2度目の全体放送を聞き終えた時、マイ=ラッセルハートの姿は海上にあった。
オシリスレッド寮での思い出したくもない出会いと、久々に純粋に尊敬できる大人との語らい。
・・・・・
休息という目的こそ果たせなかったがいくつかの戦利品を経てた彼女は、誰とも出会うことなく南に進む。
エリアJー12にある港に停泊していた船に乗り込み、ひとりでに動き出した船の甲板にマイ=ラッセルハートは佇んでいた。
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休息という目的こそ果たせなかったがいくつかの戦利品を経てた彼女は、誰とも出会うことなく南に進む。
エリアJー12にある港に停泊していた船に乗り込み、ひとりでに動き出した船の甲板にマイ=ラッセルハートは佇んでいた。
「ルルーシュの放送はなし……か。」
放送の終了を確認しホットラインをしまいこむ。これまで繰り返されてきたルルーシュの放送が流れてこないのは、マイの考えるルルーシュ像とは一致しない。
先んじて流れた鉄華兵団の放送によればルルーシュは運営側に『目をかけられている』参加者のようだが、そんな要素を踏まえずともルルーシュは参加者の中で頭一つ抜けた存在感を示している。
その一番の理由が、放送という情報インフラの独占だ。
鉄華兵団が後追いで現れたとはいえその優位性は損なわれない。見るからに自分の優位性を押し付けるタイプのルルーシュにとって、放送を捨てるメリットはないはずだ。
先んじて流れた鉄華兵団の放送によればルルーシュは運営側に『目をかけられている』参加者のようだが、そんな要素を踏まえずともルルーシュは参加者の中で頭一つ抜けた存在感を示している。
その一番の理由が、放送という情報インフラの独占だ。
鉄華兵団が後追いで現れたとはいえその優位性は損なわれない。見るからに自分の優位性を押し付けるタイプのルルーシュにとって、放送を捨てるメリットはないはずだ。
「ルルーシュが放送を出来ない状態になっているってなら、話は早いんだけどねぇ。」
そんなことは万が一にもあり得ないと言わんばかりに、淀んだ声で吐き捨てた。
ルルーシュはほんの30分前に放送を行ったばかりだ。
内容こそ開き直りと身内による尻拭いでしかない、玉音放送というより文化祭に興じる学生の乱痴気騒ぎのようであったが。ルルーシュには具申のできる仲間がいるし、見るからに戦略に長けた仲間もいる。
NPCという戦力も加味すれば、それこそ『4凶』や『五道化』でなければルルーシュの牙城を崩すのは難しいはずだ。
ルルーシュはほんの30分前に放送を行ったばかりだ。
内容こそ開き直りと身内による尻拭いでしかない、玉音放送というより文化祭に興じる学生の乱痴気騒ぎのようであったが。ルルーシュには具申のできる仲間がいるし、見るからに戦略に長けた仲間もいる。
NPCという戦力も加味すれば、それこそ『4凶』や『五道化』でなければルルーシュの牙城を崩すのは難しいはずだ。
対するマイは、ルルーシュに敵意を抱かれ、改竄した記憶から解き放たれ対立の決まった水神小夜とシェフィも生存。
両者にかかわりがある参加者は、揃ってマイの敵と考えていいだろう。
そうでなくとも盤面が煮詰まり始めた今、易々と潜り込める陣営はそういない。
敵は多く、情報も無く、味方もない。ルルーシュの目的地たる『仮面ライダーガッチャ―ドゆかりの地』の推測さえ立てられていないのが、マイの実情だ。
両者にかかわりがある参加者は、揃ってマイの敵と考えていいだろう。
そうでなくとも盤面が煮詰まり始めた今、易々と潜り込める陣営はそういない。
敵は多く、情報も無く、味方もない。ルルーシュの目的地たる『仮面ライダーガッチャ―ドゆかりの地』の推測さえ立てられていないのが、マイの実情だ。
「せめてあの鉄華兵団ってのがルルーシュを削ってくれれば動きやすくなるんだけど……遠いんだよね。」
鉄華兵団のいるひみつ道具博物館は会場の反対側だ。合流は物理的に難しく、どう移動してもルルーシュの勢力圏を通ることになる。
マイが鉄華兵団に合流する一番確実な方法は、乗り込んだ船から会場の沿岸を一周し反対側まで進むこと。
だがそれではあまりにも時間がかかりすぎる上、辿り着くまでの間に鉄華兵団が壊滅、あるいはルルーシュとの和解している可能性もある。
マイが鉄華兵団に合流する一番確実な方法は、乗り込んだ船から会場の沿岸を一周し反対側まで進むこと。
だがそれではあまりにも時間がかかりすぎる上、辿り着くまでの間に鉄華兵団が壊滅、あるいはルルーシュとの和解している可能性もある。
かといってこのまま海上でやりすごすのもリスクがある。
『目をかけられている』わけでもないマイが安全圏に籠るような真似を、運営が見逃すとは考えられない。
確実に排除の為にNPCが動く。よくてペレテ並みか、下手をすれば五道化当人が手づから殴りこんでくるかもしれない。
マイ=ラッセルハートはこの会場で最もNPCと関わっている参加者の1人だ。NPCの恐ろしさを身をもって――物理的な意味も含めて――理解しているし、そのような展開になればいよいよマイの命運は尽きるだろう。
『目をかけられている』わけでもないマイが安全圏に籠るような真似を、運営が見逃すとは考えられない。
確実に排除の為にNPCが動く。よくてペレテ並みか、下手をすれば五道化当人が手づから殴りこんでくるかもしれない。
マイ=ラッセルハートはこの会場で最もNPCと関わっている参加者の1人だ。NPCの恐ろしさを身をもって――物理的な意味も含めて――理解しているし、そのような展開になればいよいよマイの命運は尽きるだろう。
どこにも行かない選択も出来ず。どこに行くのが正解かも分からない。
そこまで考えてマイは失笑と共に肩を竦めた。彼女に都合のいい情報が1つも出てこない状況に、もはや笑いさえこみあげてくる。
そこまで考えてマイは失笑と共に肩を竦めた。彼女に都合のいい情報が1つも出てこない状況に、もはや笑いさえこみあげてくる。
「……まあ、仕方ないか。左虎っちたちを失った時点で当初のプランは使えなくなってたし。」
ザラサリキエルの乱入で『編集(エディット)』のかかりが不完全になった時点で、マイが手勢を揃え殺し合いを制する未来(ルート)は失われた。
どこかの勢力に潜り込もうにも、ルルーシュが生きている限りマイに安住の箇所はない。
よしんばルルーシュが死んだとて、既に多くの勢力が集団で固まっているだろう現在、マイが入り込む余地がある場所はいったいどれほどあるのだろうか。
どこかの勢力に潜り込もうにも、ルルーシュが生きている限りマイに安住の箇所はない。
よしんばルルーシュが死んだとて、既に多くの勢力が集団で固まっているだろう現在、マイが入り込む余地がある場所はいったいどれほどあるのだろうか。
ここからマイ=ラッセルハートが目的を果たすには、正攻法での攻略では間に合わない。
『何か』が必要だ。正攻法とはまた違う裏技めいた攻略未来(クリアルート)が。
『何か』が必要だ。正攻法とはまた違う裏技めいた攻略未来(クリアルート)が。
「そんなものがあればいいけど……無いと諦めるには、この会場には妙なギミックが多すぎる。」
一抹の期待を込めて、マイは船内への扉に手をかける。
鍵のかかっていない鉄の扉の先、奥まで広がる質素な廊下には、ただひたすらに静寂だけが広がっていた。
鍵のかかっていない鉄の扉の先、奥まで広がる質素な廊下には、ただひたすらに静寂だけが広がっていた。
◆
Jー12エリアに停泊していた船は、意外なことに殺し合いに巻き込まれた全員が乗り込めそうな軍艦だった。
一見すると巨大な糸切りばさみを思わせる奇天烈な形状をしていたそれは、出向と同時に上半分がふたつに開き、巨大な空母となってエリアの東端の海を北へと進んでいる。
その軍艦――『裸の太陽丸』の無骨な廊下を練り歩きながら、マイは不満と疑念が入り混じったように眉間に皺をよせていた。
一見すると巨大な糸切りばさみを思わせる奇天烈な形状をしていたそれは、出向と同時に上半分がふたつに開き、巨大な空母となってエリアの東端の海を北へと進んでいる。
その軍艦――『裸の太陽丸』の無骨な廊下を練り歩きながら、マイは不満と疑念が入り混じったように眉間に皺をよせていた。
「……おかしい。流石におかしい。
ここまで歩いて機関士や通信師どころか、警備の1人にさえ出会わないなんて……そんなことある?」
ここまで歩いて機関士や通信師どころか、警備の1人にさえ出会わないなんて……そんなことある?」
いくつかの部屋を辿った。残された資料に目を通した。
マイの歩みは着実に最重要な設備――艦橋にある操舵室へと近づいている。
にも拘わらず、マイは船内でNPCの船員どころか生物らしきものの1つも出会っていなかった。
無人でなければありえない空虚な静寂も、何の温度も感じない無味乾燥した空気も、入った時からそのままだ。
マイの歩みは着実に最重要な設備――艦橋にある操舵室へと近づいている。
にも拘わらず、マイは船内でNPCの船員どころか生物らしきものの1つも出会っていなかった。
無人でなければありえない空虚な静寂も、何の温度も感じない無味乾燥した空気も、入った時からそのままだ。
「そもそも、ただ海上を進むだけの船ならこんなデカい戦艦にする必要はない。
間違いなく、この船を選んだ理由があるはず。」
間違いなく、この船を選んだ理由があるはず。」
NPCはいない。イベントが起こる様な兆しもない。
船内の資料は『生命戦維』なる怪物に関する情報ばかりで、殺し合いには役に立たない。
船内の資料は『生命戦維』なる怪物に関する情報ばかりで、殺し合いには役に立たない。
『殺し合いの設備』とするにはあまりにも淡白な設備の果て、艦橋にある操舵室に手を掛けようとして。マイは気づく。
「ここまで進んで『何もない』?
