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東方紅魔郷 大きな湖のほとり

最終更新:

shinatuki

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だれでも歓迎! 編集
現在:ディアボロ Lv8  満腹度 86
攻撃 ハーミットパープル+1
防御
能力
射撃 F・F(2)
その他アイテム 群青色のディスク、真珠色のディスク


Stage2 大きな湖のほとり ~BGM ルーネイトエルフ~

森を抜けるとそこは大きな湖だった。
大きな。
ただの形容ではなくそれ以外に指す言葉がないだけだ。
目の前全てが湖、向こう岸に小さく屋敷が見えるくらいで他には何も見えない。
「さて、どうしたものかな」
ルートは二つ考えられる。
ひとつは直進。泳ぐなりなんなりしてこのまま突き進む。
もうひとつは迂回。果ての見えない湖の端を目指してひたすら歩く。
どちらも危険な橋だ。
前者は敵に見つかったときに迎撃できない。後者は餓死の恐れがある。
一般人なら当然後者を選ぶだろう。
だが彼は違う。
餓死。彼の経験の中であれほど辛かったものもそうない。
非生産的で機転を利かせようとも如何ともし難い、もっとも惨めな死に方。
それは絶対に避けて通りたい。ならば道は限られる。
「500…1km以上はあるかもな」
男、ディアボロは水泳に備えて準備体操を始める。
「そういえば、さっきのディスクがあったな」
伸脚運動をしていると不意に思い出した。
ルーミアから奪った物とその前に拾った物の二枚が今彼のアイテム袋の中に眠っている。
「とりあえず確認しておくか」
そういつものように誰にでもなく呟きながら二枚を出す。
記憶ディスクと能力ディスク。セオリー通りに行くならまずは記憶ディスクからだろう。
【なんと真珠色の記憶ディスクはジョナサンのディスクだった。】
頭をめぐる一人の青年の青春。
(『「策」ではないッ!「勇気」だ!!』)
邪悪の化身とともに水底に沈んでゆく記憶。そこで彼に記憶が帰ってくる。
と同時に身体に溢れる太陽の、生命の、波紋のエネルギー。
【吸血鬼に強くなったぞ。】
ディアボロは小さくガッツポーズをとる。大当たりだ。
このディスクの効果は波紋という対吸血鬼用の能力が使えるようになるというものだ。
別に吸血鬼に勝ちたいわけではない。そもそもこのダンジョンに吸血鬼自体いるかどうかも怪しい。
それよりもこの状況で嬉しかったのはこのディスクによる付加効果。
「よっと」呼吸を整え、水の上に足を置く。
そう、このディスクの付加効果は『水上を歩けるようになる』。
この状況で最高に欲しかったディスク、それが手に入った。
彼は鼻歌交じりでもうひとつのディスクを頭に捻じ込む。
一般的に考えれば見識別のディスクを何の戸惑いもなく装備するのは自殺行為。運が悪ければ最悪の事態を招きかねない。
しかし幸運はさらに続く。
【C・ダイヤモンドのディスクを能力用に装備した。】
「おおっ!!」思わず声が出る。大当たりその2だ。
攻撃力7を誇る強力な能力。いきなりバカづき!!
(攻撃は最大の防御、誰が言ったのか。今俺はその言葉の意味を心で理解した)
どこかから『直さないからいい!』という間の抜けた少年の声が聞こえた気がした。
【C・ダイヤモンドのディスクを攻撃用に装備した。】
【ハーミットパープルのディスクを防御用に装備した。】
「しかし、本当に遠いな」
水の上を歩きながらそう一人ごちる。
もう十分近く歩いているが、いまだに何も起こらない。
そろそろ歩くのにも飽きてきた。
