SCP-830-JP

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&font(#6495ED){登録日}: 2017/03/29 Wed 00:04:23 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 16 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #center(){&font(b,i,){維持のためには意地に合わせる必要はない。}} SCP-830-JPとは、[[SCP Foundation]]における創作の一つであり、SCP財団日本支部が収容している[[SCiP>オブジェクト(SCP Foundation)]](SCPオブジェクト)である。 項目名は&bold(){「凋落一夜城」}、[[オブジェクトクラス>オブジェクトクラス(SCP Foundation)]]は「Euclid」。 *特別収容プロトコル 「確保、収容、保護」の理念に基づき、世界各地にある異常存在を収集しているのがSCP財団であるということは、SCPの報告書をいくつか読んでいる諸兄なら知ってのことだろう。 一般的に異常存在は保護されるべきであり、破壊するなど以ての外というスタンスを取ることが多い財団(逆に異常存在は問答無用で破壊・殺害すべしという信条を掲げるのが[[GOC>世界オカルト連合(SCP Foundation)]]である)。 しかし、今回取り上げるSCP-830-JPは少々特殊な事情を持っており、収容プロトコル内で&bold(){明らかにSCiPの破壊を伴う行動}が用いられている。 収容プロトコルを要約すると、 ・SCP-830-JPの出現区域周辺は封鎖し、熊出没地帯として偽装する。警備員を配置して一般人が立ち入らないように管理し、侵入者には記憶処理を行う。 ・ただし毎年8月30日の午後8時になったら警備員を引き上げさせる。 ・出現したSCP-830-JPは肉眼で見てはならず、隣山にある定点カメラを通して出現を確認する。 ・出現したSCP-830-JPに対して偽装した無人戦闘機を突撃させ、&bold(){強力な焼夷弾を投下して火の海にして差し上げる。} ・近隣住民にはカバーストーリー「村興し」を適用、「██落城鎮魂祭」という名目で打ち上げ花火大会に出向いてもらっているので、無人戦闘機および爆撃の様子を花火にうまく紛れ込ませ、感づかれないように注意する。万が一感づかれたら記憶処理を施す。 …といったものである。 &bold(){&color(crimson){SCP-830-JP燃やすべし、慈悲は無い。}} 財団が保護対象のSCiPに対して&bold(){爆撃を行う}などという暴挙に出ているのはもちろん理由がある。 SCP-830-JPはその特異性により&bold(){毎年復活する。}そして&bold(){そのつど即座に破壊される}ことを繰り返している。これにより収容が維持されているのである。 …いちいち破壊しなければならないなんてなかなか物騒なSCiPだなあ。[[SCP-076]]も現れるたびに殺害しなきゃならなくて、しかも被害甚大だし。それと同類なのか…。 *説明 では、いちいち毎年爆撃しなければいけないほどヤバイSCP-830-JPとは何者なのか。 SCP-830-JPは、毎年8月30日の午後9時から翌日午前3時の間のみ、██県███山の頂上に出現する、戦国山城のような形をした建造物である。有り体に言ってしまうと「城が亡霊になって出てくる」わけだ。 現在の総面積はおよそ150,000㎡で、高さ55mの本丸、二の丸、三の丸に加え様々な郭や櫓、砦から構成されている。…ちょっと待て、&bold(){山城にしては規模がデカすぎないか?} その規模と構造から城郭としては極めて堅牢であり、戦国時代の武将が持ってるような武装での正面突破はほとんど不可能なレベルとなっている。 また城の各所に旗印が染め抜かれた旗が存在しており、それらを調査した結果、全てが██家に所属していた戦国武将の旗印であることが判明している。 また、SCP-830-JPの出現中はこれと重なる位置にあった物品は全て消失しており、SCP-830-JPが消滅すると元の場所に戻ってくる仕様になっている。現実には出現の痕跡は残さないようだ。 さて上記の通りSCP-830-JPは城なのだが、その中には安土桃山時代の物と推測される鎧に身を包む人型実体、すなわちSCP-830-JP-1が幾千体も存在している。 SCP-830-JP-1は安土桃山時代における一般的な武器(日本刀や弓矢、鉄砲など)で武装していて、SCP-830-JPに近寄る人々を攻撃する。すなわちSCP-830-JP-1はSCP-830-JPを守る「サムライ」なのである。 ただ数は多いもののSCP-830-JP-1の耐久力はあくまで人並みで、致命傷を受けるとその場で消失してしまう。 また、本丸にあたる部分にはSCP-830-JP-1たちを統率する個体が存在している。言うなればこいつがSCP-830-JPの「城主」というわけである。 以下では利便性のため、SCP-830-JPを「城」、SCP-830-JP-1を「サムライ」として話を進める。 城が出現してから消失するまでの時間は8月30日21時から翌3時までの6時間だが、 この期間中に「城主」を討ち取るか、もしくは城の大部分を破壊した場合は、城とサムライたちはその時点で即座に消失してしまう。この現象は&bold(){「落城」}と呼ばれている。 