走れ、仮面ライダーBLACK! 少女の命が今危ない!

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走れ、仮面ライダーBLACK! 少女の命が今危ない!  ◆Wott.eaRjU



「ぜ、全然怖くないのですぅ! こんなコト、翠星石にとってはお茶の子さいさいなのです!」

ひんやりとした冷気が漂う深夜の森林地帯。
無数の電柱が犇めき、電灯の集団が群れを成す街中とは違い目印になるようなものは殆どない。
只、辺り一面に広がるのは薄く生い茂った緑の草原、地には木々が根付き其処等中に散在している。
音を隔てるものは少なく、そのため一帯に甲高い声が響き渡るのは容易い。
周囲に響くはデイバックをしっかりと担ぎ、そろりそろりと忍び足で歩く少女の声。
威勢は良いが、時折不自然に声が大きくなる節もあり、明らかに動揺している様子がその声から感じ取れる。
声の主は異国の民族衣装を模したような緑のロングスカートとエプロンドレスを着こんだ少女、いや人形。
そう。翠星石の不安げな声は彼女自身の予想よりも辺り一帯に良く聞こえていた。

「ス、スイドリームが居ないのはちょっぴり驚いたのですが大丈夫なのですぅ……。
哀れなチビ人間とは違って、翠星石はローゼンメイデン……ど、どうにかなるに決まってやがるのですぅ! オーホッホホホホホホホホホ!!」

ローゼンメイデン。
一人の人形師、ローゼンにより造られた七体の生きとし生ける人形(ドール)達。
契約者となる人間に螺子を巻かれる事で彼女達はこの世界での命を受け貰う。
彼女らは一つずつ人口精霊と呼ばれる――ちなみに翠星石の場合はスイドリームという名前を持つ――球体状の浮遊物体を持ち、それを用いて闘いに身を投じる。
造物主ローゼンによって定められたアリスゲームというローゼンメイデン同士で闘い合う。
人間で言えばローゼンメイデン達にとって命に値するローザミスティカを賭けて、最後の一人まで勝ち残ったドールはローゼンと出会う権利を得られる。
ローゼンが求めた究極の存在、“アリス”となるには全てのローザミスティカを集める必要があるのだから。

そして翠星石はその内の三番目のドールであり、正真正銘ローゼンメイデンの一体。
下僕にしてやってもいいかもと彼女が勝手に思っている桜田ジュンへの悪口を織り交ぜながら翠星石は無駄に大きな声をあげる。
一旦立ち止まり、キョロキョロと周囲を見回して良く確認してから翠星石はしっかりとした足取りで歩き出す。
自分の言葉に自信を持たせるために、唐突に宣告された殺し合いで生き延びるために翠星石は先ず知り合いを捜す事にしていた。
闘いを好む性格ではないため、この殺し合いに乗るつもりは毛頭ない。
やるべき事はもっと別にある。
姉妹の関係にある真紅と蒼星石との合流に加えて、彼女等と同じく姉妹ではあるが敵対関係にある水銀燈への警戒。
二つの事を良く念頭に置き、翠星石は探索を続けた。



「う~……誰も居ないのですぅ……真紅ぅ~蒼星石ぃ~……寂しいですぅ……」


数分後、先程までの元気は既に無くなり、今にも泣き出しそうな表情を浮かべた翠星石が森林地帯をうろついていた。
見栄っ張りで、人一倍臆病な性格の持ち主である翠星石の元気がなくなるのは自然な事だろう。
スイドリームが居ない事による不安も勿論の事だが、何よりこの異質な状況が容赦なく不安を煽っている。
太陽はとっくの前に沈み切り、普段なら鞄の中で眠りに落ちている時間だが寝ようにも寝られない。
何故なら、此処は翠星石が今までジュンの家や世話になっている老夫婦の家で過ごした日常とは逸脱している。
確かな安全を確認できない内に眠るなど肝が据わった行動は翠星石にはどうしても出来なかった。
ジュンより小さな体をした女の子の首から上が無くなったあの光景はあまりにも衝撃的で、とても形容しがたい。
もし、自分があんな目に……誰か悪意を持った人間に襲われたりでもしたらと思うと涙が零れそうになる。