「敵でも出ないかなー…なんてな」
そう呟き、次の一歩を踏み出した瞬間だった。身体をいきなり包む張り詰めた空気。
頭の中でサイレンが鳴り響く。そして聞こえる誰かの声。
【大妖精ハウスだ!】
「大妖精…?」
モンスターハウスに踏み込んだだということは分かる。
―だが、妖精?あの絵本に出てくるような、ファンタージーやメルヘンの世界の妖精か?
存在するわけがないと高をくくり気にせずに歩き出すと、彼のほうに何かが飛んできた。
白く、球状をしたふさふさの、そう、それはまるで。
「でかい、毛玉?」
毛玉が力いっぱい俺のほうに向かって飛んできている。
考えるよりも早くC・ダイヤモンドでそれを叩き落とす。
『ドラァッ!!』
「なんだったんだ今の…は!?」
言葉を続けようとして彼は驚愕する。
目の前少し先に広がる白一色の景色。
―もしかして、これら全てがさっきの毛玉だというのか?
よくよく目を凝らしてみると、一つ一つが重なり合うようになっているのが分かる。
膝が笑い始める。
恐怖だけではない。先ほどからどんどん水上の気温が下がってきているのだ。
冷却。これもルーミアの闇と同じように誰か(大妖精?)の力なのだろう。
ディアボロは白の山を睨みつけて、大声で叫ぶ。
「上等だ、何体だろうとかかって来い。貴様らには!後悔する!!時間すらも!!!与えん!!!!」
【気をつけろ。このエリアはチルノに守られているぞ!】
数分後。
飛び掛ってきた最後の毛玉をなんとか叩き落とす。
と同時に大きく息を吐き、その場に崩れるように腰を落とす。
(つ、疲れた…
何体でもとは言ったが数十、いや百近く来るなんて思わなかったぞ…
しかし流石はモンスターハウスといったところか)
顔を上げ、辺りを見回す。
水面にはいくつもディスクやアイテムが落ちていた。
彼は装備していたF・Fで傷を埋め、アイテムを回収し始める。
相当な量だ。ディスクのほかに、ピッツァやカエルなども落ちている。
そしてその中でも特に目を引いたのが。
「血みどろのヤバいものだな」得体の分からないものを両手で持ち上げて呟く。
ヤバいもの。全貌がはっきりしないという、前代未聞のアイテム。
触っている今でさえこれが硬いのか柔らかいのか、暖かいのか冷たいのか、それどころか今きちんと持てているのかさえ分からない代物。
それを無理やりにアイテム袋に突っ込み、考える。
(今のが大妖精なのか?いや、お世辞にも妖精とはいえない。いいとこ毛玉の大将だ。
ならば本物の大妖精はこの近くのどこかにまだ居る筈だ)
考えをまとめて周りを見渡す。
十二時の方向に俺に背を向けて水上を飛ぶ少女がいた。
【ディアボロのレベルが上がった。】テッテテテッテッテッテッテッテッテッテッテー
【真紅のディスク、トラクターのタイヤ(0)娼婦風スパゲティ、ネアポリスのピッツァ、ピッツァ×2、カエル×2、
ゾンビ馬、新緑色の記憶ディスク、萌黄色のディスク、漆黒の記憶ディスク、
F・Fのディスク(8)、エコーズact1のディスク(5)、エコーズact2のディスク(5)、セックス・ピストルズのディスク(8)、
マンインザミラーのディスク(8)、ハイエロファントグリーンのディスク(11)、血みどろのヤバいものを手に入れた。】
自分に背を向けて飛んでいく少女を見送った後、ディアボロはもう一度周りを見渡し敵がいないことを確認する。
背中を向けて逃げて行く少女に追いつくなど浮浪者を殴り殺すよりも簡単なことだ。
それよりも今しなければいけないことはひとつ。
アイテムの識別だ。
彼は先ほど拾ったディスクのひとつを取り出し、思い切り頭に捻じ込んだ。
展開されてゆくひとつの記憶。


