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ジャングル・ブック

原題:The Jungle Book
公開:1967年10月18日
時間:78分
監督:ウォルフガング・ライザーマン
原作:ラドヤード・キップリング*



  • 目次

ストーリー

インド*ジャングルで黒豹のバギーラは人間の男の子の赤ちゃんを見つける。バギーラは子供が生まれたばかりのオオカミの夫妻ラマラクシャのもとへ彼を連れて行く。男の子はモーグリと名付けられ、オオカミの子たちと兄弟同然に育てられる。それから10年が経過し、人食いトラのシア・カーンがジャングルに戻ってきたため、成長したモーグリは人間の村に戻さなければならない。ジャングルが好きなモーグリは納得が行かない。自分の身は自分で守れると豪語するモーグリだが、早速ヘビのカーに食べられそうになりバギーラに救われる。翌朝、ジャングルから出たくないモーグリはハティ大佐率いるジャングル・パトロール*とハティ大佐の息子ベビー・エレファントと出会う。

モーグリは陽気なクマのバルーと仲良くなる。再び逃げたモーグリは陽気なクマのバルーと意気投合し、二人でジャングルで楽しく過ごそうとするが、モーグリは人間になりたいオランウータンのキング・ルーイに誘拐されてしまう。キング・ルーイはモーグリに人間の証である「火の起こし方」を訊ねるが、ジャングルで育ったモーグリは答えられない。そこへバルーとバギーラが現れ、モーグリは無事救出される。バギーラはモーグリの幸せを考えるなら彼を人間の村へ送るべきだとバルーを説得する。バルーは泣く泣くモーグリを説得するが、モーグリはバルーに裏切られたと感じ、ショックを受けて逃亡する。

概要

ディズニーの長編アニメーション映画第21作。ウォルト・ディズニーが最後に手がけた作品であり、ウォルトは前年公開を待たずに亡くなってしまった。ちなみに、ディズニーの名優ベルナ・フェルトンにとっても遺作であり、ウォルトの前日に亡くなっている。

劇場用続編として『ジャングル・ブック2』(2003年)が製作された。

実写映画版『ジャングル・ブック*』(1994年)や『ジャングル・ブック』(2016年)もディズニーによって製作されている。

歴史


王様の剣』(1963年)の公開後、ストーリー担当のビル・ピートは「我々アニメ部門はもっと面白い動物のキャラクターが創れる」と、『ジャングル・ブック』の映画化を提案。ウォルト・ディズニーは『101匹わんちゃん』(1961年)で既に実績を挙げていた彼の提案を採用した。しかし、前作『王様の剣』の成績が振るわなかったため、ウォルトは本作には前作以上に携わっていくことを決める。彼は原作を読み込み、すっかり夢中になってしまったという。

ビルはモーグリが人間の村へ帰るところで映画を締めるべきと主張した。さらにビルは二体のオリジナルキャラクターを考案した。モーグリが人間の村へ帰る動機として彼に恋心を抱かせる人間の女の子と、モーグリに火の使い方を教えるように迫るオランウータンのキング・ルーイである。キング・ルーイのキャラクターは原作の続編に登場するオランウータンを参考にしている。

ディズニー側は原作に沿いすぎることで映画がファミリー向けでなくなるとして脚本の変更を主張した。ビルは「人間と動物の争いを描くべきだ」とこれを拒否し、長い議論の末、1964年1月にスタジオを去ることとなった。

ビルの跡を継いだのは、ラリー・クレモンズ*。彼は原作を受け取り、「君がすべきことは、これを読まないことだ。」と指示されたという。ラリーは原作が長編小説ではなく短編集であることから苦労したが、ディズニーから「ストーリーはできるだけシンプルにしてほしい」という指示を受けて執筆した。ディズニーはビルの脚本をほぼ破棄したが、キャラクターの性格はビルが考案したものをそのまま使用した。

ウォルトは本作の製作を大いに楽しみ、ストーリー会議やギャグの考案、キャラクターの感情表現などに積極的に参加した。彼は1966年12月15日、本作の公開を待たずしてこの世を去った。

