&font(#6495ED){登録日}:2020/06/13 Sat 00:16:15 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 7 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #center(){&sizex(5){&font(b){幸福の定義って、何なんだろうな。}}} SCP-824-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「[[SCP Foundation]]」に登場する[[オブジェクト>オブジェクト(SCP Foundation)]] (SCiP) の一つ。 「[[酩酊街>酩酊街(SCP Foundation)]]」出身のオブジェクトのひとりである。 オブジェクトクラスはEuclid。 *特別収容プロトコル まずこのオブジェクトだが、肉眼で視認することはできない。 というか、監視カメラやサーモセンサなどあらゆる機材でその姿を捉えることは不可能。 (上にものを載せたとき、そのモノが落ちずに宙に浮く現象が起こることから、一応実体はある様子) 唯一の例外はSCP-824-JPに憑依(?)された生身の人間で、彼らにとりつかれた人だけはその姿を見ることができる。 また、SCP-824-JPもその人間から離れて行動することはない。 このことから、特別収容プロトコルはとりつかれた "患者" もろともSCP-824-JPを閉じ込める、という形をとっている。 *概要 SCP-824-JPは、高さ30cmほどのミニチュアサンドバッグに目がついた生物型?のオブジェクト。 スマブラに出てくるサンドバッグくんみたいな感じ、と言えばわかりやすいのではないか。 なにげに結構知性が高く、人間の言葉は理解できているらしい。 さすがに人間のように喋ることはできないが、代わりに身振り手振り%%手ないけど%%で感情表現をしてくれる。かわいい。 で、このちびサンドバッグくんだが、やることは一つ。 不安に由来する精神病歴のある人間……ようするにうつ病を抱えていたり極度に落ち込んでいる患者につきまとうことである。 上で述べた通り、人間はこうしてつきまとわれることで初めて彼らの姿を視認できるようになる。 もちろん、ほのぼのに定評のある酩酊街のオブジェクト、患者の魂を食らうような恐ろしいことはしない。 彼らがとりつく患者はおしなべて心に闇を抱えており、サンドバックくんはそんな彼らを励ましてくれるのである。 またサンドバッグくん自身にも一種のセラピー効果があるらしく、彼らをぶん殴ると殴った人間のストレスが低減する。 サンドバッグくん的にどうなの?と不安になりそうなものだが、彼らもその辺は分かっており、「ボクをぶっとばして、元気になってよ!」と言わんばかりに自ら促すことさえあるのだという。 酩酊街のオブジェクトなので、定番のアレ……酩酊街からの手紙も所持している。 SCP-824-JPの場合、とりついた患者に差し出すらしい。 >お元気ですか。 わたしはのんびり生き延びています。 >どうやら心の優しい仲間たちが、あなたの元へ向かったようです。 >出かける前、彼らはよく「皆、あせっている」と言っていました。 >そちらでは物こそ言わないでしょうが、きっとあなたのために身を差し出してくれるでしょう。 >そしてあなたも、あまり悩み過ぎないように。 >あなたはあなたでいいのです。 > 酩酊街より 愛を込めて それでは一例として、そんなSCP-824-JPと患者のふれあいの一部を抜粋しよう。 > >対象: 芹沢██氏 > >インタビュアー: エージェント・梅田 > > >エージェント・梅田: SCP-824-JPを初めて認識したのはいつですか? > >芹沢氏: 事故に遭って、それから安定してまた数日たったくらいです。これから一生足が動かないかもしれないってことを受け入れ始めて、どうしようもなくただ塞ぎこんでたときでしたかね。枕元に、ふっとコイツが現れたんです。 > >エージェント・梅田: SCP-824-JPは初期の頃、どんな様子でしたか? > >芹沢氏: とにかく跳ねまくってたんです。それが俺にはムカついて仕方がなくて。手が届く範囲にいたから、放り投げて遠くに飛ばしたりもしました。でも何回も寄ってくるんですよ。だからまた投げて。そうして日を過ごすうちにコイツは俺を励ましてるって分かったんです。 > >エージェント・梅田: 何故ですか? > >芹沢氏: だって跳ねてるんですよ。俺の足の近くで。俺がまた歩けるようになれるよう応援してるんだと思います。