死せる者達の物語――I continue to fight

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死せる者達の物語――I continue to fight  ◆.WX8NmkbZ6



 とても、残酷な事をした自覚がある。

「アイゼルッ!!!」

 彼は、私に手を差し伸べてくれたのに。

「駄目ッ!!」

 私は……彼を拒絶した。

 エルフィールは優秀だった。
 初めは鈍くさいだけだと思っていたのに、いつの間にか追い抜かれていたわ。
 ノルディスも私には決して振り向かなかったのに、あの子には応えていた。
 だから私は自分を見詰め直そうとして、旅に出た。
 悔しくて、悲しくて、それでもエルフィールを嫌いになれなくて、もう近くにはいられなかったから。

 でも私には、エルフィールに自慢出来る事がある。
 ヴィオラートとつかささん、二人の弟子。
 真面目でひたむきな錬金術士の卵達。
 エルフィールだって優秀な錬金術士なんだから、今頃色んな生徒を抱えてるかも知れないけど――この二人は、私だけの教え子。
 ヴィオラートはまだまだで、つかささんにも基礎の基礎を教えただけ。
 それでも二人の存在は、私の誇り。

 だからつかささんの前で、ちょっとだけお姉さんぶって、痩せ我慢をして。
 私よりも彼女に助かって欲しいと、ジェレミア卿に助けて貰いたいと、そう思ってしまった。

 私の気持ちを汲んでくれたジェレミア卿はあの瞬間、走る方向を切り替えてつかささんに駆け寄って……爆発から庇った。
 今、私の顔を覗き込んでいるつかささんの姿を見て、私はホッとする。

「ごめん、なさい……」
 私の止血をしようとしているジェレミア卿に謝罪する。
 彼にとってつかささんを助ける事がどんな意味を持つのか、私にだって分かってたわ。
 それにルルーシュさんが亡くなった事で彼がどれだけ傷付いたのか、私は知ってる。
 「また助けられなかった」と奈緒子の遺体を前に嘆いた姿だって知ってる。
 そんな彼が、助けようとした相手に拒まれたらどれだけ絶望するか――分かってたのに。

 けどここでジェレミア卿が彼女を見捨てたら、二人が向き合った時間が無駄になってしまう。
 やっと歩み寄り始めたのに、何もなくなってしまう。
 ジェレミア卿の苦悩も、つかささんの勇気も、消えて欲しくなかった。

 身体が痛くて、少しずつ眠くなってきた。
 でも彼の仮面の下の瞳を初めて見て……淡く緑色に光るそれをもっと近くで見てみたくなって、私は手を伸ばす。
 怒られるかも、って心配だったんだけど、彼は何も言わない。
 仮面に触ってみる――ベタ、と触れた箇所に赤い痕が付いた。
 血……これ私の血、よね。
 ジェレミア卿も酷い怪我だけど、リフュールポットはロロさんに持って行かれてしまったし……。
 ……やっぱり私、もう助からないのね。
 道理で、ジェレミア卿もつかささんも悲しそうな顔をしていると思ったわ。

 二人とも辛そうで、苦しそうで。
 でも二人がこうして傍にいてくれるお陰で、死ぬのが少しだけ怖くなくなった。
 ……ごめんね、奈緒子。
 私……貴女より少しだけ、幸せだったみたい。

 殺し合いが始まったばかりの頃、一人ぼっちで心細かった。
 でもジェレミア卿が手を差し伸べてくれた。
 初めは戸惑いの方が大きかったけど、三人で過ごした車内は楽しかった。
 今も、こうしてジェレミア卿とつかささんがいてくれるから……怖いけど、寂しくはなかった。
 「ありがとう」と口にしたけれど掠れてしまって、二人の耳に届いたかは分からない。
 今度はちゃんと聞こえるように、声を出す。

「生きて、ね」

 頑張って、なんて言えなかった。
 二人とも頑張り過ぎてるぐらいなんだから……元気にしていてくれれば、充分よ。

「私の分も……」

 死ぬのは怖い。
 けど私は、エルフィールに恥じない生き方が出来たと思う。

【アイゼル・ワイマール@ヴィオラートのアトリエ 死亡】


 クーガーが駆け寄るとつかさが足を引き摺りながら、庭先の茂みから這い出て来る。
 慌てて彼女の状態を確かめると、足の怪我は不器用にではあるが既に止血されていた。
「つばささん、二人はどこに……?」
 クーガーが尋ねると、堪えるように下唇を噛み締めていたつかさは眉をひそめ、くしゃりと表情を歪ませる。
 二度の爆発と地面の血の跡から、無事ではないだろうと覚悟していた。
 だから悪い知らせがあると理解しながらも、クーガーは続きを聞こうとする。

「クーガー。それにつばさ……いや、つかさか」

 しかし、背後から聞こえた声にクーガーは即座に振り返る。
 そこにいたのは包帯の男と学生服の少年――先程は隠れていたのだろう。
「そう警戒すんなって、てめーとやり合うつもりはねェよ」
 言いながら男は俯いているつかさの方へ視線を動かし、語り掛ける。
「それより嬢ちゃん、俺達にも話を聞かせちゃあくれねェか。
 俺達はここに来るまで運悪く、他の参加者に全く会えなくてよ」
 わざとらしい声色で、嘘だとすぐに分かった。
 だがこの男は恐らく、嘘だと分かるように言っている。
 要は「こっちから渡す情報はないがお前らの知ってる事は全て教えろ」と。
 お願いという名の脅迫をしているのだ。

