人間考察 ◆.WX8NmkbZ6
深い森の中で二人の女性が向かい合う。
白衣とメイド服という殺し合いの場にそぐわぬ格好の両者は共に二十代、黒髪の日本人。
共通点の多い二人だが、その間には『人』と『そうでないもの』という越え難い壁があった。
白衣とメイド服という殺し合いの場にそぐわぬ格好の両者は共に二十代、黒髪の日本人。
共通点の多い二人だが、その間には『人』と『そうでないもの』という越え難い壁があった。
「そろそろ放送の時間よ?」
白衣を着た玲子は切れ長の眼でメイド服姿の咲世子を見据えた。
朝6時前、V.V.と名乗った少年が言った通りならば間もなく『放送』が入る。
玲子がそれに心を乱されることはないが、その時に少しだけ期待を寄せていた。
「この女は誰かが死んで絶望するのか、それとも生きている事で歓喜するのか」という疑問。
他人の行動に介入したがる変わり者、『お人好し』と呼ばれる類の人間がどんな反応をするのか。
「我々は何故生まれてきたのか」という問いへの答えに近付けるのか――玲子は観察を続ける。
朝6時前、V.V.と名乗った少年が言った通りならば間もなく『放送』が入る。
玲子がそれに心を乱されることはないが、その時に少しだけ期待を寄せていた。
「この女は誰かが死んで絶望するのか、それとも生きている事で歓喜するのか」という疑問。
他人の行動に介入したがる変わり者、『お人好し』と呼ばれる類の人間がどんな反応をするのか。
「我々は何故生まれてきたのか」という問いへの答えに近付けるのか――玲子は観察を続ける。
「……そうですね」
返されたのは先のやり取りと同じ当たり障りのない言葉。
咲世子にとっても放送はさして重要ではない。
玲子に声を掛けた時のように「助けられるのなら助けたい」とは思うが死者は助けようがないのだ。
ルルーシュさえ生きていればいい。 そしてそのルルーシュは絶対尊守の力、ギアスを持っている。
ルルーシュが誰かを殺すことはあっても誰かに殺されることはないという信頼があった。
ただ放送への関心の薄さは悪い印象に繋がりかねない、故に一応の肯定を示したまで。
返されたのは先のやり取りと同じ当たり障りのない言葉。
咲世子にとっても放送はさして重要ではない。
玲子に声を掛けた時のように「助けられるのなら助けたい」とは思うが死者は助けようがないのだ。
ルルーシュさえ生きていればいい。 そしてそのルルーシュは絶対尊守の力、ギアスを持っている。
ルルーシュが誰かを殺すことはあっても誰かに殺されることはないという信頼があった。
ただ放送への関心の薄さは悪い印象に繋がりかねない、故に一応の肯定を示したまで。
玲子は咲世子の返答――否、『反応』に細い眼を更に細める。
玲子の所作に最大限の注意を払っていながら、わずかに視線を泳がせて紡いだ無難な答え。
この会場内に生死を気に掛けている相手がいる。 玲子はそう判断した。
抱く感情は愛情なのか友愛なのか敬愛なのか、憤怒なのか憎悪なのか。
いずれにせよ有意義な観察となりそうだと、玲子は益々関心を強める。
玲子の所作に最大限の注意を払っていながら、わずかに視線を泳がせて紡いだ無難な答え。
この会場内に生死を気に掛けている相手がいる。 玲子はそう判断した。
抱く感情は愛情なのか友愛なのか敬愛なのか、憤怒なのか憎悪なのか。
いずれにせよ有意義な観察となりそうだと、玲子は益々関心を強める。
『痛がり屋』の人間は社会を形成する。
何十 何百……何万 何十万と集まって一つの生き物となる。
自分の頭以外にもう一つ巨大な『脳」を持っている。
個体個体はひ弱でも、その社会性は寄生生物が持たない強さだ。
家族の繋がりというものは人間にとって特別なものらしいと『田宮良子』の母親から学んだ。
では知人友人、あるいはそれ以外の他人同士の繋がりはどうなのか?