時には殴って気を晴らすよう身構えたりもしてくれます。馬鹿みたいな根拠だと思われるでしょうが、間違いありませんよ。 > >エージェント・梅田: そうですか。SCP-824-JPや自身について、何か変化はありましたか? > >芹沢氏: えぇ。リハビリを続けてるんです。きついですけど、支えがあれば乗り越えられると思っています。そういう意味でも、コイツは相変わらずです。 > ><録音終了> > この芹沢という男性、事故で足に一生後遺症が残りかねないほどの重傷を負ったらしく、事故直後は完全にヤケになっていた。 そこに現れたSCP-824-JPをも壁にたたきつけるなど乱暴も働いたようだが、そのうちサンドバッグくんの献身に気づく。 以降、あれほど落ち込んでいた芹沢氏のメンタルは回復。リハビリに前向きな姿勢さえ見せるようになった。 だが、財団は冷酷である。 そんな彼らであっても、確保し保護し収容し、人目につかない場所へと閉じ込めてしまう。財団の性質上、それは仕方ない。 仕方のないことではあるのだが、それにしてもここまで収容に際してやるせない気持ちにさせてくるオブジェクトもそうはいないだろう。 > >補遺: &bold(){SCP-824-JPの被験者であった芹沢氏が病棟の階段から落下する事故が発生しました。}芹沢氏は看護師である財団関係者とエレベーターを待っている最中、芹沢氏を乗せた車椅子が勝手に移動し、階段へ落ちたと証言しています。監視カメラには証言通りの映像が録画されていました。(中略)なお、&bold(){この事故により芹沢氏の症状は悪化しました。} > 「芹沢氏を乗せた車椅子が勝手に移動し、階段へ落ちた」。 SCP-824-JPの性質をよーーく思い出してもらいたい。どうだっただろうか。 &bold(){患者以外にはどうやっても視認できない}のではなかったか。 となると、&bold(){芹沢氏を階段から突き落とした犯人は十中八九サンドバッグくんことSCP-824-JP}ということになる。 ……その後の芹沢氏とSCP-824-JPのやりとりが報告書には記録されている。 > >何でだよ。 [何も無い空間に向かって拳を振りかざす。おそらくSCP-824-JPを殴打していると考えられる。以下、殴打と表記] > >俺が何をした? > >あんなに、あんなにまでしたのに。 [殴打] > >[叫びの後、息切れ] > >もう駄目なのか。 > >そんなのってないだろ! [殴打] > >俺はやったんだぞ。ああまでして。分かるか! [殴打] > >こんなことで台無しなんて、そんなことあっていいはずがない! [殴打] > >あの医者共がみんな無能なのが悪いんだ。 > >ほかの医者だったらもっと楽に治してくれたかもしれない。 [殴打] > >気を分かったつもりで見舞いに来た[個人名]もだ。 > >心配そうに見てきたから頑張るしかなかったんだ! [殴打] > >外の写真を撮ってきた[個人名]も、花を買ってきた[個人名]も! [殴打] > >俺には何もできねぇのに楽しそうにしやがるからなんだ! > >お前を殴っても何の意味もねぇよ、こんなの。 > 芹沢氏はキレる。当然である。 だが、ここから彼の様子がおかしくなってくる。 > >あいつらが優しくなったのはいつからだったか。 > >こうなってからか。 > >何もできないと思ってやがるのか。 > >癪だな。 > >でも応援してくれるのは事実だ。 > > > >&bold(){俺が動けるようになったら、たぶんこうはならないだろうな。} > >やっぱそうか。 > >そのときと今とどっちがいいだろうか? > >そうだよな。 > >今のほうが気はいいだろうな。 > >&font(red){&bold(){進む必要なんてどこにもなかったんだ。}} > 患者のままでいれば、乱暴しても文句を言わない、小さな友達が励ましてくれる。 患者のままでいれば、医者や見舞いの知人は自分を気遣い、優しい言葉をかけてくれる。 彼はSCP-824-JPから教わってしまったのだ。&bold(){頑張らなくたっていいじゃないか。あせらなくたっていいじゃないか。} &bold(){今のまま、患者という立場に寄生し続けていれば穏やかな気持ちで過ごせるじゃないか、と。} “友達”だってそれを望んでくれている。 最後に、酩酊街について少しだけ。 酩酊街の基本理念は3つ。忘却、停滞、酩酊である。 辛い思い出は忘れてしまえばいい。嫌なことはやらなければいい。酔っぱらえばずっと楽しい。 酩酊街の住人の本質はひとえに、「今が楽しければそれでいい、あとは野となれ山となれ」という点にある。 そのような生を指して、幸福と呼ぶのかもしれない。