 情報を渡す事に抵抗はある。
 とても信用出来る相手ではなく、情報を悪用される可能性すらある。
 だが身のこなしと余裕から、この男が実力者である事は疑いない。
 要求を断れば、最悪戦う事になる――つかさがいるこの場で。
 クーガーにはこの男の言う通りにする以外に道はないのだ。
 渋々アルターを解いて話し合いの姿勢を見せると男は笑みを深め、名乗った。

「俺は志々雄真実、こっちは三村だ。
 ま、仲良くしようや」


 志々雄の姿を見て、俺は逃げた。
 強者二人を同時に相手取るのは無理と判断したからだが、それは逃げるという行為を正当化しようとしているようで我ながら不快だった。
 しかも志々雄から逃げたのはこれが二度目で、俺の内側で怒りが渦巻いているのを感じる。
 それでも三木を奪われた時ほどの怒りではない。
 今は既に、俺が求めるべき本能を取り戻している。
 そう、俺にとっては戦いこそが……。

 ただ二戦連続して中断した事でストレスが溜まっているのは確かだ。
 更なる闘争と餌を探す為に、俺は再び会場内を徘徊する事にする。
 志々雄に切断された右肩は左腕の肉片を一部移して塞いであるが、改めて右肩に左腕の全てを移植して補った。

 泉新一の死によって、一度はこの腕の代替を諦めた。
 だが改めて考える――田村玲子の存在を。
 本物なら、利用しない手はない。
 ヤツを右腕として統率出来るかは試してみなければ分からないが、少なくとも取り込んでプロテクトの足しにする事は出来る。

 思考しながら家々の屋根から屋根へと跳び移って進んでいるうちに、下方の道路に血溜まりを見付けた。
 飛び降りてみると、顔を潰されて死んでいる金髪の人間。
 戦闘の後にこれは、丁度良い。
 志々雄のせいで使い過ぎたエネルギーを補給する事にしよう。
 俺は大きく口を開け、その死体の上半身に食らい付いた。


【一日目午後/H-8西の裏路地】
【後藤@寄生獣
[装備]無し
[支給品]支給品一式×3(食料以外)、前原圭一のメモ@ひぐらしのなく頃に、不明支給品0~1、カツラ@TRICK、カードキー、知り合い順名簿
    三村信史特性爆弾セット(滑車、タコ糸、ガムテープ、ゴミ袋、ボイスコンバーター、ロープ三百メートル)@バトルロワイアル
[状態]疲労(大)、左腕(三木)欠損、ダメージ(小)
[思考・行動]
0:会場内を徘徊する。
1:志々雄真実を殺す。
2:強い奴とは戦いたい。
3:田村玲子が本物なら捜し出して取り込む。
[備考]
※後藤は腕を振るう速度が若干、足を硬質化させて走った際の速度が大幅に制限されています。


 僕は何も間違ってない。
 兄さんの弟なんだから、兄さんの仇を討とうとするのは当前……おかしいのはその仇を守ろうとするジェレミアの方だ。
 だからその事を糾弾しようとしたのに、ジェレミアは無言のまま。
 僕はそれが余計に勘に障って、わざとジェレミアの神経を逆撫でる言葉を選ぶ。

「そもそも何でブリタニア貴族の癖に兄さんの隣りにいるんだよ……マリアンヌの部下だったから?
 忠義なんて言って、兄さんの事をマリアンヌの代わりとでも思ってたんじゃないか!?
 だからつかさの事だって殺さずにいられるんだ……!!」

 偉そうで、自意識過剰で仕草が芝居掛かっていて、兄さんに仕える自分に誇りを持っていて。
 僕がジェレミアに抱いていた印象はそんなところだ。
 だからこう言えば必ず食って掛かって来ると思っていた……なのに、それでもジェレミアは黙ったままだった。
 背筋をピンと張って自信に満ちていた、僕の知るジェレミアとは別人のようだった。
 むしろ逆の……沈鬱な空気を纏った、死人みたいな。
 勝ち目が見えて冷静になったはずなのに、嫌な汗は止まらない。

「結局、本当に兄さんの為を思っているのは僕だけ――」
ロロ・ランペルージ

 遮るように、ジェレミアが漸く口を開いた。
 声が持つ威圧感は僕が知るままだったけど、底冷えするような重さを持っていた。
 「ひ」、と僕は情けなく息を飲んでしまう。

「私は貴様と問答をしに来たのではない」

 僕のここまでの話を全て無視するようにジェレミアは言う。
 「じゃあ何?」と精一杯の虚勢を張って聞くと、ジェレミアは左手に握っていた日本刀をゆっくりと持ち上げた。
 視線は僕に向けたまま、静かに宣言する。

「速やかに死ね」

 ぞわ、と全身の毛が逆立つ。
 これだけ殺気を向けられていたんだから分かってたはずなのに、それでも恐怖に支配されてしまう。
 今まで僕の話を黙って聞いていたのはただ、「知り合いのよしみで遺言ぐらいは聞いておいてやる」って……その程度の理由だったんだ。

