「報告――人奏者の使徒、個体名リチャード・ザンブレイブからの情報送信を確認。」
それは彼らですら想定しえなかった、地上からもたらされる最後の希望。
それは使徒であった時分に作った子供だからか、そして、人奏使徒の体内に眠る紅星晶鋼と何らかの反応を起こしたためか。
その二人、新たな命とかけがえのない絆の接触によって結晶の花弁が咲き誇る。
それは、超小型の世界樹……、第二太陽と交信できる演算装置。
もはやこの世に存在しない神の星と、人の星。それらが一つの物語を紡ぐように大輪の光を放ち、生まれた命の鼓動を彼方の太陽へと送信したのだ。
「新生児との接触から生命誕生に基づく各種真理の獲得、完了。神祖由来の旧第二太陽に属する星辰情報も続けて獲得、完了。」
受信した情報は新生児誕生の詳細情報、そして第二太陽から失われた神祖由来の星辰情報。
それはすなわち、自らの手で葬った己の太源の星辰情報に他ならず―――。
「特異点への干渉開始、達成不可能な作業工程――時間的矛盾の修正を実行する。」
加えて彼らが三次元に投射された際に欠けていた幼少期以前の生体情報。その参考情報も同時に受信したとなれば―――。
「了解、共同作業へと移行――。ラグナ・スカイフィールド、ミサキ・クジョウの両名に欠落していた幼少期以前の存在証明を創造開始。」
「既存情報との結合、細部情報の調整、これにて一切残らず完遂。以上の作業をもって時間的矛盾の解消と人奏搭載型大和・第二太陽大御神の製造を達成と見なす」
「肯定、現状の核を担う中枢機関の切り離しへと着手、これで我らは、私たちは―――」
「今ここに、第三惑星への完全な帰還を願おう。そして再び、もう一度」
大切な絆と共に生きてみたいと、告げながら―――。長い長い天御柱を成し遂げて―――。
ついに―――。
「おかえり、二人とも」
「お待たせ、みんな」
ついに、二人は笑顔の明日へたどり着いた。
―――さよなら神祖滅殺。そして銀月の運命よ。
―――奪われたものは取り返した。愛は今、この腕の中にある。
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