落城時に城の中にいる現実の人物は、城の出現地点に気を失った状態で帰ってくる。また、城内部で消失の瞬間を撮影する試みは、映像機器の原因不明の不調が発生するため失敗。カメラが仕事をしないのはSCiP探査ではいつものことだが。 さて、この城の危険性はここからである。 城を肉眼で視認した人物はいてもたってもいられなくなり、その時点で持っている中で最も強力な武器になるものを担いで、城を攻め落とそうと突っ込んでいってしまう。誰が言ったか、&bold(){「突発的攻城行為」}。 この影響はクラスA記憶処理で除去が可能で、城がなくなれば解除されるのは幸いであるが、一般人が影響を受けた場合、まあ城の大手門で守備を固めているサムライたちにアッサリ斬り捨てられるのが関の山だろう。 サムライによって殺害された人物は即座に消滅し、翌年以降に新しいサムライとして現れるようになってしまうのだ。 すなわち、一般人にとっては&bold(){城を見ただけで実質アウト}というかなり厄介なSCiPなのである。 これだけだったら「城を封鎖して人に見せなければいいんじゃね?」で終わるのだが、もう一つのメンドくさい能力のせいでそうはいかない。 城が出現から消失までの間に「落城」しなかった場合、&bold(){翌年に現れる城が増築されている}のである。 財団が蒐集院から押収した文書では今までに合計██回の拡大が起こったとされており、現在の城が山城ではありえないような規模になっているのはこれが原因であると考えられている。 すなわち、&bold(){「目視したらバーサク状態になって無数のサムライ軍団に突っ込まざるを得なくなる堅牢な城」}を&bold(){「一定時間内に攻め落とさないと規模が際限なくデカくなっていく」}のである。 この二重の能力がSCP-830-JPを危険たらしめている要素なのである。 さらに言うと、例え無事に落城させることができたとしても、あくまでその場合は「翌年に出てくる城が増築されない」だけであり、 &bold(){一度大きくなった城を縮小させたり、増えたサムライを減らす手段は今のところ見つかっていない。} したがってこの城を放置し続けていると、山どころか村をも飲み込んだ城が周辺の住民を次々とサムライに変化させてしまい、しまいには&bold(){K-クラスシナリオの原因にすらなりかねない。} おそるべし、SCP-830-JP。というか当面きちんと収容できてるからEuclid認定だけど、潜在的なポテンシャルはKeterクラスのシロモノだぞこれ! *蒐集院の記録 さて、上でちらっと名前が出ていた&ruby(しゅうしゅういん){蒐集院}。 設定を知らない方のために解説すると、蒐集院とはSCP財団日本支部の前身となった組織の一つであり、古来から日本各地の超常現象を蒐集・管理していたグループのことである。 そしてこの蒐集院がかつて管理を担当していた物品の一つが、このSCP-830-JPだった。 そして財団は蒐集院から、文献とともにSCP-830-JPの管理権を押収し、財団の管理下に置いた、という経歴があったのだ。 文献によると、SCP-830-JPが出現した原因として、「15██年に██家に所属する███城主、北畠██が██軍の侵攻に対して籠城を行った際、██軍の軍師の奇策により一夜で落城させられたことを恨んだ事」が挙げられている。 北畠家は南北朝時代は南朝の武将として活躍し、戦国時代は伊勢を抑え発展するも、織田信長に滅ぼされた実在の戦国大名である。 1500年代というと既に戦国時代に突入しているので、SCP-830-JPはおそらくかつて北畠家の城のどれかであり、その城の主であった北畠██がのちのSCP-830-JP-1のトップになったのだと推察される。まあ北畠██が北畠家宗家以外の武将に仕えていた可能性もあるが。 また、詳しい記述によるとSCP-830-JPが現在の異常性を発現させたのは一国一城令により███城が廃城となった1615年からであり、それまでは███城内で発生していた幽霊騒ぎであったとされている。 城が残っているうちはサムライだけが化けて出ていたが、城がなくなっちゃったので城ごと化けて出るように変わったらしい。 さて、蒐集院時代もこの城の亡霊は幾度となく「落城」させられたり、あるいは幾度となく籠城を成功させて増築したりしていた。 以降の記録は蒐集院時代に書かれたもの(現代語訳済)で、その管理の様子がよく読み取れるものとなっている。以下、引用していこう。 >1616/8/30 >我々は「一夜城」(第███番)の蒐集を開始した。前年の報告と異なり、出現した███城は櫓が1つ多い。この蒐集物の異常性は15██年の███落城における北畠██の怨念に由来する故、祈祷による除霊を試みた。しかし第███番を視認した瞬間に祈祷師は大幣を振りかざして城へと突撃を始め、亡霊に殺され消失した。我々はこの年効果的な手を打てないでいたが、大雨により連中の鉄砲が機能していなかったのは不幸中の幸いだった。 大幣でサムライと斬り合おうとした祈祷師に合掌。 >1617/8/30 >今年出現した███城は、郭の数が1つ増えている。北畠██は籠城に成功したことに気分が高揚でもしているのであろうか。今回我々は護符の加護により無為な突撃を防ぐことに成功した。しかし、夜通しの祈祷にも関わらず、城には何の変化も見られず、午前3時に前年と同じように消失した。祈祷は第███番には効果がないのかもしれない。 勝つと嬉しくなって城を増築しちゃう北畠██氏。 蒐集院は財団と違い、非科学的な祈祷や呪術も得意としていたが、この城は祈祷なんぞでは静まらなかったらしい。 >1618/8/30 >今年の███城は、大手門の拡充が見られた。今回は██家の人間が███城で発生した幽霊騒ぎを武力で鎮めていた事に倣い、武装した兵士を動員し制圧を行った。1616年の記録において大雨で鉄砲が無効化していたことに鑑み、呪術を用いて大雨を降らせた上で攻城を開始。最小限の犠牲に抑え、見事に北畠██を討ち取った。第███番は午前3時を待たず消失した。 初めて「落城」に成功した記録。多数の兵士を投入しての鎮圧であり、大規模な攻城戦が繰り広げられたことが読み取れる。 >1619/8/30 >昨年北畠██を討ち取ったにも関わらず、███城は再び姿を現した。ただし前年までのように規模の拡大は見られなかった。北畠██は籠城に成功した時のみ███城の増築を行うようだ。前年と同様に攻略を開始。容易く北畠██の首を取ることに成功した。 落城させ続けないと規模の拡大を抑えられないのが厄介。だが蒐集院の武力を持ってすれば落城自体は容易らしい。 中略。この間129年。 >1748/8/30 >従来の方法では第███番を管理することは困難になってきた。亡霊の練度も上がってきており、数度の攻城失敗により城の規模はかの上杉の春日山城もかくやというほどにまで拡大した。もはや正攻法はこちらの被害を徒に増やすだけである。そんな折、██より提案された隠密部隊による北畠██の暗殺計画が実行された。博打ではあったものの結果は大成功であり、こちらは被害を1人も出すことなく制圧を完了。翌年より毎年この手順を実行することに決定した。 困ったことに、何十年も戦闘を続けているとそれに応じてサムライたちがレベルアップすることが判明。 大なり小なり蒐集院側にも犠牲者が出ているわけだから、蒐集院の手練れの兵士たちが新たなサムライとなってしまっているためだと思われる。 サムライに負けて攻城に失敗すれば城は大きくなり、ついには正面から攻め落とすことはかなり困難になってしまっていた。 そこで蒐集院は戦略を変え、隠密部隊で直接城主の首を取る作戦を決行、これが功を奏した。 「ドーモ、キタバタケ=サン。[編集済]デス」「アイエエエ![編集済]!?[編集済]ナンデ!?」 再び中略。更に100年と少々が経過。 >18██/8/30 >隠密部隊による北畠██の暗殺にも暗雲が垂れ込めてきた。(いささか対応が遅すぎるような気もしなくはないが)護衛をつけ、影武者を用いることで暗殺に対抗するようになってきたのである。昨年は不覚をとり実に██年振りに城の増築を許してしまった。今年は何とか北畠██を発見し暗殺することに成功したが、このままでは順調に第███番を管理し続けることは不可能だろう。 さすがに100回以上も同じ方法で首を取られちゃかなわんと思ったのか、城主は護衛や影武者を用いて隠密部隊に抵抗するようになってきた。%%いやもう少し早く対策しろよ…と呆れられているが%% かなり長い間増築を阻止できていたわけだからやはり暗殺は有効だったのだろうが、それも過去の話。蒐集院は次なる策を打てずにいた… が、しかし >近年は米国に由来する「財団」なる組織との交渉も難航している。いっそやつらに全て擦り付けた方が上手く行くのではないか? &bold(){出たよ。要注意団体お得意の財団に押し付けるパターンだよ。} 蒐集院「押し付けられて困るなら『ワイと一緒にならないかコラ』とか言うんじゃねえ」 というわけで、財団は蒐集院から半ば押し付けられる形でSCP-830-JPの管理権を得たのであった。 *技術革新 蒐集院からこの厄介極まる城の亡霊を引き継いだ財団は、当初は内部調査を兼ねて、複数の機動部隊を投入して制圧を行なっていた。 この方法では犠牲も出るし、いかんせん城がデカすぎるので効率も良くない。 しかし、管理権入手から更に時代が下った19██年、&bold(){画期的な技術革新が起こった。} 財団の製造部門が他のSCiPの収容のために開発していた、高威力の焼夷弾。大怪獣のようなSCiPを収容違反時に無力化する用か何かだったのだろうか。 これを見たある博士が「あれ?これSCP-830-JPにも使えるんじゃね?」と考え、当時米国から提供されたばかりだった自動操縦が可能な無人戦闘機に焼夷弾を積み、これで城を攻撃するというプロトコルを提案。 財団はさっそく翌年に発生した城に&bold(){空襲を仕掛けた。} さて、いくら規格外のデカさを持つとはいえ、SCP-830-JPの軍備・技術水準はあくまで安土桃山時代の範囲を逸脱していない。 城の建材は大半が木材・漆喰・石垣だろうし、大勢配備されているサムライも得物は刀やら鉄砲やらである。飛行機に対抗できるような対空火器や防空壕なんてものは当然あるはずがない。 そこに第二次世界大戦で使われているような焼夷弾での爆撃を行うのである。結果は文字通り火を見るより明らか。 &bold(){&color(crimson){どう見てもオーバーキルです。本当にありがとうございました。}} いつものように機動部隊と一戦交えるつもりで待っていたら唐突に城ごと焼き尽くされてしまった北畠某氏は果たしてどう思ったことやら。 …一瞬で城が火の海に沈むことにより問題なく(?)落城することが判明。 城が焼け落ちて消滅すればその火も一緒に消失するので、周囲が山火事になる心配もない。 これにより、以降は記事冒頭の焼夷弾を使う収容プロトコルが確立されたのである。 やったね財団!技術進歩の勝利だ! *その後 …とはいえ。とはいえである。 