 だけど……僕は兄さんの姿を心に思い描く。
 そうすると自然と平常心に戻れた。
 僕はデイパックから蛮刀を抜き、ジェレミアに向ける。

「最初から気に入らなかった……!
 後から来た癖に、当たり前みたいに兄さんの傍にいるお前が!!
 咲世子も、C.C.も、お前も、誰も要らない!!
 僕には兄さんだけがいればいいし、兄さんには僕だけがいればいい!!」
 兄さんの弟という確かな立場に裏打ちされて、僕の震えは止まっていた。
 けれど返事を期待していなかったこの言葉に、ジェレミアは溜息混じりに返して来た。

「奇遇だな、ロロ……私も初めから気に入らなかった。
 ナナリー様がおわすべき場所に平然と居座る貴様がな」

 ブツン、と。
 僕の中で糸が切れるような音がした。

「い、……言ったな……その名前をッ!!」

 ナナリー……!!
 ナナリーなんかよりも僕の方が兄さんを愛してる!
 目と足が使えないナナリーと違って、僕は兄さんの足手纏いになんてならない!!
 ナナリーも、ナナリーの名前を呼ぶ人間も、みんな、みんな消えてしまえ……!!!

「わぁぁぁああああああああ!!!」
 蛮刀を振り上げ、ジェレミアに向かって駆ける。
 ジェレミアは動かない。
 怪我の重さを考えれば、動けないのかも知れない。
 仕留めるなら、今しかない。

 上段に構えていた蛮刀をジェレミアに向けて振り下ろす。
 けれどジェレミアはそれを一歩後ろに下がっただけで簡単に避けてしまった。
 そして僕の蛮刀が大きく空振りになると、ジェレミアは今度は前へ一歩――ただ歩くように僕の方へ進む。
「ぇ、……」
 ジェレミアに構えはなく、力を籠めた様子もなく。
 最小限の動きで突き出された刀が僕の胸に吸い込まれた。
 流れるような動作に、初めは何をされたのか分からなかった。
「あ、が……」
 ゴブリと血を吐いて漸く僕は刺されたのだと気付いた。
 ゆっくりと刃が引き抜かれ、同時に勢い良く僕の胸から鮮血が噴き出す。
 支えを失って蛮刀を取り落とし、僕はコンクリートの地面に崩れ落ちた。
「げ、あぁ、あ……」
 胸を押さえて蹲るけど、血が止まらない。
 見上げると、ジェレミアが僕を見下ろしていた。
 「助けて」とは口が裂けても言えない――こいつは兄さんを、裏切ったんだから。
 ナナリーの名前を……出したんだから。

「シャーリー・フェネットとアイゼルに謝罪して来い。
 ……私も後から行く」

 ……?
 シャーリー?
 何で……?

 イケブクロの駅で鉢合わせたシャーリーを殺した。
 兄さんに説明したら「良くやってくれた」と笑顔を向けられた。

 そうだ、僕は間違ってなんかいない。
 だって兄さんは褒めてくれたじゃないか。
 シャーリーが悪いんだ、僕と兄さんの間の邪魔をしようとしたから。
 ……ナナリーの名を口にしたから。
 正しいのは僕だ、そうだよね兄さん?

「兄……さ……」

 ジェレミアと違って僕は、ちゃんとつかさを殺そうとした。
 ジェレミアさえ邪魔しなければ、ちゃんと殺せてたんだ。
 だから兄さん、あの時みたいに――兄さんは僕を、褒めてくれるよね?


 嘘でも、いいから。


【ロロ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ 死亡】


 ジェレミアはロロが事切れるのを見届けた後、ふらつきながら彼のデイパックに手を伸ばす。
 少し探すと中からつかさのデイパックが見付かり、リフュールポットを一つ使用した。
 焼け石に水だったが出血は止まり、右目の周りの血糊を拭って義眼を仮面の下へ閉ざす。
 そして辺りに散らばった支給品を回収してその場を後にした。

(何をしているのだ……私は……)

 ロロを追うよりも先に、すべき事はあった。
 一人後藤と相対すクーガーに加勢せねばならない。
 命に別状がなかったとは言えつかさを一人にしたのも悪手だ。
 最悪の場合、既に二人共殺害されているかも知れない。
 それにデイパックを取り返す為だけならロロを殺す必要はなかったし、ましてロロの能力はこの先も有用だった。

 それでも殺した――生かしてはおけなかった。
 何故、と自問すれば結局、アイゼルを殺された憎しみ故であり。
 アイゼルを守れなかった自分への怒りから来る八つ当たりだ。

 もっと速ければ、ロロがフラムを投げる前に止める事が出来た。
 もっと強ければ、両腕を使って二人をどちらも庇う事が出来た。
 遅かったから、弱かったから――アイゼルを死なせた。
 だからこれは八つ当たりに過ぎない。
 彼女の仇討ちをしようとしたのだと正当化する事は出来るが、彼女は一言もそんな事は求めなかった。
 ジェレミア自身が自分の為に、ロロを殺したのだ。
 あれ程後悔したというのに、大局を見ずに感情のままに動いた。
 生まれて初めて、命令や忠義の為ではなく私情で人を殺した。
 ルルーシュも奈緒子もアイゼルも誰も守れなかったのに、人を殺すのは簡単だった。
 それは、とても胸の悪くなる事実だった。