それってさ……」
それってさ……」
ありえない。背中がぞわりと粟立ち、ドアノブを掴む手がわずかに震えた。
テロリストの直感がが訴える。
テロリストの直感がが訴える。
「『何か』がもう終わってるって事なんじゃない?」
『なにもない』ということは――『何かが起きた』ということなのだと。
建付けの悪い扉がギシリと軋み、開いた先から伝わるのは、むせかえる様な鉄の匂い。
その原因は船を構成する鉄ではなく操舵室を埋め尽くすほどの流血によるものだと、操舵室を見たマイには否が応でも知ら締められる。
その原因は船を構成する鉄ではなく操舵室を埋め尽くすほどの流血によるものだと、操舵室を見たマイには否が応でも知ら締められる。
その数は30を超えるだろうか。
ズタズタに切り裂かれた半裸の男の死体が、操舵室の床一杯に広がっている。
多くはいかにもモブだといいたげな取り立てて特徴のない顔であったが、そのうち2人……眉目秀麗な青年と強面のモヒカンの青年の死骸が、いかにも特別だというような存在感を放っていたが、その2人も既に死んでいた。
ズタズタに切り裂かれた半裸の男の死体が、操舵室の床一杯に広がっている。
多くはいかにもモブだといいたげな取り立てて特徴のない顔であったが、そのうち2人……眉目秀麗な青年と強面のモヒカンの青年の死骸が、いかにも特別だというような存在感を放っていたが、その2人も既に死んでいた。
操舵室を見渡すと、生き残っていたのはわずかに2人。
そのうち1人はこれと言って特徴のない半裸の男で、舵をがっちり握りしめながら脂汗をかいていた。鍛えられた体はガタガタと恐怖で震え、舵を取るために生かされただろうことは想像に難くない。
そのうち1人はこれと言って特徴のない半裸の男で、舵をがっちり握りしめながら脂汗をかいていた。鍛えられた体はガタガタと恐怖で震え、舵を取るために生かされただろうことは想像に難くない。
マイの視線は自然と、もう1人の生存者に向けられる。
背丈はマイの胸より低いだろう。マイが170cmを超えていることを加味しても、小学生程度の体格に見えた。
だがその手に握られた紫の刃をした大鎌が、その刃先に滴る赤黒い液体が、その存在がただの子どもではなく、裸の太陽丸のNPCを皆殺しにした下手人であることを示している。
そして、その黒いフード付きローブで覆われた体にはレジスターがない。NPCだ。
背丈はマイの胸より低いだろう。マイが170cmを超えていることを加味しても、小学生程度の体格に見えた。
だがその手に握られた紫の刃をした大鎌が、その刃先に滴る赤黒い液体が、その存在がただの子どもではなく、裸の太陽丸のNPCを皆殺しにした下手人であることを示している。
そして、その黒いフード付きローブで覆われた体にはレジスターがない。NPCだ。
「……つくづく、NPCと縁があるねアタシは。」
ドゴルドに始まり今に至るまで、参加者よりNPCの方が関りが深いのではないか。
自嘲気味に呟くと、大鎌を持った人物がマイに気づき振り返る。
フードの奥でアメジストのような瞳がマイを映し、大鎌を持つ少女――ランサーは、気だるげに息を吐いた。
自嘲気味に呟くと、大鎌を持った人物がマイに気づき振り返る。
フードの奥でアメジストのような瞳がマイを映し、大鎌を持つ少女――ランサーは、気だるげに息を吐いた。
「……よりにもよって貴女が来ますか。確か、マイ=ラッセルハートでいいんですよね?」
「そうだよん。もしかしてアタシって有名人?」
「そうだよん。もしかしてアタシって有名人?」
おどけながら、名を知られていることにマイの警戒が強まる。
ペレテの時ように五道化との関係がバレることは仕方がないが、マイのような『目をかけられている』わけでもない参加者を知っているというのは、普通のNPCではありえない。
ペレテの時ように五道化との関係がバレることは仕方がないが、マイのような『目をかけられている』わけでもない参加者を知っているというのは、普通のNPCではありえない。
「仮にも五道化を追い詰めてますので、マスターたちにしてみても多少は警戒すべき相手ということなのでしょう。」
「その言い方だと、自分が五道化じゃないみたいじゃない。」
「実際に違いますからね。
私はランサー。
参加者を殺すことは私の仕事ではないのですが――見逃す理由もありませんので。」
「その言い方だと、自分が五道化じゃないみたいじゃない。」
「実際に違いますからね。
私はランサー。
参加者を殺すことは私の仕事ではないのですが――見逃す理由もありませんので。」
赤の混じった紫色の刃が、夕日に照らされ光る。
空気を切り裂く音が耳を掠め、肉を断つ軌道で弧を描いたランサーの鎌が鉄のこすれ合う不快な音と共に床に突き刺さる。
操舵室の入り口は、ランサーの鎌の間合いだった。
間合いに入り込んだ弱者を裂くだけの簡単な作業。それを追えたはずのランサーの眼は、困惑と納得が入り混じったように見開かれていた。
空気を切り裂く音が耳を掠め、肉を断つ軌道で弧を描いたランサーの鎌が鉄のこすれ合う不快な音と共に床に突き刺さる。
操舵室の入り口は、ランサーの鎌の間合いだった。
間合いに入り込んだ弱者を裂くだけの簡単な作業。それを追えたはずのランサーの眼は、困惑と納得が入り混じったように見開かれていた。
手ごたえがない。肉どころか服の一片でさえ裂いた感触がない。
ランサーが振り返る。テレビでも見るように気の抜けた顔でランサーを見下ろしているマイ=ラッセルハートの体には、傷1つなかった。
ランサーが振り返る。テレビでも見るように気の抜けた顔でランサーを見下ろしているマイ=ラッセルハートの体には、傷1つなかった。
「……成程。五道化と渡り合ったのは嘘ではないようですね。
反射神経ではないですね。さしずめ未来予知の異能ですか。」
「そゆこと。五道化と戦った戦利品だよん。」
反射神経ではないですね。さしずめ未来予知の異能ですか。」
「そゆこと。五道化と戦った戦利品だよん。」
ザラサリキエルから会得した覇瞳皇帝(カイザーインサイト)の権能。
ランサーが動き出すより速く、マイはその権能で大鎌の軌道を読みきっていた。
ランサーから見てもその権能は優秀だ。こちらが攻撃するよりも前に躱してしまえば、身体能力の差を補ってなお余りある。
だが――
ランサーが動き出すより速く、マイはその権能で大鎌の軌道を読みきっていた。
ランサーから見てもその権能は優秀だ。こちらが攻撃するよりも前に躱してしまえば、身体能力の差を補ってなお余りある。
だが――
「ですがそれだけで私に勝てるつもりですか?」
それだけで勝てるほどサーヴァントの――特に優れた三騎士の牙城は甘くない。
ランサーは決して武勲の逸話がある英霊ではないが、サーヴァントとして基礎的に有する動体視力は人のそれとは精度が違う。
マイ=ラッセルハートの肉体は、明らかに戦士のものではない。
重心の移動も足さばきも、最低限の護身以上の技量を有してはいない。
ランサーは決して武勲の逸話がある英霊ではないが、サーヴァントとして基礎的に有する動体視力は人のそれとは精度が違う。
マイ=ラッセルハートの肉体は、明らかに戦士のものではない。
重心の移動も足さばきも、最低限の護身以上の技量を有してはいない。
「勝てるとまでは思って無いけど――」
マイもまたその事実を十分に理解している。
ランサーの戦闘力は五道化に肉薄、相性を考えればそれを上回ってもおかしくない。
確実に勝利するなら使い切りの切り札をここで切るしか道はない。
ランサーの戦闘力は五道化に肉薄、相性を考えればそれを上回ってもおかしくない。
確実に勝利するなら使い切りの切り札をここで切るしか道はない。
だが、マイ=ラッセルハートの中に、切り札である『ヘイロー破壊爆弾』や『ラストバトル』を使うという選択はなく。
「負けるとも、思ってないよん。」
瞬間――マイがわずかにすり足で動き、右腕で風を撫でる。
その動きには一切の無駄が無く、紛れもなく達人の技量を伴った挙動にランサーは思わず息を漏らした。
その動きには一切の無駄が無く、紛れもなく達人の技量を伴った挙動にランサーは思わず息を漏らした。
「なっ……」
か細い動揺と共に漏れた息が、音も無く白む。
(――常温の屋内、それも仮装の肉体であるサーヴァントが……白い息?)
