早朝5時。
しんと静まり返った高校の武道場に
道着姿の女子生徒が姿を見せた。
道着姿の女子生徒が姿を見せた。
少女の名前は紗枝。
空手をはじめ、10を超える武道の有段者。
「武神」の異名を持つ高校2年生である。
空手をはじめ、10を超える武道の有段者。
「武神」の異名を持つ高校2年生である。
普段であれば、これから一人、道場内で
1000本突きをはじめとする朝練を行うのが日課。
1000本突きをはじめとする朝練を行うのが日課。
しかし、今日は少しメニューを変える必要がある。
殺気立った男が一人、待ち構えていたからだ。
殺気立った男が一人、待ち構えていたからだ。
「あなたが、今日の相手ね。」
紗枝の噂は世界中に広まっている。
このため、時折、場所を問わず
未知の挑戦者と拳を交えることがある。
このため、時折、場所を問わず
未知の挑戦者と拳を交えることがある。
彼女は常日頃から、世界の強者達の
標的となっているのだ。
標的となっているのだ。
帯を引き締め、男と向き合う。
「ギシッ・・・ギシッ」
奇怪な音を立てて紗枝を睨みつけるのは
・・・全身が鋼鉄でできたサイボーグであった。
奇怪な音を立てて紗枝を睨みつけるのは
・・・全身が鋼鉄でできたサイボーグであった。
目が合った瞬間、人智を超えたスピードで
襲い掛かる鋼鉄の塊。
襲い掛かる鋼鉄の塊。
戦いの火蓋は気って落とされた!
すかさず応戦する紗枝。
真正面からぶつかり合う拳と拳!!!
真正面からぶつかり合う拳と拳!!!
ドゴオオんッ!!!
道場に激震が走る。
互いの拳をぶつけあったまま、硬直する2人。
互いの拳をぶつけあったまま、硬直する2人。
その瞬間、紗枝は相手の正体を思い出す。
半年前に闘い、ワンパンでKOした
ボクシングヘビー級チャンピオン。
どうやら、紗枝に勝つためだけに、人間を捨てたようだ。
半年前に闘い、ワンパンでKOした
ボクシングヘビー級チャンピオン。
どうやら、紗枝に勝つためだけに、人間を捨てたようだ。
「痛くない・・・・痛くないぞォオオオッ!!!!」
肉体改造の成果に興奮する男。
「これなら・・・これなら勝てるッ!!!」
絶対的勝利を確信し、鼻息を荒くする。
肉体改造の成果に興奮する男。
「これなら・・・これなら勝てるッ!!!」
絶対的勝利を確信し、鼻息を荒くする。
しかし、今の一撃で相手の力を見切った紗枝は、
男を目の前に、構えた拳を下ろす。
男を目の前に、構えた拳を下ろす。
バサッ!
道着を脱ぎ捨て、自らの腹筋を指差しながら告げる。
「100発。ここに、全力で打ちなさい。」
「100発。ここに、全力で打ちなさい。」
「・・・・・・・・・・何だと?
こ、こ、この俺を・・・ち、挑発・・・だと?
ふ、ふ、ふざけるなぁあっ!!!!!
こ、後悔サセテヤルッ!!」
こ、こ、この俺を・・・ち、挑発・・・だと?
ふ、ふ、ふざけるなぁあっ!!!!!
こ、後悔サセテヤルッ!!」
逆上した男は禁断の機能を開放する。
『フルパワーモード。ハツドウ』
それは、最強最速のパンチを放つための最終形態。
それは、最強最速のパンチを放つための最終形態。
男の頭脳と直結したスーパーコンピュータは
紗枝との間合いを瞬時に計算。
腕を制御するナノマシンに指令を送る。
紗枝との間合いを瞬時に計算。
腕を制御するナノマシンに指令を送る。
心臓部の永久機関が、膨大なエネルギーを
全て右腕に送り込み、内蔵された人工筋肉が
はちきれんばかりに膨れ上がる。
全て右腕に送り込み、内蔵された人工筋肉が
はちきれんばかりに膨れ上がる。
「ヒヒヒヒィイィッ。全ては貴様を葬る拳を放つためっ。
俺は究極の肉体と頭脳を手に入れたのだぁっ!。」
俺は究極の肉体と頭脳を手に入れたのだぁっ!。」
耐久性の限界ギリギリのパンチを打つため
足の爪が禍々しく変形し、道場の床と足を固定する。
足の爪が禍々しく変形し、道場の床と足を固定する。
『フルパワーモード。ジュンビカンリョウ』
「くらええええええええええええええええええええっっっっ!!!!!!!
フルパワーナックル!!!!!!!!」
究極の拳が紗枝に迫る!!!!