(何を……)

 そしてあの場でつかさを助けた事が困惑を深める。
 アイゼルの言葉を無視してアイゼルを助ける事とて出来たはずだ。
 それをせずにつかさを助けた、咄嗟にその判断を下したのは、ジェレミアに迷いがあったからに他ならない。
 本当につかさを見捨てる事が正しいのか、と。
 追い詰められた状況下で迷いを捨て切れなかったから、つかさを助けてしまった。

 ロロは正しかった。
 周囲の人間の事など省みず、ただ復讐の為に動いたロロは何も間違っていない。
――結局、本当に兄さんの為を思っているのは僕だけ――
 そうかも知れない。
 忠義を謳いながら自身の感情を優先したジェレミアよりも、ロロの方が余程純粋だった。

(間違っているのは、私の方だ……)

 胸の内にある戸惑いを消せないまま、ジェレミアは急ぎ来た道を戻る。
 だが回復してもなお足は重く、走ろうとしても歩き程度の速さにしかならなかった。
 そしてあと少しで裏門に辿り着くという所で声が掛かる。
「ジェレミア卿」
 同時に、道を塞ぐように立つ一人の男の姿を目に留めた。
「クーガー……生きていたか」
「それはお互い様だな」
 クーガーの目はサングラスに隠れて見えないが、声に以前のような覇気はない。
 失敗の上塗りをしたのもお互い様だ。
 後悔の色を滲ませる声色は、ジェレミアのそれと良く似ていた。

「事情はつばささんから一通り聞いた。
 今は病室に隠れて貰ってる」
「つかさだ」
「どっちでもいい。
 ただつばささんを守ってくれた事には礼を言っておく……かがみさんの大事な妹だからな」
「……」
 守ったのではない。
 見殺しにしようとした。
 つかさを守ったのは、アイゼルだ。
 礼を言われるような事は何もしていない。
 けれどクーガーの間違いを指摘する気力すらなく、何も言い返せなかった。
「ロロってのはどうした」
「殺した」
「……だろうな」
 クーガーの口調に咎めるような響きはなく、ただ悲しみを混じらせていた。

 それからクーガーは後藤が逃走した事、志々雄という男に情報提供を行った事などを手短に述べた。
 クーガーはその志々雄を『敵にも味方にもすべきでもない男』と称したが、既に病院を離れたらしい。
 話を終えるとクーガーはジェレミアと擦れ違う形で進み、病院から遠ざかって行く。
「どこへ行く?」
「逃げた後藤を追う。
 かなたさんやまなみさんが襲われる前に止める」
「こなたとみなみだ」
「どっちでもいい!
 とにかく俺は、かがみさんとの約束を果たす!!」
 ジェレミアに背を向けたまま言うクーガーは、まだ止まる気がないらしい。
 自身の無力を突き付けられても尚、信念は曲がらない。
 ジェレミアには、迷いのないその姿が眩しく見えた。

「徒歩で行くのか」
「俺は最速の男だからな」
 どう見ても強がりだ。
 万全でない状態で後藤と衝突し、中断されたとは言え先程まで戦っていたのだから。
 足を僅かに引き摺るクーガーを横目に、ジェレミアはデイパックからズーマーを出した。

「くれるのか?」
「要らんのなら返せ」
「いいや、車の方がよかったがこれはこれでいい。
 特に車体のオレンジがイカしていて素晴らしく文化的だ」
「この色の良さが分かるとは、美的センスの割にまともな色彩感覚だけはあるようだな」
「あんたに美的センスについて言われる筋合いはないな。
 その仮面はいつ外すんだ?」
「サングラスを割られるかバイクを返すか、どちらか好きな方を選ぶがいい」
「冗談が通じねぇなぁ」
 無理矢理にでも会話を繋いで沈黙を避けるように、無理矢理にでも負の感情から気を紛らわすように。
 無駄話でもしていなければやっていられないとでも言うように、互いに減らず口を叩く。
 そしてクーガーがズーマーに跨り、エンジンを掛けた。

 走り出そうとしたところでクーガーはハタと止まり、ジェレミアの方へ振り返って神妙な面持ちで言う。
「一つ頼みがある」
「断る」
 それをジェレミアはにべもなく撥ね付けたが、クーガーは苦笑しながらも引き下がらなかった。
「そう言うなって……最初で最後だ。
 頼みが嫌なら約束でもいい」
「……存外、貴様は卑怯な男らしいな」
 今のジェレミアに、他人の頼みを聞いている余裕などない。
 だがこんな言い方をされては聞かない訳にはいかなかった。
 一呼吸置いてクーガーは言う。

「つばささんを頼む」
「……正気か?」

 それを聞いてジェレミアは思わず問い返す。
 つかさとジェレミアがどんな関係にあるかを知りながら言える台詞とは思えなかった。

「口実があった方が、あんたもいいだろう?」

 これからどうするか。
 そう問われれば、ジェレミアに残されているのは主君の為の復讐と、他の参加者への協力――つかさの保護だけだ。
 今更つかさを放置する事は出来ない、それはアイゼルの遺志にも反してしまう。
 しかしつかさがルルーシュを殺したという事実は揺るぎなく、守る事など出来るはずがないのだ。
 だから――

