Blood teller ◆ew5bR2RQj.
右京たちと別れ、暫くの間北上を続けていたヴァンとC.C.の二人。
放送から十分前――――十一時五十分になった頃、道の脇に一軒の小屋を見つけた。
それは、彼らが最初に出会った小屋。
だからそこにしたという訳ではないが、万全の状態で放送を聞くために彼らは一度そこで休憩を取ることにした。
小屋の側にバトルホッパーを停車させ、周囲の気配を確認して小屋の中に入る。
最初に出会った時とは違い今は日中なため、灯りをつける必要はなかった。
放送から十分前――――十一時五十分になった頃、道の脇に一軒の小屋を見つけた。
それは、彼らが最初に出会った小屋。
だからそこにしたという訳ではないが、万全の状態で放送を聞くために彼らは一度そこで休憩を取ることにした。
小屋の側にバトルホッパーを停車させ、周囲の気配を確認して小屋の中に入る。
最初に出会った時とは違い今は日中なため、灯りをつける必要はなかった。
「……」
デイパックの中から名簿に地図、そして鉛筆を取り出したC.C.。
目の前には古びた机があり、いつでも放送に入ってもいい状態だ。
しかし、放送まではあと一分ほどあった。
何かをしていればあっという間に過ぎてしまうが、何もしていなければ妙に長く感じる時間。
会話でもして時間を潰せばいいのだが、今のヴァンに会話をしている余裕はなかった。
目の前には古びた机があり、いつでも放送に入ってもいい状態だ。
しかし、放送まではあと一分ほどあった。
何かをしていればあっという間に過ぎてしまうが、何もしていなければ妙に長く感じる時間。
会話でもして時間を潰せばいいのだが、今のヴァンに会話をしている余裕はなかった。
『こんにちは、みんな』
そうしているうちに放送が始まる。
C.C.は忙しなく腕を動かしながら、ヴァンは鋭い目で腕を組みながら。
支配者を自称する少年の声を聞き続ける。
C.C.は忙しなく腕を動かしながら、ヴァンは鋭い目で腕を組みながら。
支配者を自称する少年の声を聞き続ける。
『君たちがまた僕の声を聞けることを祈っているよ』
放送が終わる。
黙々と情報を書き記すC.C.とは対照的に、ヴァンは怒りを堪えるように歯を食い縛っていた。
黙々と情報を書き記すC.C.とは対照的に、ヴァンは怒りを堪えるように歯を食い縛っていた。
「東條の野郎!」
ヴァンの拳が古びた机に振り下ろされる。
朽ちつつあった机は衝撃に耐え切れず、真っ二つに砕け地図と名簿が宙を舞った。
朽ちつつあった机は衝撃に耐え切れず、真っ二つに砕け地図と名簿が宙を舞った。
「……落ち着け、ヴァン」
床に落ちた紙を拾いつつ、ヴァンを宥めるC.C.。
シャドームーンと会う直前に東條と再会した時、一緒にいたはずのミハエルの姿がなかった。
最初から嫌な予感はしていたが、東條はミハエルを殺したと告げた。
もしかしたら生きているかもしれない。
そんな希望も、たった今行われた放送で打ち消された。
ミハエル・ギャレットの名前ははっきりと告げられたのだ。
シャドームーンと会う直前に東條と再会した時、一緒にいたはずのミハエルの姿がなかった。
最初から嫌な予感はしていたが、東條はミハエルを殺したと告げた。
もしかしたら生きているかもしれない。
そんな希望も、たった今行われた放送で打ち消された。
ミハエル・ギャレットの名前ははっきりと告げられたのだ。
「クソッ! あの陰険野郎!」
現状ではカギ爪の男に繋がる唯一の手がかりだったミハエル。
それを訳の分からない理由で奪っていった東條に怒りを抱かないわけがない。
もし東條が目の前に現れたら、あの陰気くさい顔に拳骨をぶちかましていただろう。
だが、東條も死んだ。
他でもない、ヴァンの目の前でだ。
それを訳の分からない理由で奪っていった東條に怒りを抱かないわけがない。
もし東條が目の前に現れたら、あの陰気くさい顔に拳骨をぶちかましていただろう。
だが、東條も死んだ。
他でもない、ヴァンの目の前でだ。
「……」
そしてもう一人、彼にとって馴染み深い名前が呼ばれた。
レイ・ラングレン。
彼と同じようにカギ爪の男に花嫁を殺され、復讐鬼と化した男。
レイは決して仲間などではなく、同じ仇の命を狙っていたことからむしろ敵と言えただろう。
一時的に協力関係にはあったが、彼とは手を取り合うことはなかった。
だからいつ何処で野垂れ死んでも構わない。
そう思っていたはずなのに、胸の中にある蟠りがいつまで経っても消えなかった。