「そうです……人間は所詮、悪い奴らばっかなのですぅ……のりとジュン、おじじとおばばは希な奴らだったのですよ……」

幾度かの眠りを経て、数百年の時を生きてきた翠星石は様々な人間に出会った。
その中で自分と蒼星石が持つ力――夢の世界へ干渉できる力――を利用しようとした人間は何人も見かけた。
どの人間もまるで自分達を道具のように扱ったあの思い出したくもない時間の記憶。
此処に集められた人間の中にもそんな人間が居ても可笑しくはないだろう。
自分の利益や命のために他者を犠牲にする事に何も抵抗がない人間達。
そんな彼らに出会ってしまった時、自分はどうすれば良いのか。
黙って彼らが言うがままにすれば良いのだろうか……。

「そんなの……嫌、なのですぅ……」

そう。そんな事は受け入れられる筈もなかった。
未だ、誰とも薔薇の契約すらも行っていないというのに。
まだまだ大好きな姉妹達とも遊び足りていない。
何より父と呼べる存在であるローゼンとの出会いも果たす前にこんな良くわからない場所でみすみすジャンクになる事は。
真紅と蒼星石の二人と二度と出会えないような事は――

どうしても我慢出来ない。





「真紅、少しの間だけど借りるです……絶対に返すので心配は要らないのですよ。翠星石はやる時はやるのですから……!
ちょっぴり怖いけど、頑張るのです! ローゼンメイデンの誇りに賭けてですぅ!」


担いでいたデイバックから徐に取り出したのはピンク色のステッキ。
自衛のためには心細いといえるような代物だ。
だが、そのステッキは翠星石の真紅が使い慣れた武器。
いつも毅然とした態度で自分達を纏めてくれた真紅の面影を思い浮かべ、彼女の力を借りるように翠星石はステッキを両手で固く握りしめる。
自分から襲うような事は絶対にしない。
あくまでも自分の身を守るためにこのステッキを使わせて貰う。
既に想いは一つ。
弱音を吐いていた自分を忘却の彼方へ飛ばし、翠星石は再び歩き出す。
先程のそれとは比べ物にはならない。
力強い歩みは翠星石の意思の強さを強調しているかのように見える。

そんな時、一つの声が聞こえた。

「そこの少女」

深夜の森であったために、視界が暗かった事もあったのだろう。
翠星石の前方数メートル先の茂みから一人の男が現れ、彼女に声を掛けた。
少し威圧感が残った声だが別に敵意を持ちわせたわけではない。
只、不器用な性格が災いしてぶっきらぼうな言葉になっただけに過ぎない。
だが、それは偶然にも――


「ひ、ひいやああああああああああああああああああ! で、出やがったですぅ! 寄るな寄るなぁー! 寄らばぶん殴ってやるのですよおおおおおおおおおおお!!」


臆病者な翠星石を大きく驚かせる事になった。
視線はやや上気味で、男が歩いてきた方向とは別の方を向いていたため、急には気がつかなかったからだ。
滅茶苦茶に腕を振り回し、ステッキで防戦しようとする翠星石。
右は赤色、左は緑色のオッドアイである瞳は固く閉じられ、けたたましく叫びながら何度も何度もステッキを振るう。

「待て! 落ち着け……おい!」

まさに暴走した翠星石を男が落ち着かせるのに割と時間が掛った。
緑色の髪を生やした青年。
強固な意志を秘めた両の瞳で喚き散らす翠星石に鋭く視線を投げかけた男。

「俺はHOLY部隊所属……劉鳳。話を聞いてくれ!」

そう。劉鳳はようやく翠星石を落ち着かせる事が出来た。

◇     ◇     ◇





「まったく、話がしたいだけだったらそれならそうと早く言えってやつですぅ!
ちなみに翠星石は初めからなんとなーくそんな気がしてましたがー……ほ、ほんとですぅ!
そんな哀れな目で翠星石を見るな、コンチクショーですぅ!!
あ、そ、そそそそそそそそそれでですね! 翠星石は何が言いたいのかというと……あーうー……な、殴って悪かったですぅ」

