登録日:2024/04/28 Sun 20:51:00
更新日:2024/12/06 Fri 01:01:05
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『エアホッケー@GAMEPACK』とは、ダットジャパン(DATT JAPAN)によるPCゲームである。
【概要】
ボード上に置かれたパック(円盤)を打ち合い、相手のゴールに入れて点を取り合う「エアホッケー」。ゲームセンターなどの遊技場で実物を見たことがある人や実際に遊んだことがある人も多いだろう。本作はこのエアホッケーをパソコンゲーム化したものである。
かつて富士通・FMVの多くにプリインストールされていたPCゲーム集『GAMEPACK』シリーズに収録されていたゲームのひとつ。『アリーナ』『
ラミィの大冒険』などと共に、GAMEPACKを象徴する思い出深い一作として現在も当時のプレイヤーの間で語り草となっている。
現在では公式よりWindowsアプリやブラウザゲームとしてリメイクも数回行われており、「昔PCにあったなつかしのゲーム」だけに留まらない動向も見せ、当時のプレイヤーやマニアから注目を集めている。
◆各バージョン
●バンドル版
- GAMEPACKゴールドセレクション
- GAMEPACK2000
- GAMEPACK2001F
- GAMEPACK2007F
- GAMEPACK2012F
- GAMEPACK Aquarius
以上のGAMEPACKシリーズに収録されている。現在はいずれのバージョンも生産終了。
バージョンによってUIデザイン等一部に違いがある。
●ゲームパックMOB!版
i-mode&Yahoo!ケータイ向けの月額制アプリサイト「
ゲームパックMOB!」でプレイできたバージョン。
2014年にサービスが終了したため、現在はプレイ不可能。
バンドル版をベースに様々な要素が追加された「エアホッケーSP」となっており、難易度選択・ハイスコアランキング・敗北時のヒントなどが追加されている。
●アプリ版
2013年にMicrosoft Store用アプリへの移植版として配信が開始された。
基本的なゲーム内容はバンドル版とほぼ同一。基本無料で遊べるが、一部キャラクターとの対戦は課金扱いになっている。また、後述するが購入手続きの操作を誤ると先へ進めなくなりリセットを余儀なくされるため注意。
従来のマウス操作に加え、タッチスクリーン、ペン操作にも対応。マレットの移動はバンドル版ではホバー操作だったが、本作およびwebブラウザ版ではマウスの場合左ボタンを押し続ける必要がある。
●webブラウザ版
2024年3月28日、アプリ版の配布から約11年の時を経て、公式サイト内で公開された。アプリ版と異なり課金要素はなく、全ての内容を無料で遊べる。
1ゲームごとに試合ごとの時間・総合タイム・総合失点数が記録されるようになった。また、ランキング機能も実装され、クリア時の成績を全国のゆうた達と競うことができる(※ランキングに登録できるのは7点マッチのみ)。
大人のプレイにも堪え得るクオリティを名目に、対戦相手の難易度に大幅な調整が加えられている。旧バージョンに遊び慣れたプレイヤーも、当時と同じ感覚で挑むと痛い目を見るかもしれない。
とある隠し要素も追加されたようだが…?