疑念が警戒に変わる刹那の間を待たず、ランサーの頬を何かが撫でた。
風だ。まるで極寒の地に吹くような、凍てついた風。
風だ。まるで極寒の地に吹くような、凍てついた風。
「しまっ……」
「手遅れだよん。」
「手遅れだよん。」
氷山から噴き下ろされたような冷たく空虚な風が、冷たいを通り越し痛みさえ感じさせるほどの冷気を撒き散らし、ランサーはの四肢をかじかませる。
それを生んでいたのはマイの手から延びた極細の糸だ。
ツィベタ・コオリスカヤの指輪から生み出された『氷の糸』が、夕焼けの光を受け虹色にはためく。
舞い踊るように、しかし確かな技術と計算が巻き起こす気流が、急速にランサーの体を凍てつかせた。
それを生んでいたのはマイの手から延びた極細の糸だ。
ツィベタ・コオリスカヤの指輪から生み出された『氷の糸』が、夕焼けの光を受け虹色にはためく。
舞い踊るように、しかし確かな技術と計算が巻き起こす気流が、急速にランサーの体を凍てつかせた。
ランサーが気づく頃には、彼女の両足は地面に刺さった大鎌ごと巨大な氷に囚われていた。
仮に彼女が人間であれば、凍傷と癒着で確実に戦闘不能になっていただろう。
仮に彼女が人間であれば、凍傷と癒着で確実に戦闘不能になっていただろう。
「……いつの間に。」
「油断して酷い目にあったからね。
いついかなる時も戦えるように、自分自身に『編集(エディット)』くらいはしてるよん。」
「油断して酷い目にあったからね。
いついかなる時も戦えるように、自分自身に『編集(エディット)』くらいはしてるよん。」
マイが行ったことは至極単純。彼女は自身に 『覇世川左虎の記憶』を『編集(エディット)』することで氷結の技術――”凍剣執刀”の暗刃を会得していたのだ。
ツィベタの心遺物(メイド・イン・ハート)から生み出す氷の糸で暗刃を繰り出すことで、肉体だけでは完全再現出来ない忍者の絶技を心の力で補佐をする。
そうすることで、氷の忍者の冷気をマイ=ラッセルハートは確かにモノにしていたのだ。
ツィベタの心遺物(メイド・イン・ハート)から生み出す氷の糸で暗刃を繰り出すことで、肉体だけでは完全再現出来ない忍者の絶技を心の力で補佐をする。
そうすることで、氷の忍者の冷気をマイ=ラッセルハートは確かにモノにしていたのだ。
無論、それだけでランサーを無力化することはできない。仮に覇世川左虎本人がいたとて結果は同じことだろう。
それでもランサーが強引に氷を砕くまでの数秒を稼ぐことはできる。
それでもランサーが強引に氷を砕くまでの数秒を稼ぐことはできる。
その数秒で、マイは1枚のカードを取り出していた。
それはクロノス・デ・メディチとの戦いの報酬として得た、1対1の決闘(デュエル)を強制する最強の罠――ではない。
ランサーが目を凝らすも、入り込む逆光でよく見えない。ただ、そのカードがバチリと稲妻のような光を発したことだけははっきり見えた。
それはクロノス・デ・メディチとの戦いの報酬として得た、1対1の決闘(デュエル)を強制する最強の罠――ではない。
ランサーが目を凝らすも、入り込む逆光でよく見えない。ただ、そのカードがバチリと稲妻のような光を発したことだけははっきり見えた。
「キミは何らの理由でこの船のNPCを殺している。
参加者と戦うのが使命なら、もっと中心に近い場所に行くはずだ。アタシとここでやりあうのは本位じゃないんじゃないかな?」
参加者と戦うのが使命なら、もっと中心に近い場所に行くはずだ。アタシとここでやりあうのは本位じゃないんじゃないかな?」
そう言いながら、マイの手の中でカードがどろりと解けると、巨大な黒い影に姿を変える。
やがて姿を安定させた影は、鳥かごを手に持った女のようにランサーには見えた。
その姿が何だか知らないのに、何故だか酷く不快だ。
影から気色の悪い熱の籠った視線が向けられているように、ランサーには思えてならない。
やがて姿を安定させた影は、鳥かごを手に持った女のようにランサーには見えた。
その姿が何だか知らないのに、何故だか酷く不快だ。
影から気色の悪い熱の籠った視線が向けられているように、ランサーには思えてならない。
「それをどうするつもりですか。」
「どうすると思う?」
「どうすると思う?」
冷汗を垂らし問いかけるランサーに、へらへらとマイは告げる。
その隣で女の影は、気色の悪い気配と共にただゆらゆらと揺らめいている。
責める気配はないが気の休まらない状況に、ランサーはため息とともに肩を竦めた。
その隣で女の影は、気色の悪い気配と共にただゆらゆらと揺らめいている。
責める気配はないが気の休まらない状況に、ランサーはため息とともに肩を竦めた。
「これ以上の戦いは、私にとって損の方が大きそうですね。」
「あ、そう。ならよかった。」
「あ、そう。ならよかった。」
そう言って鎌を霊体化させ臨戦態勢を解くランサーの前で、マイも安堵の笑みを浮かべた。
漂っていた女の影はカードの形に戻り、ひらひらとはためかせたカードをランサーの視力は一瞬だけ捉えた。
漂っていた女の影はカードの形に戻り、ひらひらとはためかせたカードをランサーの視力は一瞬だけ捉えた。
『N(ネオスペーシアン)・ブラック・パンサー』
翼の生えた黒豹の絵の書かれたカードには、確かにそう書かれていた。
翼の生えた黒豹の絵の書かれたカードには、確かにそう書かれていた。
「実はこれ、張りぼてだったんだよね。」
「……嵌められましたか。
いえ、貴女はその気ならまだ戦えたはず。……何か狙いがありますね。」
「狙いってほどでもないんだけどさ。なんでこんな場所でNPCを殺しているのか気になってね。
アタシの経験上、NPCにはNPCなりの行動指針や理念がある。
五道化級のNPCが何の意味もなくこんな場所には来ないでしょ?」
「……嵌められましたか。
いえ、貴女はその気ならまだ戦えたはず。……何か狙いがありますね。」
「狙いってほどでもないんだけどさ。なんでこんな場所でNPCを殺しているのか気になってね。
アタシの経験上、NPCにはNPCなりの行動指針や理念がある。
五道化級のNPCが何の意味もなくこんな場所には来ないでしょ?」
カードをしまい込みながら、確信を持ってマイは言い切る。
マイ=ラッセルハートは、会場において意思のあるNPCとの関りが最も深い参加者の1人だ。
五道化やイベントNPCを含むいくつかの――思い出したくもないものを含む――出会いが、マイの言葉に重みを与えていた。
その態度に下手なごまかしは聞かないと、ランサーは暫く考え言葉を組み上げると。マイにとって予想外のことを口にした。
マイ=ラッセルハートは、会場において意思のあるNPCとの関りが最も深い参加者の1人だ。
五道化やイベントNPCを含むいくつかの――思い出したくもないものを含む――出会いが、マイの言葉に重みを与えていた。
その態度に下手なごまかしは聞かないと、ランサーは暫く考え言葉を組み上げると。マイにとって予想外のことを口にした。
「しいて言えば……殺し合いの破壊。でしょうか。」
「……へぇ。」
「……へぇ。」
”破壊”という言葉にマイは目ざとく反応し、獣のような笑みを浮かべる。
どのように解釈しても、運営の正道からは外れた行いしか思い浮かばないが。ランサーの口ぶりには一切の迷いが見られれない。
