当日。どこを見ても人、人、人。さすがは夢のグランプリ。師走の風物詩。一年の締めともいうべきレースというべきか。
あまりの人混みを見ただけで疲れてしまいそうな光景を前にイチは不思議と自然体を保つことができていた。それこそ自身でも驚くほどに。もともと本番には強い自覚はあったがここまで落ち着いてるのは意外と言うほかない。
むしろ、隣に並ぶトレーナーの方が気の毒に見えるほどあからさまに緊張していた。トレセンを出てからため息を吐くこと十数回。胃のあたりを擦ること二十回ほど。普段は赤みが差しているほど健康的なその表情はすっかり青々としていて緊張の極みにあることがわかる。
まあ、実際無理もないだろう。トレーナーにとっても今日は特別な日。生涯はじめてのG1レースなのだから。
イチはトレーナーにバレないように笑みを堪え、彼の背中を強く張った。
気持ちが一杯一杯のところに不意の衝撃。前に仰け反ったと同時にひどく咳き込むトレーナー。そして恨みがましそうにイチを見て途切れ途切れに「何をするんだ!?」と抗議の声を上げる。
ついに耐えきれなくなって笑い声をあげるイチ。「あんたが走るわけでもないのにそんな緊張してどーすんのよ」と軽口を一つかけると彼の脇を通り過ぎて関係者用入口へと向かっていった。
そんな様子を呆然と見送るトレーナー。「おいてくわよー?」と先へ進む彼女の声を聞いて慌ててその背を追いかけた。
控室に案内される二人。トレーナーがあれこれ準備をしているのをよそにイチの視線は机の上のもの──自らの勝負服に注がれていた。
まさかコレに袖を通せる日が来るとは思わなかった。友人たちとあれこれ好き勝手にアイデアを出し合って徹夜して考えたデザイン。あれから随分と時は経ったが結局身にまとうのは最後の最後になってしまった。
イチ自身はあの頃とは違って甘いはそこそこに酸いも苦いも、おまけに辛いも多々味わってはじめの頃の純真さはすでに失っていたけれど、この勝負服は初めて手にしたあの頃と何ら変わらず新品だった。
勝負服を前にして様々な感情が彼女の胸のうちで湧き上がっていると室内に軽やかなノック音が転がってきた。
扉に目を向けるイチと慌ただしく返事をしながら駆け寄るトレーナー。彼が扉を開けてみればそこに立っていたのはタマモクロスとエイジセレモニーだった。
挨拶もそこそこに中へ案内されるタマモたち。どうやら友人たちを代表して激励に来たらしく何やら手荷物を持ってきていた。
何を持ってきたのか不思議に思うイチたち。不敵な笑みを浮かべながらおもむろにその手に持っていたものを広げるタマモ。
それは横断幕だった。それも友人たちの応援の寄せ書きが書かれたもの。
タマモやモニーはもちろんのこと普段から付き合いのある友人たちが書いてくれていた。
元気いっぱい力強くやる気全開な文字はバンブーメモリー。
質実剛健で真面目さが伝わってくる筆文字はヤエノムテキ。
どことなく可愛らしさとこれまた真面目さがうかがえる少し不思議なことわざはサクラチヨノオー。
柔らかく育ちの良さが浮かぶ文章で悔いなく無事を祈るのはメジロアルダン。
意地悪でへそ曲がりながら幸運を祈ってくれているのはブラッキーエール。
素っ気なくも応援してくれるディクタストライカ。
花火のような豪快さで思う存分やれと促しているのはイナリワン。
こちらを労わりながら背中を押してくれるのはスーパークリーク。
──そして、『イチなら大丈夫』と短くも力強く書かれたオグリキャップの文字。
目を見開いたまま言葉に詰まるイチ。胸の中では熱く燃えるような何かがこみ上げている。わずかに視界がぼやけるのをどうしても止められない。
黙りこくった彼女を見てすかさずモニーが「あ、もしかして感動して泣きそうになってる?」と悪戯っぽく笑う。
図星をつかれてどうにか誤魔化そうと声を荒げながら強く否定する。
タマモが宥めながら「涙流すんわ終わったあとにしとき」とからかってくる。
「ちがうって言ってんでしょ」と大声で否定してみれば脱兎のごとく二人は控室から逃げ出した。
息を荒げるイチ。気を使うトレーナーに平気だからと言うと二人が去った扉を見つめながら誰にも聞こえないような声で「ありがとう」と呟いた。
勝負服を身にまといパドックへ。パドック入口に着くと一際大きな歓声が鳴った。
どうやら一番人気の娘が出ているらしい。裏まで聞こえるほどの歓声とはたいした人気ぶりだ。
そうこうしているうちに件の娘が戻ってきた。
脇を通り抜け際にちらりと横目でその姿を確認してみたがひと目見て格上だと認識できた。それも最前線で鎬を削り合えるほどの実力だ。
それを自覚しているのか彼女自身もかなり自信に満ちた表情だった。必ず勝つ。そんな気概が伝わってくる。
一つ息を吸って吐く。
