オオハリアリ

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オオハリアリ - (2014/01/12 (日) 13:27:52) の編集履歴(バックアップ)


登録日: 2013/06/17(月) 09:01:27
更新日:2023/05/04 Thu 02:28:25
所要時間:約 4 分で読めます




世界中に数多く広まっている外来種の中で、特に恐ろしい存在とされるものの一つに、南米を原産とする褐色のアリ「アルゼンチンアリ」が挙げられる。
旺盛な繁殖力と外敵に容赦なく襲いかかる攻撃性を武器に、今や分布は南極以外の全ての大陸に広がっている。
当然日本でも勢力は広がり続け、今や首都圏をもテリトリーに加えている。
その被害は生態系のみならず人間の生活にまで及び、もはや根絶は不可能という事態にまで陥っている……


……が、最近になって、このアルゼンチンアリに手強いライバルがいる事が分かってきた。

その名はオオハリアリ(Pachycondyla chinensis)。名前の通り、こちらもアリの仲間である。

●概要

働きアリや女王アリの色はアリのイメージ通りの黒だが、脚の先端が褐色なのが目印。
一方で働かない事で有名な雄アリは働きアリと比べてかなり色が薄い
主に腐った木の中など湿った場所に巣を作り、昆虫やその卵を襲う肉食生活を過ごしている。
こういった木を餌としているシロアリを食べてしまったという報告もあるようだ。

このアリの一番の特徴は、名前の由来となったお尻の針。アリの先祖であるハチと同様に針には毒があり、自分の身を守るために使用する。
体長は僅か5mm程度だが、刺されると鋭い痛みが走り、しばらくの間持続する。ハチと比べると跡もあまり残らず、痛みもそう長くは続かない。
ただ、毒に対してのアレルギー反応が起きたり、中には何度も刺されて恐ろしいアナフィキラシー反応が起きてしまったという報告もあるので、注意が必要である。

なお、数年前に岡山でそっくりな新種が見つかっている。こちらはオオハリアリと比べて巣が小規模らしい。


●外来種として

そんなオオハリアリだが、現在北アメリカでは外来種として問題となっている。

外来種と言うのは在来種を追い出し、勢力をどんどん拡大していくというパターンがお約束なのだが、こちらもご多分に漏れず、
1930年代に初めて確認されて以降、元々住んでいたアリを次々に減少させたり、餌となる昆虫を食い荒らしたりして生態系にダメージを与え続けている。
勢力は現在も拡大を続けており、今やあのニューヨークにも近づいているとか。

さて、そんな北米大陸には、例のアルゼンチンアリも勢力を広め続けている。
前述の通り、こちらも次々に在来種のアリを皆殺しにし、生態系はおろか人間たちへの被害も深刻だ。
一度侵入されたが最後、その地域は完全にアルゼンチンアリに占拠されてしまう……

……のだが、そんなアルゼンチンアリにも弱点がある。
名称の通り、このアリは南米大陸の暖かい地域が原産なのだが、その割には寒さへの耐性が強く、冒頭にも述べた通り日本にもその勢力を広めている。
とは言え、さすがに寒すぎる場所だと少々パワーダウンしてしまうようだ。

一方のオオハリアリの原産地はと言うと、熱い所から寒いところまで様々だが、冷え込むと氷点下にまでなってしまう事もある。
そのせいもあってか寒さは慣れており、アルゼンチンアリがぶるぶる巣の中で籠っているのを尻目に積極的に活動が出来るのだ。
そして、このような寒い地域では図々しくアルゼンチンアリの巣の横に住居を構えるわ、アルゼンチンアリの働きアリを蹴散らすわ、有利な立場になっていると言う。

こんな風に書くと頼もしそうな存在なのだが、この両者の戦い、決して喜ばれるものではない。
両者とも結局は外来種であり、巻き添えを食らうのはその土地で長い年月をかけて創り上げられた生態系、
そして根絶もできずに彼らの被害に悩まされる事となる人間たちなのだから。



●日本では……?

……ここまで読んできて、日本での被害を心配してしまう人も多いかもしれない。 

残念ながらオオハリアリに刺されたと言う報告はいくつも確認されており、小屋や風呂、庭の植木鉢の中などに巣を作られてしまったというものもある。
過去には材木に紛れこんで鉱山の地下深くに侵入し、そこで大繁殖してしまった事も。
いくら屈強な鉱山の男たちでも、アリたちの凄まじい痛みには耐えられなかったようである。
他にも信号機の中に入り込んで回線をショートさせたり、被害は大小様々あるようだ。

対策としては、オオハリアリが大好きな食べ残しや食べ屑を掃除し、食べ物もしっかりと保管する事が挙げられる。
湿気を取り除くのも良いかもしれない。もし家の中や家の近くに巣を作られてしまった時は、毒餌や薬剤処理が効果的なようである。

一方で、前述の通りシロアリを食べてくれるという良い一面もある。
ただそれは、逆に言うとシロアリがいる場所ではオオハリアリの被害も起きやすいという事。やはり注意が必要なようだ。



 ……と言うか、実はこのオオハリアリの原産地は、なんと東アジア圏内なのである。
しかも、北アメリカに侵入して勢力を広めている一群は、元を辿れば 日 本 が 原 産 地 だと言う。
つまり現在、北米大陸では日本代表と南米代表、最強級のアリが大戦争を繰り広げているのである。


オオスズメバチと言い、このアリと言い、日本には恐ろしい力を秘めた生き物がまだまだ潜んでいるかもしれない……。



日本の生態系やっぱりぱねえと思った人は追記・修正お願いします。



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  • スズメバチといいコイツといい、日本の生態系どうなってんだよ、人外魔境すぎるだろw -- ムチャゴロウ (2013-06-17 11:29:40)
  • まあなぁ。春夏秋冬四季折々の云々つったら聞こえはいいが、要は一年間に4回も気候が変動するんだ。そんな環境下でホイホイ繁殖できる生物なら、そりゃ外来種となった時にヒャッハーすんのも無理ないわな。 -- 名無しさん (2013-08-29 05:20:42)
  • よく考えると世界有数の世紀末環境だよな。日本は修羅の国だったのか。 -- 名無しさん (2013-08-29 07:28:25)
  • こいつのコロニー見つけたけど女王がINEEEEE! -- 山梨県産 (2013-08-29 17:22:35)
  • 日ノ本いいとこ一度はおいで、住めば都の常世の楽園――ただし人間に限る -- 名無しさん (2013-08-30 00:58:02)
  • 頑張ってアルゼンチンアリを駆逐して欲しい -- 名無しさん (2013-11-12 13:51:01)
  • 大きさという点じゃ他の国の虫には劣るけどどうしてこう殺傷能力に優れた虫がわんさといるんだ日本は -- 名無しさん (2014-01-12 13:27:52)
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