「……そうだな。
 約束ならば、仕方がない」

 だからその為の『口実』は、確かに必要だった。
 心の内を見透かされたようで少々不本意ではあったが、ジェレミアはクーガーに応える。

「約束しよう。
 柊つかさは私が守る……全力でな」
「それなら俺は後藤を倒す。最速でな」

 拳を突き出したクーガーに、ジェレミアも拳を作ってそれにぶつける。
 ズーマーが走り出し、ジェレミアはクーガーを見送った。
 クーガーもまたこの地から生還する気はないのだろうと、そんな予感を抱きながら。


 全てが遅い、裏目に出る。
 余りにスロウリィ。
 そもそも俺が病院を離れたせいで二人死んだ。
 慌てて戻った後は、動けない俺の為にあの三人は病院に足止めされ――結果がこれだ。
 回復薬も俺のせいでなくなった。
 目を覚まして助けに行くのも遅かった。

 だが、それは俺が足を止める理由にはならない。
 守れなかったもんは一つや二つじゃない、だからってこれから守れるもんも一つや二つじゃないはずだ。
 俺は最速の男なんだからな。
 ここには俺の弟分までいるんだ、俺がこんな所でめげてどうする。
 俺のせいで死んだ連中がいるなら、俺がそいつらの分まで戦わないでどうする。
 立ち止まらない。
 戦い続ける。
 かがみさんだって、それを望んでるはずだ。

 どっち道、俺に安泰な老後なんざありゃしない……だったら尚更、悔いの残るような真似はしない。
 今まで通り、最速で走り抜けるだけだ。


【一日目午後/H-8 総合病院付近】
ストレイト・クーガー@スクライド】
[装備]:葛西のサングラス@ひぐらしのなく頃に、城戸真司のズーマーデラックス@仮面ライダー龍騎
[所持品]:基本支給品一式、不明支給品(確認済み)0~1
[状態]:身体中に鈍い痛み、両脚に激痛、疲労(中)
[思考・行動]
1:こなたを正気に戻す。
2:かがみと詩音の知り合い(みなみ、レナ)を探す。
3:詩音が暴走した場合、最速で阻止する。
4:後藤を最速で倒す。約束は守る。
※総合病院にて情報交換をしました。
※ギアスとコードについて情報を得ました。ただし情報源がつかさなので、漠然としています。


「うっ……うぅっ……」
 隠れてるんだから、声を出さないようにしなきゃ。
 そう分かってるのに、声が隠せない。
 病院一階の病室――ベッドにはアイゼルさんが横になっている。

 私のせいだ。
 私がルルーシュ君を殺したから、私があの時眠りの鐘を使えなかったから、デイパックを手放したから。
 あの時――あそこに、私がいたから。
 ジェレミアさんはアイゼルさんを守れたはずなのに、私のせいで。
 みんなの足を引っ張るばっかりで、全然強くなんてなってなかった。
 ……ばかだなぁ、私。
 勘違いばっかり……。

 これからどうすればいいんだろう。
 クーガーさんと包帯の怖い人、それに学ランの男の子に色々な話をしたけど、上手く伝えられたか分からない。
 ただ上手にお話する事も出来ない私に、何が出来るんだろう……。
 自分で考えなきゃ……せめてそれぐらい、自分で決めなきゃ……。

 同時に、なかなか帰って来ないジェレミアさんの事が心配だった。
 アイゼルさんが亡くなった後、ジェレミアさんは私とアイゼルさんを順に茂みに隠してどこかに行っちゃった。
 どこに行くのか教えてくれなかったけど、多分……ロロさんからデイパックを返して貰いに行ったんだと思う。
 でもその前に、私は見ちゃった。
 ジェレミアさんは腕の止血はしていたみたいだけど、血はそれでも止まっていなかったし、怪我はそこだけじゃない。
 それにジェレミアさんが苦しそうに咳をして――口元を押さえた手から、血が滴った。
 私は、怖くなった。
 痛みにもがいて苦しんでいたルルーシュ君、あの時の事を思い出して……私は今も、震えが止まらない。

 部屋の隅で怯えながら待っているうちに、カツカツと廊下から足音が聴こえた。
 ジェレミアさんの足音だと気付いて迎えに出ようとするけど、足が痛くてすぐには立てなかった。
 扉を開けたのは、予想通りジェレミアさん。
 ジェレミアさんの怪我は少し良くなっていて、私はホッとする。
 リフュールポットを使ったみたい……でも相変わらず痛そうだった。
「ジェレミアさん、わ、私……」
 アイゼルさんの事をどう謝ればいいのか分からなくて、声が上手く出せない。
「ごめん、なさい……ごめんなさい、ごめんなさい……私……私のせいで……」
 堪え切れなかった涙を制服の袖で拭いながら謝る私に、ジェレミアさんは暫く何も言わなかった。