その答えは――
何十 何百……何万 何十万と集まって一つの生き物となる。
自分の頭以外にもう一つ巨大な『脳」を持っている。
個体個体はひ弱でも、その社会性は寄生生物が持たない強さだ。
家族の繋がりというものは人間にとって特別なものらしいと『田宮良子』の母親から学んだ。
では知人友人、あるいはそれ以外の他人同士の繋がりはどうなのか?
その答えは――
『おはよう、皆』
6時間ぶりに聴くV.V.の声、6時の定時放送。
死者の名はともかく禁止エリアというのはこの二人にも必要な情報だった。
二人は放送に耳を傾ける。 ただし玲子の視線が向けられているのは名簿でも地図でもなく篠崎咲世子。
禁止エリアと死者の名前を覚える程度、寄生生物の中でも特に優秀な知能を持つ玲子には容易い。
重要なのはあくまで『観察』だ。
死者の名はともかく禁止エリアというのはこの二人にも必要な情報だった。
二人は放送に耳を傾ける。 ただし玲子の視線が向けられているのは名簿でも地図でもなく篠崎咲世子。
禁止エリアと死者の名前を覚える程度、寄生生物の中でも特に優秀な知能を持つ玲子には容易い。
重要なのはあくまで『観察』だ。
『――山薫、斎藤一――』
――身体は強張り緊張が窺えるが、違う。
『――柊かがみ、緋村――』
――違う。
『――劉鳳、ルイズ・フランソワーズ――』
――一瞬肩を震わせたがこれも違う。 似た名前だったのか?
『――ルルーシュ・ランペルージ』
――……………………。
服の裾が汚れるのも構わず咲世子は膝を落とした。
茶がかった目が映すのは絶望、目の前に玲子がいなければ声を上げていたかも知れない。
篠崎咲世子がこの会場で気に掛けていた唯一の存在は既に死亡していたのだ。
しかしその姿を見て玲子が抱くのは同情ではない。
これからこの女はどうする?
絶望のあまり自殺するか?
主催者の言った「願いを叶える」とかいう言葉を信じて殺戮に身を投じるか?
それともこのまま座り込んでいるつもりか?
そんな純粋な好奇心だった。
(ああ……この殺し合いを始めた人間は、人間のこんな姿が見たかったのかも知れないな)
――身体は強張り緊張が窺えるが、違う。
『――柊かがみ、緋村――』
――違う。
『――劉鳳、ルイズ・フランソワーズ――』
――一瞬肩を震わせたがこれも違う。 似た名前だったのか?
『――ルルーシュ・ランペルージ』
――……………………。
服の裾が汚れるのも構わず咲世子は膝を落とした。
茶がかった目が映すのは絶望、目の前に玲子がいなければ声を上げていたかも知れない。
篠崎咲世子がこの会場で気に掛けていた唯一の存在は既に死亡していたのだ。
しかしその姿を見て玲子が抱くのは同情ではない。
これからこの女はどうする?
絶望のあまり自殺するか?
主催者の言った「願いを叶える」とかいう言葉を信じて殺戮に身を投じるか?
それともこのまま座り込んでいるつもりか?