レイ・ラングレン。
彼と同じようにカギ爪の男に花嫁を殺され、復讐鬼と化した男。
レイは決して仲間などではなく、同じ仇の命を狙っていたことからむしろ敵と言えただろう。
一時的に協力関係にはあったが、彼とは手を取り合うことはなかった。
だからいつ何処で野垂れ死んでも構わない。
そう思っていたはずなのに、胸の中にある蟠りがいつまで経っても消えなかった。
「……おい、とっとと行くぞ」
不機嫌そうにヴァンは立ち上がる。
「待て、まだ放送で告げられた情報を記し終えてない」
「んなもん後でやればいいだろ、さっさと行くぞ」
「待て! 今のお前に運転を任せていたら、そのまま禁止エリアに突っ込んでいきそうだ
せめて禁止エリアくらいは頭に叩きこんでからにしろ」
「んなもん後でやればいいだろ、さっさと行くぞ」
「待て! 今のお前に運転を任せていたら、そのまま禁止エリアに突っ込んでいきそうだ
せめて禁止エリアくらいは頭に叩きこんでからにしろ」
C.C.がところどころにバツ印の記された地図を叩きつけてくる。
ヴァンとしては今すぐにでも出発したかったが、今のC.C.はそれを許してくれそうにない。
渋々といった形ではあるものの、彼は渡された地図の情報を頭に叩き込むことにした。
ヴァンとしては今すぐにでも出発したかったが、今のC.C.はそれを許してくれそうにない。
渋々といった形ではあるものの、彼は渡された地図の情報を頭に叩き込むことにした。
☆ ☆ ☆
「しっかり捕まったか?」
「ああ」
「ああ」
ヴァンが禁止エリアの情報を叩き込んだことを確認し、二人は小屋から出発することにした。
運転をするのはヴァンで、その後ろにC.C.が乗るというのは変わらない。
バトルホッパーの座席は一つしかないが、本体が大きいため二人乗りも余裕である。
エンジンをかけると排気音が鳴り、モーターが唸りを上げ始める。
見た目は少々珍妙ではあるが、ヨロイやKMFにも匹敵する何かを感じさせた。
運転をするのはヴァンで、その後ろにC.C.が乗るというのは変わらない。
バトルホッパーの座席は一つしかないが、本体が大きいため二人乗りも余裕である。
エンジンをかけると排気音が鳴り、モーターが唸りを上げ始める。
見た目は少々珍妙ではあるが、ヨロイやKMFにも匹敵する何かを感じさせた。
「行くぞ!」
そして、二人を乗せたバトルホッパーは発進する。
その馬力は凄まじく、二人乗りであることをまるで感じさせない。
周辺の景色が目まぐるしく変わっていき、海辺であるため潮風が吹き込む。
これが殺し合いの最中でなければ、かなり心地良いドライブになっていただろう。
その馬力は凄まじく、二人乗りであることをまるで感じさせない。
周辺の景色が目まぐるしく変わっていき、海辺であるため潮風が吹き込む。
これが殺し合いの最中でなければ、かなり心地良いドライブになっていただろう。
「ヴァン」
「あー!? なんだー!?」
「う、うるさい! そんな大声を出さなくても聞こえてる!」
「……すいません」
「あー!? なんだー!?」
「う、うるさい! そんな大声を出さなくても聞こえてる!」
「……すいません」
C.C.の一喝で、ヴァンは落ち込む態度を見せる。
周囲の雑音に声が紛れてしまわないよう彼なりの気遣いだったのだが、それを踏まえても声が大きすぎたのだ。
周囲の雑音に声が紛れてしまわないよう彼なりの気遣いだったのだが、それを踏まえても声が大きすぎたのだ。
「で、どうした?」
「ああ、さっきの放送でレナが生きているのが分かった、このまま北に進むのか?」
「ああ、さっきの放送でレナが生きているのが分かった、このまま北に進むのか?」
シャドームーンとの戦闘で分断されてしまったレナと蒼嶋。
おそらくはワープして会場の東側に行ったのだろうが、その後の消息が掴めていなかった。
放送で名前が呼ばれなかったことで、少なくとも放送が始まった段階では生きていたことになる。
彼女たちと合流するのならば、東に方向転換するべきだとC.C.は判断していた。
おそらくはワープして会場の東側に行ったのだろうが、その後の消息が掴めていなかった。
放送で名前が呼ばれなかったことで、少なくとも放送が始まった段階では生きていたことになる。
彼女たちと合流するのならば、東に方向転換するべきだとC.C.は判断していた。
「おい」
「なんだ?」
「レナって誰だ?」
「なんだ?」
「レナって誰だ?」
