暗躍する老呪術師の思惑に誘導され、遂に黝ヶ淵若宮の地で激突せんとする二人の主人公。
戦いに突入しようとするその中でもあくまで消極的に迎え撃つという態度を崩さず、『御託』を並べる完に対し敵意も露に啾蔵が突きつけた一言。
「おい、俺にやり合う気はないんだぜ。だが、仕掛けてくるなら話は別だぞ」
「眠てえぜ、吐月。俺からの疑いを晴らす気がない以上、てめえは敵だ」
――黝ヶ淵の怨霊の呪いの侵食に抗う為の、島の結界の一部が謎の
呪術師に破壊されるという危険な状況。
――3年前、消息不明となったかつての同門であり裏切者・吐月完が再び島に戻り、不審な行動をとっているという事実。
それらを前にして、文鳴啾蔵は長年に渡り自分自身に徹底させてきた行動原理に従い、即座に完という呪術師を排除すべき
“敵”として認識した。
そうとも、自分以外はすべて敵か、いずれ敵になりうるものでしかない。
唯一の光を失ったあの少年の日以来、すべては無価値な形骸だ。
敵か味方かで粗雑に両断したところで、己にとって取りこぼし惜しむべきものなどありはしないと……
互いに呪式を行使するためのヒトガタ御幣を取り出しながら……文鳴啾蔵という呪術師の影を長年追ってきた吐月完は、静かに語り始める。
「……昔、俺はおまえが邪魔だと思っていたよ。呪術で人を殺し、決して捕まりも裁かれもしない男。刑事にとっては矛盾の塊でしかない、その存在がな」
「おまえが存在することが、法の番人としての俺を否定する……
ならば刑事としての俺が死ぬか、おまえを殺し、俺の世界から呪いというものを消し去るかの二択だった」
「馬鹿が……なら、さっさと俺を殺して幕を引きゃあよかったものを。――なぜそうしなかった?」
そのまま光に盲いた一人の獣は、吐月完の人生を毒をもって切って捨てた。
「要するに、てめえは結局何も出来ない男ってことだ。その昔は愛した女の怨みも晴らせず、3年前のあのときも珠夜の母親を救えなかったろうが」
―――瞬間。吐月完の顔色がはっきりと変わった。
「……久しぶりに、昔おまえを殺したかったってことを思い出してきたぜ」
無気力ささえ漂っていた彼の双眸に浮かび上がってきたのは……激しい憎悪の色。
「少しはいい顔になったじゃねえか。一々こっちから火をつけてやらなきゃ殺し合いも満足にできねえとは、つくづく世話の焼ける野郎だぜ」
それきり二人の男は口をつぐみ……両者の間には互いを憎み合う呪詛の念が色濃く渦巻いていく。
そして互いの指に手挟まれた、純白の御幣がかざされ――
歴史の陰で幾度も繰り返されてきた、全霊を賭した呪術師同士の殺し合いが幕を開けた。
- 過去編見た後だと文鳴側が正論言ってるだけに見えて困る -- 名無しさん (2024-06-11 01:35:39)
- ゴミみたいな世界に入ってきていて何正義ぶってんの?みたいなことは作中で散々突き付けられてた気がする。一応救いらしきものもありはしたけど -- 名無しさん (2024-06-11 10:28:07)
- トシローさんがゴドフリさんに今更虫の良いことほざくなみたいなこと言われてたの思い出すぜ!! -- 名無しさん (2024-06-11 10:36:58)
- どちらかというと正義ぶることすら出来ないから怖い。極端から極端に走りすぎだよカンちゃん -- 名無しさん (2024-06-11 13:00:12)
- 作者男虐め好きすぎない? -- 名無しさん (2024-06-11 13:35:00)
- ヴァーミリ、ゼロイン、バロック、羊狼、DEADDAYS、マゴベ、墓碑銘。もはや語るまでもなく…… -- 名無しさん (2024-06-11 13:52:08)
- 大丈夫だ、吐月ルート後とかのあとはもっと傷を負う事になるだろうから!(クリア後作者コメント -- 名無しさん (2024-06-11 13:54:22)
- 吐月さんの方もし機会あればファンディスク後日談行けるんじゃないかと思った -- 名無しさん (2024-06-11 14:05:23)
- 昏式さん理想を抱いた男に突然舞い降りた不幸からその理想や得た愛を失わせたり捨てさせるのめっちゃ好きじゃんと思った -- 名無しさん (2024-06-11 22:52:34)
- 決意と殺る気の足りない元弟弟子に気合を入れてあげるなんて文鳴さんヤサシイナア(この後互角以上の呪殺戦に持ち込まれながら -- 名無しさん (2024-06-14 00:15:50)
- 煽ったら相手が覚醒とかトシローさんみたいで笑う -- 名無しさん (2024-06-20 15:35:01)
最終更新:2025年07月29日 12:21