目次
Part49.5
一つ目(>>20)
明日は中秋の名月ということで思いついたもの
残暑残る今日このごろ 学園内にある木陰のベンチで棒キャンディーを加えながら茹だるモニー
空で燦々と輝く太陽を忌々しそうに眺めていると視界の端に見慣れた赤青のメンコがちらついた。
視線を空から戻して見れば眼の前を通るタマモクロスの姿が目に映る。買い物帰りなのか手には紙袋をいくつも下げていた。
まだ半分以上残っていた棒キャンディーを手早く咀嚼すると頭が痛むのも無視していそいそと駆け寄って声をかけた。
話を聞いてみるにどうやら今日は「中秋の名月」というやつらしく、今宵まん丸満月が空に浮かぶらしい。
そこで折角の機会だから学園内で「お月見」をしようという理事長の一声で生徒会やグラスワンダーなどの日本文化に詳しい生徒が中心となって準備しているようだ。
そんな中、タマモクロスは幾人かの生徒たちとともに買い出し役を買って出て、ついさっきまで商店街の和菓子屋をめぐりお茶請けの和菓子を買って回っていた。
タマモクロスが自慢げに袋の一つを広げてみれば袋いっぱいに月餅が詰まっていた。
これから食堂内のキッチンにこれを届けに行くというので同行することにしたモニちゃん。
「おそらく、いや確実にいるであろうルームメイトに激励でもしてやるか」 そう思ったモニちゃんはタマ先輩の荷物の半分を受け取ると食堂に向かった。
──たどり着いた二人が目にしたのはもはや戦場と化した食堂であった。
二つ目
仕事中に浮かんだベリグリ日常
ベリと買い物に来たものの逸れてしまうグリちゃん
とりあえず迷子センターでアナウンスしてもらいベリちゃんを待つ
しばらく待っていると親と逸れてしまったのか泣きじゃくる子供を連れて店員さんがやってくる
その子も同じように呼び出しのアナウンスをしてもらう
2人で待っている間も隣で子供は泣きじゃくる
するとグリちゃんは鞄から折り紙を取り出して子供に見せるように折ってみせる
子供がグリちゃんの折る手に注目しているとあっという間に鶴を折ってみせた
目を輝かせて喜ぶ子供 その笑みを見てグリちゃんもまた笑顔
もっともっととせがむ子供に喜んで応えるグリちゃん
しばらくして慌ただしく待合室に駆け込んできた女性 子供の母親だった
嬉しそうに飛びつく子供 心底安心した母親
グリちゃんにお礼を言って去っていく
そしてまもなくベリコースがやって来る
ぷんぷん怒りながら
あれから叱られながらも迎えに来てくれたことに大層嬉しそうにするグリちゃん
二人で和気藹々としながら帰路についた
なお、本来逸れたのはどうやらベリコースだった模様
三つ目
相変わらず盛況なカフェテリア。様々な生徒が机を挟んで会話を楽しんだり、黙々と食事に舌鼓を打っている。色とりどりな髪飾りは今の暦に合わせてさながら紅葉を迎えた山林のようだった。その片隅で吊り下げられたモニターの画面ではお天気のキャスターが『さて、今夜は中秋の名月を迎えます。本日は一日を通して快晴できれいなお月さまを見ることができそうです』と報じている。
それを聞いていたグレイベリコースはアフタヌーンティーを一口啜ってから「中秋の名月、ですか……」と独り言ちた。気がつけば9月を迎えていたらしい。
しかし、世間は以前として猛暑に見舞われているし街を歩けば未だに暑さ対策のグッズがこれ見よがしに店頭に並んでいた。だからこんなにも意外に感じるだろうか。
そんなことに思いを馳せていれば、向かいに座ったルームメイトのドゥアスグリザイアが「チュウシュウのメイゲツ?」と頭に疑問符を浮かべていた。
「あら、ご存じないのかしら」