どのように解釈しても、運営の正道からは外れた行いしか思い浮かばないが。ランサーの口ぶりには一切の迷いが見られれない。
「私はマスターからそのように命を受け。私なりの結論を元に行動しています。
ここ――裸の太陽丸に来たのもその一環。
この場で起こるイベントを事前に破壊することが、私の目的です。」
「イベント?」
ここ――裸の太陽丸に来たのもその一環。
この場で起こるイベントを事前に破壊することが、私の目的です。」
「イベント?」
言いながらマイが思い出すのは、オシリスレッド寮のクロノス・デ・メディチとのデュエルだ。
クロノスもまた『イベント』という言葉でマイに状況を説明していたように思う。
どうやらマイの予測は当たっていたようで、ランサーは操舵室の床……さっきまでイケメンとモヒカンの死骸があった場所に目を向けていた。
クロノスもまた『イベント』という言葉でマイに状況を説明していたように思う。
どうやらマイの予測は当たっていたようで、ランサーは操舵室の床……さっきまでイケメンとモヒカンの死骸があった場所に目を向けていた。
「美木杉愛九郎と黄長瀬紬。
元々は纏流子という参加者に関わるイベントだそうですが、彼らの関与で参加者の強化とある参加者に対する警告が行われるはずでしたが……それももはや起こりえません。」
「……それ、ホントだったらアタシが受け取れてたってコトじゃないの?」
「そうですね。貴方は一歩遅かった。
最も、私も何が受け取れていたのかは知りませんが。」
「そう言われると余計に勿体なく感じるんだけど。」
元々は纏流子という参加者に関わるイベントだそうですが、彼らの関与で参加者の強化とある参加者に対する警告が行われるはずでしたが……それももはや起こりえません。」
「……それ、ホントだったらアタシが受け取れてたってコトじゃないの?」
「そうですね。貴方は一歩遅かった。
最も、私も何が受け取れていたのかは知りませんが。」
「そう言われると余計に勿体なく感じるんだけど。」
知らないうちに取りこぼしていたということらしい。それも『殺し合いの破壊』などという具体性のない命令を受けたNPCの手でだ。
怒ればいいのか悲しめばいいのか、どうとも取れない意地の悪い目つきで睨むマイを前に、ランサーは踵を返し操舵室から離れていく。
怒ればいいのか悲しめばいいのか、どうとも取れない意地の悪い目つきで睨むマイを前に、ランサーは踵を返し操舵室から離れていく。
「何処に行くの?」
「貴女に教える義理はありません。」
「貴女に教える義理はありません。」
ランサーにとってマイは参加者の1人であり、優先すべき相手ではない。
殺し合い内での知名度も低く、五道化や運営との因縁もない、重ねて言えばキリトやキラ・ヤマト、ルルーシュのように特別な期待もされていない。
戦いを続けることによる成果と支払われるコストを天秤にかけ、圧倒的に損だと判断したため戦いを止めたに過ぎない。
そんなどうでもいい女を無視して歩んでいたランサーだが、彼女の肩をとんとんと叩く。
殺し合い内での知名度も低く、五道化や運営との因縁もない、重ねて言えばキリトやキラ・ヤマト、ルルーシュのように特別な期待もされていない。
戦いを続けることによる成果と支払われるコストを天秤にかけ、圧倒的に損だと判断したため戦いを止めたに過ぎない。
そんなどうでもいい女を無視して歩んでいたランサーだが、彼女の肩をとんとんと叩く。
「それがあるんだよん。アタシに答えるメリットがキミにはある。」
振り返った先でマイ=ラッセルハートは張り付いたような笑みを浮かべていた。
見るからに悪いことを思いついたという、企みと怪しさの混じった笑みだ。
ランサーが肩を叩いた手を払いのけるより速く、さも当然のことのように言葉を紡いだ。
見るからに悪いことを思いついたという、企みと怪しさの混じった笑みだ。
ランサーが肩を叩いた手を払いのけるより速く、さも当然のことのように言葉を紡いだ。
「キミの仕事を、アタシは手伝いたいと思ってるからね。」
その言葉に、肩の手を払いのけようとしたランサーの動きが止まる。
一瞬だけ見た目相応の子どものように目を見開き、徐々に警戒と疑念を滲ませながらランサーはマイを見上げた。
一瞬だけ見た目相応の子どものように目を見開き、徐々に警戒と疑念を滲ませながらランサーはマイを見上げた。
「……本気ですか。」
「本気だよ。
どの道正攻法で挑んでも、アタシの目的は果たせない。」
「本気だよ。
どの道正攻法で挑んでも、アタシの目的は果たせない。」
仮面のような笑顔の中、目の中に宿る光がマイの言葉が本気であると訴えていた。
情報戦で出遅れて、五道化のせいで仲間を失い、ろくでもないNPCのせいで時間も失い、風雲急を告げる戦場には間違いなく間に合わない。
おまけに彼女の天敵は、運営の庇護の元優位と仲間を保証されたろくでなしの皇帝だ。
情報戦で出遅れて、五道化のせいで仲間を失い、ろくでもないNPCのせいで時間も失い、風雲急を告げる戦場には間違いなく間に合わない。
おまけに彼女の天敵は、運営の庇護の元優位と仲間を保証されたろくでなしの皇帝だ。
「だったらアタシも、まともじゃない方法にいっちょ噛みしたほうが可能性はある。そう思わない?」
そんな相手とのチェスに、真正面から乗ってやる義理などマイにはない。
彼女は時空犯罪者。テロリスト歴10数年の、破綻と無法のスペシャリスト。
勝ち目がないならチェス盤をひっくり返してでも願いのために邁進する。
彼女は時空犯罪者。テロリスト歴10数年の、破綻と無法のスペシャリスト。
勝ち目がないならチェス盤をひっくり返してでも願いのために邁進する。
覚悟と呼ぶにはあまりに無法で無策と呼ぶには筋の通った言葉。
その言葉にランサーは肩を竦めながら、マイに対する評価を改めていた。
その言葉にランサーは肩を竦めながら、マイに対する評価を改めていた。
マイ=ラッセルハートは、危険だ。
だからこそ――マスターの命令を遂行するには、最適な存在だと。
だからこそ――マスターの命令を遂行するには、最適な存在だと。
◆
ランサー……メデューサは、マスターであるクルーゼの命で『バトルロワイヤルを破壊する』為に行動している。
抽象的でありどうとでも捉えられる命令に、赤い光に染まったエーテルの脳が指針を示さんと思考を巡らせた。
抽象的でありどうとでも捉えられる命令に、赤い光に染まったエーテルの脳が指針を示さんと思考を巡らせた。
Q 殺し合いを殺し合いたらしめる存在――殺人を受け入れているマーダーを殺せばいいのだろうか
A 参加者の多くが『殺し合いからの解放』ではなく『運営の打倒』を目論んでいる以上、羂索やクルーゼのキルスコアが増えるだけで何も変わらない
A 参加者の多くが『殺し合いからの解放』ではなく『運営の打倒』を目論んでいる以上、羂索やクルーゼのキルスコアが増えるだけで何も変わらない
Q ならば全参加者を殺しつくせばいいのでは
A 最後の1人が生き残った時点で勝者となる。バトルロワイヤルを加速させるだけで破壊にはいたらない。
A 最後の1人が生き残った時点で勝者となる。バトルロワイヤルを加速させるだけで破壊にはいたらない。
Q メラのような特別強い参加者をさらに強化し、殺し合いを出来レースに変えてしまえば?
