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ディスクブレイカー☆フラン 第二十一話

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匿名ユーザー

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 カラン。
 めったに鳴らない香霖堂のドアベルが鳴き声を上げた。
「いらっしゃい。またDISCを買いにきたのかい?」
 夕焼けの光と共に入ってきた客の姿を見た霖之助は、本にしおりを挟んだ。
「ああ。今回はどんなDISCが手に入った?」
 客はディアボロだった。
 霖之助は、ガラクタの中から数枚の折り畳まれた紙を取り出し、それを開く。
 すると、畳まれた紙から数十枚ほどのDISCが出てくる。
「この前に手に入れたスタンドDISCはこれぐらいだね。今の所一番のおすすめは『ウェザー・リポートのDISC+6』だね。このスタンドの能力は天候操作だが、天候には『水』が大きくかかわっていてね、つまり『ウェザー・リポート』の本質は『水』を支配することにより大気圧を操作して風を作り出したり、光を屈折させて蜃気楼を生み出したり……」
 霖之助は一枚のDISCを取り出すと共に薀蓄を語り始める。
「つまり『ウェザー・リポート』は『水を支配するスタンド』だと言いたいのか? 残念だがコイツは『雷』や『カエル』も降らせるぞ。その気になれば『お菓子』も降らせられるかもな」
 ディアボロは薀蓄に割り込んで、DISCを霖之助から取り上げる。
 代わりに、数枚の紙幣を机の上に置いた。
「ふむ……『雷』に『カエル』も降らせられるか……まずは『雷』からだな。『雷』は『神鳴り』とも言われ、タケミカヅチなどが主な雷神として崇められている。タケミカヅチはイザナギがカグツチの首を切り落とした際に生まれた神だ。火の神であるカグツチの死……つまり火の死は火に水をかけることによって引き起こされる。カグツチを殺した剣は天之尾羽張。『天』は『雨』とも読むことができ、『雨』は『水』を象徴する物だ。そこからタケミカヅチが生まれたということはやはり彼も『水』から生まれたということとなり……」
「わかった。わかったからとりあえず商売に集中してくれ」
 思考モードに入りつつある霖之助をディアボロが引きとめた。
 残念そうにため息をついた店主は、ディアボロの前にDISCを並べる。
 ディアボロは、その中から3枚のDISCを取り、代わりに紙幣を机の上に置く。
「それじゃあな。また来るかもしれん」
 ディアボロは振り返って店のドアを開けた。
 ベルが鳴り終わる頃には霖之助は思考の海にダイブしていた。

  ディスクブレイカー☆フラン『闘争の支配者』OPテーマ King Crimson『Epitaph』
 カラスが鳴いて、山の方へと向かう。
 ディアボロもカラスと同じ方を向いていた。
「ここが妖怪の山か……」
 視線を上に向ける。
 葉のない木が並ぶ山肌が見える。
 木々の隙間に、石畳が並んでいる。
 石畳の先を見ると、小さな鳥居が見えた。 
「あれが神社か……さて、どうやって入っていくか……」
 鳥居を前にディアボロは腕を組んだ。
 しばらくすると、ポケットの中に入れてある水晶が小刻みに震える。
 ディアボロは、それを取り出して顔に近づけた。
 水晶の中にパチュリ―の顔が映りこむ。
「ここから先は水晶玉による通信は傍受されちゃってるかもしれないからできないわよ」
「わかっている」
「準備はいい?」
「準備は万端だ。これより作戦行動に移る」
 ディアボロは水晶玉の通信を切り、近くの茂みに飛び込んだ。
「さてと……入り込むからには見張りの死角を突かなくてはいけないな」
 ディアボロは『ウェザー・リポートのDISC+6』を防御用に装備。
 弾幕攻撃に備える。
「さてと、水晶玉の無線は傍受されるが、外の世界の技術で作られたこの無線なら傍受されることはあるまい……」
 懐からトランシーバーを取り出す。
「確かフランたちの周波数は77.4だったはず……」
 通信スイッチを押しながら、ダイヤルを回すと、雑音と共に、
「『いの三』地区、問題なし」
「引き続き巡回を続けてください」
 の通信が入ってくる。
 ディアボロは、すぐにトランシーバーのスイッチを切ってダイヤルを確認した。
「もしや、警備の天狗たちの無線を傍受したというのか?」
 手元の無線機を見つめる。
「確か、妖怪の山に住んでいる河童たちは技術に長けているという……もしかしたら天狗が使っている無線機と俺が使っている無線機が似ているということなのか……?」
 ディアボロは無線機を握りしめ、にやけ顔を浮かべた。
 急いでダイヤルをまわし、周波数をフランたちの無線に合わせる。
「こちらディアボロ。妖怪の山前に来ている」
「はいはいこちらフラン。準備は万全?」
 無線機から聞こえてくるフランの声に、ディアボロはうなづいた。
「ああ。万端だ。ところで、咲夜とチルノ達の侵入ルートを聞かせてほしい」
「咲夜は参拝客を装って参道を行くルート。チルノ達は妖精たちの遠足を偽装しての森林ルート」
「なるほど。では俺は堂々と侵入するルートを取るわけだな」
「堂々と侵入って語感が変だと思うけど、そのとおりね。思いっきり山側をかき回すのがあなたの役目よ」
「了解した。今から侵入を開始する」
 ディアボロは通信を切って、茂みから出る。
 木の陰に隠れて、周囲を見る。
 周囲に天狗の姿は見当たらない。
「よし、行くか」
 ディアボロは姿勢を低くして、妖怪の山を登り始める。
  紅魔館 正門
「咲夜さんも、チルノちゃんたちも無理しないでくださいね」
 美鈴が紅魔館の門を開く。
「攻め込んでいる今が攻め込まれる最大の危機よ。本気で守りなさい」
 門を通るのは、いつものメイド服を着ている十六夜咲夜。
 彼女の激励に美鈴ははい、と短く答える。
「あたいはさいきょーよ! 絶対に勝ってやるんだから!」
 咲夜の横で、妖精5人を後ろに並べているチルノが胸を張る。
「幸運を祈ります」
 親指を立てる美鈴に、二人は親指で返して飛び立った。
 風を切りながら、咲夜は一人思う。
「妹様から渡された『ザ・ワールドのDISC』……これはいったい何なのかしら……」
 