「Sim! なんなのチュウシュウのメイゲツって?」
「日本ではこの季節になるとそういう風物詩が行われますのよ。まあ、端的に言えばお月見をするのに最も適した日、とでもいいのかしらね」
「Oh! お月見!!」
「ええ、月見団子を飾りながら空の満月を眺める。雅なものでしてよ」
「お団子!」
月見団子のことを聞いて一層反応を良くするグリザリア。やっぱり花より団子か。食欲を全開にするルームメイトに呆れながら紅茶をもう一口すする。
その後もテレビでは秋シーズンの話題で持ち切りだった。
まあ、とは言ってもだ。こんな夏真っ盛りな時にいざ秋の風物詩と言われても正直言って全然秋って気はしない。そう考えながら味が今ひとつ足りなかった紅茶に砂糖を追加してくるくるスプーンをかき混ぜる。
そんな時だ。どこかから強く視線を感じた。それもすぐ近くから。
視線を上げればグリザリアが期待に満ちた目でこちらを見ていた。何を言いたいかはすぐに検討はつく。
「……食べたいの? 月見団子」
そう尋ねてみればグリザリアは「Sim!」と力強くうなづく彼女。我が意を得たりと言わんばかりに嬉しそうにする彼女を見て思わずため息をついてしまう。
確かに作るのはそれほど難しくはない。でも、だからといって作る義理もないのだが……。
断ろうかとグリザリアに向き合うも爛々と輝く彼女の目を直視してしまって言葉が喉の奥に引っ込んでしまう。
「なら、作ってあげましょうか?」
そう答えがわかりきった問いを投げかけてみれば彼女は手をバタバタとさせた後、さも嬉しそうに「Sim!」とうなづいた。
すっかり微温くなった紅茶を飲み干した後、食器をカウンターに預けて私達は自寮のキッチンへと向かった。
キッチンにたどり着くなり「げっ」という不快な声がベリコースの口から飛び出した。調理テーブルの前に見慣れた後ろ姿があったからだ。赤みがさした鹿毛。ほかでもない憎き恋敵。ぽっと出の骨ウマ娘。レスアンカーワンだ。
ベリコースの声に気がついたのかゆっくりと顔だけこっちに振り向いた。
「あら、奇遇ね二人とも」
こっちの嫌味な声を気にする素振りも見せずに挨拶をかけてくる。
「Olá! イチセンパイ!!」
「はい、こんにちは。相変わらず元気ねぇ」
快活なグリザリアの声がキッチン内に響き渡る。近くで大声を上げられたせいで耳が痛くなるベリコース。顔を歪ませて耳を抑えながらレスアンカーワンの方を再び目をやれば彼女の前に置かれたあるものが目についた。下処理がされた大量の野菜。
「イチセンパイ。コレどうしたんデス?」
いつの間にやらレスアンカーワンのそばに駆け寄っていたグリザリアが野菜を指さして尋ねる。調理中にそんなひっついたら迷惑じゃない。グリザリアを叱ろうかと口を開けたのだが「ああ、これね」と気にした様子も見せずにレスアンカーワンが答えたので喉まで出かけた言葉をどうにか飲み込んだ。
「フラワーさんやライスさんがお野菜を譲ってくれたのよ。最近、理事長が新しく畑を作ってたでしょ? そこで採れたみたいでね」
そういえばそんなこともあったな。確か今年の春頃に理事長が農業実習の参加者を募っていた気がする。話に出ていた二人はどうやらその時に参加したようだ。
「それで美浦寮のヒシアマゾンさんがお月見に合った料理を作ろうって話になってね。いつもお世話になってるから手伝うことにしたのよ」
エプロンの裾で手の水を拭うとレスアンカーワンは二人に向き直った。
「二人もなにか調理しにきたの?」
そう聞かれたときベリコースの胸のうちでレスアンカーワンへの反骨心がむくむくと鎌首をもたげた。どうにもこの先輩には素直になれない。そもそもなる気はないのだが。
