「はぁっ.....。はぁっ.....。はぁっ.....。」
VR世界の府中を駆ける。
雷、雨、稲妻.....とてんこ盛りと言っていい程の大荒れの天気。
マンホールからは水が吹き出してる。
水がビルから溢れ出る。
悲鳴、どよめき、サイレンの音。
VRとは言え、もっと酷いことが起きそうな気がする。
「グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」
龍にも、ウマ娘とも捉えられる大きな怪物の黒い影。
空に浮く鉄の様な鈍い雲。
逃げ惑う人々は一体何が起こっているのだろうかわからないのだろう。
何をしても、どうやっても、危機は続く。
みんなが混沌に陥って行くのが見える。
こんな状況で何が出来るって?
アンタとオレは似てる。
自分のやり方を絶対曲げないとこが。
アンタは悪意に満ちているけど、オレは違う。
だから負けるわけにはいかない。
あんまり長居は出来ないだろう。
でも諦めはしないさ。
もう戻れやしないのも知ってる。
いつまで続くんだろうな?
いや、考えるのはやめた。もちろん、途中で投げ出すのもな。
大荒れの中、目を閉じる。
心が燃えるのを感じる。
出来る事が見えて来た。
心を開くんだ!
そうすりゃきっと大丈夫さ!
......おっと!言いたい事はわかるぜ。
どうして青くてクールなウマ娘が、こんな龍みたいなのに向かってるかって言うんだろ?
確かにスーパーヒーローみたいな事をするとは思わなかったけどな......。
説明早くて分からない?
Alright!早いのがオレの売りだけど、時間を始まりまで巻き戻そうか!
オレはソニック!ソニックスティングだ!
みんなからソックスって呼ばれてる。
これまでの事をちょっと振り返ってみるか!
オレは幼い頃から実の親なんていなかった。いたのはメガネをかけた髭面の男......エッグダッドもといオレの義父だった。
そいつとはあんまりいい思い出はない。むしろ、嫌な思い出ばっかりだ。
運動会や文化祭はもちろん、授業参観にすらこない。それに、仕事によっぽど自信があるのか、オレが走りたいスタイルで走らせてくれなかった。
そいつとはあんまりいい思い出はない。むしろ、嫌な思い出ばっかりだ。
運動会や文化祭はもちろん、授業参観にすらこない。それに、仕事によっぽど自信があるのか、オレが走りたいスタイルで走らせてくれなかった。
だから家出したんだ、トレセン学園の近くまで。
大変だったんだぜ?住む場所がないと、警察に色々言われちまうからな......しばらくマイルズの家に居候したんだ。
で、タダで居候せずにフリースタイルのレースで走ったり、バイトしたりしてた。
そうこうしてるうちに、トレーナーに出会った。
アイツ、オレがエッグダッドに連れられそうになった時にめっちゃいい台詞でスカウトしたんだぜ?
......うれしかったなぁ。
ま、そんなこんなでオレはそのトレーナーにスカウトされる形でトレセン学園に入学したんだ。
途中でエッグダッドがフィストナックルズとか言う筋肉バカを刺客として来たっけなぁ......。
オレはトレセン学園が好きだ。
自由を謳歌できる最高の環境でもあるし、色んな面白いものがある。
ま、もしかしたら周りの人達が親切だからってのもあるかもな。
ざっとここまでが、オレの来歴って奴だなっ!
さて...その日は、入学してからのお気に入りランニングルートを駆けていた。
商店街の人達や、近所の動物達に挨拶しかながら走っていく。
商店街は店じまいが始まる辺りだから、人通りは少ない。
あの店の看板猫も大あくびをしている。
「Phew〜♪Great!ご機嫌だね!」
看板猫がこちらに近づいて来たので、一旦止まる。
かわいいやつめ......前にオレが来るのを待ってるって店の人が言ってたぜ?
「追え!奴を逃すな!」
しばらくすると、ウマ娘達が急いでどこかに向かって行った。
「なんだ?」
あの服装......確か、警備関係の.......名前は何だったっけ?
ただ事じゃなさそうな感じだ.....行ってみるか!
駅周辺はざわついていた。
喧騒の中心に向かっていくと、先程見かけた武装したウマ娘達と......奇妙な雰囲気を纏った水色の髪をしたウマ娘がいた。
ポーカーフェイスと言うか何というか......表情一つ動かしてない。
「そこのウマ娘!早く投降しなさぁい!」
「.......。」
武装集団のリーダーらしきウマ娘の返事にも答えない。
それどころか.......彼女からの圧力が増した。
「ひぃ〜!!こんな怖いウマ娘む〜り〜!!撤退!!撤退ぃぃぃ!!」
......集団達は逃げ帰ってしまった。
彼女はまだ去らない様だ......ちょっと興味が湧いたから、話してみますか。
「Hello,そこのウマ娘!アンタ、凄い迫力だったな?」
「......。」
「名前はなんて言うんだ?」
「......。」
「見た感じ同じトレセンの生徒か......学年は答えてくれるよな...?」
「......。」
「Hey,無視かよ...。」
と、オレが言った言葉を無視してどっか行っちまった。
「Stop!ちょっと待て!」
ったく......止めようとする声も無視されるとは......。
しかし、一体奴はなんであんな辺な武装ウマ娘集団に追われてたんだ?
それに、オレはあんな不思議な雰囲気のウマ娘は知らない。無言で、めちゃくちゃ緑の瞳で、水色の長髪だったな......後でマイルズに聞いてみるか。
「おぉ.....やっと見つけたぞ!"究極"と呼ばれたウマ娘カオテックス...!ふふふ....。ふぉーっほっほっほっほ!!」
ニヤリとニヒルな表情で笑う、小太りの中年の男はそう言ってその場を後にした。