一際大きな木の前にちょこんと腰を下ろし、翠星石は言葉を捲くし立てる。
目の前の男――劉鳳が只、情報交換をしたかったという事を聞きいれ、簡単にだが今はその情報交換も終わっている。
極めて平然な様子で振舞っているように見えるが、言葉の節々には明らかな嘘が混じっているためバツが悪い。
自分自身へのフォローを忘れずに翠星石は劉鳳へ謝罪の言葉を呟く。
何処となく不自然な口調になっているのは劉鳳への申し訳なさ、そして未だ完全に彼の事を信用してないからなのかもしれない。

「……まあ、いい。わかったから気にするな。あの位、痛みには入らない」

ぶしつけに言葉を返す劉鳳。
すっかりしょぼくれた翠星石を一瞬だけ眺め、彼なりに彼女の気が楽になるような旨を伝える。
そう。声を掛けただけなのにいきなり殴られて機嫌を損ねたわけでは決してなく、実際に劉鳳は気にしていなかった。
ロストグラウンドと呼ばれた荒廃しきった大地の治安を守るために結成された武装警察機関HOLD。
そのHOLD内でもアルターと呼ばれる異能――物質を原子レベルまで分解し、己の武器とする力――を持つ者だけ構成された部隊。
それこそがHOLYであり、劉鳳は訓練を受けているため相応の体力は備えている。
そして正義感が人一倍強い劉鳳が見るからに無力そうな翠星石に接触したのはごく当然な結果だといえるだろう。

(こんな少女……いや、ローゼンメイデンという不思議な人形か。
生きる人形とは可笑しな話だが……実際に俺と同じように生きているのだから信じるしかない。
そうだ。守るべき存在であるコトに違いはない)

翠星石と話し、劉鳳はアルターやロストグラウンドの事を教え、代わりにローゼンメイデンの事などについて知った。
その中で片方が知らない単語は何度も会話に飛び出し、その度に二人は頭を捻った。
住んでいた世界の西暦も一致しない。
これはどういう事なのか。
もしや、最早創造上の世界の産物にしか過ぎないと思われていたタイムマシンなる機械によって自分達は集められたのだろうか。
疑問は尽きずどうにも解決しないがこのまま話し合いを続けて時間を無駄にするのは惜しい。
今、この瞬間にも何処かで人が死んでいるかもしれない現状で――劉鳳が只、黙っているわけにもいかなかった。



「翠星石だったな。視界も悪く、此処ではゆっくり話も出来そうにない……だからだ。一先ず何処か施設にでも移動しないか」
「移動ですか……翠星石は蒼星石達に会えればそれでいいですが……けど、悪者が待ち伏せしているかもしれないですよ?」
「ああ、その可能性もあるだろうが心配しなくて良い。こんな殺し合いに乗った毒虫は俺が必ず断罪する。
それにだ。碌に力を持たない参加者が迂闊に辺りを歩き回ると思うか?」
「お、思わないですぅ!何処かに穴があったら潜り込みたい気分なのですぅ」
「俺もそう思う。彼らの心情としては出来るだけ危険な目に遭いたくはない……そこで何処か、大きな施設にでも隠れようと思う参加者も居る筈だ。
ならば保護しなければならない……俺が絶対に……!」

つい先程、迂闊にウロウロしていたため翠星石は少し焦りながら劉鳳の問いに答えた。
だが、そんな翠星石の様子に気づくことなく劉鳳は自然に固く拳を握りしめる。
表面上は平常を装っているが、今の劉鳳の感情には大きな渦を巻いている。
渦巻く感情には後悔や悲しみといった様々な想いが籠められ、一際大きなものは怒りという感情。
言うまでもない。
自分のような異能者だけなら年端もいかない少年や少女すらもこの殺し合いとやらに巻き込んだ者達。
そう。V.V.という得体の知れない少年が率いる一団への絶やすことのできない怒りを劉鳳は必死に押さえつける。
何故なら自分はこの場に居る人間達を守る使命が、守りたいと強く願っている。
そのため、今怒りに任せて軽はずみな行動を取るわけにはいかないのだから。