「私さえ、いなければ――」

 でもそう言った途端、ジェレミアさんは私の襟を掴んでぐいっと持ち上げた。
 足の先が地面とギリギリ触れ合うぐらいの高さで痛い……でもアイゼルさんはきっと、もっともっと、痛かったよね。
 今度こそジェレミアさんは、私を殺すのかなって思った。
 ルルーシュ君の事もあったんだから……きっと、そうしたいよね。
 もっと早くこうなってれば……私がさっさと死んでれば……アイゼルさんは、生きてられたのかな……?
 でもジェレミアさんは、私を殺そうとはしなかった。

「そうだ、ルルーシュ様もアイゼルも……皆死んだ!
 だから……!!」

 少しだけ近くなった距離のまま、怒鳴るような……でも泣き出しそうな声で。
 言葉を一度詰まらせてから、ジェレミアさんは叫んだ。

「生き残るのが君の義務だ……こんなところで死ぬ事を、この私が許しはしない!!
 死なせるものか……絶対に……!!!」

 言い終えるとジェレミアさんは手を放して、力が抜けてしまった私は床にぺたりと座り込む。
 ジェレミアさんに言われた事の意味を考えているうちに、ジェレミアさんは座ったままの私の横にデイパックを放った。
 私のデイパック――ロロさんに返して貰えたみたい。
 嬉しくなった私はすぐに中に手を入れて、最後の一つのリフュールポットを取り出した。
 それからジェレミアさんに使おうとしたんだけど、手が届かない。
 立とうとしたけど足が動かない。
 私がもたもたしていると、ジェレミアさんは痺れを切らしたように片膝を着いて私の目線の高さに合わせてくれた。
 これでポットを使える、って安心したんだけど、手首を強く掴まれて。
「何をしている」
「あっ……」
 私からポットを取り上げたジェレミアさんは、私にポットを使った。
 ジェレミアさんに、使って欲しかったのに。
 私の怪我はポット一個でみんな治って、何だか余計に悲しくなった。
 ……でもこれで、私は自分のやる事を見付けられた。

「時間……を、下さい」
 怪訝そうな顔をするジェレミアさんに、私は続ける。
「ジェレミアさんの分……それに五ェ門さんの分の薬は、私が調合します。
 アイゼルさんと一緒に作って、途中まで完成してますから……絶対、失敗なんてしません」

 ジェレミアさんはここに来てからずっと、左手を使ってる。
 私の襟を掴む時もデイパックを放る時もリフュールポットを扱う時も、右手をほとんど使わなかった。
 多分まだ、治ってないんだと思う。
 だから私に出来る事は、アイゼルさんの代わりに薬を作る事。
 病院を早く離れた方がいいのは分かってるけど、これだけは譲っちゃいけない事だと思うから。
 「やるなら急げ」と小さく言ったジェレミアさんに頷き、私は給湯室へ向かう。

 けどその前に大事な事を思い出して、部屋を出る前に止まった。
 デイパックから出したフラムをジェレミアさんに渡す。
 弱い私が持つべきだって、それは分かってる。
 でも、ジェレミアさんに持っていて欲しかった。
 私よりもジェレミアさんの方が、長くアイゼルさんと一緒にいたから。
 泣いていなくても、悲しくないわけない。
 何となく――ジェレミアさんには必要なんじゃないかって、思えた。
 それから私は大きく息を吸い込んで、頭を下げる。

「助けてくれて、ありがとうございました」

 私がお礼を言ってから、返事まで少しだけ間があった。
「……礼なら私ではなくアイゼルに言いたまえ」
 それを聞いて、私はジェレミアさんとベッドで眠っているアイゼルさんを見比べる。
 「ごめんなさい」と言いそうになるのを堪えて、もう一度おじぎをした。

「アイゼルさんも、ジェレミアさんも、ありがとうございました」

 今度こそみんなの役に立ちたいから。
 アイゼルさんの分まで、頑張りたいから。
 私は走る――さっきお姉ちゃんに会って霊安室を出た後も、私は走っていた。
 それと同じように走るけど……今はもう、アイゼルさんはいない。
 そう意識するとまた涙が出て来てしまったけど、涙を拭きながら私は走り続ける。
 泣いて立ち止まってる時間は、もうないから。


【一日目午後/G-8 総合病院】
【柊つかさ@らき☆すた】
[装備]なし
[支給品]支給品一式×2(水のみ三つ)、確認済み支給品(0~2) 、レシピ『錬金術メモ』、陵桜学園の制服、かがみの下着
[状態]疲労(中)
[思考・行動]
1:リフュールポットを完成させる。
2:錬金術でみんなに協力したい。
3:もっと錬金術で色々できるようになりたい。
4:みなみに会いたい、こなたは……
[備考]
※錬金術の基本を習得しました。他にも発想と素材次第で何か作れるかもしれません。
※アイゼルがレシピに何か書き足しました。内容は後続の書き手氏にお任せします。


 私は……守りたかった。
 忠義を擲ってでも――失いたくなかった。
 それだけの覚悟で戦いながら、それでも私は無力だった。

――生きて、ね。
――私の分も……。

 アイゼルの最期の望みにすら、私は応えられない。
 私の最期はこの地であると、既に決めているのだから。
 故につかさは生き残らねばならない。
 ルルーシュ様の分も、アイゼルの分も。
 奈緒子の分も、次元の分も、この会場で死んでいった者達の分も――出来る事なら、私の分も。

 だからクーガーから『口実』を与えられた時、私は安堵してしまった。
 それが忠義に反する事に変わりはないというのに。
 復讐は果たせず、仇を助け、主君の偽りの弟を殺害し……あまつさえこの先も、仇を守ろうとしている。
 仕える者としてとしてあるまじき行為を重ねている。


 それでもルルーシュ様……遠からぬ先、私も貴方のおわすCの世界へ向かいます。
 その時貴方は、イケブクロで忠誠を誓ったあの日のように――

 私を再び臣下として、迎え入れて下さいますか……?