素直に教えるのも甚だ気に入らないので鼻息を粗くして「ふん、あなたに教える筋合いは――」と途中まで言い放つものの最後まで言えなかった。
「SIm! オツキミダンゴを作りにきましタ!」
「ちょっと!?」
ライバルに精一杯反抗しようとした目論見は隣の能天気娘のせいで不発した。思わぬ横槍で目論見を潰されたベリコースは毛を逆撫でながらグリザリアの両頬をつまむと「なんであなたはこういつもいつも余計な真似をしてくれますの!?」と折檻する。上に下に摘まれたグリザリアは「いふぁい、いふぁい」と情ない声を上げてされるがままだ。
眼の前で繰り広げられるトンチンカンなやり取りに呆れ混じりのため息を一つ吐くとレスアンカーワンは二人の間に割って入ってグリザリアを救出する。
そして、ボロボロになったグリザリアの身だしなみを整えながら「で、お月見の団子を作るんだっけ?」と話を本筋に戻す。
「は、ハイッ!! チュウシュウノメイゲツにはお団子が欠かせないデス!!」
調子を取り戻したグリザリアが元気に返事をする。隣のベリコースは苦々しげに二人を見つめていたがやがて諦めたように大きく息を吐くと渋々理由を話す。
「……はあ。ま、そういうことですわ。先程、カフェテリアのテレビで話題になってましてね。この娘が食べたいって言って聞きませんので」
「ふうん? 手伝いはいる?」
「手伝ってくれる――」
「要りませんわ! あなたの手助けなんてなくても十分作れますもの!」
「あっそ。ならいいけど」
そう素っ気なく言いながら野菜が盛られた籠を持ち上げるとレスアンカーワンは出口に向かう。けっこうな量なのにひとつも苦にしてない。
「キッチン使うなら刃物の取り扱いと火の元の管理は気をつけてね」と言い残すと彼女はそのまま立ち去っていった。
ベリコースは決して表にでないように心の中で舌を出す。言われなくても分かってるっての。
目を鋭くしてしばらく彼女が出ていった扉を眺めていたが一つため息を吐くと気を取り直してグリザリアに声をかけた。
「さ、とっとと作りますわよ」
「Yeahhh‼️」
再びグリザリアの元気な声がこだました。
テーブルの上に並んだ調理器具。団子用の上新粉。味付けに使うみたらし餡の材料である醤油に砂糖、みりん、そして片栗粉。ついでに冷蔵庫を開けた時に目についたこし餡。
エプロンに身を包んだ二人は「さ、始めましょうか」と意気込んだ。
上新粉をボールに入れて少し冷ましたポットのお湯を注いでいく。注いだものをヘラでかき混ぜながらまたお湯を注ぐ。それを数度繰り返しある程度形になったら手でこねていく。
捏ねるのはグリザリアが担当だ。まるで粘土を扱うかのように楽しげに捏ねていく。ここまでは順調。
だが、思わぬ壁が二人に立ちふさがった。
「耳たぶくらいの柔らかさってなんなのよ……」
そうこの抽象的な一言だ。人の耳たぶくらいの柔らかさといっても調理する二人はウマ娘。そんなもん分かるはずもないし自分達で確かめることもできない。
想定外の壁にぶち当たったせいで手が止まってしまう。
どうしようか。このまま何となくで進めていいものか。でも、お菓子作りほどレシピに忠実であったほうがいいものはない。悩むベリコース。
すると、突然グリザリアがなにか思い立ったかのように「ちょっと待ってて」と言い残してベリコースが止める間もなくキッチンを飛び出していった。
一人取り残されたベリコース。このまま団子の作業を進めることはできない。少し悩んだものの仕方がないのでみたらし餡を作ることにした。
鍋を用意して砂糖、みりん、醤油を加えていく。そしてよく混ぜ合わせたところに水と片栗粉を入れる。再び混ぜ合わせて均等になったら火を入れる。