返ってきた問いにC.C.は深い溜め息を吐いた。
「もういい」
それっきり彼らの会話は途切れ、無言のままドライブを続けることになった。
元々彼らは他者とコミュニケーションを取るのが苦手であり、特段饒舌というわけでもない。
故に沈黙が続いても気まずさを感じることはなかった。
元々彼らは他者とコミュニケーションを取るのが苦手であり、特段饒舌というわけでもない。
故に沈黙が続いても気まずさを感じることはなかった。
「ん、なんだあれは?」
そうしてしばらく走り続けた後、前方にぼんやりと人影が映った。
デイパックが見えることから、おそらくはこちらに背を向けている。
つまり、自分たちと同じように北上しているということだ。
デイパックが見えることから、おそらくはこちらに背を向けている。
つまり、自分たちと同じように北上しているということだ。
「おい、分かってるな、ヴァン」
「ああ」
「ああ」
気怠そうに返答するヴァン。
彼は先程右京たちから声を掛けられているにも関わらず、無視してそのまま進もうとした。
こういう場であるからこそ、多少危険を伴うとしてもコミュニケーションを取った方がいい。
右京たちと別れた直後、C.C.は彼にそう進言していた。
バトルホッパーが進むにつれ、だんだんと人影の輪郭が顕になっていく。
彼は先程右京たちから声を掛けられているにも関わらず、無視してそのまま進もうとした。
こういう場であるからこそ、多少危険を伴うとしてもコミュニケーションを取った方がいい。
右京たちと別れた直後、C.C.は彼にそう進言していた。
バトルホッパーが進むにつれ、だんだんと人影の輪郭が顕になっていく。
「あれは……ッ!」
その姿は彼らにとって見覚えのあるものだった。
太陽光を反射する銀の鎧に、両肘と両脚に取り付けられた突起。
一目で人間でないと理解できる異形。
醸し出している殺気は尋常ではなく、右手に携えた深紅に輝くサーベルがそれをさらに濃くしていた。
数時間前に多くの人間と共闘し、それでも歯が立たなかった存在。
目の前にいるのは紛れもなくシャドームーンだった。
一目で人間でないと理解できる異形。
醸し出している殺気は尋常ではなく、右手に携えた深紅に輝くサーベルがそれをさらに濃くしていた。
数時間前に多くの人間と共闘し、それでも歯が立たなかった存在。
目の前にいるのは紛れもなくシャドームーンだった。
「……引き返すぞ」
大勢で立ち向かっても敵わなかった相手に、たった二人で立ち向かうなど無謀という言葉をいくつ重ねても足りない。
元々北に向かったのもヴァンの気紛れであり、ここで引き返すのが間違いなく正答だ。
今ならまだ距離があるため、逃走するのは非常に容易い。
元々北に向かったのもヴァンの気紛れであり、ここで引き返すのが間違いなく正答だ。
今ならまだ距離があるため、逃走するのは非常に容易い。
「おい、聞いているのか!? 引き返すって言ってるだろ!」
だが、ヴァンはUターンしない。
一定のスピードを保ちながら、ひたすら北上を続けている。
一定のスピードを保ちながら、ひたすら北上を続けている。
「いや、アンタさっき他の奴とは話しろって……」
「時と場合を考えろ! あいつとまともに会話ができると思ってるのか!」
「知るかよ、どのみちもう引き返すのは無理だ」
「なに?」
「あいつ、俺たちを待ち構えてる」
「時と場合を考えろ! あいつとまともに会話ができると思ってるのか!」
「知るかよ、どのみちもう引き返すのは無理だ」
「なに?」
「あいつ、俺たちを待ち構えてる」
ヴァンの言葉で視線を前方に移すと、そこには道の中心で立ち尽くしているシャドームーンの姿があった。
「俺は北に行くって決めたんだ、このまま行かせてもらう」
「待て! 考え直せ!」
「待て! 考え直せ!」
C.C.が制止してもヴァンはスピードを緩めず、どんどんと道を進んでいく。
やがて五十メートルまで近づき、シャドームーンの姿がはっきりとC.C.の瞳に映った。
やがて五十メートルまで近づき、シャドームーンの姿がはっきりとC.C.の瞳に映った。
「ッ!?」
緑色の双眼に射抜かれ、思わず竦んでしまうC.C.。
それでも怯むことなく進み続けるヴァン。
二十メートルほど手前からだんだんと速度を落とし始め、五メートルほど前まで来た時点で停止した。
それでも怯むことなく進み続けるヴァン。
二十メートルほど手前からだんだんと速度を落とし始め、五メートルほど前まで来た時点で停止した。