 つかさを先行させてしまったが、一人で行動させるのは危険だ。
 合流する……だがその前に、私はアイゼルの遺体を霊安室に運ぶ事にした。
 リフュールポットが完成すればここに留まる理由はなくなるのだから、せめて今のうちに弔いたかった。
 しかし近付こうとした途端、ガク、と膝が折れて床に倒れ込んでしまう。
 上体を起こしたものの、立つ事は出来なかった。
 涙は出ず、何か叫ぼうとするがそれさえ出来ない――もう私は、この程度の事では悲しくないらしい。
 ならば何故、前に進めないのだろう。

 アイゼル……奈緒子……今だけは、こうして立ち止まってもいいだろうか。
 甘えはこれが最後だ。
 守りたかった者達を誰も守れなかった私には、これから立ち止まる事は許されない。
 戦い続ける事しか許されない。
 だから、今だけは……。

 見上げると、窓ガラスに私の顔が映り込む。
 アイゼルの血で塗れた仮面が、血の涙を流しているように見えて……涙を流せない私に対する、皮肉に思えた。


【一日目午後/G-8 総合病院】
ジェレミア・ゴットバルト@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[装備]無限刃@るろうに剣心
[所持品]支給品一式×2(鉛筆一本と食糧の1/3を消費)、咲世子の煙球×2@コードギアス 反逆のルルーシュ、こなたのスク水@らき☆すた、
    ミニクーパー@ルパン三世、不明支給品(0~2)、琥珀湯×1、フラム×1、薬材料(買い物袋一つ分程度)、メタルゲラスの角と爪、
    エンドオブワールドの不発弾(小型ミサイル数個分)、メタルゲラスの装甲板、ヴァンの蛮刀@ガン×ソード
[状態]右半身に大ダメージ、疲労(特大)、精神磨耗、両腕の剣が折れたため使用不能
[思考・行動]
1:浅倉とV.V.を殺す。
2:他の参加者に協力する。クーガーとの約束は守る。
3:全て終えてからルルーシュの後を追う。
4:アイゼルの遺体を霊安室に運ぶ。
5:病院から移動する。
[備考]
※病院にて情報交換をしました。


 それにしてもギアス……な。
 ルルーシュとやらやロロの手品の種ははっきりしたが、面白ぇ。
 何せぶいつぅを潰せばそいつも俺のもんになるんだからよ。
 そんな事を考えながら歩いていた俺に、それまで黙りこくってた三村が問い掛けてくる。
「志々雄、これで良かったのか? ……仲間は要らないのか?」
 俺が思い出せっつってから随分時間が掛かったが、こうして俺に話しかけて来たんなら大体記憶の整理は終わったってこったろう。
 どうやらこいつは俺がクーガーを誘わず、ジェレミアが戻るのも待たずに病院を出た意味が分からねぇらしい。

「能力はあるかも知れねぇが、どいつもこいつもくたばり損ないだったじゃねーか。
 しかも抜刀斎に負けず劣らずの甘ったるい連中とくれば、俺の配下に引き入れる価値は全くねぇよ。
 勝手に踊らせとけばそのうちくたばるだろ」
 後藤も、クーガーが倒すっつった以上は任せときゃいい。
 だがそう教えてやっても、三村はまだ分からねぇって顔をしてやがる。
 こいつは頭は悪くねぇが、まだまだ経験不足だな。
 しかも宗みてぇに真っ白って訳じゃねぇから刷り込みも出来ない――教育が必要だ。
 ま、こいつに働いて貰うのはこれからなんだ、それぐらいの手間は掛けてやるか。

「クーガーはもう長くねぇ。
 将来性がないんじゃ、俺の仲間にしても無駄だろ?
 それにあいつが味方すんのは結局自分と弱者だけだ」
「ジェレミアは……」
「実際に会った訳じゃねぇが、聞く分には良く躾られた犬ってとこだな。
 飼い主が決まってるんじゃ飼い慣らすのに時間が掛かる。
 それにこいつを連れ込むならあのガキも付いて来る……俺の組織に、運が良いだけのガキは要らねェ」
「錬金術ってのに興味はないのか?」
「あるさ。当然な。
 だが専門家からちょっとばかり聞きかじっただけの素人なんざ、わざわざ連れて歩く意味はねぇ。
 全ての世界を征服した暁には、どっちにしろ手に入るんだしな」
 ついでにロロに関しちゃ十中八九死んでるだろ。
 ジェレミアの事は良く知らねぇが、これは勘だな。