中火でゆっくり温めながらヘラで均等に熱を加えていく。加熱していくうちに濁っていたそれがトロみをつけながら透明感が出てくる。醤油の香ばしさが鼻をくすぐる。
ふつふつと泡が出てきたところで弱火に変えてさらにかき混ぜる。
しばらくしてヘラの跡が残るくらいトロみが出てきたところで火を止める。
出来上がったものをボールに移して完成だ。とりあえず味付けはできた。あとは団子だけ。
すると、タイミングよくグリザリアが帰ってきた。
「ちょっとどこに行ってましたの!?」
「ちょっと耳たぶの硬さ確認してきタ!!」
「硬さを確認って……」
「トレーナーさんの耳たぶ触ってきた!!」
「エッ――ひとつ聞きますけど周りに人は……」
「? いたよ?」
思わず天を仰ぎ見るベリコース。そして眼前にいる彼女のトレーナーに同情する。なんて、はしたない真似をしたんだろう。
当のグリザリアはそんなこと気にする素振りも見せず手をよく洗ったあと団子の生地をこね始めた。
捏ねては確認。また捏ねては確認。それを何度か繰り返した後、ようやく納得のいく硬さになったのか「SIm!」と満足そうにうなづくと出来上がった生地をベリコースに差し出した。
「耳たぶくらいの硬さにできた!!」
自信満々に胸を張るグリザリア。差し出された生地を摘んでみるがイマイチ感触に違いがわからない。まあ、実際に確かめた彼女が言うのならいいか、と無理くり納得するベリコース。
気を取り直して出来上がった生地を粉を振ったまな板の上に取り出して細かく切り分けると一つ一つを二人がかりで丸めていく。二人でやるからさほど時間はかからなかった。最後に手のひらで押してわずかに平たくするのを忘れない。
全て丸め終えると沸騰した湯の中に投じていく。団子同士がくっつかないようにヘラでかき混ぜながら五分。団子が浮かんできたのを確認して火を止める。そこからさらに二分待つ。
グリザリアはもう待ちきれないのか口の端によだれが見える。
はしたないからよせと言っても直す様子が一向にない。
注意しようとした時、けたたましくタイマーが鳴った。ベリコースは苦虫を噛み潰しながら鼻で粗く息を吐くと網を取り出して団子を一つ一つ丁寧にすくって冷水に浸けていった。
ここからさらに団子をパットに移して乾かしていく。
作ってみて気づいたことだが団子作りは案外手間のかかるものだ。現に隣で手伝うグリザリアはもう我慢の限界を迎えていた。
「ねえベリ~?」
「駄目! まだ出来上がってないでしょうが!!」
「ええー!! 一つくらいイイじゃん!」
「駄目ったら駄目!!!! 後でちゃんとあげるから」
「ちぇー、ケチー」
口を尖らせながら不貞腐れるグリザリアをほっといて団子が乾くのを待つ。
しばらくして余熱も取れ十分乾いた団子を二つの皿に盛り付ける。そして、一つには作ってあったみたらし餡をかけ、もう一つにはこし餡を乗せて完成だ。
「――できた!」
初めて作ったにしてはなかなかの出来じゃないか。
自分でも満足行くくらいの月見団子がついに完成した。
四つ目
最近、曇りだったり雨続きでげんなり気味のモニちゃんと偶然食堂で鉢合わせたグリちゃん
それぞれの相方は方や湿気のせいで髪の毛が膨らんで手入れに難儀するということで同じ湿気敵に苦労するビワハヤヒデと手入れ道具を吟味しに、もう方や雨だろうが関係なくストイックにトレーニングに勤しんでいた。
二人して暇を持て余していると立ち寄ったトランセンドから妙な噂話を聞かされる
曰く、トレセン学園に天才博士とロボットがくるらしい
新たなイベント、それもガジェット系と聞いて食指が動くモニちゃん
