第二回放送

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第二回放送  ◆ew5bR2RQj.



地平から現れた太陽が空の頂上まで昇り、時計の長針と短針が頂点で重なり合う。
つまり正午を迎えた時、空から幼子の声が降り注ぐ。
二回目の定時放送の時間だった。


   ☆ ☆ ☆


こんにちは、みんな。
最初の放送から六時間経ったから、また放送をしなければいけないんだ。
みんなは僕がこんなことしてて面倒くさいんじゃないかって思うかな? 
でも違う、僕はとっても嬉しいよ。
みんなが僕の話を聞いてくれることが、とっても嬉しいんだ。
前よりも話を聞いてくれる人が少ないのは残念だけど、だからこそ生き残ったみんなにはしっかりと聞いてほしいな。
じゃあ、そろそろ放送を始めるよ。
一回しか言わないから、ちゃんとメモをしてね。

あ、もうこの放送が本当のことだって分かってもらえてるよね?
さっきも言ったけど、僕は嘘が大嫌いなんだ。
分かってる人は分かってるみたいだけど、まだ僕のことを信じてくれない人がいるみたいだね。
どうすれば僕が心から嘘が嫌いだって分かってもらえるかな。
あ、そうだ。
今まで嘘を吐いた人を、みんな殺しちゃうっていうのはどうかな?
フフフ、冗談さ。
そんなことしちゃったらつまらないし、みんな死んじゃうだろうからね。
え、今のは嘘になるんじゃないかって?
違うさ、今のは冗談だよ。
冗談が分からない人は、他の人とも上手く付き合っていけないよ。

話が逸れたね、先に禁止エリアから発表するよ。
前も禁止エリアから言ったけど、いつもこうとは限らないよ。
出来ればそうしたいけど、僕は嘘が嫌いだから不確かなことは言いたくないんだ。

13:00から【Cー6】
15:00から【B-3】
17:00から【E-9】

だよ。
ちゃんとメモしてくれたかな?
してなかったとしても、もう一度同じ事を言うのはできないよ。
だって、さっき一度しか放送しないって言っちゃったからね。
さあ、次はお待ちかねの『死亡者の発表』だ。
これを聞きたくて焦れている人もいるだろうし、前置きはなしにするね。


これで全員だよ。
最初の時よりも四人少ないね。
うーん、できれば最初のペースを維持して殺し合ってほしかったかな。
未だに二人としか会ってない人もいるみたいだし、もっと積極的に動かなきゃダメだよ。
あ、今回と前回の人数を合わせると合計で二十八人だから、あと五人死ねばちょうど半分になるね。

それじゃあそろそろ終わりにするよ、ちょっと喋りすぎちゃったかな。
じゃあ、六時間後にまた会おう。
君たちがまた僕の声を聞けることを祈っているよ。


   ☆ ☆ ☆


「ふぅ……」

放送を終えたV.V.は人知れず溜息を吐く。
背後にある古い時計は、カチコチと音を奏でながら時間を刻み続けている。
生活に有り触れた音であるが、彼はこの音が割と好きだった。

「ん?」

ガチャリ、と扉が開く音。
V.V.のある部屋に、一人の人物が尋ねてきたのだ。

「ああ、君か」

身長に不釣合いな長髪を床に引き摺らせ、彼はその人物へと身体を向ける。
その人物が着込んでいる黒い衣服が、端正な顔と美しい金色の髪を際立たせていた。

「放送、お疲れさまです」
「うん、ありがとう、でも僕はこの放送そんなに嫌いじゃないんだ」

子供のように声を弾ませながらV.V.は語る。
どんな状況であろうと、この放送だけはしっかりと聞く者は多い。
自分の話を多くの人間が聞いてくれるという時間は、彼にとって至福のひとときであった。

「それで僕に何か用なのかな?」
「ええ、大した用ではないのですが……」

訪問者は切羽詰まった様子でV.V.に話を耳打ちする。

「うん、確かにそうだね、これはちょっとまずいかもしれない」
「でしたら……」
「でも、ダメだよ」
「え?」
「そう簡単に僕らが介入したら面白くないじゃないか、あくまでこれは彼らの問題だよ」

せせら笑うようにその人物を見上げるV.V.。
最初は呆然としていたが、やがて見る見るうちに怒りの色に染まっていく。
訪問者は唇を噛み、嫌悪を込めた目で彼を睨みつけた。

「そんなに睨まないでよ、君が協力してくれていることは感謝してる、とても僕だけじゃやっていけないからね
 だからもし本当に君が言うような事態になった時は、僕が多少は手引きをしよう」

そう言い残し、V.V.は身体を翻す。

「さあ、仕事に戻りなよ、きちんと仕事をしてくれなきゃ、さっき言ったこともやってあげられないよ」
「ちょっと!――――」

下された裁断が不服だったのか、早口でV.V.に捲し立てる訪問者。
だが彼が再び身体を翻すことはない。
これ以上講義しても無駄だと判断し、訪問者――――鷹野三四は無言で部屋を後にした。
まるで親の仇であるかのように彼を睨みつけながら。


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079:第一回放送 V.V. 132:茶会
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