A これでもやはり勝者が確定し、殺し合いを破壊したとは言い切れない。
A これでもやはり勝者が確定し、殺し合いを破壊したとは言い切れない。
令呪の光を浴び会場に送り出されるまでの刹那の思考。
無意識化で行われた無数の逡巡の果てに、メデューサがたどり着いた問いはこうだ。
無意識化で行われた無数の逡巡の果てに、メデューサがたどり着いた問いはこうだ。
Q 誰一人戦う力を持てない状況に陥れば、それはバトルロワイヤルといえるのか
Q 誰一人他者を殺すことができず、殺すこともしない状況に陥れば、それはバトルロワイヤルといえるのか
A ――それはもはやバトルロワイヤルではない。
「全ての参加者から『戦闘能力を奪う』こと。
それが私の考える、バトルロワイヤルの破壊であり。現時点での最終目標です。」
それが私の考える、バトルロワイヤルの破壊であり。現時点での最終目標です。」
『バトルロワイヤルを破壊する』
荒唐無稽に思える指示の具体的なプランを問われたランサーは、マイの前をかつかつと一定のペースで歩みながら振り返りもせずにきっぱりと言った。
少女についていきながら、マイは失笑とも困惑とも取れる渋い表情を浮かべる。
なまじ言っていることは理解できてしまうから、どう答えるべきか悩ましいとマイは顎をなぞりながら考えていた。
荒唐無稽に思える指示の具体的なプランを問われたランサーは、マイの前をかつかつと一定のペースで歩みながら振り返りもせずにきっぱりと言った。
少女についていきながら、マイは失笑とも困惑とも取れる渋い表情を浮かべる。
なまじ言っていることは理解できてしまうから、どう答えるべきか悩ましいとマイは顎をなぞりながら考えていた。
「まあ、それができたら確かにバトルロワイヤルとは言えないね。」
誰も人を殺さない。それ以上に誰も人を”殺せない”。
風船で出来た剣を用いたチャンバラを殺し合いと呼べないように、死に繋がらない闘争がどれだけ繰り広げられようと、それは『バトルロワイヤル』ではないのだろう。
風船で出来た剣を用いたチャンバラを殺し合いと呼べないように、死に繋がらない闘争がどれだけ繰り広げられようと、それは『バトルロワイヤル』ではないのだろう。
だがその考えは――あまりに遠すぎる。
未だ70人強の参加者が生存し、その大半が最低以上の戦闘力を保持している。
理屈は分かるが、不可能だ。それがランサーの話に対するマイの第一印象だった。
未だ70人強の参加者が生存し、その大半が最低以上の戦闘力を保持している。
理屈は分かるが、不可能だ。それがランサーの話に対するマイの第一印象だった。
「理屈は分かるよん。
でも今のままだと、その考えは夢のまた夢。
こんな場所でNPCを殺しまわってる暇なんてないんじゃない?」
「それはその通りですね。とはいえこの施設を攻めたのは別の理由もあるのですが――。」
でも今のままだと、その考えは夢のまた夢。
こんな場所でNPCを殺しまわってる暇なんてないんじゃない?」
「それはその通りですね。とはいえこの施設を攻めたのは別の理由もあるのですが――。」
そこまで言ってランサーは言い淀み。一瞬だけ立ち止まり振り返ると、少し申し訳なさげに顔を上げた。
「いえ、これは話さなくていいですね。忘れてください。」
「そう。じゃあ聞かないよん。」
「そう。じゃあ聞かないよん。」
マイとランサーは仲間ではない。
マイが勝手にランサーの目的に追従しているだけの、相乗りのような関係だ。
聞くべきでないことを聞こうとしても、戦いが再度繰り返されるだけだ。
マイとてこんな場所で、話の通じる相手に切り札を切らさせるのは御免である。
マイが勝手にランサーの目的に追従しているだけの、相乗りのような関係だ。
聞くべきでないことを聞こうとしても、戦いが再度繰り返されるだけだ。
マイとてこんな場所で、話の通じる相手に切り札を切らさせるのは御免である。
自分の胸元ほどしか身長のない少女の言葉を、追い抜かさないように追跡しながらマイは静かに待っていた。20秒ほどの間をおいて、ランサーは口を開く。
「ただ、質問には答えます。
前提として、殺し合いには支給品の類が無くとも際立った戦闘力を持っている参加者も少なくありません。」
前提として、殺し合いには支給品の類が無くとも際立った戦闘力を持っている参加者も少なくありません。」
例えば、東京の裏で悪を狩る忍者。
例えば、その身に赤い血ではなくオイルの流れる黒鉄の軍人。
あるいは、この会場で生活していた神秘を有する美少女たちもその類に入るだろう。
例えば、その身に赤い血ではなくオイルの流れる黒鉄の軍人。
あるいは、この会場で生活していた神秘を有する美少女たちもその類に入るだろう。
「将来的にはそうした人たちの大部分は殺すことになるでしょう。
特に、殺し合いに乗っている人は確実に。」
「それアタシ死なない?」
「死にますね。今更考えを改めるような半端な考えでもないでしょうし。」
特に、殺し合いに乗っている人は確実に。」
「それアタシ死なない?」
「死にますね。今更考えを改めるような半端な考えでもないでしょうし。」
足を止めることなく振り返る、見定めるような目つき。
マイはその目をじっと見つめ、悪びれもせずに答える。
マイはその目をじっと見つめ、悪びれもせずに答える。
「まあ正直、今手元にあるモノを持って帰るだけでもいいんだけどね。
左虎っちみたいな並行世界の強者のデータも持って帰られればなおさらね。」
左虎っちみたいな並行世界の強者のデータも持って帰られればなおさらね。」
魔王グリオンや総司令官がそうであるように、並行世界の存在や技術に価値を見出すものは少なくない。
マイ=ラッセルハートもその類ではあったし、持ち帰るだけのモノが殺し合いの会場に溢れていることは事実だった。
しばし腕を組んでそんなことを言っていたが。
マイ=ラッセルハートもその類ではあったし、持ち帰るだけのモノが殺し合いの会場に溢れていることは事実だった。
しばし腕を組んでそんなことを言っていたが。
「でもダメだ。アタシにはどうしても叶えたい願いがある。
だから、アタシがそんな妥協案を取るのは最後の最後。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
何をどうしても勝てなくなるほど追い詰められた時でないと……」
「それですよ。」
だから、アタシがそんな妥協案を取るのは最後の最後。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
何をどうしても勝てなくなるほど追い詰められた時でないと……」
「それですよ。」
難しそうに声を詰まらせるマイに、ランサーはぴしゃりといい放つ。
「私の考える殺し合いの破綻。その具体的な条件は
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
他者を殺すような参加者が全滅し、理論上主催達に勝てないほど参加者の持つ戦闘力が小さいものになることです。」
「なるほどね。
そうなれば誰も殺せないし誰も殺さないし……誰も主催に挑めない。」
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他者を殺すような参加者が全滅し、理論上主催達に勝てないほど参加者の持つ戦闘力が小さいものになることです。」
「なるほどね。
そうなれば誰も殺せないし誰も殺さないし……誰も主催に挑めない。」
殺戮者を殺し。支給品を壊し。後天的に力を与えるイベントを壊し。
あらゆる形で『殺し』から遠ざけられた世界。
残された道は瓦礫や拳で殴り合い殺し合いを続けるか、僅かな生き残りたちで肩を寄せ合いあるか分からない脱出ルートに全てを賭けるか。
あらゆる形で『殺し』から遠ざけられた世界。
残された道は瓦礫や拳で殴り合い殺し合いを続けるか、僅かな生き残りたちで肩を寄せ合いあるか分からない脱出ルートに全てを賭けるか。
そんな末路に逝きついた愚行を、誰がバトルロワイヤルなどと言えようか。
「とはいえ今は、参加者間の状況が煮詰まっています。
4凶を超えたメラにNPCに堕ちたヒースクリフ。当の五道化の大半もそうですし、私以外のサーヴァントも健在です。
参加者側に手を出すのは、その後でも遅くない。」
「だから今は、NPCを殺したりランドマークを巡ったりってコト?」
「せっかく殺傷力を世界から奪っても、隠しイベントで補充されたら意味がありませんからね。」
「真面目だねぇ。」
4凶を超えたメラにNPCに堕ちたヒースクリフ。当の五道化の大半もそうですし、私以外のサーヴァントも健在です。
参加者側に手を出すのは、その後でも遅くない。」
「だから今は、NPCを殺したりランドマークを巡ったりってコト?」
「せっかく殺傷力を世界から奪っても、隠しイベントで補充されたら意味がありませんからね。」
「真面目だねぇ。」
実際にイベントを起こしたマイからしたら、ランドマークでイベントが起こるかどうかは完全に運だ。
ペレテに襲われずにオシリスレッド寮で休息と探索をしていたとして、自分がクロノス先生と出会えていたかは分からない。