 まだまだ分かってねぇな、三村。
 確かに時間が経てば経つ程に死人が増える、俺の組織に加えられる人間が減る。
 だがこの会場にいるようなアクの強い連中を何十人も連れ歩くのは、どっちにしたって無理ってもんだ。
 十本刀が十人しかいねぇのと理屈は同じだ。
 弱い奴から淘汰されてく会場内で、生き残った連中から引き抜く――『歩』は幾つ居ても困らねぇが、それ以外の駒は少数精鋭。
 これまでの進み具合からして生き残ってんのは三十人強ってとこだが、まだ多いぐらいだ。

 三村も納得がいったらしく、それ以上の質問はなかった。
 だから俺は改めて教えてやる事にする。
「この現世こそ地獄……俺の言った意味は分かったか?」
 三村は俯いている。
 恐らくだが、前に弱い奴を守ろうとして失敗したような――今回の件を他人事と割り切れねぇような事があったんだろう。
 こいつは既に俺を信奉しているが、修羅にはまだ足りない。
 ……ま、足りないってんなら補ってやるよ。

「あの病院の話を聞きゃあ分かるだろ?
 他人の為にだの、ぐだぐだ言ってる連中が馬鹿を見る」
 大体クーガーを置いてとっとと病院を離れてりゃ、あの三人は後藤にもロロにも遭わなかったじゃねぇか。
 お人好しってのは難儀な連中だ。

 人が死ぬ――殺されるのはそいつが弱かったからだ、他に何がある?
 それをあの手合いの連中は、あの時どうしていれば、ああしていればと責任を自分に押し付ける。
 自分で自分の首を絞め上げる。
 自分で自分の墓穴を深くする。
 自分で自分の逃げ道を勝手に塞いじまって、そうなりゃもう立ち止まる事ぁ許されねェ。
 進み続ける事しか許されない。
 戦い続ける事しか許されない。 
 今頃「いっそ死んだ方がマシだった」なんて思ってるかもな。

「あの連中は、この世が地獄だって事を知っている。
 そんだけなら大歓迎だが、そこから他人を助けようって思考をしてやがる。
 そんな頭の悪い奴らは俺の組織には邪魔だ」
 なぁ三村、てめぇはあっちとこっち、どっちの人間だ?
 あっちだってんなら、今ここで俺が楽にしてやってもいいんだぜ?
 この世を――地獄を楽しめねぇ人種だってんならよ。

 そして返答を待つ俺を前に、三村は笑った。
「そうだな志々雄……あんたが正しいよ。
 こうして結果が出てるんだ」
 口を引き攣らせるでもなく、形だけのもんでもなく、ごく自然にその表情を作った。

「俺はあいつらとは違う。
 俺はもう――いや、俺はあいつらと同じ失敗はしない。
 俺は俺の為にあんたに協力して、……強者になるんだ」

 上出来だ、三村。
 それでこそ俺の手元に置いとくだけの価値があるってもんだ。
 こっち側の人間だってんなら――お前も楽しいだろ?
 地獄の楽しさが分からねぇ連中が憐れに見える程度にはよ。

 まぁ、今は……死に掛けの身体を引き摺って駆けずり回って血反吐を吐いて。
 それでも何も手に入れられなかった可哀想な連中に、同情ぐらいはしておいてやろうか。
 弱者に食われる、惨めで愚かな連中に。
 『無駄な努力を御苦労さん』ってな。

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」


【一日目午後/G-8 総合病院付近】
【志々雄真実@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-(漫画)】
[装備]:サバイバルナイフ@現実、ヒノカグツチ@真・女神転生if...
[所持品]:支給品一式×2、リュウガのデッキ@仮面ライダー龍騎、不明支給品0~1、林檎×8@DEATH NOTE、鉄の棒@寄生獣
     マハブフストーン@真・女神転生if…、本を数冊(種類はお任せ)
[状態]:各部に軽度の裂傷
[思考・行動]
1:自分の束ねる軍団を作り、ぶいつぅを倒す。
2:首輪を外せる者や戦力になる者等を捜し、自分の支配下に置く。
3:気が向いたらガリア王国のジョゼフを持て成す。
[備考]
※首輪に盗聴器が仕掛けられている可能性を知りました。
※クーガーから情報を得ました。クーガーがどの程度まで伝えたのかは後続の書き手氏にお任せします。
※ギアスとコードについて情報を得ました。ただし情報源がつかさなので、漠然としています。

【三村信史@バトルロワイアル(小説)】
[装備]:金属バット(現地調達)、マハブフストーン×3
[所持品]:支給品一式、確認済み支給品0~2(武器ではない)、ノートパソコン
[状態]:左耳裂傷
[思考・行動]
1:このまま志々雄についていく。
2:主催のパソコンをハッキングするための準備をする。
3:緑色の髪の女に接触し、V.V.の情報を聞き出す。
4:今回のプログラムに関する情報を集め、志々雄の判断に従う。
[備考]
※回線が生きていることを確認しました。


時系列順で読む


投下順で読む


127:死せる者達の物語――Don't be afraid of shade ジェレミア・ゴットバルト 139:0/1(いちぶんのぜろ)
柊つかさ
アイゼル・ワイマール GMAE OVER
ロロ・ランペルージ
ストレイト・クーガー 141:苛立ちで忍耐力が持たん時が来ているのだ
後藤 137:寄生獣
志々雄真実 133:1/5
三村信史



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