第8話 目的
永遠亭にて
今日は約束事がある。てゐと一緒に博霊神社に行く約束をしているのだ。
帰る方法を探すための情報収集の一環なのだが、昨日の夜明日行くと言ったらてゐが
「土下座して「ごめんなさいてゐ様」って言ったら私が案内してあげてもいいよ?」
と、言ってきたのでGEを使って思い切りくすぐり倒して「ゴメン…なさい…ジョルノ様…」と言わせて
案内をてゐに頼んだのだ。ゴールドエクスペリエンスの「感覚暴走」の能力でくすぐられたら
普通は発狂ものだろう。まだ準備が出来ていないのか集合場所の居間に来ていない。
ガラガラと、扉を開けて入ってきたのはてゐではなかった。
永遠亭の実質的な管理人。八意永琳である。
「ちょっとジョルノ君。お話があるのだけど、いいかしら?」
「まだてゐが来ていないみたいですから構いませんよ。」
「悪いわね。出発前なのに、それでね…」
「人里にも診療所を作る…ですか?」
「ええ、そのためにジョルノ君を人里に慣れさせたんですもの。」
最初に思ったことは「いきなり何を」だ。つーか、色々といきなり過ぎる。
要約するとこう言う事らしい。永遠亭はよく患者が来る。モチロン急患が来る事もあるのだが
悲しい事に妖怪人間問わず間に合わないで死んでしまう事もある。それで人里に、正確には人里近くに診療所を建てようと。
手短に話すとこんなところか。なにかあるとは予想していたがちょっと予想外。
あの永琳が何の意味も無く自分を慧音に押し付けてそこから人里で診療させるなんてやるわけは無い。
永琳は「ジョルノ君の経験のため」と言っていたが治療や勉強だけだったら永遠亭でも事足りる。
人里に慣れさせるための目的だったのだろう。正直楽しかったし。
いやと言うほど名前は広がっている。人間よりむしろ妖怪の間で。
「実はね、もう頼んで新しい診療所を建て始めているのよ。時間はまだかかるみたいだけど」
つまりだ。もう『僕がそこで医者をする』事を前提に話が進んでいる。なんと強引な…
まあ、確かに慧音宅に泊まっていた時のように人里で診て回れれば情報ももっと集まるかも知れない。
現在あまり有力な情報は慧音と妹紅の情報以外ない。それどころか外の世界について「なんだそれ?」な人間もいる位である。
僕はここに来てようやく一月経とうとしているくらいだ。
人里についてすらまだわからない事だらけで迷う事もしばしば。
狭いようで幻想郷は広い。妖怪の山。魔法の森。博霊神社。紅魔館。まだ他にもある。
永遠亭で情報を待つよりはマシなハズだ。妖怪も診る場合人里に近い妖怪はすぐに行ける様に
なって便利なはず。永琳は人間からも妖怪からもなるべく行きやすい場所に建てるつもりらしいし。
誰が来てもこのスタンド能力があるおかげで妖怪とも打ち解ける事は容易だ。
………って言うか、どう考えた所で僕はこの人に強引に連れて行かれるんだろうな……
上記の思考はあまり意味のない思考だった。
「受けてくれるわよね?受けなきゃ永遠亭から出て行く事になるけど。」
永琳は笑顔で弓を構えて『威圧』しつつジョルノに尋ねる。決定権なんてあったものではない。
「…………わかりました。」
「ジョルノ君は理解が早くていいわね~。引き止めて悪かったわ。
後2、3ヶ月くらいしたら出来ると思うわ。それからそっちの経営をよろしくね。
てゐもさっきから盗み聞きしてるしそろそろいってらっしゃいな。」
後2、3ヶ月くらいしたら出来ると思うわ。それからそっちの経営をよろしくね。
てゐもさっきから盗み聞きしてるしそろそろいってらっしゃいな。」
何が理解が早くていいわね~だ。脅迫じゃないか。
冷汗ダクダク不満タラタラだが、文句を言った所で現状悪化以外の道は無い。
「それでは、行って来ます。」
「ちょっとまって。」
「はい?」
「いや、気を付けていってらっしゃい。」
釈然としない。モヤモヤするけどこれ以上永琳に聞く事も言う事もない。
そこで立ち聞きしていたてゐをとっ捕まえてさっさと行こう。
むぎゅっ!