あるいは、特定の参加者にしか反応しない仕掛けや、特定の条件が無ければ見つからないイベントだってあるだろう。
ペレテに襲われずにオシリスレッド寮で休息と探索をしていたとして、自分がクロノス先生と出会えていたかは分からない。
あるいは、特定の参加者にしか反応しない仕掛けや、特定の条件が無ければ見つからないイベントだってあるだろう。
マイにしてみればそんな外れ値は無視をして、コトが起きてから対処する保険程度のものでいい。
にもかかわらずランサーは、そんな保険を逐一潰して回ってる。
愚直なのか、或いは参加者に手を出すことが出来なくて暇なのか、結構なことだと思いながら笑いと共にマイは投げかける。
にもかかわらずランサーは、そんな保険を逐一潰して回ってる。
愚直なのか、或いは参加者に手を出すことが出来なくて暇なのか、結構なことだと思いながら笑いと共にマイは投げかける。
「そんなに真面目なのは……マスターがクルーゼだからかな?」
「……。」
「……。」
一瞬だけランサーが立ち止まると、刺すような殺気が肌をなぞる。
ローブの中から金属の擦れるような音がわずかに聞こえ、臨戦態勢に入りだす少女をマイは勝ち誇った目で見降ろした。
ローブの中から金属の擦れるような音がわずかに聞こえ、臨戦態勢に入りだす少女をマイは勝ち誇った目で見降ろした。
「……隠していたわけでもないですが、いつ気づきました?」
「ランサーっちの話に従うなら、一番効率いいのは『運営側を殺すこと』のはず。
羂索もクルーゼも殺して、『願いが叶う権利』なんて優勝トロフィーがなくなれば、殆どの連中だって人殺しを止めるよ。」
「ランサーっちの話に従うなら、一番効率いいのは『運営側を殺すこと』のはず。
羂索もクルーゼも殺して、『願いが叶う権利』なんて優勝トロフィーがなくなれば、殆どの連中だって人殺しを止めるよ。」
優勝してもメダルも報酬も栄誉もないならだれもオリンピックに挑まないように。殺し合う理由を奪われてしまえば人を殺す物はいなくなる。
倫理観の話もあるが、経験と実力がある者だけが残っているだろう現状で、人一人殺すのはそれだけコストが大きいものだ。
ハイリスクハイコストノーリターン。『殺す』ことがそんな状況に陥れば、それだけで殺し合いは破綻する。
その手を取らない時点で、ランサーは運営側だ。
倫理観の話もあるが、経験と実力がある者だけが残っているだろう現状で、人一人殺すのはそれだけコストが大きいものだ。
ハイリスクハイコストノーリターン。『殺す』ことがそんな状況に陥れば、それだけで殺し合いは破綻する。
その手を取らない時点で、ランサーは運営側だ。
「ではなぜクルーゼと?」
「最初の演説で聞いた限り、羂索は『面白い』ものを見たがっている。
だったらランサーっちが『誰も人を殺せない状況にする』なんて面白くない行動をして、黙ってみているわけがないんだよん。」
「……随分確信をもって言いますね。」
「似たような馬鹿が身内に居るからね。
まあそいつは無駄な努力をしている奴を見てゲラゲラ笑うのが好きなんだけど。」
「最初の演説で聞いた限り、羂索は『面白い』ものを見たがっている。
だったらランサーっちが『誰も人を殺せない状況にする』なんて面白くない行動をして、黙ってみているわけがないんだよん。」
「……随分確信をもって言いますね。」
「似たような馬鹿が身内に居るからね。
まあそいつは無駄な努力をしている奴を見てゲラゲラ笑うのが好きなんだけど。」
いつでも壊せるアンドロイドの無駄な努力を21年も笑って楽しんでいた、爆弾マニアの身内を思い出しマイは白けたように笑う。
「ろくでもない奴は何処にでもいるものだよ。」
「貴方も似たようなものだと思いますけど。」
「ちょっと、酷くない?ランサーっち。」
「貴方も似たようなものだと思いますけど。」
「ちょっと、酷くない?ランサーっち。」
そう背後で文句を垂れるマイをよそに、ランサーは船内最下層の一室の前で立ち止まる。
扉の上に『動力室』と書かれた部屋からは、船内にいる全ての人間が集められているのか何十人もの声がひしめき合っていた。
ランサーが扉を鎌で切り裂き、我が物顔で入り込む。
その中にはマイの想像していたものとは全く違う光景が広がっていた。
扉の上に『動力室』と書かれた部屋からは、船内にいる全ての人間が集められているのか何十人もの声がひしめき合っていた。
ランサーが扉を鎌で切り裂き、我が物顔で入り込む。
その中にはマイの想像していたものとは全く違う光景が広がっていた。
複数のパソコンと極太のケーブルで繋がれているのは、超巨大なタービンだ。
巨大な水車にも似たその中で、さながらハムスターが回し車を回すように数十人の人間――何故だか揃って半裸である――が走り続けることで、巨大なタービンを動かしていた。
巨大な水車にも似たその中で、さながらハムスターが回し車を回すように数十人の人間――何故だか揃って半裸である――が走り続けることで、巨大なタービンを動かしていた。
「えぇ……人力なのこの船。
いや、それはそれでエネルギー効率どうなってるのって話だけど。」
いや、それはそれでエネルギー効率どうなってるのって話だけど。」
マイがぼやき、ランサーはかつかつとケーブルを押しのけて奥へと進む。
ランサーの存在に気づいたNPC達が恐怖で青ざめ、タービンから逃げ出そうと人がごった返していたが、ランサーは慌てる様子を見せず大鎌でタービンを指して言った。
ランサーの存在に気づいたNPC達が恐怖で青ざめ、タービンから逃げ出そうと人がごった返していたが、ランサーは慌てる様子を見せず大鎌でタービンを指して言った。
「私がここですべきことは2つ。
1つはイベントNPC達の抹殺ですが、こちらは既に完了しました。」
1つはイベントNPC達の抹殺ですが、こちらは既に完了しました。」
美木杉愛九郎と黄長瀬紬。裸の太陽丸の所有者たるヌーディストビーチの幹部たちは、既にランサーの手で殺されている。
彼らの役目が果たされることは永遠になく。彼らが警告する相手――鬼龍院羅暁も既に死んでいる以上、ここのイベントが失われることによる影響はゼロに近い。
彼らの役目が果たされることは永遠になく。彼らが警告する相手――鬼龍院羅暁も既に死んでいる以上、ここのイベントが失われることによる影響はゼロに近い。
「そしてここからが2つ目です。マイさん。」
「何かな?」
「この船を破壊してください。」
「何かな?」
「この船を破壊してください。」
裸の太陽丸――生命戦維という星を喰らう災厄に挑むために生み出された船には、船以上の役割がある。
甲板として展開していた部分を畳み、巨大な糸切り鋏となった船を、莫大なエネルギーで射出する。
グレートマッパダガー。そう呼ばれる巨大兵器を用意したのは、他ならぬヒースクリフであった。
甲板として展開していた部分を畳み、巨大な糸切り鋏となった船を、莫大なエネルギーで射出する。
グレートマッパダガー。そう呼ばれる巨大兵器を用意したのは、他ならぬヒースクリフであった。
アビドス地下。『天使の霊廟』に鎮座されたクルーゼ秘蔵の兵器群。
クルーゼとヒースクリフが徹底的に決裂した際に、それらが起動する前に破壊する。
一枚岩ではない運営達の、互いの牽制用の保険の1つ。それが裸の太陽丸ことグレートマッパダガーのもう1つの役割であった。
クルーゼとヒースクリフが徹底的に決裂した際に、それらが起動する前に破壊する。
一枚岩ではない運営達の、互いの牽制用の保険の1つ。それが裸の太陽丸ことグレートマッパダガーのもう1つの役割であった。
ランサーはクルーゼのサーヴァントだ。
彼女が真っ先に裸の太陽丸を破壊したことに、この事実が無関係では決してないだろう。
彼女が真っ先に裸の太陽丸を破壊したことに、この事実が無関係では決してないだろう。
「了解だよん。」
そんな事情を知ることなく。それ以上に関心もないままに、マイは迷いなくタイムマシを取り出した。
天災ハッカー。マイ=ラッセルハート。そのタイムマシンに宿る力は、脳を含むあらゆる頭脳の介入・改竄。
天災ハッカー。マイ=ラッセルハート。そのタイムマシンに宿る力は、脳を含むあらゆる頭脳の介入・改竄。
ルルーシュのギアスや鬼龍院羅暁の精神仮縫いがそうであるように、並のNPCでは彼女の毒牙から逃げ切る術を持たない。
「編集(エディット)」
◆◇◆
午後18時30分
ランサーは並びにマイ=ラッセルハート両名は、エリアE-13の海岸を歩んでいる。
背後の海では裸の太陽丸が砕け、煙と共に巨大な残骸が潮に呑まれて消えていく。
マイの編集(エディット)で船を破壊するように命じられたNPCは、植え付けられた記憶に従い裸の太陽丸と運命を共にし、ランサーの殺した数多の死体を追う形で世界からその姿を消した。
マイ以外の参加者がその存在を知ることない。初めから何も存在しないかのように、後には静かな海が残るだけだ。
背後の海では裸の太陽丸が砕け、煙と共に巨大な残骸が潮に呑まれて消えていく。
マイの編集(エディット)で船を破壊するように命じられたNPCは、植え付けられた記憶に従い裸の太陽丸と運命を共にし、ランサーの殺した数多の死体を追う形で世界からその姿を消した。
