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東方黄金体験記  第七話

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第7話 人里の守護者 後編


「輝夜ァァァァッ!!!!」
「妹紅ォォォォッ!!!!」


夕焼けの空を二人の少女が空中で激しく交差する。
白髪の少女と黒髪の少女。藤原妹紅と蓬莱山輝夜。
二人は「弾幕」と呼ばれるものを互いに発射し撃ち合いながら空中を
飛び回り、牽制しあい、互いを打ち落とさんと攻撃を仕掛ける。
僕は妹紅に「今から殺し合いをやるんだけど見に来る?」と言われたので
誘われるままについて来ている。モチロン慧音も。
二人が空中で描くコントラストは花火さながらの美しさであり
観戦している僕も思わず魅せられるような美しさだ。
妹紅もまるで火の鳥のように炎を纏い空を飛ぶ。飛ぶというより舞うと言った表現の
ほうがしっくりくるかもしれない。現状では妹紅がやや優勢、さてどちらが勝つか。


「やるじゃない妹紅。でも今日は負けるつもりはないのよ。喰らいなさいッ!!!」

「こっちだっけ今日も負けるつもりはないんだよ。喰らえッ!」


僕の隣では慧音さんが心配そうに妹紅と輝夜の「殺し合い」を見守っている。
彼女も妹紅が「殺し合い」をする事には不本意なのだろう。それももうすぐ決着がつく。
満身創痍の二人が空中で互いに向かって全速力で突っ込むッ!!!


「「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!」」


メメタァ!!!
決着は弾幕ではなく妹紅の右メメタァ…じゃなかった右ストレートで決着がついた。
今回も妹紅の勝ち。今までの戦績はわからないが連戦との事だ。
決闘はいつもと違い夕食を妹紅か輝夜どちらが奢るか賭けての「殺し合い」
どっちが勝っても結局僕と慧音は奢らせてもらえる立場なのであまり勝敗は関係ない。
それよりも人里でいつもより食事が出来る事が僕のモチベーションを上げてくれた。

「ふぅ…またアンタの勝ちのようね。つ、疲れたぁ~~!」

「私も、疲れた…ふぅ~!」

二人とも倒れるように地面にぶっ倒れる。
すかさず僕のゴールド・エクスペリエンスの能力を発動させ互いの火傷や吹き飛んだ
腕などを再生する。普通の人間からすればかなり異常な戦闘だ。
これでも日常的な事らしい。不死者同士の「殺し合い」。不毛だな。
二人には「ほっといても治るし死んですぐ復活するから治療はいらない。」
と、言われたのだが慧音が「駄目だ!ちゃんと治療を受けなきゃ駄目!」
と強く押し切られ、妹紅も輝夜もしぶしぶそれにしたがって僕の治療を受けている。
あまり意味はないのだが。今の会話の中に僕の意志や意見は一切含まれてない。
決定権すら無視されたのだが、あまり細かい事を言っても仕方ないだろう。

「とりあえず治療しました。けどまだ痛むはずです。」

「ありがとうジョルノ。イテテ、妹紅最後の効いたわよ…」

「こっちもアンタの攻撃で腕がとれたんだ。「おアイコ」さ」

互いに苦笑いしながらの褒め称えるあたり「殺し合い」と言いつつも
恨みつらみは無いのだろう。


「さて、その痛みでは動くにも動けまい。ジョルノ君。輝夜のほうはまかせたぞ。」


さて、慧音に輝夜を任されてしまった。つまり運べと言う事か。
やれやれだ。
輝夜を背中におぶってジョルノは人里の料亭へ向かう。
一日限りの宿泊かと思いきや、永琳から「一週間よ。子供にもなれて頂戴」との話があり
結局慧音宅に数日間泊めてもらっている。
その数日前から泊めてもらわせている慧音宅に、今日は永琳からのお願いで
輝夜もお泊りと言う形で来ている。そういった「経験」も必要だから。との事らしい。
あの人は時々何を考えてるのかよくわからない。
慧音も人が良いのかすぐに承諾し、今に至る。
午前中はいつものように人里に検診に出て、帰って来たら今度は二人の観戦と言った所である。
疲れて眠っている妹紅を心配そうにおぶっている慧音には悪いのだが
良いものを見させてもらったと言うのが本音である。
そんな慧音もポツリと

「はぁ…本当は、こんな事妹紅にも輝夜にもして欲しくないのだけれどもな…」

こう洩らす。本人曰く不死身でも二人。特に妹紅が心配らしく今の「殺し合い」の習慣には
不満があるようだ。単純に妹紅の体が心配なのだろう。

「ジョルノ君。なんとか二人をやめさせるように言ってくれないか?」

「二人が納得してやっているのなら僕に言う事はありません。それに僕が
言った所でこの二人が話を聞いてくれるとは思えません。」

そうか…と複雑そうな顔をして慧音は黙り込んでしまった。
夕暮れの風が先ほどの「殺し合い」の熱気を冷ますように優しく4人を通り抜ける。
背にいる輝夜も妹紅に習いぐっすりと眠っていた。


