異邦人

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異邦人  ◆EboujAWlRA



ここはバトルロワイアルが行われる一つの孤島。
その北西に設立された美術館の一室に居座るのは一人の化け物、人間社会での名を田村 玲子というパラサイトだ。
パラサイトとは人間に寄生することで脳髄を支配し、完全にその人格を乗っ取っとり、寄生先の同種である人間を主食とする怪物である。
このことから、人間とパラサイトは分かり合うことができないと結論付けてもおかしくはない。
そして、この性質以外にもパラサイトと人間の間には大きな違いがある。
パラサイトは人間から見ると、ひどく自己中心的で冷酷な存在なのだ。
それが生まれてから間もないからか、それとも元々がそういう性質なのかは分からない。
ただ一つ言えることは、彼女たちは人間を殺すことはもちろん時には同種を殺すことも厭わない。
分かりやすく言うのなら、パラサイトとは人間よりも生存を最優先に行動する野生動物に近いのだ。

そのパラサイトの一人である田村玲子は自分以外の誰も存在しない部屋で思考に耽っていた。

(さて、どうするか……)

彼女は眉一つ動かさずに考えていたことは、これからのことに他ならない。
『バトルロワイアル』というものに彼女は巻き込まれてしまったのだ。
バトルロワイアルとはなんでもこの名簿に名前が載ってる人間が殺し合うというものらしい。
田村玲子はそんな普通じゃない状況でこれからどうするかを普通に考える。
まず、最初に思いついたのはこの殺し合いで最後の一人になることだ。

(……だが、後藤が居る以上は難しいか)

しかし、勝ち残ることは恐らく難しいと思われる。
その理由として特殊なパラサイトである後藤の存在が立塞がるのだ。
後藤は彼女自身が作り上げたパラサイトであり、普通のパラサイトと違い頭だけでなく五体の全てを一瞬で高質化、変形できる。
作り上げた彼女だからこそ、後藤が並大抵のことでは死なないことを熟知している。

さらに、パラサイトは各々の個体差があると言えど、人間、いや、猛獣をも遥かに凌駕している。
だが、所詮その程度だ。
寄生した肉体が生存不能なほどの重傷を負えば当然死んでしまう。
痛みに鈍くショック死はしないが、内臓を破壊すれば当然その肉体が生きていくことは不可能。
となると、寄生生命体に過ぎないパラサイトだけが生き残れるわけがない。
この場合は別の人間に寄生し直すしかないのだ。
このことから、万が一とは言え死んでしまう可能性は確かに存在するのだ。
その事故が起こる可能性をなくしている後藤という規格外の存在。
殺し合いに生き残るのは難しいと言えよう。

さて、殺し合いに乗るという選択も難しいとなると、どうするか。
彼女はしばらくの間だけ考え込み、答えとも言えない答えを出した。

(……思いつかんな。第一、殺し合いをすることに全く興味が分かん)

殺し合いをするということに田村玲子は全く興味が湧かなかった。
最初に出会った緋色の髪をした男を殺したのは食事のために過ぎない。
これ以後も空腹を感じれば人を食うだろうが、決して殺し合いに乗ったわけでない。
右腕に寄生したパラサイトを持ち、人間のままパラサイト側についた泉 新一。
奇妙としか言いようのない現東福山市市長であり、パラサイトコミニティの発案者である広川 剛志。
彼らを見た時に感じた物が全く心に浮かんでこなかった。

ただ、彼女は何故こんなバトルロワイアルという妙な物を始めた人間の思考については少し興味がわいた。

(……何の目的を持って殺し合いを行ったのか、か)

普通のパラサイトならば何も考えずに食事のついでに殺し合いに乗るかもしれない。
だが、彼女はパラサイトの中でも特別に好奇心が高い、いわゆる変わり者だった。
知的好奇心の赴くままに行動する、それは仲間であるはずパラサイトですら理解できない部分もあった。

(殺し合いとなると……見世物か? 理不尽な状況で人が怯え、狂う姿を見て楽しむのか?)

彼女には理解できないが、人間には同種が苦しむ姿を見て愉悦を覚える性質があるらしい。
それの延長線上と考えれば納得できないこともない。
ただ一つ言えることは、殺すこと自体が目的でないと言うことだ。
それならば最初から磔にして嬲るように自身の手で殺していけばいい。
つまりバトルロワイアル、集めた人間同士が殺し合うことが目的なのだ。
恐らく、参加者が死ぬこと自体は二の次と考えていい。
大事なのは殺し合うことだろう。

だが、田村玲子という変わり者のパラサイトにはもう一つの動機が思い浮かんでいた。
その動機とは、人間を観察すること。

(私のようなパラサイトがいるのだ、似たような人間が居てもおかしくない)

人間の性質は個体差が激しいと田村玲子は今までの観察結果から判断していた。
倫理観を重んじる人間も居れば、倫理観なんてまるでないように振舞う人間もいる。
そして、人間ながら人間に興味を抱いている人間が居ても不思議ではない。

人は、危機に陥った時にどのような行動をとるのか。
人は、角を曲った瞬間に殺されるくるかもしれないという恐怖に耐えられるのか。
人は、今まで培ってきた倫理観とやらをたやすく崩すことが出来るのか。

日常では到底観察できない人の姿を観察できる。

田村玲子にも直ぐに承諾する人間は少ないと今までの観察結果から察することが出来る。
今は現実味を感じずに何をするでもなく動き回ってる人間が大半だろう。
あるいは先ほど食した男のように不安から人と接触するかもしれない。
パラサイトと違い十分に一人で生きていけると言うのに、人間を代表とする哺乳類は痛がりで寂しがりだ。

しかし、手段としては中々に上手い。
観察者の心一つで殺せるという首輪をつけたことも、時間制限を設けなかったのも面白い。
制限事項はある程度緩くした方が、参加者それぞれの人となりを観察できる。
時間制限を特に設けずに、しかしながら首輪で何時どんな時でも殺せると言うことを示す。
これによって、時間制限を設けていないにもかかわらず、殺し合いが進まなければ何時か首輪が爆発する、という恐怖を教える。
その恐怖に耐えられない人間は大勢出てくるだろう。
ひょっとすると、これが初めてではないのかもしれない。

田村玲子が僅かな時間で考えた結果では、『娯楽』か『実験』の二択になる。

復讐や誰か一人を苦しめて、という考えは全く出てこなかった。
それは彼女が人間特有の無駄を理解し切れていないパラサイトであるから。
かつ、彼女が人間の観察をしていたからこそ、人間を見ること、が前提である二つをまっ先に想像したのだ。

(……このような場合において人間がどう動くか。それは確かに見たことがないな)

一方的な恐怖に陥った人間は大勢見てきた。
だが、人間同士が殺し合い、赴くままに悪意をぶつける瞬間は見たことがない。
他者に恐怖を与えながらも恐怖を感じる人間の姿、そんな姿を田村玲子は見たことがない。

(動くか……人間が殺し合う姿はまだ私は見たことがない。
 見たことのない人間の一面を見れば、我々が生まれてきた理由も分かるかもしれん)


【一日目黎明/A-3 美術館】
【田村玲子@寄生獣
[装備]なし
[支給品]支給品一式×2、しんせい(煙草)@ルパン三世、手錠@相棒、不明支給品(0~3)
[状態]健康
[思考・行動]
1:人間を、バトルロワイアルを観察する。
2:泉新一を危険視。
3:今は満腹。
4:腹が減れば食事をする。


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007:最初の晩餐 田村玲子 071:元教師とメイドさん



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