「お前たちか」
二人を見定めるように視線を這わせるシャドームーン。
見た目は非常に機械的であるにも関わらず、その声は青年と呼べるほどに若々しい。
だが、普通の青年とは比べ物にならないほどの老練さも混在していた。
見た目は非常に機械的であるにも関わらず、その声は青年と呼べるほどに若々しい。
だが、普通の青年とは比べ物にならないほどの老練さも混在していた。
「悪いな、俺たちは北に行くんだ、そこ通せ」
ぶっきらぼうに言い放つヴァン。
その態度を見て、C.C.は頭を抱えだす。
数時間前に出会った際、色々と状況が悪かったのもあるがシャドームーンとは出会った瞬間から戦闘になった。
シャドームーンは元から好戦的な性格なのだろうが、だからこそ相手を刺激することは避けたい。
二人だけで敵うような相手ではないのだから。
その態度を見て、C.C.は頭を抱えだす。
数時間前に出会った際、色々と状況が悪かったのもあるがシャドームーンとは出会った瞬間から戦闘になった。
シャドームーンは元から好戦的な性格なのだろうが、だからこそ相手を刺激することは避けたい。
二人だけで敵うような相手ではないのだから。
「やはりあの程度では死なないか、そうでなくては困るがな」
あの程度というのは、フライングボードを撃ち落とした時のことだろう。
支給品の中にエアドロップが無ければ、少なくともヴァンは死んでいた可能性が高い。
あるいは、彼女自身も――――
支給品の中にエアドロップが無ければ、少なくともヴァンは死んでいた可能性が高い。
あるいは、彼女自身も――――
「おい、話聞いてんのか、そこ通せっつってんだろ」
「通さないと言ったら?」
「力尽くで通る!」
「通さないと言ったら?」
「力尽くで通る!」
宣言すると同時に、薄刃乃太刀を構えるヴァン。
「バカ! お前一人でそいつに敵うはずないだろ!」
「その女の言う通りだ、貴様一人でこの私に勝てると本気で思っているのか?」
「知るか」
「その女の言う通りだ、貴様一人でこの私に勝てると本気で思っているのか?」
「知るか」
C.C.やシャドームーンの言葉をヴァンは一蹴する。
「三人がかりでもこの私を倒せなかったのだ、たった一人で倒せるわけがないだろう」
「うるせえ」
「……お前のような奴のことを馬鹿と言うのだろうな」
「うるせえ」
「……お前のような奴のことを馬鹿と言うのだろうな」
シャドームーンは肩を竦め、呆れたような物言いをする。
「私は刹那的な戦いを求めているわけではない」
シャドームーンの口から出た意外な言葉。
それに対しヴァンよりも早く反応を見せたのがC.C.。
冷たい銀の仮面に隠され、その奥にあるシャドームーンの素顔は一切見えない
故に彼女はこれまでの言動や挙動から、彼を享楽的に戦いを求める人物だと思っていたのだ。
それに対しヴァンよりも早く反応を見せたのがC.C.。
冷たい銀の仮面に隠され、その奥にあるシャドームーンの素顔は一切見えない
故に彼女はこれまでの言動や挙動から、彼を享楽的に戦いを求める人物だと思っていたのだ。
「どういうつもりだ?」
「生身でこの私に肉薄する力を見せた貴様たちをこの場で摘んでしまうには惜しい、そういうことだ」
「わけのわからねぇこと言いやがって……」
「お前は黙ってろヴァン! ならどうすればそこを通してくれる」
「なに、単純なことだ」
「生身でこの私に肉薄する力を見せた貴様たちをこの場で摘んでしまうには惜しい、そういうことだ」
「わけのわからねぇこと言いやがって……」
「お前は黙ってろヴァン! ならどうすればそこを通してくれる」
「なに、単純なことだ」
そう言い、シャドームーンは一呼吸置く。
「少々、私の話に付き合ってもらおう」
☆ ☆ ☆
バトルホッパーを道の脇に置き、シャドームーンと対峙するヴァンとC.C.。
彼らの間にある距離は、先ほどと変わらず五メートル。
会話をするには少々間が開きすぎているが、ヴァン自身に会話をする意思が無いのだから仕方がない。
そもそも最初はこの提案を拒否していたのだが、C.C.の説得がしつこいので渋々了承しただけである。
彼らの間にある距離は、先ほどと変わらず五メートル。
会話をするには少々間が開きすぎているが、ヴァン自身に会話をする意思が無いのだから仕方がない。
そもそも最初はこの提案を拒否していたのだが、C.C.の説得がしつこいので渋々了承しただけである。