SCP-830-JPは当初は有効であった収容方法に対し、100年近くの期間はかかるものの着実に対策を行い、やがてはその収容方法を無効にしてしまう。 蒐集院が行なっていた兵士による攻城戦、隠密による暗殺、そのどちらも最終的には成果を挙げられなくなっていた。 そうなると…&bold(){財団が新たに作成した収容プロトコルも、やがては対策され封じられてしまうのではないか?}という不安が持ち上がるのは当然のことであろう。 そして、初めて城が爆撃されてから数十年が経過した20██年。&bold(){ある異変が起こった。} いつものように爆撃によって落城したSCP-830-JP。 しかし、その跡地にそれまでは無かった立て札が突如として出現したのだ。 急いで立て札の内容を確認する財団。その内容はただ一言。 >#center(){&bold(){&size(30){止 む べ し((現代語訳:止めてくれ))}}} ……………。 よく考えてみるとわかると思うが、SCP-830-JP側はどうあがいても空からの脅威に対抗できない。 6時間耐えて「籠城」が成功しない限りは増築ができず、前年と同じ装備で相手をしなければならない。防空壕を掘ることも「増築」だからできない。 というか掘ったところで城が焼け落ちれば「落城」する上に、城の耐火性を上げる「増築」もやっぱりできない。 ならばとサムライを増やして人海戦術で無理やり凌ごうにも、そもそも攻めてくる戦闘機には誰も乗っていない。仮に墜とせたところで、何の戦力増強にもならないのだ。 当然ながら、いくら城主に護衛やら影武者やらをつけようが空襲には無力である。 結局のところ北畠なにがしは空襲に対して音を上げてしまい、 攻撃者に対して&color(blue){「止めてくれ!その収容プロトコルはワシに効く!(´;ω;`)」}と立て札で懇願することくらいしかできなかったのであった。 んで、財団としては「止めろ」と言われて止めちゃったら収容にならないので、その翌年も引き続き爆撃を敢行。 &bold(){そして相変わらず一瞬で落城。}特に問題は発生しなかった。 そのため、SCP-830-JPの収容プロトコルは現在に至るまで変更されていない。 かくして哀れな亡霊の城は、これまでも、これからも、ただ一方的に焼き尽くされ続けるのであった。合掌。 …まあSCPオブジェクトだからいつか対応策を編み出してくる可能性もあるにはあるが、 「暗殺」というわりと普遍的な攻撃に100年かけてようやく対策を立て始めた…というフットワークの重さを鑑みるに、城が焼夷弾爆撃に対抗できるようになった頃には財団側にも更に高度な兵器が配備されていることだろう。 どうもこいつら、出現している間しか思考が出来ないらしいし。 #center(){&sizex(7){&bold(){SCP-830-JP&br()&br()凋落一夜城}}} *余談 最終的にクソザコ城という印象で終わってしまった感のあるこのSCPだが、「いざ収容違反を起こした時」のことを考えるとなかなかゾッとするものがある。 なにしろ200年ぶりの増築を許すのである。空襲にも備えられる城を目指されたら、どこをどう増築されるかわかったもんじゃない。しかも一旦増築されてしまうと縮小させることはできない。 財団としても、収容プロトコルが現行より面倒になるのは避けなければならないのは当然である。 そして%%都合のいい%%厄介なことに、財団の日本支部は「SCP-830-JPの収容違反に助力しそうなオブジェクト」を他にも数多く収容しているのだ。わかりやすい例でいうとSCP-518-JP((異常性を持った竹。これの群生地の上空を航空機が通過すると、竹林から超高速の竹槍が射出され、航空機を撃墜してしまう。))とかまさにそれ。 収容違反がさらなる収容違反を引き起こす。財団にとって、収容するオブジェクトの増加はこの観点から見れば頭が痛い問題なのである。 この報告書の執筆者は、「九戸城」の伝説((岩手県二戸市に存在する城。城主の九戸政実が南部信直に対して1591年に挙兵したが、南部家と繋がっていた豊臣家への反乱と見なされて豊臣秀次軍に鎮圧される。この際鎮圧軍は助命の約束で籠城軍を2日で降伏させたが、いざ投降したと見ると即座に約束を反故にし、城内の女子供まで皆殺しにしたという。この乱は豊臣秀吉の天下統一の最後の仕上げともされる。))をモデルにしてこのSCPを作成したという。 一方で「五箇篠山城」((三重県多気郡に存在する山城。本能寺の変後、北畠氏の再興を図っていた北畠具親が籠城したが、織田信雄の軍勢によって一夜で攻め落とされた。))というのも存在し、こっちの方が当該SCPっぽいが、執筆者によるとこれは偶然だったそうだ。 追記と修正は%%止むべし%%止めなくて結構です。 ---- #right(){CC BY-SA 3.0に基づく表示 SCP-830-JP - 凋落一夜城 by semiShigUre http://ja.scp-wiki.net/scp-830-jp この項目の内容は『[[クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス>https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/deed.ja]]』に従います。 } #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,16) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #lsd() #comment_num2(num=30) }