マイ以外の参加者がその存在を知ることない。初めから何も存在しないかのように、後には静かな海が残るだけだ。
「ちょっと勿体なかったかなぁ。質はともかく数は揃っていたわけだし。」
「下手に目立ってルルーシュの顰蹙を買いたくないっていったのは貴女ですよ。
それに、沈没する船から私が運べるのは1人が限界です。」
「分かってる分かってる。」
「下手に目立ってルルーシュの顰蹙を買いたくないっていったのは貴女ですよ。
それに、沈没する船から私が運べるのは1人が限界です。」
「分かってる分かってる。」
へらへらと楽し気に返すマイに、ランサーは少し考えこむと怪訝な顔で問いかけた。
「マイさんはオシリスレッド寮のイベントNPCと出会っているようなことを言っていましたが、その時に得たのが先ほどの黒いカードですか?」
黒いカード。マイとの戦いの最中に見せた、『N(ネオスペーシアン)・ブラック・パンサー』
真っ黒な女の影を生み出したカードには、張りぼてとはいえ何か秘密があるとランサーは考えたが、マイは首を横に振る。
真っ黒な女の影を生み出したカードには、張りぼてとはいえ何か秘密があるとランサーは考えたが、マイは首を横に振る。
「違う。アタシがクロノス先生から貰ったのは、相手と1対1の戦いを強制するカード。
このブラックパンサーを含む『6枚』は、その後部屋を調べなおして改めて手に入れたものだよ。
たぶん、遊城十代用のギミックアイテムじゃないかな?置いてあったの彼の部屋だし。」
このブラックパンサーを含む『6枚』は、その後部屋を調べなおして改めて手に入れたものだよ。
たぶん、遊城十代用のギミックアイテムじゃないかな?置いてあったの彼の部屋だし。」
言葉と共にマイが取り出したのは、6枚のカードだ。
『フレア・スカラベ』
『アクア・ドルフィン』
『エア・ハミングバード』
『グラン・モール』
『グロー・モス』
『ブラック・パンサー』
『フレア・スカラベ』
『アクア・ドルフィン』
『エア・ハミングバード』
『グラン・モール』
『グロー・モス』
『ブラック・パンサー』
『N(ネオスペーシアン)』と銘打たれた6枚のカードは特別強力なカードではない。
クロノス先生と出会いでデュエルを学んだマイが、その後の探索でオシリスレッド寮の遊城十代の部屋から見つけた、デッキの中に眠っていたカードたちであった。
遊城十代のデッキを模したそのカード群は『E・HEROネオス』や『超融合』、『ハネクリボー』といった主要なカードが引き抜かれたうえ、ピン指しされたサポートカードや複数のカテゴリーが混ざり合っている。
忌憚のない言葉でいえば、クロノス先生との戦いで使った『クロノダイバー』と比べると実用性では数段劣るのは素人のマイでも断言できるもの。
使いこなすには『E・HEROネオス』のカードを手に入れ、遊城十代並のドロー力とデュエルタクティクスが必要になるそのカード群は、マイが手にしてもほとんど役に立つことはない。
だけどマイには、マイにだけは6枚の『N(ネオスペーシアン)』をより有効な使い方を見出していた。
クロノス先生と出会いでデュエルを学んだマイが、その後の探索でオシリスレッド寮の遊城十代の部屋から見つけた、デッキの中に眠っていたカードたちであった。
遊城十代のデッキを模したそのカード群は『E・HEROネオス』や『超融合』、『ハネクリボー』といった主要なカードが引き抜かれたうえ、ピン指しされたサポートカードや複数のカテゴリーが混ざり合っている。
忌憚のない言葉でいえば、クロノス先生との戦いで使った『クロノダイバー』と比べると実用性では数段劣るのは素人のマイでも断言できるもの。
使いこなすには『E・HEROネオス』のカードを手に入れ、遊城十代並のドロー力とデュエルタクティクスが必要になるそのカード群は、マイが手にしてもほとんど役に立つことはない。
だけどマイには、マイにだけは6枚の『N(ネオスペーシアン)』をより有効な使い方を見出していた。
「このカードにはね人格があり、思考ができ、意思がある。」
N(ネオスペーシアン)。
宇宙の正しき闇の波動を受けたカードたちには、精霊が宿っている。
それは宇宙が育んだ生命を守る『正しきの闇』の使者たちであり、所有者である遊城十代とは固いきずなで結ばれているカードなのだが。
宇宙の正しき闇の波動を受けたカードたちには、精霊が宿っている。
それは宇宙が育んだ生命を守る『正しきの闇』の使者たちであり、所有者である遊城十代とは固いきずなで結ばれているカードなのだが。
裸の太陽丸を壊すことに何の関心も持たなかったように、そんな使命も絆もマイ=ラッセルハートにとって、そんなことはどうでもいいことであった。
「つまりこの6枚は、アタシの『編集(エディット)』の対象内だ。
アタシのサポートをする演算装置として、これほど便利なものもないね。」
アタシのサポートをする演算装置として、これほど便利なものもないね。」
軽く。かさ張らず。妙に丈夫で。しかし人並の知能……すなわち、演算能力を持つカードたち。
カードの効果も多少は活用でき、 ランサーに見せた黒い影もブラックパンサーの『相手モンスターの名前と効果を再現する効果』にペレテの記憶を編集(エディット)することで生みだした幻影であった。
あっけらかんと語るマイに、ランサーは立ち止まると僅かな嫌悪を含んだ冷ややかな目でマイを睨んだ。
カードの効果も多少は活用でき、 ランサーに見せた黒い影もブラックパンサーの『相手モンスターの名前と効果を再現する効果』にペレテの記憶を編集(エディット)することで生みだした幻影であった。
あっけらかんと語るマイに、ランサーは立ち止まると僅かな嫌悪を含んだ冷ややかな目でマイを睨んだ。
「……おぞましいですね。ルルーシュが貴女を毛嫌いする理由も、正直理解できますよ。」
人の脳という最強の演算装置を己が手で書き換えられる犯罪者(クラッカー)。
その人の意思も矜持も絆も愛も、自在に削除し自在に組み替えられる。
それは、その相手その者の記憶の否定であり、人格の否定であり、過去の否定であり、存在の否定だ。
その人の意思も矜持も絆も愛も、自在に削除し自在に組み替えられる。
それは、その相手その者の記憶の否定であり、人格の否定であり、過去の否定であり、存在の否定だ。
「マイさん。私としても貴方の能力は有用ですし、影響力の乏しさを考えて今は同行することを許していますが。」
大鎌を出現させると、その切っ先をマイへと向ける。マイは身じろぎ1つせず、真剣な眼差しでランサーを見つめ返していた。
実直な瞳の奥で昏いものが燃えているように、ランサーには見えた。
「ランサーに協力する」と言った時の怪しい笑みより、真剣な眼差しを向けている今の方が、よほど警戒すべき相手だと思えてならなかった。
実直な瞳の奥で昏いものが燃えているように、ランサーには見えた。
「ランサーに協力する」と言った時の怪しい笑みより、真剣な眼差しを向けている今の方が、よほど警戒すべき相手だと思えてならなかった。
「いずれ貴女は、私が殺します。」
「そうなったら、全力で抵抗するよん。
それに、そう言ってくれるってことは、今は一緒に居ていいってことだ。」
「そうなったら、全力で抵抗するよん。
それに、そう言ってくれるってことは、今は一緒に居ていいってことだ。」
マイ=ラッセルハートは、殺し合いに乗っている。
協力、信頼、友情、絆。
求めれば得られるだろうものを自ら遠ざけ、恩讐の焔を燃やしながら女は手を穢し続ける。
協力、信頼、友情、絆。
求めれば得られるだろうものを自ら遠ざけ、恩讐の焔を燃やしながら女は手を穢し続ける。
「その時までは、仲良くしようよランサーっち。
――殺し合い、ぶっ壊すんでしょ?」
「こんなことになるとは、マスターも想定していなかったと思いますけどね。」
――殺し合い、ぶっ壊すんでしょ?」
「こんなことになるとは、マスターも想定していなかったと思いますけどね。」
怪しい色気と殺気の籠った笑みで言い放つマイにランサーは肩を落としてはいるも、歩みは止めない。
この悍ましくも悲しい女を、いずれは殺さねばならないという確信を、確かに胸に抱きながら。
この悍ましくも悲しい女を、いずれは殺さねばならないという確信を、確かに胸に抱きながら。
【エリアE-13/海岸/9月2日午後6時30分】
【マイ=ラッセルハート@運命の巻戻士】
状態:疲労(中) 小鳥遊ホシノへの興味(中) 神戸しおへの興味(中) ルルーシュへの警戒(大)『覇世川左虎の暗刃』を編集(エディット)
服装:オシリスブルーの女学生制服@遊戯王GX
装備:マイのタイムマシン装置@運命の巻戻士 オコノミボックス@ドラえもん ツィベタ=コオリスカヤの心遺物(メイド・イン・ハート)@SHY-シャイ-、ラストバトル@遊戯王
カッシーンの残骸×2@仮面ライダージオウ ヘイロー破壊爆弾@ブルーアーカイブ 遊城十代のデッキ(N(ネオスペーシアン)6種含む)(一部欠落)@遊戯王GX
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:優勝して、不平等な世界を変える
01:なんだって利用してアタシは勝つよ。