「で、話ってなんだ、お前から切り出したんだからお前が話さないと先に進まないぜシャドームーンさんよ」
「そうだな、まずはお前たちの名前を聞かせてもらおう」
「なにぃ……?」
「いちいち突っ掛かるな、C.C.だ」
「けっ……ヴァンだ、今は無職のヴァンで通ってる」
「……」
「そうだな、まずはお前たちの名前を聞かせてもらおう」
「なにぃ……?」
「いちいち突っ掛かるな、C.C.だ」
「けっ……ヴァンだ、今は無職のヴァンで通ってる」
「……」
自己紹介と呼ぶには険悪過ぎる雰囲気。
ヴァンは鋭い視線を向けるが、シャドームーンは意に介さぬといった様子で話を続ける。
ヴァンは鋭い視線を向けるが、シャドームーンは意に介さぬといった様子で話を続ける。
「貴様たちと戦った数時間ほど後、別の三人組と戦った」
「あぁ?」
「その三人組との戦いでキングストーンに傷を負わされ、挙句の果てに逃げられた、私は負けたのだ」
「あぁ?」
「その三人組との戦いでキングストーンに傷を負わされ、挙句の果てに逃げられた、私は負けたのだ」
シャドームーンの独白にC.C.は眉をピクリを動かす。
「その三人組というのは最後は車に乗って逃げたのか?」
「そうだ」
「そうだ」
C.C.の質問に短い言葉で肯定するシャドームーン。
彼が言っている三人組とは、間違いなく右京の車に乗っていた者たちのことだろう。
情報交換の際に後部座席で眠っていた"二人"が、シャドームーンと交戦したことを右京から聞かされた。
彼が言っている三人組とは、間違いなく右京の車に乗っていた者たちのことだろう。
情報交換の際に後部座席で眠っていた"二人"が、シャドームーンと交戦したことを右京から聞かされた。
「なにが"私は負けたのだ"だ、カッコつけやがって」
「なに?」
「俺たちは少し前にそいつらに会ったけどよ、戦った二人はボロボロだったぜ
それにシンイチって奴が死んでる、どう見てもお前の勝ちじゃねぇか」
「なに?」
「俺たちは少し前にそいつらに会ったけどよ、戦った二人はボロボロだったぜ
それにシンイチって奴が死んでる、どう見てもお前の勝ちじゃねぇか」
シャドームーンの言葉に、ヴァンは深い反発を見せる。
キングストーンに傷を負わされたというが、それが致命傷には到底見えない。
白髪の男が胸に刻んだ傷も明らかに浅くなっていた。
キングストーンに傷を負わされたというが、それが致命傷には到底見えない。
白髪の男が胸に刻んだ傷も明らかに浅くなっていた。
「私はいずれ全人類を支配する次期創世王・シャドームーンだ
相手を完膚無きまでに屈服させてこそ、初めて勝利を誇ることができる」
相手を完膚無きまでに屈服させてこそ、初めて勝利を誇ることができる」
尊大で傲慢な物言いだが、決して嫌味を言っているわけではない。
本心からそう思っていることが、ヴァンにもC.C.にも伝わってくる。
だからこそ、余計に腹が立った。
シャドームーンの言葉を言い換えれば、自分が勝利するのは当然であると言っているようにも取れる。
何処までも上から目線の物言いはとにかく癇に障った。
本心からそう思っていることが、ヴァンにもC.C.にも伝わってくる。
だからこそ、余計に腹が立った。
シャドームーンの言葉を言い換えれば、自分が勝利するのは当然であると言っているようにも取れる。
何処までも上から目線の物言いはとにかく癇に障った。
「で、なんでわざわざそれを俺に話すんだよ」
「それはお前が強者だからだ」
「俺が?」
「それはお前が強者だからだ」
「俺が?」
――――俺をボコボコにした奴がなに言ってやがる。
ヴァンは心中で毒づく。
ヴァンは心中で毒づく。
「ああ、貴様はカードデッキを知っているか?」
「……こいつのことか?」
「……こいつのことか?」
ヴァンが懐から取り出したのは、蝙蝠のレリーフが刻まれた長方形のケース。
遠目に見ただけであるが、おそらくは東條が変身する際に使用した道具と同じ物だろう。
東條のデイパックの中に入っていた一品であり、付属していた説明書にはナイトのデッキと記されていた。
遠目に見ただけであるが、おそらくは東條が変身する際に使用した道具と同じ物だろう。
東條のデイパックの中に入っていた一品であり、付属していた説明書にはナイトのデッキと記されていた。
「ほう、既に持っていたか」
シャドームーンの声が僅かに弾む。
「こいつがどうかしたのかよ」
「そのカードデッキを持つ者と何度か戦い、私は一つの結論を得た
