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不死鳥は失敗を恐れない 第七話

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 後方から迫る馬たちに、ジャイロは大きく身体をひねって振り返った。
 既にゴールまでの距離は1,000メートルを切る。
 自分と後続の差を測るかのように後ろを見る。
 それは追いつかれるのではないかという不安か、それともただの余裕か。
 妹紅と、ジャイロの目が合った。
「ニョホ」
 ジャイロは金歯を見せて笑う。
「厳しいな……」
 妹紅の赤い瞳は細められたまぶたに歪められる。
 ものすごいスタミナを誇るアハルテケといえど、前半でディエゴに挑んだ無理がたたったのか、疲れを見せてきている。
“メキシコから吹く『サンタアナ』の中を崩れた『土石流』達が一直線にゴール目指して襲い掛かるゥゥゥ!”
 耳に入るアナウンスの声から、後ろの奴らが仕掛けてきたことを悟る。
 今こうしてジャイロを刺すために加速をしているが、今の馬の体力ではいつ潰れるか分からない。
 耳に入るのは、観客たちの歓声と、馬の蹄の音、
“ゴールの前に集まった観客たちの声はまるで津波のよう! 到着する機関車の音が全く聞こえませんッ!”
 そして実況のアナウンスの声。
 ふと、少しだけ、背後が気になった。
 背後から、何か大きな存在が迫ってきている。
 今更になって汗が噴き出した。すぐにその汗は風に剥がされて短い命を終える。
 だが、汗が乾いた後もまだその汗が残っているような気がする。
 少しだけ、振り向いてみた。
「……いつの間に……」
 妹紅はその姿勢のまま、固まった。
 視線の先には、追っ手が二人。
 ジョニィと、ディエゴ。
 そう、ディエゴがやってきた。
「アナウンスで聞いただけではまだ後続集団の中だと思っていたが……次は一体どんな魔法を使いやがったんだぁ?」
 妹紅は、迫りくるジョニィとディエゴに狼狽した。

  不死鳥は失敗を恐れない 第七話『クライマックス』

「くそッ……! ディエゴの奴、引き離しても引き離しても、オレの馬を風圧シールドにしてまったく離れない!」
 ジョニィは、背後に迫るディエゴを視界の端で見る。
 彼は実感した。
 このまま向かい風の中を、自分にピッタリとゴールまで引っ張らせておいて最後の最後に全てを掻っ攫っていくつもりだと。
「そうはさせるか! ジャイロも限界に近づいているッ! あのジャイロを差すのは……」
 ジョニィの馬体が一気に沈み込み、
「このジョニィ・ジョースターだッ!」
 馬の脚が、小石や砂を巻き上げ、背後にいるディエゴに降りかける。
「うおっ……こ、小石!」
 ディエゴはとっさに手をかざし、飛んでくる小石から顔を守る。
 その隙に、ジョニィはディエゴを大きく引き離す。
「こいつ! プロの騎手出身か! 加速するとき小石を巻き上げて『風圧シールド』を防ぎやがった!」
 歯軋りをして、ディエゴは前を走るジョニィを睨む。
“おおーっと! ここで転倒している馬がいるッ! よれている馬も!”
 会場にアナウンスが鳴り響く。
 アナウンスの通り、ディエゴの背後では転倒する馬、よれる馬、挙句の果てに走るのを止めている馬の姿が。
 その無様な姿を視界の端に捉えたディエゴは、直感した。
 ここから先はもう『技術』を使っても無駄なこと。
 そして、ここに来るまでどれだけ『脚』を温存してきたかのみ。
「それだけだ! 残された『脚』だけがッ! 勝者の条件となるッ!」
 ディエゴは、背後や脇を自分の視界から外し、前に集中することを始めた。