「な、なに!?わっ!耳ひっぱるな~!」
「はいはい。それじゃ行きましょうか。」
「ひきずるな~~!!痛い~!」
なぜか少し腹立たしいので、てゐをイビリながら道中を行く事にした。
ジョルノ達が行ったのを確認すると永琳はイスに座り
鈴仙の入れてくれたお茶を飲んで、それから一息入れる間もなく彼女はやって来た。
「行った?」
「ええ、行ったわ。と言うよりあなたずっと見てたでしょう。」
永琳の横に空間のスキマが現れ、金髪の女性がヒョコっと飛び出て、永琳の横のイスに座る。
「いいじゃない。減るものじゃないしばれてもいないし。彼、大丈夫なの?」
「問題ないわ。」
その女性はジョルノと慧音達の帰宅中に後ろから見ていた女性。
妖怪の賢者 大妖怪八雲紫である。
「なんかかわいそうねぇ。帰らせるわけには行かないのに
あそこまで帰ろうと必死なんですもの。」
あそこまで帰ろうと必死なんですもの。」
「そうかしら?案外帰る事忘れてこっちにいてくれたりして。
そのうち諦めてくれるわ。」
そのうち諦めてくれるわ。」
永琳はそう言っておどけてみせるが、ジョルノ自身帰りたがっている事はよくわかっている。
紫も永琳にしては珍しいジョークにクスクスと笑いつつ笑顔混じりで答える。
「だと良いけど、絶対にないわねぇ。それに彼は幻想郷に来なきゃ
恐らく死んでいたわ。ある意味私達は命の恩人だもの。」
恐らく死んでいたわ。ある意味私達は命の恩人だもの。」
「……表向きはいい顔して裏でコソコソするなんて正直
気分のいいものではないわ。それでも、私達にはジョルノが必要なのよ。」
気分のいいものではないわ。それでも、私達にはジョルノが必要なのよ。」
「そうね。私達の『計画』に彼は必要不可欠ですもの。
絶対に幻想郷から帰すわけにはいかない。」
絶対に幻想郷から帰すわけにはいかない。」
「ええ、私達の『計画』は誰にも邪魔はさせないわ。」
窓を開ける。午前の天気は快晴。風が強く、気持ちいい。
確かに私達は彼の命を助けた。だけど、今は私達のエゴで彼は幻想郷に来ている。
帰す事は決して出来ない。ならせめて、幻想郷で楽しく過ごさせてあげたい。
今回の診療所を新しく建てる計画も、実はジョルノに対するささやかな罪滅ぼしの一つなのだ。
「ジョルノ君が知ったら…怒るわよね。」
「殺されても仕方ないかもねぇ。これからも、それだけの事を私達は彼にする事になるかもしれない。」
ただ帰れないだけではない。永琳も知らない紫以外この場には知る者はいない事実がある。
ジョルノが乗っ取ろうとした組織
『パッショーネ』はもうこの世にはない事を。そしてジョルノの寄り所
でもあった『仲間達』も、ジョルノを残して全員死んでいる事も。
「彼の一族の『運命』はみんな面白いわ。『彼ら』もそれに関わる『周り』も。
良くも悪くも変わってゆく。きっと、『私たち』もね。」
良くも悪くも変わってゆく。きっと、『私たち』もね。」
紫は一本の『矢』を握り締めて、ボソリとそう言った。
そんな二人の事をジョルノは知るよしもない。
てゐを肩車しながら歩いて行く。博霊神社までは、まだ遠い。
てゐを肩車しながら歩いて行く。博霊神社までは、まだ遠い。
TO BE CONTINUED…