勝ち抜きで負けても無制限でリトライができるようになったのはせめてもの…いや、むしろ然るべき救済措置と言える。
なお、勝敗記録を除く自動セーブ機能は実装されていないため、一度ページを読み込みし直すと勝ち抜きの進行状態もリセットされてしまう。うっかりページ移動してしまわないようご注意を。
【遊び方・特徴】
主人公の少年「ゆうた」を操作し、森の動物たちとエアホッケー対決をするという至ってシンプルなもの。これといってストーリーらしきものは存在しないようだが、後述する敗者のリアクションからして只ならぬ裏事情を匂わせている。
1人プレイ・マウス操作。マレット(パックを打つ道具)はカーソルの軌道に追尾するため、実際のエアホッケーに近い感覚で操作することができる。
デフォルトは7点先取制だが、オプションで1~99点まで変更可能。サーブ権はゴールに入れられた側に与えられる。開始時のサーブ権は必ずプレイヤー側にある。
センターラインより奥へマレットを移動させることはできない。ゴールの周囲はラインで囲まれているが特に深い意味はない。
モードは、1人ずつ対戦し勝ち抜いていく『勝ち抜きモード』(リメイク版ではこちらがメイン扱いとなっており『
ゲームスタート』を選ぶとこのモードが始まる)か、一部の動物たちと対戦できる『練習モード』の2種類。
バンドル版・アプリ版では勝ち抜きで負けるとその時点で
ゲームオーバーとなりタイトルへ戻される。ただしwebブラウザ版ではリトライ機能が追加され、勝つまで何度でも再戦できる。
プレイヤーキャラクターのゆうたは、ごく普通の人間の少年。経緯は不明だが森の動物たちとエアホッケー対決を繰り広げる。
動物サイドの選手が複数いる一方、人間サイドはなぜか彼しかいない。ゆうたが得点した時の歓声が動物側と比べてやけに低音だが、これは動物サイドのブーイングではないかという説も。
勝つと生気を感じない微笑とともに拳を突き上げ、負けるとまるで自らを敗北へと導いたプレイヤーを怨むかのように正面へ俯いたままやけに濃い影を落とした死んだ表情を見せる。この世の終わりみたいな落ち込み様は初見で見るとビックリするかもしれない。
激しい落胆ぶりを見せつけるのは、ゆうたのみならず動物勢も同じである。勝利の喜びに浸りたいところで後ろめたさを感じること受け合いだが、表情そのものは通常時とほぼ同じなだけに非常にシュール。
おそらく顔のグラフィックを流用した上でライティングを弄ることで敗北リアクションを表現した結果だろう。
その暗過ぎるリアクションから、プレイヤーの間では「動物の住処である森林開発が懸かっている」「権力者争い」「負けた方は食べられる」などストーリー面で様々な闇の深い憶測が飛び交っている。
【対戦相手】
全員右利き(鼻を使うトロゾウと全身を使うちーすけは除く)。
◆はじめてモード:トロゾウ
プレイヤーが最初に相見えることになる
ゾウさん。
大柄だがその名の通り
トロい。本当にトロい。
そのトロさは敵ながら哀れになるほど。
「はじめて」の人向けとはいえ接待としては過剰じゃないのか…とツッコみたくなるだろうが、マウス操作自体に不慣れな子供やPC初心者への徹底した配慮の結果なのかもしれない。
手ではなく鼻でマレットを操るゾウらしい器用さを見せつけるが、如何せん肝心の動きがトロい故にこちらが打ち返したパックの軌道や速度に全く追いつけていないという悲惨な性能。後ろへ回り込まれたパックを手前から捕えようとして自殺点をやらかすというパターンも多い。
勝利時は鼻でバンザイをする。
まさかの難易度上昇。
そのスピードは旧バージョンのちーすけに匹敵するほど。大した激化には感じられないかもしれないが、あの悲惨な鈍臭さに定評のあったトロゾウの速さにおける変化であることに重大な意味があるのだ。
とりあえず先述したトロいだの弱いだのは過去の話として一旦忘れていただきたい。
ダットジャパン公式によれば、トロゾウの強化はゲームバランスと難易度調整の一環であるらしい。名前も変えてあげればよかったのに。
当時を知る者ならまだしも今作初プレイヤーにしてみればネーミング詐欺に憤慨したくなるだろう。
20年を超える歳月の中で、コンピューターのスペックもそれを取り巻く環境も目まぐるしい変化を遂げた。トロゾウも牛の歩みながらわずかでも変わることを決意したのだと思われる。長きに渡り「トロっ!www」と嘲笑を浴び続けてきた積年の雪辱を果たすかのように。