かくして、旅の道連れにグリザリアも引き連れてやってくる博士とロボのことを調べに出かけるのだった
~続かない~
Part50
一つ目
今日思いついたこと
普段、マックイーンがお世話になってるからお礼とばかりにアルダンがイチをお茶会に招待する
ドーベルやライアンも同席するなか作法が間違ってないか緊張でガチガチになる
しかし、お茶会が進むに連れてそれほど格式張ったものではないと気づき肩の力が抜け会話を楽しむ余裕が出てきたイチちゃん
しかし、当人が紅茶を啜った瞬間にドーベルから思わぬ奇襲を食らう
「と、ところでイチ先輩はオグリさんとよくいらっしゃいますけど……。お二人ってその……お、お付き合いをされてるのですか?」
みっともなく吹き出した紅茶が青空を彩った
二つ目
イチにケーキを送りたい かぼちゃのお菓子を山程頬張りながら何気なくそう思ったオグリ
ならば作ろう そう思って厨房に立つものの料理とは違って菓子作りのなんとむずかしいことか
料理に腕は覚えどもお菓子作りはとんと経験がない 作れども作れども失敗ばかり
途方にくれていればやってくるのは寮の友人たち
友人たちの手を借りて苦労しながら作って作って
ついにお菓子が出来上がる 見た目はレシピの写真とは程遠いけど真心こめたこのお菓子
器に持っていそいそと 君のもとへ駆けりたり
君が一口、口にしてどんな感想をいってくれるのか
君を前にして微笑むオグリ
Part51
一つ目
ハロウィンということで渋谷に出てきたモニちゃんとタマ
あまりの人混みに少し気圧されるタマをモニちゃんが甲斐甲斐しくエスコートしていたが急に人通りが多くなりあまりの急流ではぐれてしまう。
どうにかSNSでお互いの居場所を連絡し都合よくあった目立つモニュメントの前でタマ先輩を待つモニちゃん。
右へ左へ流れる人々をぼんやり眺めながらタマ先輩を心配しながら待っていると少女漫画のお約束のようにナンパ男が声をかけてきた。
面倒くさそうににあしらうもののしつこく言い寄ってくる男たち。
ついには身体に振れられそうになったところで力強く肩を抱かれる。
隣を見れば耳を絞ったタマ先輩。眼光一つで男たちを竦ませると怒気をはらんだ声で男たちを追い払った。
あまりに都合のいい展開に胸を弾ませながらしばらく余韻に浸っていたモニちゃんだったが隣のタマが急にしゃがみ込んだので慌てふためく。
ため息といっしょに漏れたタマ先輩の安堵の声に思わず吹き出してしまうのだった。
二つ目
モニー「……イチ、ポッキーゲームをしよう」
イチ「えっ、嘘でしょ……」
(あたりに散らばるお菓子の空き箱)
イチ「あのね、たしかに今日はポッキーの日だってのはわかるわよ。浮かれる気持ちもわからなくもない」
モニー「まあねー。ふざけてポッキーゲームやってる子たちも見かけたし」
イチ「でもあんたもうポッキー全部食べちゃってるじゃない。それなのになんでまたポッキーゲームやろうって言いだしたわけ?」
モニー「……仕方ないでしょ、食べちゃったんだから。でもね、まだ物足りないんだ」
イチ「おばか。なら、ポッキーゲームなんてできるわけがないでしょ」
\その時、ふと閃いた!/
モニー「別にポッキーがなくてもいいでしょ!ポッキーなしでポッキーゲームだ!」
イチ「あっちょっ、こいつけっこう力強いんですけど!?誰か、誰か助けてー!」
三つ目
モニ「タマ先輩、あれなんですかね? あのちっちゃいの」
タマ「ん? えーと……、ミナミコアリクイ言うんやって。ブラジルとかのジャングルに住んだるんやと」
モニ「へー……。あ、バンザイしてる! かわいいー」
