いい加減にしろメガソーラー

2020.11.11更新

現在、日本全国あちこちで山地や丘陵地の森林を伐採してメガソーラーが建設されており、最近になって、ようやくその環境負荷が問題視されつつある。そもそも、こんなにもメガソーラーが乱立するようになったのは、国策で行っている再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)により、事業者がメガソーラーで発電した電力を固定価格で売却できるためである。しかし、その政策の本来の目的はCO2排出量の削減のはずで、森林を伐採してメガソーラーを建設する場合、元々の森林のCO2を吸収する作用と比較してより効果が見込めない場合は、建設自体が意味をなさない。ところが、パネル設置に用いる土地に対する規制が緩かったため、農地以外で手っ取り早くパネルが設置可能な土地として、よりにもよって森林が選択され、CO2削減のためにあちこちで森林が消失するという本末転倒な事態になってしまっている。一度決まってしまった政策が施行されると、その政策の下で経済的利益を追求する人が出てくるのは当然であり、これは完全に政策設計のミスだろう。
 感覚的にわかる本末転倒な事態だが、実際どの程度ムダなことをやっているのか、定量的に見積もってみる。

発電量と設置面積の関係
発電量と設置面積の数値を適当に検索して拾ってみると、こんな感じ↓
  • 長野県諏訪市四賀ソーラー事業(中止):92.3 MW, 196.5 ha
  • 静岡県伊東市伊豆高原メガソーラーパーク(建設中、反対運動あり):40 MW, 45 ha
  • 千葉県鴨川市鴨川メガソーラー(計画中、反対運動あり):130 MW, 150 ha
  • 千葉県市原市山倉水上メガソーラー発電所(2019年火災事故):13.7 MW, 18 ha
  • 埼玉県飯能市阿須山中のメガソーラー(計画中、市長疑惑満載、反対運動あり):9~11 MW, 10 ha
パネルと設置面積とメガソーラーの開発面積は一致せず、後者の方が大きい。パネル設置面積の数値を拾ったつもりだが、MW単位の発電量の数値と、ha単位(あるいは万平方メートル単位)の数値は概ね一致すると覚えておけばよい。

ソーラーパネルによるCO2削減効果
メガソーラーの事業会社が、ご丁寧に森林換算のCO2削減効果の数値を出している。
メガソーラー事業会社 F-BITのサイト によると、
10kWの太陽光発電システムを導入した場合※1、年間の発電量は約1万kWh。この発電量を石油に換算すると、18リットルのポリタンク126本分に相当します※2。
 約1万kWhの発電量をCO2 削減量に換算すると※3、約3.5t-CO2 /年。
この削減量を森林面積に置き換えると※4、約1万㎡の森林がCO2 を吸収する量に相当します。
※3 予想年間発電量(kWh)×0.334kg-CO2/kWh
※4 森林1ha当たりの年間のCO2吸収量0.974t-Cを用いて算出
だそうで。10 kWのパネル設置で1万㎡の森林相当。単位を上記に揃えると、1 MW≒3500 t-CO2/年≒森林100 haに相当することになる。

伊勢志摩国立公園内にメガソーラー開発を進めていることで物議を醸している 三交不動産 によると、
「志摩市阿児立神メガソーラー発電所」の発電能力 約12.8メガ(12,832.96kW)
CO2削減量 約8,200t / 年
杉の木58万2200本が1年間に吸収するCO2量に相当
※杉の木1本当たりの年間CO2吸収量を14kgとして換算
だそうで。杉林の面積に換算すると、杉の木1本あたり3 ㎡とすれば、58万 / 3 ≒ 20万㎡ = 20 haくらいか。1 MW当たりで、20 / 12.8 = 1.6 ha.

佐久咲くひまわり のサイトによると、
1MW= 一般住宅約250軒分の使用電力
毎年600トンのCO2排出抑制の効果が続いていきます。
森林面積換算 *1  東京ドーム7.1個分(33ha)の育成林*3に相当。
育成林によるCO2吸収効果の約3300倍の面積に相当。
だそうで。1 MW≒森林33 ha相当。

上記3つの例で、パネル1 MWが、森林面積で1.6 ha, 33ha, 100ha程度のCO2削減効果が見込めるらしい。計算の仕方で大きく値がブレているが、だいたいこれくらいのオーダー。

森林伐採してパネル設置に意味があるか??
上の計算によると、
  • 1 MWのメガソーラーの設置面積は概ね1 ha
  • 1 MWのメガソーラーのCO2削減量は森林1.6~100 ha
となるので、ざっくり、森林を潰して、その森林のCO2吸収量の数十倍のCO2削減量を得ることになる。
この観点のみ考慮すれば、数字上、例え森林を潰してパネルを設置しても、CO2削減効果はあることになるのか。何とも微妙な数字。。。もうちょっと、明らかに無意味とわかる数字が出ると思ったが。。。

そもそも再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)が始まった経緯
以下順次作成。

FIT政策の責任の所在

政策の誤りを主張する専門家はいないのか

今後どうなるのか


最終更新:2021年07月10日 08:43