旧バージョンに慣れ親しんだプレイヤーは、懐かしさ余って舐めプで挑むと思わぬ失点を繰り返し呆気なく惨敗を喫することもある。令和に生まれ変わった「エアホッケー」に今までの戦法は通じない。初戦が肝心、気を抜かず勝負に臨むべし。
◆かんたんモード:ちーすけ
先鋒・トロゾウに続いて立ちはだかるは、盤上にちょこんとマレットを構えた
ネズミさん。
ジェ○ーではない。
他の動物らが人間に近い頭身であるのに対し彼だけはそのまま
ネズミサイズ。ボードの上でパックを追いかけては打ち返す様は宛ら本当のホッケープレーヤーのよう。
しかしそのスピードはトロゾウに毛が生えた程度で大した脅威ではない。ここらで手こずっていてはこの先待ち受ける強豪共にはとても太刀打ちできないため、うまく死角を狙いつつ確実に点を狙おう。
勝つとゴール上をスケートのように滑るが、負けると死ぬ仰向けにブッ倒れる。死力を尽くし戦い抜いたであろう小鼠が天を仰ぐ様は、さも同情を寄せるかのように落胆の表情を見せつける他の連中と比べると実に潔く見えはしないだろうか。
顔グラのまるで証明写真のような固い真顔がなんとも言えぬ味を出している。リザルト画面で見られる勝利顔グラもポーズを決めながら無表情である。相当カメラ慣れしていないらしい。
webブラウザ版では、前述のトロゾウ調整に伴い同じくスピードが強化されている。
◆ふつうモード:ルンちゃん
ちーすけも退け、この
ゲームの感覚にもだいぶ馴染んできただろう。
だが、ここまではほんの前座に過ぎない。ここからが「エアホッケー」という種族間の存亡を賭けた死闘の開幕である。
腕が伸びる
ウサギさん。性別は不明。
目を見張るは何と言っても、トロゾウ・ちーすけの弱小コンビを余興たらしめるが如く機動力。
「ふつう」って言わなかった?
ちーすけまでを難なく撃破し「所詮子供向けか」と高を括っていた多くのプレイヤーを戦慄させ、この
ゲームに秘められた真髄を存分に思い知らせてくれる第一の難関。ここで涙のリタイアを喫したゆうたは数知れず。
これまでと同じ戦法で1点を先取することはまず困難だろう。
さらに端へマレットの動きを誘導することで大きな隙を生み出し、生まれた死角へすかさずスマッシュを打ち込む、エアホッケーならではの本格テクニックが必須となる。
とにかくまずはその桁違いのスピードに慣れることが重要。
勝つと笑顔でバンザイをする。
なお、ルンちゃん以降からあまりに速すぎるせいか、手とマレットの動きにズレが生じている。
◆つよいモード:しんたろう
ルンちゃん戦で白星を飾った選ばれしプレイヤーにのみ手合わせを許される隠しキャラクターその1。「練習モード」で戦うことはできない。
アプリ版では有料コンテンツ扱いで、対戦時に150円を課金しなければ遊べない。webブラウザ版では無料で対戦できる。
種族は
オオカミ(
イヌ?)のようだが、
クマではないかという説も。
ついでにその名前から「元人間」と噂されている。
伸縮自在の右腕を盤上に走らせ相手を翻弄する森の貴公子。しかし、ルンちゃんをも上回るマレット捌き、忍び入るパックを確実に捕えリリースする攻守のバランスは、“狩りの名手”と畏敬されてきた種に恥じぬ実力者と呼ぶに相応しい。
一戦交えた者なら誰しもが「練習モード」に姿を表さなかった理由を痛感させられるに違いない。このオオカミ、「つよい」。
「所詮人間のガキなど歯牙にも掛けない」と言わんばかりに此方には目もくれず、終始手元を凝視したまま黙々とパックを打ち返すなどクールな雰囲気を漂わせる。
しかし、勝利すると天を指差しながらクルクル回るというお茶目な一面も。人間だった頃は案外陽気だったのかも。
◆さいきょうモード:じゅぴたん
強敵・しんたろう戦で勝利を収めたプレイヤーの前に立ちはだかる隠しキャラその2。しんたろうと同様「練習モード」では選べない。
しんたろうと同じくアプリ版では有料コンテンツで、150円で対戦可能となる。webブラウザ版では無料で対戦できる。
キリッとした眉のせいかやたら表情が活き活きしている恰幅のいいパンダさん。
連戦を乗り越えて来た猛者へ、「さいきょう」の肩書きを懸けた決戦を挑む。
その恵体をのめり込ませるようにして放つ重厚なスマッシュは他を圧倒する。
微塵の隙も与えぬ神速、なおかつ一瞬の機会も逸さず相手の懐へ凶弾を抉り込む脅威の殺傷力。彼から1点奪うだけでも至難の業である。もはやパソコンさわりたてのちびっ子もやるゲームって事忘れてませんかね…?