森の奥にひっそりと立つ小さな骨董屋。
この記憶の持ち主が経営をしているらしい。
様々な人や人にあらざる者が様々な物を求めて文字通り飛んでくるお店。
お得意様は鮮やかな紅白の服を着て空を飛んでくる少女と真っ黒な服を着て箒に跨って来る少女。
今日も一人の少女が入ってくる。
(『また来たのかい?』)ディアボロが、もとい記憶の持ち主が入ってきた真っ黒な少女に向かって呟く。
(『面白いものが手に入ったって聞いたぜ。』)真っ黒な少女はひまわりのような笑顔を俺に向ける。
(『面白い、かどうかはわからないが。これなんか…』)そういって近くにあった物をその手に取り少女に見せる。
【なんと新緑色のディスクは森近霖之助のディスクだった。】
【アイテムが全て識別されたぞ!】

(…今の記憶は、初めてだな)
記憶の再生を終えてその残滓を掬い上げながらディアボロは考える。
(しかし、どういうことだ。確かに紅白の少女は空を飛んでいた。
それに店主。物の使い方が分かる能力だったか。なんてうらやまs…もといチートな能力だ。
スタンド?違うな、あれはもっと別の何かだ)
ならば考えても答えが出るはずない、と割り切って識別が終わったらしいアイテムをもう一度確認する。
「パールジャムにクラフトワーク、なんと心強い!!それにヤバいものはサーフィスか。こちらもぼちぼちだな。
スパイスガール、ムーディーブルース、デス・13、エコーズact3、ザ・ハンド…タイヤ様様!ッてか。
チープトリックは…いらないな。
あとは承太郎、ケンゾー、エンポリオ、アブドゥル、ミキタカ、これは…」
目に入ったのは今までの冒険で一度も目にした事のない絵柄のディスク。
金髪の幼女がこちらに向かって両手を広げている。
「ルーミアのディスクか、これ?」
そう、そこに描かれていたのは先ほど戦った少女、ルーミアだった。
彼女の身体に刻まれていた傷を思い出し、一瞬記憶を見てみたいという衝動に駆られたが寸での所で思い止まる。
「危ない危ない。もしかしたら真っ暗になるなんて効果かもしれないしな。
さて!」
アイテムを袋の中に押し込み、顔を上げる。
「確かこっちだったよな」
そして彼は、先ほど少女が飛んでいった方に向きなおす。
【クラフトワークのディスクを防御用に装備した。】
【パールジャムのディスクを能力用に装備した。】
少女、大妖精は力の限り逃げる。
規格外。その一言では済まない状況だった。
100以上いたはずの毛玉を侵入者であるあの男は全て叩き落した。
あんな男に正面切って戦いを挑めるほど自分は強くない。
だったらできることは一つ。
(チルノちゃんと一緒にあの男を倒す。)
そう決心したのとさほど変わらない時、大妖精の下を何かが抜けていった。
それはきらりと輝きながらすばやく水上を滑走してゆく。
そして、彼女の少し前で水面に落下する。
(なんだろう、あれ)
元来彼女たち妖精は興味や面白さを基準として行動をするものとして伝承されている。
彼女も御多聞に漏れずそういった傾向を持っている。
ふらふらと夢遊病患者のようにそれに近づいていく大妖精。
少し戸惑いながら彼女はそれを手にとって覗き込む。
そこにはサイドテールの少女が移っていた。
「鏡、だよね。何で…」
何処からどう見ても何の変哲もないただの鏡。
上から見ても下から見ても映るものは変わらない。
しかし次の瞬間、大妖精は異様なものを目にした。
一人の男が鏡越しにこちらを見つめているのだ。
慌てて振り返る、が彼女の後ろにはやはり誰もいない。
鏡に目を戻すと男はこちらに向かって歩いてきている。
「う、嘘…いや、いやいやいや!!いやーーーーー!!!」
そのまま拒絶するように水面に鏡を落とす。
このときの彼女の失敗は反射面を上にしてしまったということだろう。
彼女はその場から姿を消した。
大妖精が再び目を覚ますと、そこは先程離れたはずの場所に戻ってきていた。
彼女は考える。
(なにがおこったの?鏡の中にいた変な男の人に引きずり込まれたと思ったら、元の場所に戻ってる?わけが分からない…)
とにかくここは先程まであの男がいた場所。長居は禁物。
すぐに羽ばたきその場を飛び立とうとする。
しかし、
「あれ?あ、あれ?」飛べない。
足が根を張ったように(水上だが)びくとも動かない。
