トロンの螺旋堂[とろんのらせんどう]
トーチ・ポート一の鼻つまみ扱いされている店が、ノームのトロンの経営する螺旋堂である。西町の正門近くにあり、ガラクタの中に店があるような様相を呈している。むしろ、ガラクタが店と言ってもいいくらいである。

螺旋堂は、名目上は魔法の品々を扱う店である。“名目上は”というのは、しかし品物の大半は彼の作成した、ジョークともつかぬ出来損ないや珍品ばかりだからだ。
彼が「こいつはクールだぜ」と言いながら見せてくる品は、驚くべき効果があるが実用にまったく向かないもの、単なる人騒がせなもの、ガラクタ以外の何物でもないものなど、真面目に魔法の品物を求めると面食らう物ばかりである。それでいて時々本当に役に立つ品物が混ざっているのが始末に負えない。螺旋堂という名前も彼のひねくれた性格が由来だというもっぱらの噂である。
客との乱闘や詐欺まがいの商売で詰め所に叩き込まれることもしばしばの彼だが、意外にもお得意様がいる。子供たちはトロンの作る珍妙な品物を楽しみにやって来て、彼も自作の品を格安で彼らに譲っているのだ。トロンが言うには、子供たちは笑顔が輝くから好きなのだという。さんざんな生活をしながら店を続ける理由も「冒険者連中は生きてくために不思議なことを発見してるから、楽しまないんだ。笑顔が暗いんだよ。だから俺のアイデアであいつらが子供みたいに輝く笑顔を見せるまで、俺はやめるわけにはいかんのよ」トロンは顔に痣を作りながら本当に嬉しそうな笑顔で語った。

(鹿田穣)
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