&font(#6495ED){登録日}: 2017/03/29 Wed 00:04:23 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 16 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #center(){&font(b,i,){維持のためには意地に合わせる必要はない。}} SCP-830-JPとは、[[SCP Foundation]]における創作の一つであり、SCP財団日本支部が収容している[[SCiP>オブジェクト(SCP Foundation)]](SCPオブジェクト)である。 項目名は&bold(){「凋落一夜城」}、[[オブジェクトクラス>オブジェクトクラス(SCP Foundation)]]は「Euclid」。 *特別収容プロトコル 「確保、収容、保護」の理念に基づき、世界各地にある異常存在を収集しているのがSCP財団であるということは、SCPの報告書をいくつか読んでいる諸兄なら知ってのことだろう。 一般的に異常存在は保護されるべきであり、破壊するなど以ての外というスタンスを取ることが多い財団(逆に異常存在は問答無用で破壊・殺害すべしという信条を掲げるのが[[GOC>世界オカルト連合(SCP Foundation)]]である)。 しかし、今回取り上げるSCP-830-JPは少々特殊な事情を持っており、収容プロトコル内で&bold(){明らかにSCiPの破壊を伴う行動}が用いられている。 収容プロトコルを要約すると、 ・SCP-830-JPの出現区域周辺は封鎖し、熊出没地帯として偽装する。警備員を配置して一般人が立ち入らないように管理し、侵入者には記憶処理を行う。 ・ただし毎年8月30日の午後8時になったら警備員を引き上げさせる。 ・出現したSCP-830-JPは肉眼で見てはならず、隣山にある定点カメラを通して出現を確認する。 ・出現したSCP-830-JPに対して偽装した無人戦闘機を突撃させ、&bold(){強力な焼夷弾を投下して火の海にして差し上げる。} ・近隣住民にはカバーストーリー「村興し」を適用、「██落城鎮魂祭」という名目で打ち上げ花火大会に出向いてもらっているので、無人戦闘機および爆撃の様子を花火にうまく紛れ込ませ、感づかれないように注意する。万が一感づかれたら記憶処理を施す。 …といったものである。 &bold(){&color(crimson){SCP-830-JP燃やすべし、慈悲は無い。}} 財団が保護対象のSCiPに対して&bold(){爆撃を行う}などという暴挙に出ているのはもちろん理由がある。 SCP-830-JPはその特異性により&bold(){毎年復活する。}そして&bold(){そのつど即座に破壊される}ことを繰り返している。これにより収容が維持されているのである。 …いちいち破壊しなければならないなんてなかなか物騒なSCiPだなあ。[[SCP-076]]も現れるたびに殺害しなきゃならなくて、しかも被害甚大だし。それと同類なのか…。 *説明 では、いちいち毎年爆撃しなければいけないほどヤバイSCP-830-JPとは何者なのか。 SCP-830-JPは、毎年8月30日の午後9時から翌日午前3時の間のみ、██県███山の頂上に出現する、戦国山城のような形をした建造物である。有り体に言ってしまうと「城が亡霊になって出てくる」わけだ。 現在の総面積はおよそ150,000㎡で、高さ55mの本丸、二の丸、三の丸に加え様々な郭や櫓、砦から構成されている。…ちょっと待て、&bold(){山城にしては規模がデカすぎないか?} その規模と構造から城郭としては極めて堅牢であり、戦国時代の武将が持ってるような武装での正面突破はほとんど不可能なレベルとなっている。 また城の各所に旗印が染め抜かれた旗が存在しており、それらを調査した結果、全てが██家に所属していた戦国武将の旗印であることが判明している。 また、SCP-830-JPの出現中はこれと重なる位置にあった物品は全て消失しており、SCP-830-JPが消滅すると元の場所に戻ってくる仕様になっている。現実には出現の痕跡は残さないようだ。 さて上記の通りSCP-830-JPは城なのだが、その中には安土桃山時代の物と推測される鎧に身を包む人型実体、すなわちSCP-830-JP-1が幾千体も存在している。 SCP-830-JP-1は安土桃山時代における一般的な武器(日本刀や弓矢、鉄砲など)で武装していて、SCP-830-JPに近寄る人々を攻撃する。すなわちSCP-830-JP-1はSCP-830-JPを守る「サムライ」なのである。 ただ数は多いもののSCP-830-JP-1の耐久力はあくまで人並みで、致命傷を受けるとその場で消失してしまう。 また、本丸にあたる部分にはSCP-830-JP-1たちを統率する個体が存在している。言うなればこいつがSCP-830-JPの「城主」というわけである。 以下では利便性のため、SCP-830-JPを「城」、SCP-830-JP-1を「サムライ」として話を進める。 城が出現してから消失するまでの時間は8月30日21時から翌3時までの6時間だが、 この期間中に「城主」を討ち取るか、もしくは城の大部分を破壊した場合は、城とサムライたちはその時点で即座に消失してしまう。この現象は&bold(){「落城」}と呼ばれている。 落城時に城の中にいる現実の人物は、城の出現地点に気を失った状態で帰ってくる。