(二度と繰り返させん、大事な人を失ったあの時感じた俺の悲しみはもう誰にも味あわせない……!
そして、あの赤毛の少女……今更弁解するつもりはない。
ああ、そうだ……俺の力が足りなかったからあの少女は死んだ……だが、彼女の死は無駄にはさせない!
俺がこの腐った殺し合い潰すコトで必ず証明する。俺が打ち立てる正義で……彼女の無念さを!)

思い出すのは燃え盛る炎の中の記憶。
正体不明の物体――アルター結晶体に愛犬を、そして最愛の母を殺された悲しみ。
当然、この場にも愛する人を持つ参加者も居るだろう。
相思相愛の関係である参加者達も居るかもしれない。
そんな彼らをみすみす殺させていいのか――

あの社会不適合者と言えるネイティブアルターの言葉を借りれば絶対にノゥだ。
そして自分が救えなかった赤毛の小さな少女への申し訳なさを胸に留めて、劉鳳は歩き出す。
未だ、翠星石からは了承の返事はない。
だが、劉鳳の歩みはとても力強く、翠星石は思わず不思議そうな瞳で彼の挙動を眺めている。

(なんか変わった奴なのですぅ……こいつの心の木はきっと複雑に入り組んでそうな感じがするです。
でも、あんまり悪い感じもしないような気もするです……今は未だ良くわからないですが)

ジュンとは比べものにならない力強さを感じさせる劉鳳。
更にそれでいて何処か脆く、不安定さも同時に翠星石はなんとなく感じた。
理屈ではない。只、本当になんとなくとしかいいようがない。
だが、どうやら劉鳳は危険そうではない事はわかった。
劉鳳が呟いた言葉……それがどうにも嘘には聞こえなかったせいだ。。
それにスイドリームがないため庭師の如雨露も取り出せない今、翠星石の力はほぼゼロに等しい。
取り敢えず劉鳳と共に行動しても悪くないだろうと翠星石は思い、劉鳳の後をついていく事を決めた。

「し、仕方ないですねぇ。特別に翠星石がついていってやるですぅ!」

微妙に小生意気な事を口に出して、翠星石はいそいそと歩き出す。
何しろ劉鳳の歩幅は翠星石のそれと比べてかなり大きい。
置いてきぼりを喰らう事はなさそうだが、後ろから只ついていくのも翠星石は気が向かなかった。
せめて並列、あわよくば自分が先導する形の方がなんだか自分の方が優位な立場に居るように見えるのでは、と下らない考えが浮かんだから。



(そういえば、この劉鳳って奴は強いんですかね。大事な事を確認してなかったですぅ……)

そんな時、翠星石は遅すぎた疑問を抱く。
自信に溢れた言葉からそれなりの力はあるのかもしれない。
だが、翠星石は未だ劉鳳の力は見てはいないため、心配にもなる。
もし、劉鳳が口だけの男で実際は碌な力を持ってないとすれば……そう思うと翠星石の不安は更に大きなものとなってゆく。
勇気を振り絞り、何処となく近寄りがたい雰囲気を漂わせて、背中を向ける劉鳳に翠星石は声を掛けようとする。

そんな時――突如として大地に穴が空いた。

「こい、絶影ッ!」
「は、はいいいいいいいいいいいいい!?」

思わず素っ頓狂な声をあげた翠星石。
そんな彼女に一目もくれず、劉鳳は只前方へ腕を突き出し、叫んでいた。
同時に劉鳳の全身が薄い虹色の発光を帯び、彼の傍に存在していた大地の一部が抉り取られ、やがて粉々に消失した。
否、それは消えたのではない。
原子レベルまで分解された大地はやがて互いに集まり、一つの型を成していく。
青と銀の二色を基調とし、下半身は蛇のような構造をし、上半身は人間を模した物体が劉鳳の前に現れる。
そう。それこそが劉鳳の力、自律稼働型アルターである絶影の第二形態“真・絶影”。
問題なく行われたアルター能力の行使だが、その時少しだけ劉鳳は違和感があった。