ましてや無失点で圧勝した名実共に「さいきょう」の人類など果たしてこの地上に存在するのか?生物界の頂点は人類か、動物か―――「白黒」つける決戦は壮絶な死闘が予想される。開戦前には今一度、マウスのお手入れと手首の準備運動をお忘れなく。
勝利時は得意のドヤ顔をたたえつつ腕を組む。負けると…その姿は自分の目で確かめよう。ここまでのパターンで大体想像つくと思うが。
「あのパンダに勝った俺こそ『さいきょう』」?
お前それサバンナでも同じこと言えんの?
◆でんせつモード:ししまる
webブラウザ版で急遽新規参戦した真のラスボス。
ルンちゃん、しんたろう、そしてじゅぴたん―――森の強者共との激戦を勝ち抜いてきたエアホッケーマスターの前に降臨した
百獣の王。
なぜか気弱そうな顔で戦いを挑む様子から「本当に強いの?」と初見で肩透かしを喰らうプレイヤーもいるだろう。だが、ダットジャパンが満を持して送り込んだ最後にして最強の刺客、そもそも子供向けの皮を被った大人も泣かせる理不尽難易度…油断は禁物である。
その独特の手つきからなるマレット捌きは、まさしく獅子博兎の動き。あのじゅぴたんすら赤子扱いとばかりの全力で相手を完封に追い込む気高き精神こそが、彼が「でんせつ」の二つ名を授かった所以なのだろう。
ここまで来たらもはや精神との、自分との戦いに過ぎない。じゅぴたんを制した君ならきっと勝ち星を掴めるはずだ。そしてこの森に「ゆうた」という新たな“でんせつ”を打ち立てようではないか。
勝つとゆうたを嘲るように笑うのだが、なかなかムカつく顔をしている。
見た目こそ愛らしいのだが、4点以上を獲得すると…?
開発関係者によれば、ラスボスをライオンにしたのは開発メンバー間での多数決で決まったとのこと。他にはトロゾウを速くした「はやぞう」、「メカゆうた」、「頭でマレットを持つキリン」などの案があったらしい。
【余談】
ポプテピピックTVSP版で旧作
ゲームパロディのアニメーションと挿入歌を流したコーナー『ポプ子にソース』男性版ではエアホッケーのパロディが登場する。
様々な旧作
ゲームの一角に本作が加えられているということは、本作がどれだけ多くの人にプレイされたかを示す指標と言えるだろう。
webブラウザ版リリース後には、本作を開発したダットジャパンがX(旧:Twitter)公式アカウントにてゆうたや動物たちの画像素材やLINEスタンプも配布している。
また、バンドル版・アプリ版・webブラウザ版の全バージョンにおけるライブ配信や動画収益化を全面許諾する旨を明記している。
ダットジャパンは建設・土木系ソフトウェアの開発・販売などが主力事業でゲーム開発はメインではないのだが、このカルト的人気に対し意外とノリノリなのが面白い。
装いを新たに復活したエアホッケーの躍進に今後も注目である。
追記・修正は、ラスボスを無失点撃破してからお願いします。
- キャラ全員負けた時の表情が陰鬱すぎて草。ししまるは4点取った後の表情が本当に殺しにかかりそうな怒り顔なのも笑う -- 名無しさん (2024-04-29 09:09:45)
- 作成乙。じゅぴたんの名前は昔のGAMEPACK内のエアホッケーでは『ブブ』だった記憶がある -- 名無しさん (2024-04-29 14:50:31)
- 令和復活版を見たのがエイプリルフールの日だったからあの時は嘘かと思ってたわ -- 名無しさん (2024-04-29 18:36:20)
- 気になってやってみたらトロゾウに7連敗した…どこがトロだよ -- 名無しさん (2024-05-15 00:51:42)
最終更新:2024年12月06日 01:01