また、城内部で消失の瞬間を撮影する試みは、映像機器の原因不明の不調が発生するため失敗。カメラが仕事をしないのはSCiP探査ではいつものことだが。 さて、この城の危険性はここからである。 城を肉眼で視認した人物はいてもたってもいられなくなり、その時点で持っている中で最も強力な武器になるものを担いで、城を攻め落とそうと突っ込んでいってしまう。誰が言ったか、&bold(){「突発的攻城行為」}。 この影響はクラスA記憶処理で除去が可能で、城がなくなれば解除されるのは幸いであるが、一般人が影響を受けた場合、まあ城の大手門で守備を固めているサムライたちにアッサリ斬り捨てられるのが関の山だろう。 サムライによって殺害された人物は即座に消滅し、翌年以降に新しいサムライとして現れるようになってしまうのだ。 すなわち、一般人にとっては&bold(){城を見ただけで実質アウト}というかなり厄介なSCiPなのである。 これだけだったら「城を封鎖して人に見せなければいいんじゃね?」で終わるのだが、もう一つのメンドくさい能力のせいでそうはいかない。 城が出現から消失までの間に「落城」しなかった場合、&bold(){翌年に現れる城が増築されている}のである。 財団が蒐集院から押収した文書では今までに合計██回の拡大が起こったとされており、現在の城が山城ではありえないような規模になっているのはこれが原因であると考えられている。 すなわち、&bold(){「目視したらバーサク状態になって無数のサムライ軍団に突っ込まざるを得なくなる堅牢な城」}を&bold(){「一定時間内に攻め落とさないと規模が際限なくデカくなっていく」}のである。 この二重の能力がSCP-830-JPを危険たらしめている要素なのである。 さらに言うと、例え無事に落城させることができたとしても、あくまでその場合は「翌年に出てくる城が増築されない」だけであり、 &bold(){一度大きくなった城を縮小させたり、増えたサムライを減らす手段は今のところ見つかっていない。} したがってこの城を放置し続けていると、山どころか村をも飲み込んだ城が周辺の住民を次々とサムライに変化させてしまい、しまいには&bold(){K-クラスシナリオの原因にすらなりかねない。} おそるべし、SCP-830-JP。というか当面きちんと収容できてるからEuclid認定だけど、潜在的なポテンシャルはKeterクラスのシロモノだぞこれ! *蒐集院の記録 さて、上でちらっと名前が出ていた&ruby(しゅうしゅういん){蒐集院}。 設定を知らない方のために解説すると、蒐集院とはSCP財団日本支部の前身となった組織の一つであり、古来から日本各地の超常現象を蒐集・管理していたグループのことである。 そしてこの蒐集院がかつて管理を担当していた物品の一つが、このSCP-830-JPだった。 そして財団は蒐集院から、文献とともにSCP-830-JPの管理権を押収し、財団の管理下に置いた、という経歴があったのだ。 文献によると、SCP-830-JPが出現した原因として、「15██年に██家に所属する███城主、北畠██が██軍の侵攻に対して籠城を行った際、██軍の軍師の奇策により一夜で落城させられたことを恨んだ事」が挙げられている。 北畠家は南北朝時代は南朝の武将として活躍し、戦国時代は伊勢を抑え発展するも、織田信長に滅ぼされた実在の戦国大名である。 1500年代というと既に戦国時代に突入しているので、SCP-830-JPはおそらくかつて北畠家の城のどれかであり、その城の主であった北畠██がのちのSCP-830-JP-1のトップになったのだと推察される。まあ北畠██が北畠家宗家以外の武将に仕えていた可能性もあるが。 また、詳しい記述によるとSCP-830-JPが現在の異常性を発現させたのは一国一城令により███城が廃城となった1615年からであり、それまでは███城内で発生していた幽霊騒ぎであったとされている。 城が残っているうちはサムライだけが化けて出ていたが、城がなくなっちゃったので城ごと化けて出るように変わったらしい。 さて、蒐集院時代もこの城の亡霊は幾度となく「落城」させられたり、あるいは幾度となく籠城を成功させて増築したりしていた。 以降の記録は蒐集院時代に書かれたもの(現代語訳済)で、その管理の様子がよく読み取れるものとなっている。以下、引用していこう。 >1616/8/30 >我々は「一夜城」(第███番)の蒐集を開始した。前年の報告と異なり、出現した███城は櫓が1つ多い。この蒐集物の異常性は15██年の███落城における北畠██の怨念に由来する故、祈祷による除霊を試みた。しかし第███番を視認した瞬間に祈祷師は大幣を振りかざして城へと突撃を始め、亡霊に殺され消失した。我々はこの年効果的な手を打てないでいたが、大雨により連中の鉄砲が機能していなかったのは不幸中の幸いだった。 大幣でサムライと斬り合おうとした祈祷師に合掌。 >1617/8/30 >今年出現した███城は、郭の数が1つ増えている。北畠██は籠城に成功したことに気分が高揚でもしているのであろうか。今回我々は護符の加護により無為な突撃を防ぐことに成功した。しかし、夜通しの祈祷にも関わらず、城には何の変化も見られず、午前3時に前年と同じように消失した。祈祷は第███番には効果がないのかもしれない。 勝つと嬉しくなって城を増築しちゃう北畠██氏。 蒐集院は財団と違い、非科学的な祈祷や呪術も得意としていたが、この城は祈祷なんぞでは静まらなかったらしい。 >1618/8/30 >今年の███城は、大手門の拡充が見られた。