  妖怪の山 山中
「交代の時間ですよ」
 木の頂上に立って周囲を見渡す白狼天狗の背後に、もう一人の白狼天狗が現れる。
「椛さん。もうこんな時間でしたか」
 剣と盾を背負った白狼天狗の椛は同僚の質問に静かにうなづいた。
 椛が木の天辺に立ち、白狼天狗は飛び立っていく。
 夕焼けの中、椛は微動だにせず立ち尽くす。
 傍目には放心しているようにしか見えない。
 しかし、彼女の持つ『千里先まで見通す程度の能力』をもってすれば、動かずとも哨戒をすることは可能なのである。
「こちら『いの三』地区、問題なし」
 周囲一帯を見渡して、椛は河童特製の無線機に話しかける。
「引き続き巡回を続けてください」
 いつも通りの声が返ってくる。
 一息ついた椛は、懐から黒い塊を取り出した。
 それを口に運ぶ彼女に近づく烏天狗が一人。
 ややウェーブがかかった、腰ほどまで伸びる栗色のツインテール。
 短い袖のブラウスは紫のフリルを揺らし、風に黒のネクタイがたなびいている。
「はたてさん、どうしたんですか?」
 黒い塊にかじりつこうとした所で、椛は烏天狗の姿を見た。
「いや、久しぶりの散歩から帰ってきたところよ」
 烏天狗のはたての答えに、椛はうなづいて黒い塊を齧る。
 中から白い米粒の塊と、赤い何かが露出する。
「それ、何?」
 はたては椛が手に持つものを指差した。
「何って、おにぎりよ。エビマヨ入りの」
 椛の答えに、はたては首をかしげた。
「おにぎりなのはわかったけど……エビマヨって何?」
「川エビの殻と頭を取って、マヨネーズで味を付けて焼いたやつ。」
 椛の答えに、はたては首を反対に傾けた。
「マヨ……何?」
「マヨネーズ。最近作り方を書いた本を拾ったから作ってみたら結構おいしかった。明日非番だから作り方教えるよ」
 そう言って椛はおにぎりを一齧り。
「マヨネーズね……これはいいネタを手に入れたかも!」
 椛はすぐにメモ帳に書き込んだ。
「それでは椛さん、明日会いましょう!」
 そしてすぐにはたては飛び去っていく。
「にっししし……マヨネーズですか……いいこと聞いちゃいました~」
 椛が立つ木の下で、射命丸が笑いを押し殺した。
  紅魔館 テラス
「咲夜たちも出発したわね」
 山へと落ちていく夕焼けを眺めて、レミリアは紅茶を吸った。
 周囲は紅魔館を修復するための金槌の音で満ちている。
「攻められるとしたらもうそろそろよ」
 パチュリ―は眼前の水晶玉を見つめ続ける。
 水晶玉には、妖精の反応をあらわす水色の光、パチュリ―の反応をあらわす紫色の光、フランとレミリアの反応をあらわす赤い光、そしてナランチャの反応を現す黄色い光がともっている。
「まあ、来るといっても天狗とかその類でしょ」
 落ち行く夕日を見ながら、レミリアは紅茶を飲み干した。

 
  守矢神社 鳥居
「ふふふ……ついに始まったわね」
 茶色のマントをはためかせて、早苗は山を見下ろした。
「ねえ、早苗は何処で旧日本軍の陸軍服なんて手に入れたの?」
 何故か茶色の軍服を着ている早苗の横に、諏訪子が立った。
「魔法の森の近くにある古道具屋で見つけた」
 早苗は視線を動かさずに答える。
「軍服はいいとして、妖怪の山に入ってきた紅魔館の者は何人?」
 諏訪子も山を見る。
「今の所連絡は来ていないわね」
 早苗は軍服のポケットに入れて置いた河童製通信機を取り出す。
「えー、ただいまから『オンバシラ作戦』を執り行う!」
 早苗が通信機に怒鳴りこむと、通信機からはときの声が上がる。
「目標! 紅魔館ッ! 攻撃部隊は指令を待機せよ!」
 続けて通信機に怒鳴りこむと、通信機からは『了解』の声が次々と飛び出してくる。
 早苗は無線を切り、振り返る。
 守矢神社の屋根の上に、神奈子が陣取っている。
 早苗と目を合わせた神奈子は、無言でうなづいた。
 神奈子は、柏手をうつ。
 彼女の頭上に、巨大なオンバシラが1つ、現れる。
 もう一つ、柏手を打つ。
 オンバシラがもう1つ現れた。
 最後に柏手を1回。
 計3つのオンバシラが神奈子の頭上に出現する。
 静かに、神奈子は手を紅魔館へと差し向けた。
 3つのオンバシラが音もなく紅魔館へと向かっていく。
 早苗はそれを見送って、笑みを浮かべる。
「この闘争の支配者は……私よ!」
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