タマ「えーと? あん? なんやアレ威嚇なんか」
モニ「え!? あれで!?」
タマ「おう、じぶんを大きく見せて脅かしとるんやと」
モニ「ほへー……」
タマ「……なんやねんこっち見てそんなまじまじ見つめて」
モニ「──タマ先輩」
タマ「やらんぞ」
四つ目
グリ「すっかり冬になって石焼き芋が美味しい季節になりましタ!!」
ベリ「あなた秋にもおんなじこと言ってませんでした?」
グリ「石焼き芋はいつ食べてもオイシイデス!! あと温かいお汁粉も最高デス!!」
某メジロ「おしるこ!?」
ベリ「どわあ!? どっから出てきましたの!?」
Part52
一つ目
今日はお弁当の調理に珍しく手こずったイチちゃん。
ひとしきり作り終えて片付けが済んだ後、壁にかかった時計を見ると待ち合わせの時間間近に迫っていた。
慌てふためきながら身支度を整えて寮を飛び出す。
行き先は当然いつもの中庭。
息も切れぎれになりながら辿り着いた先にはベンチに座ったオグリの姿。
向こうはイチの姿を捉えると嬉しそうに手を振って呼びかける。
よかった……。どうにか間に合ったとオグリには気付かれないようホッと胸を撫で下ろした。
オグリがお弁当を平らげて満足そうにしていると辺りが俄かに騒がしくなってきた。
そろそろ登校時間になるらしく生徒たちの姦しい声が中庭にまで届く。
自分たちも教室に向かおうとベンチから腰を上げた時、2人の間を北風が吹き抜けて後からツンと突き刺すような寒さがイチの手を襲った。
そこでようやく自分が手袋を忘れたことに気がついた。
手を擦って暖を取ろうとするがあまりに寒いせいか手が悴んで上手く手が動かない。
そうこうしているとオグリが自分の手袋を渡してきた。
大変ありがたいのだがそれではオグリが寒い思いをするじゃないか。
オグリに悪いと断ると「私は平気だから気にしないでくれ」と胸を張って答えた。
それでも「自分のせいでオグリが寒い思いをするのはいやだ」とキッパリ断る。
すると、「そうか……」と呟いてわずかに考え込むそぶりを見せた。
だが、すぐに何か名案を思いついたのかイチに片方の手袋を渡すと早くつけるよう促す。
言われるがままに片手に手袋を嵌めると同じく片手だけ手袋をつけたオグリが隣に並び──
手袋をつけていない方の手を繋いできた。
一瞬何が起こったのか認識できず間の抜けた声を出したあと、すぐに状況を理解すると蒸気を噴き上げんばかりに顔を真っ赤にして驚いた。
「な、なななななななななな!?」
奇怪なビートを刻むイチの顔を覗き込んで
「ほら、こうすれば温かい」
屈託のない笑みを浮かべるオグリ。
すっかり脳の回路がショートしたイチはそのままオグリのされるがままに手を引かれ教室へと連れてかれるのだった。
手を引かれている間、満更でもなさそうにしていたのはイチちゃんだけの内緒。
なお、そんな2人の様子が他の生徒たちの視線に晒されることになり自分の席に突っ伏しながらしばらく悶えることになったことは言うまでもない。
二つ目
──夢を見た。
トレセンに来る前の夢。
両親が私のやることにいちいち口やかましく言ってくる。
「そんなものばかり食べちゃだめだ。もっと栄養バランスよく食べなさい」
「家にいるばかりじゃ駄目じゃない。ちゃんとお外で体を動かさないと」
「ほら、支度をしなさい。そろそろ家を出ないと英会話の塾に遅れてしまうよ?」
「なんでプール教室をサボったの!?」
そうやってなんでもかんでも自分たちで決めて私の言うことは子どものワガママだって一蹴して。
なにか言えば決まって「これは全部あなたのためなんだから」と言う。
お父さん、お母さん。
私がいつそれを望んだんですか?