不思議に思って彼女は水上の足を見ようとする。
そこで彼女は驚愕する。
足、というよりも腰から下が存在していないのだ。
あるのは分かる。しかし鏡を境目として自分の身体が真ん中でぷっつりと途切れている。
「下半身だけ入るのを許可した。もうお前は動けない」
大妖精の顔が引きつる。その声は先程雄たけびを挙げた男の声に良く似ているのだ。
「さて、形勢逆転だな」
水面に足が映る。そのズボンはやはり見覚えのあるものだった。
大妖精は意を決して顔を上げてみた。
やはりというべきか、そこには先程の男、ディアボロが立っていた。
大妖精の頬を汗がつたう。紛れもない冷や汗だ。
逃げたいが空も飛べない。足が動かない。
「これから簡単な質問をする。イエスノーで答えられる簡単な質問だ。
肯定ならイエス、否定ならノーと答えればいい。」
ディアボロは続ける。
「俺は気が長いからな。三つだ、二つでも四つでもなく正確に三つだけカウントしてやる。
もし三つ数え終わるうちに答えないようなら…」
そこで不意に彼の言葉は止まる。
―どうするべきなんだ?
(一本ずつ指を折るか?ダメだな、ショック死しかねん。
羽、これもきっとダメ。
髪…多すぎる、論外だな。)
結局行き着く結論はルーミア戦後と同じらしく。
「…衣服を一枚ずつ脱がす。」
「えぇっ!!?」
もちろん彼に下心などさらさらない。
妖精でもこの冷気の中で素っ裸にひん剥かれれば口を割るだろうという考えからの発言だ。
しかし勿論というべきか、やはりというべきか、二人との間には誤解が生まれる。
そんな些細な誤解には気付かずにディアボロは続ける。
「俺に攻撃を加えようとする事、他からの攻撃を助長するような行動は許可しない。
もしこの二つに属することをすれば、俺は迷わずお前の衣服を全てひん剥く。」
そう釘を刺され、大妖精は身震いをする。
先程からの冷気のせいではない。目の前の男への恐怖からである。
少女は確信していた。目の前の男は有言実行の変態であること。
そして自分には道が残されていない、つまりどうあれひん剥かれることは確実だろうということを。
「まず一つ目の質問だ。『先程の毛玉はお前の仕業か?』」
大妖精は答えずに、いや、正確には答えることができずにいた。
理由は単純、これの答えがイエスだからだ。
それならば頷けばいいだけではないか、と思うかもしれないが問題はそんなに簡単じゃない。
なぜならその返答だけで男が自分を殺す理由には足るからだ。
「ウーノ(1)…デューエ(2)…」
ディアボロは指を折り曲げながらカウントダウンを開始する。
死への恐怖と脱衣への羞恥とのジレンマが大妖精の頭の中を駆け巡る。
しかしいくら考えても打開策など出るはずがない。
「トレ(3)」
言い終わると同時にディアボロはすっと手を伸ばし大妖精の髪についていたリボンをとる。
その目には迷いや憂いなんてものは存在していなかった。
「ならば次の質問だ。『お前はチルノか?』」
『チルノ』。その名を出された瞬間に大妖精の思考は凍りついた。
この湖の主的存在を自称している自分にとっては唯一無二の大親友。
なぜその名を今日この湖に着たばかりの変態男が知っているのか。
「ウーノ(1)」
カウントが始まる。
風が髪を通り抜ける。いつもは束ねている髪も風に揺れ、頬に当たる。
答えることなどできない。できるはずがない。友情は彼女にとって何にも替えることができないのだ。
彼女を守るためならいかなる辱めにだって打ち勝てる。
「デューエ(2)」
大妖精は目の前の男をまっすぐに見据えて覚悟を示す。
その強いまなざしは自分はもう迷わないという強い意志の現れ。
その意思が彼女の幸運を呼び込んだのか、それとも単なる偶然か。
奇跡は起こった。
大妖精の目に映ったのはこちらに向かって飛んでくる数本の氷柱。
紛れもない二人の友情の証。

「トレ(3)…なんだ?」
大妖精の視線に気がついたディアボロも後ろを向く。
氷柱はもうすぐそこの位置まで来ているが彼はあせらない。
横に移動して氷柱の直撃を避け、ゆっくりと氷柱の打ち出された方向に目をやる。
そこには一人の少女が浮かんでいた。

to be continued…

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