そんな純粋な好奇心だった。
(ああ……この殺し合いを始めた人間は、人間のこんな姿が見たかったのかも知れないな)
「……嘘です……ルルーシュ様が、亡くなられたなんて……」
様付けということは恐らく家族や友人、恋人ではないだろうと、玲子は観察と考察を並行させる。
「恐らくあの放送は事実でしょうね」
「そんなはずがありません、ルルーシュ様は……!」
既に16人の死者が出ていることには全く触れない。
玲子にもそれだけその人物との繋がりが強かったのだろうと推測出来た。
もしくは特定人物以外の死に抵抗が薄い……『一般人』の枠から外れた生活を送ってきたとも考えられる。
ここまでの会話で玲子は完全に警戒されているので、詳しく経歴を尋ねる事は出来ない。
「あの放送は参加者全員に向けてのものよ。
死者を偽っても偽られた本人やその周囲の人間にはすぐに嘘と分かるわ」
玲子は目の前の女の顔色を窺いながら言葉を紡ぐ。
最初に殺した男の名を確認していない以上、玲子にも放送の真贋は分からない。
「放送は今後も行われるのに、一回目が嘘だと思われてしまっては後の放送の意味が薄れてしまうわ。
ここで嘘を吐くのはデメリットが大き過ぎるんじゃないかしら?」
しかし玲子がこの女に求めている『答え』に辿り着くには放送を信じてもらった方が都合が良い。
故に咲世子が正常に思考出来ない状態になっているのを承知で追い打ちを掛けた。
案の定咲世子の顔は益々青褪めていく。
様付けということは恐らく家族や友人、恋人ではないだろうと、玲子は観察と考察を並行させる。
「恐らくあの放送は事実でしょうね」
「そんなはずがありません、ルルーシュ様は……!」
既に16人の死者が出ていることには全く触れない。
玲子にもそれだけその人物との繋がりが強かったのだろうと推測出来た。
もしくは特定人物以外の死に抵抗が薄い……『一般人』の枠から外れた生活を送ってきたとも考えられる。
ここまでの会話で玲子は完全に警戒されているので、詳しく経歴を尋ねる事は出来ない。
「あの放送は参加者全員に向けてのものよ。
死者を偽っても偽られた本人やその周囲の人間にはすぐに嘘と分かるわ」
玲子は目の前の女の顔色を窺いながら言葉を紡ぐ。
最初に殺した男の名を確認していない以上、玲子にも放送の真贋は分からない。
「放送は今後も行われるのに、一回目が嘘だと思われてしまっては後の放送の意味が薄れてしまうわ。
ここで嘘を吐くのはデメリットが大き過ぎるんじゃないかしら?」
しかし玲子がこの女に求めている『答え』に辿り着くには放送を信じてもらった方が都合が良い。
故に咲世子が正常に思考出来ない状態になっているのを承知で追い打ちを掛けた。
案の定咲世子の顔は益々青褪めていく。
「それでは……日本の解放は……」
「?」
言ってから咲世子はようやく我に返り、自らの失言に気付いた。
察しのいい玲子ならこの一言で、咲世子とルルーシュが『黒の騎士団』に関わっている事を読み取る。
玲子は日本人のようだが名簿の中にはブリタニアやEU、他に中華連邦出身と思しき名前が散在していた。
この会場内で広められてはまずい、黒の騎士団は他国からすればテロ組織に他ならないのだから。
そう考え焦る咲世子を他所に、数秒考える素振りを見せていた玲子は口を開く。
「?」
言ってから咲世子はようやく我に返り、自らの失言に気付いた。
察しのいい玲子ならこの一言で、咲世子とルルーシュが『黒の騎士団』に関わっている事を読み取る。
玲子は日本人のようだが名簿の中にはブリタニアやEU、他に中華連邦出身と思しき名前が散在していた。
この会場内で広められてはまずい、黒の騎士団は他国からすればテロ組織に他ならないのだから。
そう考え焦る咲世子を他所に、数秒考える素振りを見せていた玲子は口を開く。
「『何』から、日本を解放するのかしら?」
それは聡い玲子のする問い掛けとしては不自然な物だった。
▽
日本とエリア11。
アメリカと神聖ブリタニア帝国。