モニちゃん。トレセン入学間もない頃の夢の話。
三つ目
校内の一角で営まれている喫茶マンハッタン
イチちゃんやベリちゃんが度々手伝う姿が目にされる
そのためか喫茶店と謳っておりながら定食屋染みたものが振る舞われる
ただコーヒーの売れ行きが不調かと思えばそういうことはない
なぜなら看板娘と化したイチちゃんともはや常連となった芦毛の怪物のやりとりのせいで飛ぶようにブラックコーヒーが注文されるのだとか
そう語るオーナーのマンハッタンカフェの表情はどこか複雑そうな笑みを浮かべていた。
四つ目
イチちゃんの料理の腕前を聞いてラーメン屋台の助っ人を頼みに来た殿下
手ぶらじゃ失礼と思いお茶会の席へ招待してお願いする殿下
席につきながらも冷や汗が止まらないイチちゃん
なんせ二人を囲うようにSPの方々が立っているのだ
並々ならぬ威圧感に押しつぶされそうになりながら味もわからない紅茶をすするのだった
五つ目
ベリグリ、イチちゃんのトレーニー概念
珍しく──というわけでもないがイチちゃんと喧嘩したベリちゃん。逃げるようにその場から走り出して誰もいない場所へ。
すぐに謝れば許してくれるだろうけどプライドが邪魔していじけることしかできない。
すぐにグリちゃんがやってきてベリちゃんの手を引いてイチちゃんの元まで引っ張っていく。
トレーナー室に戻ると温かい飲み物を用意して2人を待っていたイチちゃんがいた。
六つ目
冬の早朝 いつものように早起きしてお弁当作りにキッチンへ降りてくるとこの寒さのせいかいつもより起きている人が多い談話室
皆同じようにストーブの前に陣取って身を擦っている
見かねたイチちゃんはそんな彼女たちのために生姜を擦ってレモンを垂らし蜂蜜を少し加えた生姜湯を振る舞うのだった
その日 機関車のように湯気を上げるウマ娘が多数確認されたとか
Part53
一つ目
「いよいよ明後日はクリスマスですわね?トレーナーさん」
「そうだけど、何よ」
「………クリスマスですわね?」
「だから何よ……」
「……(正直に "トレーナーさん、クリスマスプレゼントください!" って言えばいいのに、ベリって昔からずっと不器用だよネ)」
二つ目
たまには辛~い料理でアイツに一泡吹かせてやりますわ…クフフ…と邪な気持ちでキッチンに立つベリちゃん
心の底でニタニタしつつ料理を提供するも
「あら、宮崎辛麺じゃない。ホントに食べちゃっていいの?…ん、結構美味しいじゃない。やるわね!」
と普通に評価されてしまい複雑な心持ちのベリちゃん
そこに運悪くオグリがやってきて、イチから一口もらうや否や
あまりの辛さにバターンと卒倒してしまうのを目撃してしまったベリちゃん
(事故とはいえ)憧れの先輩に酷い仕打ちをしてしまったショックと申し訳なさでその日一日中寝込んだベリちゃん
三つ目
グリ「もーいーくつねーるーとーおーしょーおーがーつー」
イチ(あら、もうそんな時期か)
グリ「お正月には凧揚げてー、はーなび打ち上げ眺めましょー」
イチ(……ずいぶん派手で豪華なお正月ね)
ベリ「あら、そういえばそろそろそんな時期ですか。うちもそろそろ注文してる頃かしら」
イチ(!?)
四つ目
タマ「なあオグリ」
オグリ「なんだタマ?」
タマ「なんでうち持ち上げられとるん?」
オグリ「モニーにお年玉を上げようと思ってな」
タマ「ああ こうやって高いところからうち落としてお年玉──って喧しいわ!! はよ降ろせや!!」
オグリ「だめだタマ まだ下の準備ができてない」
タマ「落とせ言うとらんわ!! 降ろせ言うとんねん!!」
モニー「オグリー!! いつでもいいよー!!」
タマ「あんたもなんでノリノリで待っとんねん止めろや!!」
イチ「ちょっと待ちなさいオグリ」
オグリ「おお! さすがイチちゃんや! そのまま止めてくれ!」
イチ「命綱忘れてる!!」
オグリ「む すっかり忘れていた! さすがイチだな!」
タマ「ちっがあああああああう!!」
五つ目
冬休み突入してさて何処へ出かけようかという時に風邪を引いてしまったモニちゃん
雑誌も読み飽き スマホも見飽き いよいよ退屈の極み
こんな時に限って同室は実家に帰省してるし
ひとりぼっちの状況に切なくなり始めたその瞬間
扉を開けてタマ先輩が入ってきた
タマの顔を見たら途端に元気が出てきたモニちゃんは甘えたり憎まれ口叩いたり揶揄ったりしながらも嬉しそうに看病されるのでしたとさ
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