02:タイムマシンの使用は慎重に。
削除と編集も使い所をなるべく考える。
03:巻戻士は許さない。
04:私は優勝する。そのために皆を利用する。
その意思は揺るがない……誰に何と言われようと
05:――――助けてほしいなんて。私は望んでいない。
06:ホシノっちはなんだか気になる。
どこかアタシに似てる気がする。
07:病院の地下は蛇の潜む薮だったなぁ。大損しちゃった
08:ツィベタっちの言いたいことは分かる。
それでもアタシは――。
09:ルルーシュには関わりたくないな。会ったら殺されるし。
10:クロノス先生からもらったこのカードと、ヘイロー破壊爆弾はアタシの切り札。
11:殺し合いの破壊……出遅れちゃった以上正攻法で行くよりランサーっちに乗った方がよさげかな
参戦時期:クロノたちと出会う前
備考
※編集(エディット)の過程で、『忍者と極道』『魔法少女にあこがれて』『プリンセスコネクト!Re:Dive』『鵺の陰陽師』の世界についてのある程度の知識を得ました。
※ツィベタ=コオリスカヤの心遺物(メイド・イン・ハート)@SHY-シャイ-は意志持ち支給品ですが、夢の中など特定の状況可でしか会話が出来ません。
※冥黒の五道化が必要なほど強力な参加者が5人いるのではないかと考えています。
※22世紀のスーパーコンピューターに変化させたオコノミボックスとカッシーンの残骸・N(ネオスペーシアン)のカードの精霊にザラサリキエルの権能を付与することで能力を再現しています。
現在は『オブジェクト変更』『乱数聖域』『覇瞳天星』『氷の像を用いた分身の作成』を限定的に使用できます
デメリットなどにつきましては後続の書き手様にお任せします。
※自身に『覇世川左虎の能力』を編集(エディット)しています。
状態:疲労(中) 小鳥遊ホシノへの興味(中) 神戸しおへの興味(中) ルルーシュへの警戒(大)『覇世川左虎の暗刃』を編集(エディット)
服装:オシリスブルーの女学生制服@遊戯王GX
装備:マイのタイムマシン装置@運命の巻戻士 オコノミボックス@ドラえもん ツィベタ=コオリスカヤの心遺物(メイド・イン・ハート)@SHY-シャイ-、ラストバトル@遊戯王
カッシーンの残骸×2@仮面ライダージオウ ヘイロー破壊爆弾@ブルーアーカイブ 遊城十代のデッキ(N(ネオスペーシアン)6種含む)(一部欠落)@遊戯王GX
令呪:残り三画
道具:ホットライン
思考
基本:優勝して、不平等な世界を変える
01:なんだって利用してアタシは勝つよ。
02:タイムマシンの使用は慎重に。
削除と編集も使い所をなるべく考える。
03:巻戻士は許さない。
04:私は優勝する。そのために皆を利用する。
その意思は揺るがない……誰に何と言われようと
05:――――助けてほしいなんて。私は望んでいない。
06:ホシノっちはなんだか気になる。
どこかアタシに似てる気がする。
07:病院の地下は蛇の潜む薮だったなぁ。大損しちゃった
08:ツィベタっちの言いたいことは分かる。
それでもアタシは――。
09:ルルーシュには関わりたくないな。会ったら殺されるし。
10:クロノス先生からもらったこのカードと、ヘイロー破壊爆弾はアタシの切り札。
11:殺し合いの破壊……出遅れちゃった以上正攻法で行くよりランサーっちに乗った方がよさげかな
参戦時期:クロノたちと出会う前
備考
※編集(エディット)の過程で、『忍者と極道』『魔法少女にあこがれて』『プリンセスコネクト!Re:Dive』『鵺の陰陽師』の世界についてのある程度の知識を得ました。
※ツィベタ=コオリスカヤの心遺物(メイド・イン・ハート)@SHY-シャイ-は意志持ち支給品ですが、夢の中など特定の状況可でしか会話が出来ません。
※冥黒の五道化が必要なほど強力な参加者が5人いるのではないかと考えています。
※22世紀のスーパーコンピューターに変化させたオコノミボックスとカッシーンの残骸・N(ネオスペーシアン)のカードの精霊にザラサリキエルの権能を付与することで能力を再現しています。
現在は『オブジェクト変更』『乱数聖域』『覇瞳天星』『氷の像を用いた分身の作成』を限定的に使用できます
デメリットなどにつきましては後続の書き手様にお任せします。
※自身に『覇世川左虎の能力』を編集(エディット)しています。
〈メデューサ(ランサー)@Fateシリーズ〉
状態:健康
服装:普段の服装
装備:不死殺しの鎌@Fateシリーズ
思考
基本:マスターの命に従う
01:バトルロイヤルを破壊する。
02:妙な人と同行することになりましたが……彼女は生かしておいた方が私にとっては都合がいいですね。いつか殺しますが。
備考
※令呪による『バトルロワイヤルの破壊』という命令を『参加者の戦闘能力の剥奪』と判断し行動しています。
現在は『ドロップアイテムを与えるNPCの抹殺』『各施設で起こるイベントの破壊』を中心に行動しています。
状態:健康
服装:普段の服装
装備:不死殺しの鎌@Fateシリーズ
思考
基本:マスターの命に従う
01:バトルロイヤルを破壊する。
02:妙な人と同行することになりましたが……彼女は生かしておいた方が私にとっては都合がいいですね。いつか殺しますが。
備考
※令呪による『バトルロワイヤルの破壊』という命令を『参加者の戦闘能力の剥奪』と判断し行動しています。
現在は『ドロップアイテムを与えるNPCの抹殺』『各施設で起こるイベントの破壊』を中心に行動しています。
【NPC紹介】
美木杉愛九郎@キルラキル
黄長瀬紬@キルラキル
黄長瀬紬@キルラキル
南の港に停泊している裸の太陽丸@キルラキル内にいたNPC
北の港にいる長曾我部元親同様に参加者に協力的であるが、既に両名ともランサーの手で殺害されている。
北の港にいる長曾我部元親同様に参加者に協力的であるが、既に両名ともランサーの手で殺害されている。
ヌーディストビーチ構成員@キルラキル
南の港に停泊している裸の太陽丸@キルラキル内にいたNPC
黒い皮で出来た露出の多い装備を身に着けた、生命戦維に対するレジスタンス。
裸の太陽丸にいた個体は、ランサーとマイの手で全滅している。
南の港に停泊している裸の太陽丸@キルラキル内にいたNPC
黒い皮で出来た露出の多い装備を身に着けた、生命戦維に対するレジスタンス。
裸の太陽丸にいた個体は、ランサーとマイの手で全滅している。
【ドロップアイテム紹介】
遊城十代のデッキ@遊戯王GX
オシリスレッド寮にある遊城十代の部屋にあったカード群 クロノス・デ・メディチとのデュエルイベント終了後――より正確には、デュエルを理解している参加者にのみ入手可能なアイテム。
基本はE・HEROやネオスペーシアンで構築されたデッキであるが、専用サポートカードを含む複数の要素がピン指しで挿入されている上に、核となる『E・HEROネオス』『ハネクリボー』『超融合』など、一部のカードが存在しないため、デッキとして扱うのは事実上不可能。
ドロップ品のカードのように1枚で状況を変える効果も無く。アニメ準拠のため後年のOCGで追加された強力なサポートカードやOCG化に当たり強化されたカードも存在しない。
そのため本来は支給品のE・HEROネオスの強化素材か、遊城十代に対するイベントアイテムであったが、マイ=ラッセルハートが入手している。
基本はE・HEROやネオスペーシアンで構築されたデッキであるが、専用サポートカードを含む複数の要素がピン指しで挿入されている上に、核となる『E・HEROネオス』『ハネクリボー』『超融合』など、一部のカードが存在しないため、デッキとして扱うのは事実上不可能。
ドロップ品のカードのように1枚で状況を変える効果も無く。アニメ準拠のため後年のOCGで追加された強力なサポートカードやOCG化に当たり強化されたカードも存在しない。
そのため本来は支給品のE・HEROネオスの強化素材か、遊城十代に対するイベントアイテムであったが、マイ=ラッセルハートが入手している。
他のカード支給品のように召喚したり魔法罠として扱うことは出来ないが。例外として『N(ネオスペーシアン)』と書かれたカードには精霊が宿っている。
これらは事実上の意思持ち支給品であり、現在はマイの『編集(エディット)』影響下にて演算装置として扱われている。
この効果はマイのタイムマシンに衝撃を与えることでのみ解除可能であり、当人たちの意思は関係者が呼び掛かけ続けるなどよほどの奇跡が起きない限り復活しない。
これらは事実上の意思持ち支給品であり、現在はマイの『編集(エディット)』影響下にて演算装置として扱われている。
この効果はマイのタイムマシンに衝撃を与えることでのみ解除可能であり、当人たちの意思は関係者が呼び掛かけ続けるなどよほどの奇跡が起きない限り復活しない。
| 179:いつか、最強で無敵の── | 投下順 | 181:決着はディナーのあとで |
| 174:悪事千里を走り弱り目に祟り目 | 時系列順 | 171:まかせた!キョウリュウジャーの力! |
| 136:尊厳を喰らう世界でこの身が汚れても心は折れない | マイ=ラッセルハート | |
| 165:第二回放送 | メデューサ |