今回は██家の人間が███城で発生した幽霊騒ぎを武力で鎮めていた事に倣い、武装した兵士を動員し制圧を行った。1616年の記録において大雨で鉄砲が無効化していたことに鑑み、呪術を用いて大雨を降らせた上で攻城を開始。最小限の犠牲に抑え、見事に北畠██を討ち取った。第███番は午前3時を待たず消失した。 初めて「落城」に成功した記録。多数の兵士を投入しての鎮圧であり、大規模な攻城戦が繰り広げられたことが読み取れる。 >1619/8/30 >昨年北畠██を討ち取ったにも関わらず、███城は再び姿を現した。ただし前年までのように規模の拡大は見られなかった。北畠██は籠城に成功した時のみ███城の増築を行うようだ。前年と同様に攻略を開始。容易く北畠██の首を取ることに成功した。 落城させ続けないと規模の拡大を抑えられないのが厄介。だが蒐集院の武力を持ってすれば落城自体は容易らしい。 中略。この間129年。 >1748/8/30 >従来の方法では第███番を管理することは困難になってきた。亡霊の練度も上がってきており、数度の攻城失敗により城の規模はかの上杉の春日山城もかくやというほどにまで拡大した。もはや正攻法はこちらの被害を徒に増やすだけである。そんな折、██より提案された隠密部隊による北畠██の暗殺計画が実行された。博打ではあったものの結果は大成功であり、こちらは被害を1人も出すことなく制圧を完了。翌年より毎年この手順を実行することに決定した。 困ったことに、何十年も戦闘を続けているとそれに応じてサムライたちがレベルアップすることが判明。 大なり小なり蒐集院側にも犠牲者が出ているわけだから、蒐集院の手練れの兵士たちが新たなサムライとなってしまっているためだと思われる。 サムライに負けて攻城に失敗すれば城は大きくなり、ついには正面から攻め落とすことはかなり困難になってしまっていた。 そこで蒐集院は戦略を変え、隠密部隊で直接城主の首を取る作戦を決行、これが功を奏した。 「ドーモ、キタバタケ=サン。[編集済]デス」「アイエエエ![編集済]!?[編集済]ナンデ!?」 再び中略。更に100年と少々が経過。 >18██/8/30 >隠密部隊による北畠██の暗殺にも暗雲が垂れ込めてきた。(いささか対応が遅すぎるような気もしなくはないが)護衛をつけ、影武者を用いることで暗殺に対抗するようになってきたのである。昨年は不覚をとり実に██年振りに城の増築を許してしまった。今年は何とか北畠██を発見し暗殺することに成功したが、このままでは順調に第███番を管理し続けることは不可能だろう。 さすがに100回以上も同じ方法で首を取られちゃかなわんと思ったのか、城主は護衛や影武者を用いて隠密部隊に抵抗するようになってきた。%%いやもう少し早く対策しろよ…と呆れられているが%% かなり長い間増築を阻止できていたわけだからやはり暗殺は有効だったのだろうが、それも過去の話。蒐集院は次なる策を打てずにいた… が、しかし >近年は米国に由来する「財団」なる組織との交渉も難航している。いっそやつらに全て擦り付けた方が上手く行くのではないか? &bold(){出たよ。要注意団体お得意の財団に押し付けるパターンだよ。} 蒐集院「押し付けられて困るなら『ワイと一緒にならないかコラ』とか言うんじゃねえ」 というわけで、財団は蒐集院から半ば押し付けられる形でSCP-830-JPの管理権を得たのであった。 *技術革新 蒐集院からこの厄介極まる城の亡霊を引き継いだ財団は、当初は内部調査を兼ねて、複数の機動部隊を投入して制圧を行なっていた。 この方法では犠牲も出るし、いかんせん城がデカすぎるので効率も良くない。 しかし、管理権入手から更に時代が下った19██年、&bold(){画期的な技術革新が起こった。} 財団の製造部門が他のSCiPの収容のために開発していた、高威力の焼夷弾。大怪獣のようなSCiPを収容違反時に無力化する用か何かだったのだろうか。 これを見たある博士が「あれ?これSCP-830-JPにも使えるんじゃね?」と考え、当時米国から提供されたばかりだった自動操縦が可能な無人戦闘機に焼夷弾を積み、これで城を攻撃するというプロトコルを提案。 財団はさっそく翌年に発生した城に&bold(){空襲を仕掛けた。} さて、いくら規格外のデカさを持つとはいえ、SCP-830-JPの軍備・技術水準はあくまで安土桃山時代の範囲を逸脱していない。 城の建材は大半が木材・漆喰・石垣だろうし、大勢配備されているサムライも得物は刀やら鉄砲やらである。飛行機に対抗できるような対空火器や防空壕なんてものは当然あるはずがない。 そこに第二次世界大戦で使われているような焼夷弾での爆撃を行うのである。結果は文字通り火を見るより明らか。 &bold(){&color(crimson){どう見てもオーバーキルです。本当にありがとうございました。}} いつものように機動部隊と一戦交えるつもりで待っていたら唐突に城ごと焼き尽くされてしまった北畠某氏は果たしてどう思ったことやら。 …一瞬で城が火の海に沈むことにより問題なく(?)落城することが判明。 城が焼け落ちて消滅すればその火も一緒に消失するので、周囲が山火事になる心配もない。 これにより、以降は記事冒頭の焼夷弾を使う収容プロトコルが確立されたのである。 やったね財団!技術進歩の勝利だ! *その後 …とはいえ。とはいえである。 SCP-830-JPは当初は有効であった収容方法に対し、100年近くの期間はかかるものの着実に対策を行い、やがてはその収容方法を無効にしてしまう。 