フルパワーナックル!!!!!!!!」
究極の拳が紗枝に迫る!!!!
ドゴオオオオおおおおンッ!!!
大砲を放ったかのような爆発音が、学校中に鳴り響く。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
次の瞬間、男が見たモノ。
それは、紗枝の鍛え上げられた腹筋で受け止められ
衝撃の反動で、原型を留めていないほどに歪み
捻じ曲がった自身の拳。
次の瞬間、男が見たモノ。
それは、紗枝の鍛え上げられた腹筋で受け止められ
衝撃の反動で、原型を留めていないほどに歪み
捻じ曲がった自身の拳。
「う・・・う・・・う、う、、う、うぎゃぁあああああああああっ!!!!!!」
拳を破壊され、激痛に身悶える男。
拳を破壊され、激痛に身悶える男。
「”突き”はね、こう打つのよ。」
そのままの体制で、紗枝は軽いジャブを放つ。
そのままの体制で、紗枝は軽いジャブを放つ。
ズドムッ!!!ブチブチブチっ!!!!!
「あ・・・・が・・・・がぁ・・・。」
その拳は、男の鋼鉄のボディを
あっけなく貫通する。
その拳は、男の鋼鉄のボディを
あっけなく貫通する。
「お、おぶぅ、おぶっ!ぐごぼぼぼぼおおおっっ!!!!!」
大量の嘔吐物を吐き出しながら
絶望と共に身悶える男。
大量の嘔吐物を吐き出しながら
絶望と共に身悶える男。
・・・もはや手段は選んではいられない。
左腕に内臓されたマシンガンが飛び出し
紗枝に照準を合わせる!
左腕に内臓されたマシンガンが飛び出し
紗枝に照準を合わせる!
「こ・・・こ・・・これはゴフッ!! い、一秒間に・・・ゴボッ。
百発の弾丸を・・・・ぶち込めるんだぁあああゴホっ、ゲホッ!!!」
百発の弾丸を・・・・ぶち込めるんだぁあああゴホっ、ゲホッ!!!」
超至近距離でマシンガンを構える男。
紗枝は落ち着いた表情で拳を構える。
「これで終わりだあああああああっ!!!!!」
紗枝は落ち着いた表情で拳を構える。
「これで終わりだあああああああっ!!!!!」
人間のそれをはるかに上回る動体視力を持つ男の目に
内臓されたモニターは、その瞬間を捕らえた。
内臓されたモニターは、その瞬間を捕らえた。
・・・
・・・
・・・
一秒間に百発の弾丸を全て打ち落とす、紗枝の超高速拳を。
・・・
・・・
一秒間に百発の弾丸を全て打ち落とす、紗枝の超高速拳を。
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッっ!!!!
「あ・・・・あ・・・・あ・・・・・あ・・・・」
男は言葉を失っていた。
男は言葉を失っていた。
『拳のマシンガン』で、男が放った銃弾を
全て破砕した少女が、目の前に迫る。
全て破砕した少女が、目の前に迫る。
スーパーコンピューターが紗枝のパンチを分析し
残酷な演算結果を男に通知する。
残酷な演算結果を男に通知する。
それは、今のパンチ”一発毎”に、先程、自分の肉体を
貫いた一撃の、10倍以上の破壊力があるという事実。
貫いた一撃の、10倍以上の破壊力があるという事実。
ピチャ・・・ピチゃっ・・・・ぴちゃあ・・・。
男は恐怖のあまり、失禁していた。
男は恐怖のあまり、失禁していた。
「お返しよ。」
「うわあああああああぁぁッ!!!!!!!!」
「うわあああああああぁぁッ!!!!!!!!」
拳の返礼。
炸裂する紗枝の百裂拳!
「うぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ
ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ
ぎゃぎゃぎゃあああああああっっっっっ!!!!!」
炸裂する紗枝の百裂拳!
「うぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ
ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ
ぎゃぎゃぎゃあああああああっっっっっ!!!!!」
たったの一秒で、全身穴だらけの鉄クズと成り果てた男。
「ドサっ!」
無様な格好のまま、仰向けに倒れ込んだ
無様な格好のまま、仰向けに倒れ込んだ
紗枝はその残骸に向かい、背筋を伸ばし一礼する。
闘いは、終わった。
闘いは、終わった。
ふと、道場の時計が目に入る。
「6時・・・か。」
何事もなかったかのように、朝練の準備を始める。
「6時・・・か。」
何事もなかったかのように、朝練の準備を始める。
拳の道に終わりはない。
さらなる強さを求め、
紗枝の鍛錬の日々は続く。
さらなる強さを求め、
紗枝の鍛錬の日々は続く。