化石燃料とサクラダイト。
「日本」という土壌は同じ、言語も同じ、共通事項は確かに多いが違いを列挙すればまたキリがない。
この篠崎咲世子という女はこんな出来過ぎた空事を言うには素直過ぎる。
私が最初に鎌を掛けた事もあって情報を出し渋っている様子はあるが、嘘を言っている気配はない。
それに多少の錯乱はあっても狂ってはいない。
むしろ相手に説明するという行為を通して脳内の情報が自然と整理され、冷静さを取り戻しつつある。
妄想や虚言でないとするならば現状では真実と見るしかない。
咲世子は私の知る日本とは根本的に異なる日本から来たのだ。
アメリカと神聖ブリタニア帝国。
化石燃料とサクラダイト。
「日本」という土壌は同じ、言語も同じ、共通事項は確かに多いが違いを列挙すればまたキリがない。
この篠崎咲世子という女はこんな出来過ぎた空事を言うには素直過ぎる。
私が最初に鎌を掛けた事もあって情報を出し渋っている様子はあるが、嘘を言っている気配はない。
それに多少の錯乱はあっても狂ってはいない。
むしろ相手に説明するという行為を通して脳内の情報が自然と整理され、冷静さを取り戻しつつある。
妄想や虚言でないとするならば現状では真実と見るしかない。
咲世子は私の知る日本とは根本的に異なる日本から来たのだ。
しかしこれ自体が興味深いのではない。 これはこれで面白いが違う。
この会場に残っているのは49人。 私と咲世子、新一と後藤を抜いて45人。
――後45人も人間がいる。
それも私や私の知る者達とは全く異なる価値観で育った人間がだ。
より多様な人間の観察が出来る――それは私が抱き続けてきた疑問への答えに繋がるかも知れない。
この会場に残っているのは49人。 私と咲世子、新一と後藤を抜いて45人。
――後45人も人間がいる。
それも私や私の知る者達とは全く異なる価値観で育った人間がだ。
より多様な人間の観察が出来る――それは私が抱き続けてきた疑問への答えに繋がるかも知れない。
「仕えていた相手が亡くなって、あなたはこれからどうするの?」
「もし本当にルルーシュ様が亡くなられたのなら……私は、私に出来る事をします」
義務感か。 そんな物にでも縋っていなければ立っている事も出来ない、といった所だろう。
「出来る事って?」
「もし本当にルルーシュ様が亡くなられたのなら……私は、私に出来る事をします」
義務感か。 そんな物にでも縋っていなければ立っている事も出来ない、といった所だろう。
「出来る事って?」
「私がゼロとなってルルーシュ様の意思を継ぎ、日本を奪還する事です」
成程、仮面の英雄――仮面は記号に過ぎず、仮面の下の顔に意味は無い。
ゼロの真贋は中身ではなく、その行動によって測られるという事か。
しかし確かにゼロ――ルルーシュは天才的な軍師で、失うには惜しいカリスマ性とやらもあったのだろう。
だが話を聞く限りでは騎士団にはゼロを継ぐような人材がいるようだし、影武者にはこの咲世子がいる。
彼がいれば日本を奪還出来る。 それは「彼がいなければ日本を奪還出来ない」とはならない。
騎士団へは日本の奪還の為に入団したと言うが、放送後の錯乱の理由は日本の為ではなく――
ゼロの真贋は中身ではなく、その行動によって測られるという事か。
しかし確かにゼロ――ルルーシュは天才的な軍師で、失うには惜しいカリスマ性とやらもあったのだろう。
だが話を聞く限りでは騎士団にはゼロを継ぐような人材がいるようだし、影武者にはこの咲世子がいる。
彼がいれば日本を奪還出来る。 それは「彼がいなければ日本を奪還出来ない」とはならない。
騎士団へは日本の奪還の為に入団したと言うが、放送後の錯乱の理由は日本の為ではなく――
そしてナナリー様も取り返します。 ルルーシュ様の為に。
咲世子がそう続けるのを聞き、私は一つの仮説を立てた。
咲世子がそう続けるのを聞き、私は一つの仮説を立てた。
「あなたは日本とその兄妹、どちらが大切なの?」
「――それは……」