キャスティング

キャラクターの個性やビジュアルを作る際、アニメーターに影響を与えたのは声優たちの声である。過去の作品において、有名人を声優に起用することを好まなかったディズニーにとって本作は大きな決断であった。

知的なコメディアンであるフィル・ハリスをくまのバルーに配役する事を聞いたスタッフは驚いたという。フィルは脚本の台詞を不自然に感じたため、台詞のほとんどをアドリブで演じた。

その後、レコード部門のジミー・ジョンソン*キング・ルーイ役にルイ・プリマ*を配役する事を提案した。ウォルトは悪役シア・カーンジョージ・サンダースバギーラセバスチャン・キャボットといった著名な俳優を配した。バギーラ役にはノーマン・グラボウスキも候補に挙がっていた。

また、ディズニーの常連であるスターリング・ホロウェイJ・パット・オマリー、そして本作が遺作となったベルナ・フェルトンらも参加した。

モーグリ役を任されたデビッド・ベイリー*は製作中に変声期を迎えて純真な子供らしさが表現できなくなったことから、監督の息子であり、『プーさんとはちみつ』(1966年)でクリストファー・ロビン役を演じていたブルース・ライザーマンを起用した。

また、挿入歌のデモ歌唱を担当したダーリーン・カーの歌がすばらしかったことから、そのまま少女を演じることとなった。

原作ではハゲワシは死骸の肉を漁る恐ろしいキャラクターであったが、彼らにビートルズ*のような個性を与えたことで愉快なキャラクターとなった。実際、ビートルズのメンバーにもオファーはあったものの、ジョン・レノン*が「アニメ映画には出ない」と拒否したため流れた。代わりにハゲワシ役にはイギリスのデュオ、チャド&ジェレミーのチャド・スチュアートやDJのロード・ティム・ハドソンが参加した。ハゲワシにはサイのロッキーという友人がいる予定だったが、アクションシーンは十分という理由でカットされた。

アニメーション

ディズニー映画では各アニメーターが担当のキャラクターを受け持っていたが、本作ではキャラクター同士の絡みが多いことから、シーン単位で担当を受け持つこととなった。アニメーションは『101匹わんちゃん』(1961年)で完成したゼログラフィーを活用してコストを削減した。『101匹わんちゃん』同様、ケン・アンダーソン*が中心となってこの作業を進めた。

キャスト

初公開版 VHS新録版
モーグリ ブルース・ライザーマン 阿部浩司 中崎達也
バルー フィル・ハリス 千葉順二 郷里大輔(台詞)
鹿野由之(歌)
バギーラ セバスチャン・キャボット 春日章良 今西正男(台詞)
石塚勇(歌)
キング・ルーイ ルイ・プリマ* 石原慎一
シア・カーン ジョージ・サンダース(台詞)
ビル・リー(歌)
三波誠也 加藤精三(台詞)
鈴木雪夫(歌)
カー スターリング・ホロウェイ 八代駿
ハティ大佐 J・パット・オマリー 坂本新兵 富田耕生(台詞)
立花敏弘(歌)
ウィニフレッド ベルナ・フェルトン 片岡富枝
ベビー・エレファント クリント・ハワード 杉山博 山口淳史
ディジィ ロード・ティム・ハドソン 風雅なおと
ジィギィ ディグビー・ウルフ 市之瀬洋一
バジィ J・パット・オマリー 鹿野由之
フラップス チャド・スチュアート 安西康高
アキーラ ジョン・アボット 藤本譲
ラマ ベン・ライト 小島敏彦
ラクシャ - - -
少女 ダーリーン・カー 緒方園子
フランキー レオ・デ・リヨン - -
モンキー ビル・スカイルズ
ピート・ヘンダーソン
島田敏
江原正士
ゾウ ハル・スミス
ラルフ・ライト
サール・レイブンズクロフト(歌)
ビル・リー(歌)
小林博士
ナレーター - 水垣洋子 -

  • 初公開版:1968年8月6日公開。
  • 新録版:1994年3月18日発売。※Blu-ray・DVD・VHS収録

スタッフ

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長編映画
最終更新:2025年01月19日 19:17