だがそれは明日への、未来への諦めと絶望に根差したものでもある。 芹沢氏はきっと幸せだ。今だけじゃない。たぶんこれからもずっと、幸せが約束されているだろう。 なぜならば。 彼が"か弱い病人"であり続ける限りーーー #center(){&bold(){&size(22){SCP-824-JP}} &bold(){&size(25){サンドバッグと無限の称賛}}} #right(){彼の手元には、その2つが約束されるのだから。} #right(){追記・修正は、SCP-824-JPへの警戒レベルを上げてからお願いします。} ---- #right(){CC BY-SA 3.0に基づく表示} #right(){SCP-824-JP - サンドバッグと無限の称賛 by aisurakuto http://ja.scp-wiki.net/scp-824-jp} #right(){この項目の内容は『[[クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス>https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/deed.ja]]』に従います。} #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,7) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - うーん...芹沢さんの気持ちも分かるし酩酊街の優しさも分かるんだがなぁ... -- 名無しさん (2020-06-13 00:23:35) - 裏山の心!裏山の心じゃないか! -- 名無しさん (2020-06-13 00:38:42) - ↑1なっつ...25とか6に載ってたやつじゃん、確かにそれっぽい -- 名無しさん (2020-06-13 01:24:49) - 834-JPと似通っているが、差異がそれぞれにきついな -- 名無しさん (2020-06-13 03:51:03) - サンドバッグくんが直接手を下してるっぽいのがなんだかな。それ以外は酩酊街の負の部分をよく表してるきがする -- 名無しさん (2020-06-13 06:03:09) - 現実逃避で幸福感を得るとロクなことにならないんだけどな。ズレた解釈で奉仕するあたりに如月工務店に通ずるものがある -- 名無しさん (2020-06-13 11:39:51) - ↑でも、如月工務店と違って「死んだ方がマシ状態」にはならんところもあるからなぁ。 -- 名無しさん (2020-06-13 12:33:28) - 克己と自己肯定は相反するわけではない。自己肯定を逃避の材料にしてるのは本人の資質でしかない。結局のところ、自分を救えるのは自分だけってこと -- 名無しさん (2020-06-13 14:39:40) - ↑そりゃお前さんが芹沢氏のような「どうしようもない状況に置かれた」経験がないからそう思うんじゃないか? -- 名無しさん (2020-06-13 15:53:34) - 酩酊街って人に奉仕させるためにオブジェくtp -- 名無しさん (2020-06-13 19:23:16) - ミスった。酩酊街産オブジェクトって必ずしも人に奉仕させるために流しているわけではなくね。初期は役に立たないけど可愛がってね見たいなスタンスだったし。酩酊街の特徴というよりこれを流した住民が勘違いした善人だっただけじゃね。 -- 名無しさん (2020-06-13 19:33:43) - ↑酩酊街オブジェクトは推定酩酊街住人そのものってことは忘れてはいけない。サンドバッグ君が特にあの街でも酔いしれ続けることに対して直接的な奴だった、と言うしかあるまい -- 名無しさん (2020-06-16 11:47:58) - 願いを叶える「機構」でしか無いんだろうな、多分。「患者」本人が「患者」のままでいる事を望めばそうあれかしとばかりにその手助けをする。本人が屈折しなければ歩けるようになるまで応援してくれたんだろうが…… -- 名無しさん (2020-06-16 12:04:55) - 上手く言えんけど「好かれる部分も嫌われる部分も、上手く「酩酊街らしさ」を表現したオブジェクトだな」と言うのが感想。個人的に、SCP-572-JPとか、酩酊街のホッコリっぷりは好きだけど、SCP普遍のいやらしい不条理もあって、それが不思議と嫌味を感じさせない。 -- 名無しさん (2020-06-16 13:10:00) #comment(striction) #areaedit(end) }