それはこの道具が与える力に際限はないということだ、強い者が使えば使うほど強くなる」
「そのカードデッキを持つ者と何度か戦い、私は一つの結論を得た
それはこの道具が与える力に際限はないということだ、強い者が使えば使うほど強くなる」
シャドームーンの言葉を聞いたヴァンは、握り締めたナイトのデッキを興味深そうに観察する。
一見すると玩具にも見えるが、内に秘められた力は未だ計り知れない。
一見すると玩具にも見えるが、内に秘められた力は未だ計り知れない。
「私は今までに四度の戦闘をした――――」
言葉を紡いでいくシャドームーン。
一度目の戦闘は銃を持った男との戦い、決着は一瞬で着いた。
二度目の戦闘は三人のライダーとの戦い、決死の特攻を仕掛けてきたインペラーには辛酸を舐めさせられた。
三度目の戦闘はヴァンを含んだ大勢の人間との戦い、全員が生身であったにも関わらず決して小さいとは言えない傷を刻まれた。
一度目の戦闘は銃を持った男との戦い、決着は一瞬で着いた。
二度目の戦闘は三人のライダーとの戦い、決死の特攻を仕掛けてきたインペラーには辛酸を舐めさせられた。
三度目の戦闘はヴァンを含んだ大勢の人間との戦い、全員が生身であったにも関わらず決して小さいとは言えない傷を刻まれた。
「四度目の戦いが、先ほど話した戦いだ
最初は取るに足らない有象無象だと思っていたが、戦えば戦うほどそうは思えなくなっている
命を賭して戦う者、武器に頼らずとも十分な力を持つ者、仲間と結束する者
どの者たちも、私にはない強さを持っていた」
最初は取るに足らない有象無象だと思っていたが、戦えば戦うほどそうは思えなくなっている
命を賭して戦う者、武器に頼らずとも十分な力を持つ者、仲間と結束する者
どの者たちも、私にはない強さを持っていた」
最初に出会った時とは違い、シャドームーンは饒舌に語る。
しかし言葉を連ねるたびに威圧感は増していき、ヴァンとC.C.は黙したままそれを聞き続けるしかない。
しかし言葉を連ねるたびに威圧感は増していき、ヴァンとC.C.は黙したままそれを聞き続けるしかない。
「そして、ふと知りたくなったのだ」
シャドームーンの、雰囲気が変わる。
「もしこれらの強さにカードデッキの強さが合わさった時、一体どれほどの力を生むのだろう、と」
命を賭して戦う強さ、武器に頼らずとも十分な強さ、仲間と結束する強さ。
そして、カードデッキが与える未知数の強さ。
それらが一同に介した時、おそらくは想像を絶する力が生まれる。
シャドームーンはその先にあるものを求めているのだ。
そして、カードデッキが与える未知数の強さ。
それらが一同に介した時、おそらくは想像を絶する力が生まれる。
シャドームーンはその先にあるものを求めているのだ。
「私に匹敵する力……いや、もしかしたら私を凌駕するかもしれない」
「そいつを知って、お前はどうすんだよ」
「決まっているだろう」
「そいつを知って、お前はどうすんだよ」
「決まっているだろう」
ヴァンの問いかけに、シャドームーンは強く拳を握り締める。
「灰塵すら残さないほどに叩き潰す、そうしてこそ世紀王としての矜持は保たれる」
高らかにそう宣言するシャドームーン。
その瞳の奥に混在する計り知れないほどの狂気をヴァンとC.C.は見た。
ミハエルや東條とは比べ物にならない、あまりにも純粋で強大な狂気。
その瞳の奥に混在する計り知れないほどの狂気をヴァンとC.C.は見た。
ミハエルや東條とは比べ物にならない、あまりにも純粋で強大な狂気。
「ヴァンと言ったな、貴様には私を倒し足りえる力がある、いずれ再び剣を交わす時が来るだろう」
「一人でやってろ、俺はお前に構ってられるほど暇じゃねぇんだよ」
「このバトルロワイアルのルールを忘れたか、最後に生き残れるのはただ一人だけだ、お前が拒否しようといつかは必ず戦う時が来る」
「誰があんなクソガキの言うこと聞くか、俺はこいつを外してさっさと脱出する」
「そうか、なら私は貴様の脱出を妨害するだけだ」
「なら、ここで叩き潰す」
「一人でやってろ、俺はお前に構ってられるほど暇じゃねぇんだよ」
「このバトルロワイアルのルールを忘れたか、最後に生き残れるのはただ一人だけだ、お前が拒否しようといつかは必ず戦う時が来る」
「誰があんなクソガキの言うこと聞くか、俺はこいつを外してさっさと脱出する」
「そうか、なら私は貴様の脱出を妨害するだけだ」
「なら、ここで叩き潰す」
カードデッキを掲げるヴァン。