──さあ、行こう。私の番だ。
パドックに出る。アナウンサーがイチの人気を会場に伝える。やはりと言うべきか彼女の人気はかなり低い。二桁人気だった。取ってつけたような話題で出場に漕ぎ着けたのだから当然というべきか。
歓声の代わりに浴びせられたのは様々な思惑が入り混じった視線だった。
好奇、蔑み、哀れみ、碌なものじゃない。誰も期待していないということだけは分かった。
しかし、そんな視線を浴びてもなお彼女の心に乱れはない。まったくの凪。完璧な平常心。
彼女が思っていたのはただ一つ。
──アンタたちの思い通りになんてなってやらない。
観衆たちを前にして決意を固めていると彼女の名を呼ぶ声が聞こえた。
声のする方へ向いて見ればいつの間に来ていたのだろうか彼女の両親はもちろん彼女の大好きな祖母、近所の住人たちの姿がそこにあった。
彼らだけじゃない改めて会場を見渡してみればデビュー当時から応援してくれている数少ないファンの姿、いつもお世話になっている商店街の人たち、職場は誰かに任せたのだろうか食堂の料理長、そしてクラスの友人たち。
彼らが応援してくれていた。
決して期待されていないわけじゃなかった。その事実が彼女を奮い立たせた。
自然、彼女は深々と頭を下げていた。ただただ感謝の気持ちを伝えたい一心で。
その瞬間、わずかながら歓声がわいた。
結果なんてどうなっても構わない。ただ、一心不乱に走りたい。走って彼らに感謝を伝えたい。
そんな思いを胸にパドックを去る。地下馬道へと向かう彼女の歩きは実に勇ましいものだった。
近場道を歩くイチ。レース場への入口でふと足を止めてしまう。
会場の歓声が響き、日差しが暗い地下道を照らすその場所が──行けば二度と戻ってこれないことを知らせていた。
そう今日が最後のレースなのだ。ここを通ってしまえばもう走ることはないだろう。
さっきまであれほど心震わせていたというのに、あんなに暖かい感情に包まれていたのに。地下道を歩いたそのわずかな時間がその熱を奪い代わりに嫌というほどに冷静さを取り戻させていた。
思わず息が詰まる。本当に通っていいのか? いいに決まってる。
やり残したことは本当にないのか? その通りのはずだ。
ならば何故? 私は今ここで躊躇しているんだ?
自然、イチは自らの胸元を強く握りしめていた。まるで自身の内側から飛び出そうとする不安を押し止めるように。
その時だった。背後から聞き慣れた声が彼女を呼んだ。
彼女が振り返って目にしたのは誰もがよく知り、そして彼女が最もよく知るぽっと出のアイツの姿だった。
日差しを受けて輝く芦毛が揺れる。
「何しに来たの?」 自分の情けない姿を見せたくなくてつい突き放すような言い方をしてしまうイチ。
内心ではしまったと思う彼女。オグリのことだからきっと応援しにきてくれたのに。自分のずさんな対応に胸の内で悪態をつきながら思わず顔を伏せた。
歓声をよそに二人の間では沈黙が続く。
怒らせてしまっただろうか。恐る恐る顔をあげて見て呆気に取られた。
目に飛び込んできたのは自分以上に緊張して挙動不審になっているオグリの姿だったからだ。
なんとも間の抜けた様子で言動が右往左往。あーでもなけりゃこーでもない。激励を送ろうとして頓珍漢なことを喋りだす。おまけに動きまでついてさらにやかましくなってきた。
しばらく呆けて言葉を失っていたが途端に吹き出し笑い声が溢れる。
顔を赤らめてそっぽを向くオグリ。
ひとしきり笑い終えたとき彼女の身体からはすっかり躊躇は消え去っていた。
目を瞑って息を吸う。そして悪いものを追い出すように吐いた。
もう大丈夫。お礼をしようとオグリに向き直った瞬間、突然視界が塞がれた。
一瞬何が起こったのかわからなかったが、次第にオグリに抱きしめられていることに気がついてあっという間に頭はおろか全身を沸騰させるイチ。
抗議の声を上げようとしたが耳元でつぶやかれるオグリの言葉に遮られた。
「イチなら大丈夫」
「イチならできる」
「イチなら走れる」
それは彼女にとって何よりの激励だった。こんな僅かな言葉だというのに力がみなぎってくる。
そして、耳元からオグリの顔が離れたと思えば──イチの額に柔らかい感触がわずかに触れた。
わけもわからないまま彼女から離れたオグリの顔を見る。
自信満々な表情で心底嬉しそうにオグリは言った。
「おまじないのお返しだ」
そう言い残すとオグリは足早にレース場とは反対方向に地下馬道を駆けていった。
残されたイチが自らの額に手を当てたまま立ち尽くす。心臓がうるさい。身体が軽い。まるで浮かんでいってしまいそうに。
だが、これからレースという現実を思い出した彼女は飛んでいってしまいそうな意識を引きずり戻すように自らの両頬をはたいて気合をいれると光指すほうへ歩いていった。