「――それは……」
咲世子は兄妹と疑似家族のような感覚を持った――「情が移った」、という事だろうか。
色々と人間の事を研究してきた。
こういった不合理な行動や感情は――何となく理解出来る。
色々と人間の事を研究してきた。
こういった不合理な行動や感情は――何となく理解出来る。
咲世子がこのバトルロワイアルに参加させられていなければ訪れていた、そう遠くない先の話。
咲世子は第一皇子シュナイゼル――及び黒の騎士団から離反し、皇帝となったルルーシュの下に参画する。
ナナリーを利用してルルーシュを操ろうとするシュナイゼルに賛同出来なかった為。
その為に彼女は日本人でありながら日本解放を目指す騎士団を離れ、ブリタニア側に付いたのだ。
それは玲子にも、今の咲世子にも知る由も無い話。
咲世子は第一皇子シュナイゼル――及び黒の騎士団から離反し、皇帝となったルルーシュの下に参画する。
ナナリーを利用してルルーシュを操ろうとするシュナイゼルに賛同出来なかった為。
その為に彼女は日本人でありながら日本解放を目指す騎士団を離れ、ブリタニア側に付いたのだ。
それは玲子にも、今の咲世子にも知る由も無い話。
▽
咲世子は玲子にとって実に観察し甲斐のある女だった。
今は使命感や義務感によって哀しみという感情から目を逸らしている。
それが否が応でも直視せざるを得なくなった時、例えばルルーシュの死体を目にした時。
その時どのように反応し変化するのか実に興味深く、今後も観察を続けるのが望ましい。
しかし同行を求めても許可は得られそうに無いので、玲子は観察を一時中断する事にした。
「何処かに行く予定はある?」
「北の美術館に向かうつもりです。 あなたはあの青年を見に行くのですね」
「ええ」
長時間舐めるように観察され、流石にもう止める気もなくなったようだ。
しかし、美術館――それは玲子にとって少々不都合があった。
美術館には深夜に食った男の死体――残骸が放置してある。
そして咲世子は玲子が美術館の方から来たのを知っている。
あれを見られれば「田村玲子は殺し合いに乗っている」と広まるのは必然。
普段と違い名簿がある以上、簡単に『田村玲子』ではない他人になる事も出来ないのだ。
そうなると今後の他の参加者達の観察にまで支障を来す。
今は使命感や義務感によって哀しみという感情から目を逸らしている。
それが否が応でも直視せざるを得なくなった時、例えばルルーシュの死体を目にした時。
その時どのように反応し変化するのか実に興味深く、今後も観察を続けるのが望ましい。
しかし同行を求めても許可は得られそうに無いので、玲子は観察を一時中断する事にした。
「何処かに行く予定はある?」
「北の美術館に向かうつもりです。 あなたはあの青年を見に行くのですね」
「ええ」
長時間舐めるように観察され、流石にもう止める気もなくなったようだ。
しかし、美術館――それは玲子にとって少々不都合があった。
美術館には深夜に食った男の死体――残骸が放置してある。
そして咲世子は玲子が美術館の方から来たのを知っている。
あれを見られれば「田村玲子は殺し合いに乗っている」と広まるのは必然。
普段と違い名簿がある以上、簡単に『田村玲子』ではない他人になる事も出来ないのだ。
そうなると今後の他の参加者達の観察にまで支障を来す。
玲子の懸念事項はもう一つ。
寄生生物には半径約300メートル以内にいる同類の脳波のようなものを感じ取る能力がある。
放送直前頃から玲子は感じていた。
南西――咲世子が殺し合いに乗っている青年と会ったという方角の、他の寄生生物の気配を。
新一なのか後藤なのか、それとも玲子の知らない寄生生物なのかは分からないが厄介な存在だ。
どこかに身を隠した上でその青年を観察したかったのだが、同族が居ては見つかってしまう。
しかも気配は激しく動き回っており、件の人物と同族がまさに交戦中という可能性がある。
殺し合いに巻き込まれてしまっては観察どころでは無い。