(普段より絶影が使いにくい気がするが……まあ、いい。俺は俺のやるコトをするまで。橘とクーガーの二人と合流。翠星石の仲間、由侘かなみの保護も必要だ。
そしてあの男……カズマは保留だ。向かってくるなら容赦はしないが……それとあの少年と少女。
確か少年の方はルルーシュといったな。明らかにV.V.とやらと面識があった少年と少女……情報を集めるためにも接触するべきか)

絶影を伏せさせながら、劉鳳は思考に耽る。
武器は没収したと言っていたため絶影にも何らかの制限が掛っているのだろうか。
その可能性はないとはいえない。
V.V達は此処まで手の込んだ仕掛けをしてこの殺し合いを仕組んだのだから。

絶影に関しては普段よりも大きな集中力を要するので、今後はなるべく第一形態で闘うべきかもしれない。
新たな発見を胸に留めておき、やがて劉鳳は真・絶大の背中に飛び移る。
大方、数人が乗る事が出来る真・絶影で移動しようと考えたのだろう。
証拠に劉鳳は翠星石に乗るように促すために彼女の方へ顔を向けるが……



「び、びっくりして腰が抜けたですぅ~~~~~~~……」

其処にはペタンを尻もちをつき、涙目な翠星石が情けない声を上げていた。
恐らく真・絶影がいきなり出現した事と、禍々しい形状に度肝を抜かれたのだろう。

「ちっ……仕方ない」

予想もしなかった翠星石の行動に劉鳳は一瞬苦々しい表情を浮かべるが、絶影から降りて歩きだした。
目的は一つ。
出来るだけ無駄な時間を無くすために、速やかに次の行動へ移るための布石。
そう。それは劉鳳にとって造作もない事であるために彼は直ぐに動き出す。
だが、翠星石にとってどのような感情を抱かせるか……其処までは生憎考えが回っていなかったが。

「な、なななななななななななにしやがるですか! 勝手に乙女の柔肌に触るなんてふてぇ野郎ですぅ!!」
「馬鹿な事を言うな。こら、静かにしろ……暴れるな!」

ヒョイと翠星石の体を持ち上げて、劉鳳は彼女の体を横に担ぎ始めた。
自分が動けない事は承知しているものの、いきなり身体に触れられて翠星石は慌てふためる。
未だ劉鳳の事を完全に信用していないせいか、それとも純粋に恥じらっているせいか定かではないがその抵抗は地味に根強い。
劉鳳の方ももう少し良いやり方もあっただろうが、彼に女性の扱いに対して心得が別段あるわけでもない。
結局苦虫を潰したような表情を浮かべて、翠星石の小さな拳や蹴りをポコポコと受けながら力づくで真・絶影に連れ込んだ。

「もう駄目ですぅ~翠星石は汚れてしまったのですよ……この! 放せ、放せですぅ!!このキザ人間!!」
「劉鳳だ、ふざけた名前で呼ぶな。それに少しの間だけだ! 我慢しろ」

大声をあげて抵抗する翠星石に対し、真・絶大の背に乗った劉鳳は大人げなく大声を返す。
やがて真・絶影に指示を飛ばし、彼らの身体は浮き上がった。
何処か適当な施設で体制を整え、他の参加者と接触するために。