所変わって人里の料亭
人里の中でもかなりの人気料亭で妖怪も食べに来るお店だ。


「そうひあ、じょるにゅはまだけえねのうちにいりゅの?」

「輝夜様ちゃんと口にあるものを飲み込んでから喋ってくださいよ。」

「んんっ!もぐもぐ。…まだジョルノは慧音のうちに泊まるの?それに様付けはしなくて良いって」

「ええ。永琳様がそうおっしゃっておりましたから。様は癖なんですよ。この天ぷらおいしいですね。」

「癖なんだ。ここのイカの天ぷらは絶品よ。山菜の天ぷらもおいしいわ。」

「ジョルノ~。まだ刺身は食べれないのか~?」

「妹紅…オマエもう酒飲んでるのか…」

「ぐえっへっへっへ。良いじゃんけーね。隣のお兄ちゃんが奢ってくれたんだよ。
「先生。怪我の時はお世話になりました。」ってね。」

「それとね~輝夜も「いつもけーね先生にはおせわになってます」ってお酒もらったのよ~」


それはどう考えても僕と慧音に奢られた酒です。本当にありがとうございました。
と言うよりいつのまに輝夜は酒を飲んだんだ……
全員が全員会話を挟みつつも箸を止めない。妹紅も輝夜がおごりだからか箸の動きに一切遠慮が無い。
慧音も一見つつましくも、箸の速度は相当である。結局の所永琳のお金なのだ。
誰も遠慮は必要なかった。モチロン僕も。でもまだ刺身は食べれないかな…

あ、なんで僕の皿に刺身が山盛りになってるんだッ!
ニヒヒ。と二人のいたずらっ子は笑みを浮かべて「「おいしーよ!」」っと言ってくる。
「「一気!一気!一気!」」
刺身は一気で食べるものじゃないだろうに。
畜生……納豆に初チャレンジした時の感覚が蘇ってくる。ええい!ままよ!

あ、意外と美味しい。生臭いが醤油にマッチングしてる。




後々輝夜と妹紅が吐くまで飲んで、美味しかった食事もいろいろと台無しになった。

「それで。結局帰りも僕が姫をおぶるのですか。そうですか。」

「あんまり腐らんでくれ。私も妹紅をおぶってるんだ。しかしこの子達は
よく眠るな。まるで寺子屋の童のようだ。」

慧音の家路につく時も来た時と同じように僕達の背には仲がいいのか悪いのか
わからない二人が気持ちよさそうに、いや気持ち悪そうに眠っている。
先ほど吐くまで飲んでいた二人は行きと同じように僕達の背中でつぶれていた。
しぶしぶと輝夜を背負うジョルノとは対極的で慧音とても優しい表情をしている。
まるで母親が子供を心配するような。

「なんか…」

「ん?」

「いえ、仲良いですよね。慧音さんと妹紅さんは。」

「そうだな。妹紅と私は結構付き合い長いんだ。それこそもう数百年になる。
未だに妹って感覚だけどね。」

慧音は苦笑いしつつも、まんざらではないと言った表情で続ける。

「だけどね、時々不安になるんだ。私は妖怪だし寿命は長い。けれど
妹紅や輝夜。永琳殿は永遠に生き続ける。私や他のみんなは妹紅達を残して早く死ぬ。
それを妹紅が思うと不憫でならないんだ。」

歩み続けながらも慧音の話は続く。

「私はたまに思うんだ。妹紅には面白い事をいっぱいさせてやりたい。楽しい事をいっぱい。
けど、私やみんながいなくなった時。妹紅は寂しさに潰されてしまうんじゃないかってね…。」

「………………」

「それを考えると、私達は出会ったりしないほうがよかったんじゃないかって、いや、馬鹿な考えだとは
思っている。それでも、たまにそう考えてしまうんだ。それに妹紅が輝夜と「殺し合い」と称して
あんな事をしているのも、怪我したりするのは喜ばしくも無いんだが、本心を言うと嬉しい。輝夜も永遠を生きるもの。
だったら仲良くなって欲しいのさ。一人はさびしいからな。二人ともそれを分かっているはずなんだ。
不老不死だとしても一人じゃ生きていけないって。だからこそ昔は憎かった輝夜にも妹紅はあんなに
親しくしているだとね。妹紅はこう見えて寂しがり屋なんだ。」

相変わらず二人の背中で眠る二人は、先ほどとは変わって少女特有の可愛らしい笑顔。
幸せそうな顔をして何を夢見ているのだろう。

「別れは誰にだって訪れるます。それこそ輝夜と妹紅にも訪れるかもしれません。
終わりのないものなんてありませんから。」

「妹紅と…輝夜にも…」


        ゴールドエクスペリエンス
           ・・・・・・・
「だからこそ今と言う「すばらしい体験」が大切なものになるはずです。慧音さんは間違ってはいない。
僕は、そう思います。」

「…そうか。そうだな。私はそうあって欲しい。ありがとうジョルノ君。」

「褒められるような事は何も言ってませんよ。それより早く戻りましょう。
お風呂沸かさないといけませんからね。」

「そうだな。この二人も風呂に入れてやらなきゃいけないからな。
この世話の焼ける二人のお姫様をね。」

この少年の言う通りだ。怯えようがいずれ別れる時が来る。
それは誰にでも来る事なのだ。逃れる事など出来ない。
本当に当たり前の事を久しぶりに自覚した慧音だった。


その時は誰も気が付かなかった。
後方で、空間の割れ目から一人の妖怪がこちらを見ている事に


「『終わりのないものなんてない』か。あの男の息子とは思えない言葉ね。」


女性は空間のスキマからクスクスと嗤った。





 TO BE CONTINUED…

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