一応咲世子には肯定したが、向かわない方がいいだろう。
寄生生物には半径約300メートル以内にいる同類の脳波のようなものを感じ取る能力がある。
放送直前頃から玲子は感じていた。
南西――咲世子が殺し合いに乗っている青年と会ったという方角の、他の寄生生物の気配を。
新一なのか後藤なのか、それとも玲子の知らない寄生生物なのかは分からないが厄介な存在だ。
どこかに身を隠した上でその青年を観察したかったのだが、同族が居ては見つかってしまう。
しかも気配は激しく動き回っており、件の人物と同族がまさに交戦中という可能性がある。
殺し合いに巻き込まれてしまっては観察どころでは無い。
一応咲世子には肯定したが、向かわない方がいいだろう。
この先どうするか――それは一先ずこの場で咲世子を殺してしまうのが一番効率が良い。
そうすれば美術館の死体が玲子の手に依る物だと人に知れる事は無い。
しかし玲子はそれをする気にならなかった。
(咲世子の方から仕掛けて来ない限り殺す事も無いか)
好奇心に負けた、という言葉がその理由として最も適切だ。
次に会った時咲世子がどう変化しているのか、していないのかという興味。
デメリットは多いが新一と同じ観察対象として残す事にした。
「じゃあ、私はこれで」
「はい、では――」
そうすれば美術館の死体が玲子の手に依る物だと人に知れる事は無い。
しかし玲子はそれをする気にならなかった。
(咲世子の方から仕掛けて来ない限り殺す事も無いか)
好奇心に負けた、という言葉がその理由として最も適切だ。
次に会った時咲世子がどう変化しているのか、していないのかという興味。
デメリットは多いが新一と同じ観察対象として残す事にした。
「じゃあ、私はこれで」
「はい、では――」
咲世子は玲子に明確な殺気を飛ばすと同時に、デイパックに素早く手を入れる。
反射的に玲子は予め変形を済ませておいた刃で咲世子の首を薙ぐ
反射的に玲子は予め変形を済ませておいた刃で咲世子の首を薙ぐ
代わりに響いたのは金属音。
硬質化した刃を受け止めていたのはライダーデッキ。
弾丸に近い速度に加え、頭部の変形という特殊な攻撃。
それに玲子は咲世子が何かを取り出す前に首を刎ねるつもりでいた。
咲世子が行動に出ると思っていなかったので出遅れたとは言え、そう止められる物ではない。
攻撃されると覚悟した上で常人離れした動体視力、受け止める技術を併せ持たねば対応出来ないはずだ。
つまり、
弾丸に近い速度に加え、頭部の変形という特殊な攻撃。
それに玲子は咲世子が何かを取り出す前に首を刎ねるつもりでいた。
咲世子が行動に出ると思っていなかったので出遅れたとは言え、そう止められる物ではない。
攻撃されると覚悟した上で常人離れした動体視力、受け止める技術を併せ持たねば対応出来ないはずだ。
つまり、
「……驚いたな。私を試したのか?」
「ええ。あなたからは血の臭いがしましたから。
まさか人間ではないとは思いませんでしたが」
「ええ。あなたからは血の臭いがしましたから。
まさか人間ではないとは思いませんでしたが」
それはこれまで散々観察され、試すような質問をされ続けた咲世子からのささやかな意趣返しとも言えた。
社会に溶け込むのに不自由しない程度の僅かな臭いで、着替えもした。
しかし玲子が頭から血を被った事に変わりは無い。
初めは咲世子も自身の血の臭いが混じり確証は持てなかったが、長時間話していれば判る。
それだけなら何らかの殺し合いに巻き込まれただけという事も考えられた――そんな経験をしていながら冷静でいられると言う時点で、それはそれで怪しいのだが。
だから試した。 田村玲子が危険人物か否か。
結果返って来たのは正当防衛と言うには過剰な一撃。
咲世子は玲子を他の参加者に危険を及ぼす人物と断定した。
しかし玲子が頭から血を被った事に変わりは無い。
初めは咲世子も自身の血の臭いが混じり確証は持てなかったが、長時間話していれば判る。