真・絶影は騒がしい二人を乗せて夜の空へ消えていった。




【一日目深夜/C-2 中心部】
【劉鳳@スクライド(アニメ)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式 未確認(1~3)
[状態]健康 
[思考・行動]
1:翠星石や弱者を守りながら殺し合いを潰す。
2:真紅、蒼星石、ストレイト・クーガー、橘あすか、由詑かなみとの合流。カズマは保留、水銀燈は警戒。
3:ルルーシュ・ランぺルージもしくは緑の髪の少女(C.C.)と接触し、V.V.の情報を得る。
4:殺し合いに乗った者は容赦なく断罪する。
[備考]
参戦時期は未定。少なくとも絶影第三形態は習得していない時期です。
※絶影、真・絶影には高度低下など制限が掛けられています。また、その事に薄薄と感づいています。
※現時点では何処か施設がある場所へ向かおうと思っています。何処へ行くか、もしくは目標を変えるかは次の人にお任せします。

【一日目深夜/ C-2 中心部】
【翠星石@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]真紅のステッキ@ローゼンメイデン
[支給品]支給品一式 未確認(0~2)
[状態]健康 
[思考・行動]
1: 殺し合いから脱出。
2:真紅、蒼星石、ストレイト・クーガー、橘あすか、由詑かなみとの合流(蒼星石を最優先)、水銀燈は警戒。
3:劉鳳と共に行動する
[備考]
※参戦時期は未定。少なくともジュンと契約する前です。
※スイドリームが居ない事を疑問に思っています。





そんな時だ。
真・絶影が木々の天井を抜けて、既に姿が見えなくなった時――


「ゴルゴムの仕業か! 許さん!!」


一人の男の声が響いていた。


◇     ◇     ◇


時間は少し遡る。
秘密結社ゴルゴムによって次期創世王候補として世紀王“ブラックサン”に改造された後に脱走し、彼らと闘う事を決めた男は怒りに震えていた。
その男こそ南光太郎、ブラックサンという名ではなく“仮面ライダーBLACK”という名を名乗り、この場に集められるまでも闘い続けていた戦士。
突如としてV.V.という少年が殺し合いをしろと言った時の衝撃は今でも記憶に新しい。
そして、その時光太郎は全てを理解した。
そう。見たことのない姿だがV.V.はゴルゴムの一味であり、これはゴルゴムの仕業によるという事。
理由は単純明快、ゴルゴム以外にこんな芸当を行えるわけがない。
更に今まで光太郎の身の回りで起きた不審な出来事はほぼゴルゴムの仕業だったという実体験がその自信を裏付けた。

「俺と信彦が呼ばれている……間違いない! 次期創世王を決めるために関係ない人達までも巻き込むとは許さんぞ、ゴルゴム!!」

支給された名簿に秋月信彦、いやシャドームーンの名前が書かれているのを確認した光太郎。
出来れば闘いたくない相手だが、これでますますこの殺し合いにはゴルゴムが関与している自信を得た。
自分なら兎も角シャドームーンをこの場で連れてくるなどゴルゴム……寧ろ創世王にしか出来はしない。
恐らく他に参加者が居る事はゴルゴムの仕業である事に対してのカモフラージュなのだろう。
もしくは創世王になるために条件が追加されたのだろうか。
真相はわからないが許しておけない事に変わりはない。
ブラックサンではない、仮面ライダーBLACKとして光この場で闘う事を光太郎は改めて固く心に誓った。
目的は一つ、ゴルゴムが新しく始めたこの計画――バトルロワイアルなるものの破壊。
そして罪なき人々を守る事も忘れてはならない。

――この地球はゴルゴムだけのものではなく、生きるもの全てのためにある。

決意に揺らぎなどありはしない。
そのため助けを求める者、もしくはゴルゴムと闘う意思を秘めた未だ見ぬ仲間を求めて光太郎は走った。
未だ支給品も確認せずに只、他の参加者と接触を行うために。
そんな時、光太郎は遠くの方から少女と青年のものらしき小さな声を聴いた。



『もう駄目ですぅ~翠星石は汚れてしまったのですよ……放せ、放せですぅ! このキザ人間!!』
『劉鳳だ、ふざけた名前で呼ぶな。それに少しの間だけだ、 我慢しろ!』

なんとか聞き取れた会話の内容から光太郎は愕然とした。
声質からしてかなり幼そうに見える少女。
そんな少女がどうやら男、劉鳳という人物に襲われているようだ。
「放せ」と言っている事から恐らく体格の差を利用して、力づくで屈伏させているのだろう。
あまりにも非道な行いに思わず光太郎は怒りを覚え、更に走る速度を速める。
改造手術を受けた際に光太郎は聴力も強化されており、声の元には未だ距離が開いていた。
ライダーへ変身するのも考えたが、予備動作に掛る時間も惜しい。
兎に角この場はこのまま走り切る事を光太郎は決めていた。

(幼い少女を力づくでなど……まさに悪魔がするコトだ! やらせん!!)