「今は興が乗らん、私も貴様も全力ではない」
「逃げるのか」
「そう解釈しても構わん、だが戦えば死ぬのはお前だ」
「逃げるのか」
「そう解釈しても構わん、だが戦えば死ぬのはお前だ」
言葉の応酬が続く中、シャドームーンは自らのデイパックの中から一枚のカードを取り出し投げつける。
「なんだこれは?」
二本指でそれを受け取るヴァン。
表面を見ると、蒼い背景に烈風が渦巻き右枠の端から黄金の翼が描かれている。
表面を見ると、蒼い背景に烈風が渦巻き右枠の端から黄金の翼が描かれている。
「デッキの力を更に高めるカードだ、受け取れ」
「いるかよ、こんなもん」
「いるかよ、こんなもん」
受け取ったカードをヴァンは投げ捨てようとする。
「それをどうしようが私の知ったことではない、だがこの先生き残っていくには力が必要だ、貴様のような者がつまらない場所で朽ち果ててしまうのは興が冷める」
どこまでも傲慢な物言い。
だがその発言が間違っていないことは、苛立った頭でも理解することができる。
この先も戦い抜くには力が不可欠だ。
だがその発言が間違っていないことは、苛立った頭でも理解することができる。
この先も戦い抜くには力が不可欠だ。
「後で後悔するなよ」
舌打ちと共に受け取ったカードをデッキに装填するヴァン。
それを確認したシャドームーンは身体を翻そうとし、思い出したように立ち止まった。
それを確認したシャドームーンは身体を翻そうとし、思い出したように立ち止まった。
「最後に一つ言っておこう」
道の脇に停めてあるバトルホッパーを指差しながら。
「そのバトルホッパーは本来は世紀王の乗り物だ、本来ならお前たちが乗ることなど許されない」
「だから返せっていうのか?」
「その通りだ
が、今はバトルホッパーに乗ることを許してやろう
しかし次に会った時は容赦しない、その命ごとお前の全てを踏み砕く」
「だから返せっていうのか?」
「その通りだ
が、今はバトルホッパーに乗ることを許してやろう
しかし次に会った時は容赦しない、その命ごとお前の全てを踏み砕く」
最後にそう言い残し、シャドームーンは踵を返す。
そのまま道を歩き始め、こちらを振り返ることもしない。
そのまま道を歩き始め、こちらを振り返ることもしない。
「おい」
その去っていく背中に、ヴァンは声を掛ける。
「なんだ?」
ピタリと止まって、首を振り向けるシャドームーン。
「お前のことは心底気に入らないがこいつはいいマシンだ」
「……」
「次に会う時まで借りておく」
「そうか」
「……」
「次に会う時まで借りておく」
「そうか」
それだけ告げ、ヴァンも踵を返す。
互いに振り返ることなく、もう言葉を交わし合うこともない。
シャドームーンは北の道へと、ヴァンは道の脇に停めてあるバトルホッパーへと。
互いに振り返ることなく、もう言葉を交わし合うこともない。
シャドームーンは北の道へと、ヴァンは道の脇に停めてあるバトルホッパーへと。
「おい、行くぞ」
バトルホッパーに跨ったヴァンは、呆然と立ち尽くしているC.C.に声を掛ける。
それで我に返った彼女が駆け寄ってくるのを、ヴァンは気怠そうに見る。
やがて自らの胸元に細い腕が回ったのを確認し、ゆっくりとスロットルを回した。
それで我に返った彼女が駆け寄ってくるのを、ヴァンは気怠そうに見る。
やがて自らの胸元に細い腕が回ったのを確認し、ゆっくりとスロットルを回した。
「……」
瞬時に加速したバトルホッパーは、轟音を立てながら道を進む。
その最中にシャドームーンの側を横切るが、彼らが視線を合わせることはなかった。
その最中にシャドームーンの側を横切るが、彼らが視線を合わせることはなかった。
【一日目日中/E-1 分岐点の前】
【ヴァン@ガン×ソード】
[装備]:薄刃乃太刀@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-、バトルホッパー@仮面ライダーBLACK
[所持品]:支給品一式、調味料一式@ガン×ソード、ナイトのデッキ@仮面ライダー龍騎、サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎
[状態]:疲労(小)、右肩に銃創、右上腕部に刀傷、各部に裂傷、全身打撲
[思考・行動]
0:とりあえず前に進む。
1:カギ爪の男に復讐を果たすためさっさと脱出する。
2:緑髪の女(C.C.)の護衛をする。