蒐集院が行なっていた兵士による攻城戦、隠密による暗殺、そのどちらも最終的には成果を挙げられなくなっていた。 そうなると…&bold(){財団が新たに作成した収容プロトコルも、やがては対策され封じられてしまうのではないか?}という不安が持ち上がるのは当然のことであろう。 そして、初めて城が爆撃されてから数十年が経過した20██年。&bold(){ある異変が起こった。} いつものように爆撃によって落城したSCP-830-JP。 しかし、その跡地にそれまでは無かった立て札が突如として出現したのだ。 急いで立て札の内容を確認する財団。その内容はただ一言。 >#center(){&bold(){&size(30){止 む べ し((現代語訳:止めてくれ))}}} ……………。 よく考えてみるとわかると思うが、SCP-830-JP側はどうあがいても空からの脅威に対抗できない。 6時間耐えて「籠城」が成功しない限りは増築ができず、前年と同じ装備で相手をしなければならない。防空壕を掘ることも「増築」だからできない。 というか掘ったところで城が焼け落ちれば「落城」する上に、城の耐火性を上げる「増築」もやっぱりできない。 ならばとサムライを増やして人海戦術で無理やり凌ごうにも、そもそも攻めてくる戦闘機には誰も乗っていない。仮に墜とせたところで、何の戦力増強にもならないのだ。 当然ながら、いくら城主に護衛やら影武者やらをつけようが空襲には無力である。 結局のところ北畠なにがしは空襲に対して音を上げてしまい、 攻撃者に対して&color(blue){「止めてくれ!その収容プロトコルはワシに効く!(´;ω;`)」}と立て札で懇願することくらいしかできなかったのであった。 んで、財団としては「止めろ」と言われて止めちゃったら収容にならないので、その翌年も引き続き爆撃を敢行。 &bold(){そして相変わらず一瞬で落城。}特に問題は発生しなかった。 そのため、SCP-830-JPの収容プロトコルは現在に至るまで変更されていない。 かくして哀れな亡霊の城は、これまでも、これからも、ただ一方的に焼き尽くされ続けるのであった。合掌。 …まあSCPオブジェクトだからいつか対応策を編み出してくる可能性もあるにはあるが、 「暗殺」というわりと普遍的な攻撃に100年かけてようやく対策を立て始めた…というフットワークの重さを鑑みるに、城が焼夷弾爆撃に対抗できるようになった頃には財団側にも更に高度な兵器が配備されていることだろう。 どうもこいつら、出現している間しか思考が出来ないらしいし。 #center(){&sizex(7){&bold(){SCP-830-JP&br()&br()凋落一夜城}}} *余談 最終的にクソザコ城という印象で終わってしまった感のあるこのSCPだが、「いざ収容違反を起こした時」のことを考えるとなかなかゾッとするものがある。 なにしろ200年ぶりの増築を許すのである。空襲にも備えられる城を目指されたら、どこをどう増築されるかわかったもんじゃない。しかも一旦増築されてしまうと縮小させることはできない。 財団としても、収容プロトコルが現行より面倒になるのは避けなければならないのは当然である。 そして%%都合のいい%%厄介なことに、財団の日本支部は「SCP-830-JPの収容違反に助力しそうなオブジェクト」を他にも数多く収容しているのだ。わかりやすい例でいうとSCP-518-JP((異常性を持った竹。これの群生地の上空を航空機が通過すると、竹林から超高速の竹槍が射出され、航空機を撃墜してしまう。))とかまさにそれ。 収容違反がさらなる収容違反を引き起こす。財団にとって、収容するオブジェクトの増加はこの観点から見れば頭が痛い問題なのである。 この報告書の執筆者は、「九戸城」の伝説((岩手県二戸市に存在する城。城主の九戸政実が南部信直に対して1591年に挙兵したが、南部家と繋がっていた豊臣家への反乱と見なされて豊臣秀次軍に鎮圧される。この際鎮圧軍は助命の約束で籠城軍を2日で降伏させたが、いざ投降したと見ると即座に約束を反故にし、城内の女子供まで皆殺しにしたという。この乱は豊臣秀吉の天下統一の最後の仕上げともされる。))をモデルにしてこのSCPを作成したという。 一方で「五箇篠山城」((三重県多気郡に存在する山城。本能寺の変後、北畠氏の再興を図っていた北畠具親が籠城したが、織田信雄の軍勢によって一夜で攻め落とされた。))というのも存在し、こっちの方が当該SCPっぽいが、執筆者によるとこれは偶然だったそうだ。 追記と修正は%%止むべし%%止めなくて結構です。 ---- #right(){CC BY-SA 3.0に基づく表示 SCP-830-JP - 凋落一夜城 by semiShigUre http://ja.scp-wiki.net/scp-830-jp この項目の内容は『[[クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス>https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/deed.ja]]』に従います。 } #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,17) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #lsd() #comment_num2(num=30) }

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