下手に声をあげれば劉鳳とやらを刺激する可能性がある。
何かの弾みで少女に危険が及んでしまう事は絶対に避けなければならない。
出来るだけ密かに動き、一瞬の隙をついて少女を救出する――

そう思い、茂みの中から光太郎は勢いよく飛び出した。

「くっ! 遅かったか!」

だが、現実は非常であり声が聴こえた場所には誰も居ない。
自分が来ることを察知し、この短時間で此処までの移動を果たせたのだろうか。
だとすれば、相手はかなり手ごわい実力だろう。
只の異常性愛者ではない。
自分の甘い認識を悔やむ中、光太郎は彼らが何処へ行ったのかを確認するために辺りを見回した。
薄暗い視界の中、強化された視力をフルに活用し、右左へ視線を回すがどうにも人影は見当たらない。
ならばと思い、光太郎は徐に大空を見上げた。

「ッ!あれは……」

やや低空気味に奇妙な蛇のような物体が二人の男女を乗せて飛行している姿が光太郎の視界に入る。
発見した時には既に遅く、見失ってしまったため追いつくことは難しいだろう。
一瞬の事だったが少女が男に連れさらわれているように見えた。
恐らく先ほどの声の主達は彼らに違いない。
少女を連れ去った男への怒りを募らせながら光太郎はまた一つ確信した。



(あの銀色の飛行物体……ゴルゴムの新しい怪人に違いない! そしてあの怪人を操っていた男は只の怪人じゃない!
あそこまでゴルゴムの怪人を操れるということは三神官クラスの存在でも可笑しくはない筈だ!
なんてコトだ……まさか信彦以外にゴルゴムの手の者が紛れていたとは!
すまない、僕が遅かったせいで……本当にすまない!)

飛行物体――真・絶影をいとも容易く操った男、劉鳳を光太郎はしっかりと記憶した。
いずれ闘わなければならない強大な敵。
どんな力を持っているかすらもわからないが、それでも闘わなければならない。
何故なら光太郎はゴルゴムの野望を叩き潰すために、この場に居るのだから。
そして最早あの少女の命は刈り取られてしまったのだろう。
ゴルゴムが人間を生かしておくと到底思えない。
名も知らぬ少女――翠星石への償いの意味を込めて、光太郎は大きく口を開く。
最早、疑いようのない。
そう。この全ての惨事を仕組んだ組織への怒りを言葉に乗せて――


「ゴルゴムの仕業か! 許さん!!」


決定的な誤解を持ちながら、光太郎は改めてゴルゴムに怒りを燃やしていた。



【一日目深夜/C-3 西部】
【南光太郎@仮面ライダーBLCK(実写)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式 未確認(1~3)
[状態]健康 
[思考・行動]
1:この殺し合いを潰し、ゴルゴムの野望を阻止する。
2:少女(翠星石)を誘拐した劉鳳を倒す。
3:信彦(シャドームーン)とは出来れば闘いたくない……。
[備考]
※V.V.はゴルゴムの一味であり、この殺し合いはゴルゴムの仕業だと思っています。
※真・絶影はゴルゴムの新怪人。劉鳳はゴルゴムの中でも特に実力者であると思っています。
また、劉鳳が少女(翠星石)を力づくで誘拐したと思い込んでいます。
※劉鳳が行った方向は見失っています
※何処へ向かうかは次の人にお任せします。


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翠星石
南光太郎 073:みなみ × 南



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