3:次にシャドームーンに会ったらバトルホッパー返す。
[備考]
※ヴァンはまだC.C.、竜宮レナの名前を覚えていません。
【ヴァン@ガン×ソード】
[装備]:薄刃乃太刀@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-、バトルホッパー@仮面ライダーBLACK
[所持品]:支給品一式、調味料一式@ガン×ソード、ナイトのデッキ@仮面ライダー龍騎、サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎
[状態]:疲労(小)、右肩に銃創、右上腕部に刀傷、各部に裂傷、全身打撲
[思考・行動]
0:とりあえず前に進む。
1:カギ爪の男に復讐を果たすためさっさと脱出する。
2:緑髪の女(C.C.)の護衛をする。
3:次にシャドームーンに会ったらバトルホッパー返す。
[備考]
※ヴァンはまだC.C.、竜宮レナの名前を覚えていません。
【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ R2】
[装備]:無し
[所持品]:支給品一式×4、エアドロップ×2@ヴィオラートのアトリエ、ピザ@コードギアス 反逆のルルーシュ R2、ファサリナの三節棍@ガン×ソード、
カギ爪@ガン×ソード、レイ・ラングレンの中の予備弾倉(60/60)@ガン×ソード、確認済み支給品(0~2)
[状態]:疲労(小)
[思考・行動]
0:東に行きたい。
1:利用出来る者は利用するが、積極的に殺し合いに乗るつもりはない。
2:レナ達と合流したい。
3:後藤、シャドームーン、縁は警戒する。
[備考]
※不死でなくなっていることに気付いていませんが、回復が遅い事に違和感を覚えています。
※右京と情報交換をしました。
[装備]:無し
[所持品]:支給品一式×4、エアドロップ×2@ヴィオラートのアトリエ、ピザ@コードギアス 反逆のルルーシュ R2、ファサリナの三節棍@ガン×ソード、
カギ爪@ガン×ソード、レイ・ラングレンの中の予備弾倉(60/60)@ガン×ソード、確認済み支給品(0~2)
[状態]:疲労(小)
[思考・行動]
0:東に行きたい。
1:利用出来る者は利用するが、積極的に殺し合いに乗るつもりはない。
2:レナ達と合流したい。
3:後藤、シャドームーン、縁は警戒する。
[備考]
※不死でなくなっていることに気付いていませんが、回復が遅い事に違和感を覚えています。
※右京と情報交換をしました。
【一日目日中/F-1 最北端】
【シャドームーン@仮面ライダーBLACK(実写)】
[装備]:サタンサーベル@仮面ライダーBLACK
[支給品]:支給品一式、不明支給品0~2(確認済み)
[状態]:疲労(中)、胸とシャドーチャージャーに傷(回復中)
[思考・行動]
1:殺し合いに優勝する。
2:元の世界に帰り、創世王を殺す。
3:かなみは絶望させてから殺す。
4:殺し損ねた連中は次に会ったら殺す。
【備考】
※本編50話途中からの参戦です。
※殺し合いの主催者の裏に、創世王が居ると考えています。
※しばらくシャドービームは使用できません。
【シャドームーン@仮面ライダーBLACK(実写)】
[装備]:サタンサーベル@仮面ライダーBLACK
[支給品]:支給品一式、不明支給品0~2(確認済み)
[状態]:疲労(中)、胸とシャドーチャージャーに傷(回復中)
[思考・行動]
1:殺し合いに優勝する。
2:元の世界に帰り、創世王を殺す。
3:かなみは絶望させてから殺す。
4:殺し損ねた連中は次に会ったら殺す。
【備考】
※本編50話途中からの参戦です。
※殺し合いの主催者の裏に、創世王が居ると考えています。
※しばらくシャドービームは使用できません。
【サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎】
これを使用することで、仮面ライダーナイトが仮面ライダーナイトサバイブへと進化する。
なお設定上はライア、王蛇もこのカードを使用することでサバイブ体になれる。
これを使用することで、仮面ライダーナイトが仮面ライダーナイトサバイブへと進化する。
なお設定上はライア、王蛇もこのカードを使用することでサバイブ体になれる。
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