 ジャイロの後を追いかけるポコロコ。
 彼が走ることに集中していると、
「おいポコロコさんヨォ~左ヘ行ケッ!」
 耳元から『幻覚さん』の声がした。
「え? 何で!?」
「イイカラ左へ行ケッ! ヤツの左に回り込むんダッ!」
 ポコロコの背中に出てきた『幻覚さん』の声はさっきより聞き取りやすく、ポコロコは、
「お……おう! 俺の馬も限界に来ているッ! だが俺は50億分の1のラッキー・ガイなんだよな? 俺は約束されているんだろ!?」
「そうだぜポコロコ! だから『YO!YO!』って言え!」
 その『幻覚さん』の言葉を信じ、
「YO! YO! YO!」
 掛け声で馬を励ましながらジャイロの左へと向かう。
 ジャイロがその声に気をとられ、左を向くと、逆方向から一つの弾丸が飛んできた。
“ここでサンドマンが合流だぁぁぁぁぁぁ!”
 弾丸の正体はサンドマン。
 ジャイロに八馬身もの差をつけてコースへと乱入してきた。
“破裂しそうな筋肉でサンドマンが戻ってきた! ジャイロの前に合流だッ!”
 凄まじいスピードで、ジャイロの眼前を疾走するサンドマン。
 その走りは正に神速。
 しかし、もうショートカットは存在しない。
“サンドマン! 馬に対しゴールまでもつのか!? 逃げ切れるのかッ!”
 アナウンスが響き渡り、サンドマンは荒い息を吐いて疾走する。
「ここいらで一丁逆転と行くか!」
 それを見た妹紅は、
“今までジャイロにピッタリとついてきたモコウがここで猛加速! 今までの走りの疲れが見えない速さだッ!」 
 残された脚全てを使ってジャイロに並び始める。
 更に背後から三人を追うものが一人。
“ここでディエゴが出たッ! ディエゴが飛び出したッ!
 ジャイロたちを差しに掛かるディエゴを、一人の選手が追い抜く。
“ゼッケンを着けていない無名の騎手、ディエゴを追い抜いてジャイロへ七馬身と襲い掛かるッ!”
 ジョニィが後五馬身まで差を詰めると、ジャイロ左から迫ってくる選手が。
“ポコロコは左方向からジャイロを差しに掛かるッ!”
 そしてついに、
“並んだッ! 並んだッ! サンドマンを追って5騎が並んだあぁーッ!”
 五人は並んだ。
 五人はそろってサンドマンを追い、残りの100メートルを駆け抜けようとする。
 サンドマンは、背後から迫る馬の足音を聞きながら故郷のことを想う。
大地のため、父や祖先の精霊たちのため――
「みんなオレに力と勇気を与えてくれーッ!」
 猛々しく叫ぶと共に、ありえないほどの加速。
 誰が一位になるのか予想できない、ゴール前の激しい攻防となった。
 その攻防の中、ポコロコは耳元で『幻覚さん』の声を聞いた。
「躊躇スルナヨッ! コノママ地面に埋まっている枯れ木に乗り上げロッ!」
 声を聞いたときには、
“ポコロコ、枯れ木を『跳び箱』の『踏み台』として大きくジャンプしたーッ!”
 既にポコロコの馬は大空を走っていた。
 他の四人を出し抜き、トップに躍り出た……かに見えた。
 ポコロコのすぐ横を、ジャイロが通り過ぎたのだ。
「な、何だコイツ……脚が残っているはずがねぇのに……『下り坂』は俺の勝ちだった! 何でコイツが出れるんだ!? 出れるはずがねぇんだ! 直線でもコイツは飛ばしすぎていたはずなのに!」
 驚愕に目を振るわせるポコロコをよそに、ジャイロは振り返る。
「ジョニィ・ジョースター。 たまげたよ……よくここまで追いついてきたな」
 ジャイロに呼びかけられ、ジョニィはハッとなった。
「突然だがお前さん、船に乗ったことはあるか? 俺はある」
 ジャイロはにやりと笑い、総金歯を輝かせる。
「知ってるか? 帆船ってのは、海の上で向かい風を帆に受けるほど……速くなるんだぜ」
 歪に膨らむ彼のマントの端には、
「『向い風』だぜ! メキシコからの『向い風』ってのは……愛馬が走るのを助けるためにあるんだ。初めっからな!」
 回転をする鉄球が存在することを、ジョニィは確認した。

“ジャイロ・ツェペリ1着ウゥゥゥゥ!”

 マイクを壊さんばかりのアナウンスが、そこに響き渡った。

  次回予告
魔理沙「ついに決まったファーストレースの1着! しかし1着を勝ち取ったジャイロに魔の手が……!」
フラン「珍しく次回予告やってるね」
魔理沙「っていうか初めてまともな次回予告になった気がするぜ」
フラン「砂漠の惨殺死体に欠けた蹄鉄の跡、謎の男ミセス・ロビンスンと、セカンドレースは大荒れの予感ッ!」
魔理沙「やっと次回予告らしくなってきたな」
 次回ッ! 不死鳥は失敗を恐れない 第八話『ペナルティ!? ぶっちゃけありえな~い』ッ!
魔理沙「なんだか話数がおかしくなって来ているぜ」
フラン「154は数学が苦手だからだよ」

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