それだけなら何らかの殺し合いに巻き込まれただけという事も考えられた――そんな経験をしていながら冷静でいられると言う時点で、それはそれで怪しいのだが。
だから試した。 田村玲子が危険人物か否か。
結果返って来たのは正当防衛と言うには過剰な一撃。
咲世子は玲子を他の参加者に危険を及ぼす人物と断定した。
玲子は知能の高い寄生生物。 多くの人間を観察してきた。
だが一般人や同族を相手にする事はあっても、規格外の人間を遭遇するのは新一を除けばこれが初めて。
故に咲世子の本質を見誤る。 咲世子はただのお人好しのメイドではない。
だが一般人や同族を相手にする事はあっても、規格外の人間を遭遇するのは新一を除けばこれが初めて。
故に咲世子の本質を見誤る。 咲世子はただのお人好しのメイドではない。
咲世子は枝葉の間をすり抜けるように跳び、数メートルほど後方の水溜まりに降りた。
それは玲子との接触の前に見繕っておいた物。
結構な高さからの着地だったにも関わらず音は無く、水面はほとんど揺れない。
水面にデッキをかざし、現れたベルトのバックルにデッキを差す。
咲世子が仮面ライダーファムに変身するのは、二度目だった。
それは玲子との接触の前に見繕っておいた物。
結構な高さからの着地だったにも関わらず音は無く、水面はほとんど揺れない。
水面にデッキをかざし、現れたベルトのバックルにデッキを差す。
咲世子が仮面ライダーファムに変身するのは、二度目だった。
玲子には変身の為の動作の間に咲世子を殺す事も出来た。
それをしなかったのはデッキの正体が分からなかった為だ。
もし爆発物なら火に弱い寄生生物としては不用意に手を出すべきではない。
それに反射的に殺しかけたとは言え、出来れば殺さずに済ませたかったというのもあるかも知れない。
それをしなかったのはデッキの正体が分からなかった為だ。
もし爆発物なら火に弱い寄生生物としては不用意に手を出すべきではない。
それに反射的に殺しかけたとは言え、出来れば殺さずに済ませたかったというのもあるかも知れない。
「最後に一つお尋ねします。
ルルーシュ様を殺めたのはあなたですか?」
「さあ。 確認しなかったからな」
当然玲子が殺した男とルルーシュの外見的特徴は全く一致しない。
咲世子が逆上する所を見てみたくなり挑発しただけだ。
「そうですか。
どちらにせよ、あなたはここで討ちます」
だが咲世子は冷静だった。
一刻も早く帰らねばならない。 ルルーシュの悲願、日本とナナリーの奪還の代行の為に。
それに一人で帰るだけでは駄目だ。
騎士団には藤堂や星刻が居るとは言え、それではブリタニアに対抗するには足りない。
同じくこの場に連れて来られているC.C.、ロロ、ジェレミアの三人との合流と協力は必須。
ルルーシュと関係の深かった彼らなら、きっと同じように考えているはず。
その為にゼロとして、危険人物を排除する。 あの乱戦の時に見た少女のような弱者を守る。
だから名乗る。 TVの前に堂々と現れたあのゼロのように。
ルルーシュ様を殺めたのはあなたですか?」
「さあ。 確認しなかったからな」
当然玲子が殺した男とルルーシュの外見的特徴は全く一致しない。
咲世子が逆上する所を見てみたくなり挑発しただけだ。
「そうですか。
どちらにせよ、あなたはここで討ちます」
だが咲世子は冷静だった。
一刻も早く帰らねばならない。 ルルーシュの悲願、日本とナナリーの奪還の代行の為に。
それに一人で帰るだけでは駄目だ。
騎士団には藤堂や星刻が居るとは言え、それではブリタニアに対抗するには足りない。
同じくこの場に連れて来られているC.C.、ロロ、ジェレミアの三人との合流と協力は必須。
ルルーシュと関係の深かった彼らなら、きっと同じように考えているはず。
その為にゼロとして、危険人物を排除する。 あの乱戦の時に見た少女のような弱者を守る。
だから名乗る。 TVの前に堂々と現れたあのゼロのように。
「私は篠崎流三十――いえ、私はゼロ!
力ある者への、反逆者です! とうっ!」
力ある者への、反逆者です! とうっ!」
掛け声と共に跳躍。
本人がいれば『違う、間違っているぞ! ゼロはそんなキャラじゃない!』と非難していた事だろう。
相変わらずゼロ、もといルルーシュのキャラを微妙に勘違いしたまま咲世子は駆ける。
本人がいれば『違う、間違っているぞ! ゼロはそんなキャラじゃない!』と非難していた事だろう。
相変わらずゼロ、もといルルーシュのキャラを微妙に勘違いしたまま咲世子は駆ける。
【一日目朝/B-3 北西】
【田村玲子@寄生獣】
[装備]なし
[支給品]支給品一式×2、白衣@現実、しんせい(煙草)@ルパン三世、手錠@相棒、不明支給品(0~2)
[状態]健康
[思考・行動]
0:人間を、バトルロワイアルを観察する。
1:篠崎咲世子は出来れば殺さないようにする。
2:茶髪の男(真司)を実際に観察してみたい。
3:泉新一を危険視。
4:腹が減れば食事をする。
※コードギアスの世界に関する大雑把な知識を得ました。 知り合いに関する情報は得ていません。
【田村玲子@寄生獣】
[装備]なし
[支給品]支給品一式×2、白衣@現実、しんせい(煙草)@ルパン三世、手錠@相棒、不明支給品(0~2)
[状態]健康
[思考・行動]
0:人間を、バトルロワイアルを観察する。
1:篠崎咲世子は出来れば殺さないようにする。
2:茶髪の男(真司)を実際に観察してみたい。
3:泉新一を危険視。
4:腹が減れば食事をする。
※コードギアスの世界に関する大雑把な知識を得ました。 知り合いに関する情報は得ていません。
【篠崎咲世子@コードギアス 反逆のルルーシュ(アニメ)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、双眼鏡@現実、ファムのデッキ@仮面ライダー龍騎、確認済支給品(0~1)
[状態] 仮面ライダーファムに変身中、ダメージ(中)、疲労(中)
[思考・行動]
0:元の世界に帰還して『ゼロ』となり、日本とナナリーを奪還する。
1:田村玲子を殺す。
2:危険人物は殺し、弱者は守る。
3:C.C.、ロロ、ジェレミアと合流する。
[備考]
※赤髪の少女(シャナ)、茶髪の男(真司)を危険人物だと思っています。
※玲子の住む日本に関する大雑把な知識を得ました。 知り合いに関する情報は得ていません。
[装備]無し
[支給品]支給品一式、双眼鏡@現実、ファムのデッキ@仮面ライダー龍騎、確認済支給品(0~1)
[状態] 仮面ライダーファムに変身中、ダメージ(中)、疲労(中)
[思考・行動]
0:元の世界に帰還して『ゼロ』となり、日本とナナリーを奪還する。
1:田村玲子を殺す。
2:危険人物は殺し、弱者は守る。
3:C.C.、ロロ、ジェレミアと合流する。
[備考]
※赤髪の少女(シャナ)、茶髪の男(真司)を危険人物だと思っています。
※玲子の住む日本に関する大雑把な知識を得ました。 知り合いに関する情報は得ていません。
時系列順で読む
Back:光を求めて影は Next:真実を惑わせる鏡なんて割ればいい
投下順で読む
Back:光を求めて影は Next:真実を惑わせる鏡なんて割ればいい
071:元教師とメイドさん | 篠崎咲世子 | 096:仮面ライダー vs 寄生生物 |
田村玲子 |