SCP-1990-JP

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SCP-1990-JP - (2017/10/27 (金) 18:58:42) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2017/10/27 (金曜日) 17:44:00
更新日:2023/06/22 Thu 20:39:35
所要時間:約 5 分で読めます



SCP-1990-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「The SCP Foundation」の日本支部によって生み出されたオブジェクトの一つである。
項目名は『幸せのバラ』。オブジェクトクラスは「safe」に指定されている。

SCP-1990-JPは、強大な現実改変能力を秘めた薔薇だ。色は、薔薇愛好家たちの夢である濃い青色。
青い薔薇といえば、2004年に日本のサントリーフラワーズとオーストリアの植物工学を専門とする企業であるフロリジーン社が共同開発し、2008年から【アプローズ】という商品名で販売されている物が存在しているが、それですら実質的には『青みがかった紫』の薔薇であり、SCP-1990-JPのように完全な青色の薔薇は存在していないのが現状である。
しかし、SCP-1990-JPは【アプローズ】のような遺伝子改良が施されていないにも関わらず、非常に美しい青色をしているのだ。

これだけでも十分にSCiPの要件を満たしているSCP-1990-JPであるが、この薔薇の持つ本当の異常性はこんなものではない。
こんな生易しい物ではないのだ。

この薔薇の真なる異常性は、この薔薇に人間が接触してしまった際(財団では薔薇と接触してしまった対象をSCP-1990-JP-1と呼称)に発現する。
接触したその瞬間から、最短で七分、最長で四週間というランダムなタイミングでSCP-1990-JP-1がこの世から消失してしまうのである。

その後、一度消えてしまった人間は世界のどこかに再出現する事になるのであるが、その時にはSCP-1990-JP-1は薔薇に接触する以前とは全く異なった経歴とスキルを獲得した別人とも呼べる存在に生まれ変わっているのである。

なお、再出現した元SCP-1990-JP-1にインタビューを試みてみたところ、薔薇に接触する前についていた仕事や人間関係は《寝ている間に見た夢》であると認識されていることが判明している。

この異常性のカラクリは、SCP-1990-JPに触れる以前のSCP-1990-JP-1と接触し、会話をした経験のある人物にインタビューを行った事で判明した。
実は、この薔薇は接触した人間が心の内に秘めていた【このような人生を送りたかった】という願望を、対象の過去を書き換えることで具現化させる一種のマジックアイテムのような存在だったのである。

SCP-1990-JPに触れる以前のSCP-1990-JP-1と接触していた人物の証言によると、CP-1990-JP-1の本来の仕事や人間関係に関する記憶はSCP-1990-JP-1と接触した事のある人物以外の記憶からは失われ、SCP-1990-JP-1が変化後の職に就いていることを不自然ではないと感じるようになるそうである。

また、SCP-1990-JP-1に子供が存在していた場合、その子供は存在そのものが消滅し、SCP-1990-JP-1の記憶からも抹消されていることが確認されている。

現実改変という異常現象を熟知している財団という組織だからこそたどり着くことのできた真実、であるが…何かイヤな予感がしてきたぞ。


財団との関わり

このSCiPが財団に認知されたきっかけは、【千葉県の某所に真っ青な薔薇が咲いていた】というネット上の書き込みであった。
記事の冒頭でも書いたように、青い薔薇は21世紀の遺伝子工学をもってしても完成させることのできなかった存在である。
新手のSCiPが出現したと判断した財団は、すぐさま薔薇の咲いている場所を突き止めてエージェントを派遣した。

薔薇そのものは問題なく財団によって回収され、Anomalousアイテムとして保管されることになったのであるが、それから二週間後に千葉県警に「青いバラに触った友人が消えた」という通報がもたらされ、しかも薔薇の回収に携わったエージェントが謎の消失を遂げてしまったのである。
財団が調査を開始したところ、なんと財団が薔薇を回収するよりも前に七人もの人間が問題の薔薇に接触し、SCP-1990-JP-1となっていたことが判明した。
そして、SCP-1990-JP-1の周辺人物に対して行ったインタビューの記録を総合することにより、SCP-1990-JPの真なる異常性とそのトリガーとなる事象が判明したのであった。

なお、情報漏洩を防ぐため、SCP-1990-JPに触れる以前のSCP-1990-JP-1と接触していた人物に対するAクラス記憶処理が行われている。

インタビュー記録

この記録は、【財団との関わり】の項目で言及した、《薔薇の回収に派遣された財団の元エージェント》に対するインタビューの記録を一部抜粋したものである。
前述したように、彼は薔薇を回収してから二週間後に消失し、のちに再出現したのであるが、その時の彼は《財団の職員ではなく野球選手として人生を歩んでいた》と記憶と過去が改変されていた。

+ 対象: SCP-1990-JP-1 〔元エージェント███。現在は野球選手をしている。〕
インタビュアー: ███博士

付記: SCP-1990-JP-1には雑誌の取材としてインタビューを行っているため本名で呼びます。

博士「今回お話を聞きたいのは何故███さんが野球選手になったのか。ですが…」
SCP-1990-JP-1:「何故なったのか…ねぇ…昔っから野球選手になりたいなって夢があったんだ。ああそうそう…あの日から…」
博士「あの日…と言いますと?」
SCP-1990-JP-1「あの日…俺はなんか具合悪くて寝てたんだ。んで夢を見た。白衣着た兄ちゃん姉ちゃんと一緒に働いてるんだ。そうそう俺はエージェントなんて言われてたっけ…」
博士「 …もう少し詳しく聞かせてもらってもいいですか?」
SCP-1990-JP-1「ああ。構わないよ。んでその日から毎日寝るとその夢を見るんだ。███研究員って言ってたっけかな。その人と話したり…███博士って呼ばれてる人もいた。まあとにかく少し不思議な人たちと俺は仕事をしていたんだ」
博士「それは奇妙ですね」
SCP-1990-JP-1「だろ?んでその夢を見るたびに『自分なら出来る』なんて妙に自信が湧いてきてな。んで高校になると甲子園に出れるぐらいまでに上手くなっていたんだよ。そこで優勝することができて…スカウトされたんだ。嬉しくてたまんなかったなぁ…」
博士「それはよかったですね」
SCP-1990-JP-1「ありがとな。んでまあその日の夜…それが最後になったんだが…夢の中で青いバラを回収しに行けって言われて回収して持ち帰ったんだ。その直後…突然真っ暗になった。さっきまで見てた景色も、何も無くなった。でも意識だけははっきりしてる。そしたら女の声が聞こえて…『夢が叶いましたね』って言って…んで目が覚めたんだ。それからあの夢は一切見てないんだよな…」
博士「成る程。実に興味深い話ですね」
SCP-1990-JP-1「 …でも、最近思うんだ。確かに夢は叶った。幸せだ。だけど何かこう…それ以上にもっともっと大事なものを失った気がするんだ…ただの思い込みすぎだろうけどな…」

備考:当人が夢と思っているとはいえ、財団の存在をべらべらとしゃべってもらっては大変なため、インタビューの後にSCP-1990-JP-1にはAクラスの記憶処理が施されている。


次の記録は、財団が行った実験で過去が改変されたDクラス職員、D-52882に対して過去改変が発生した後で行われたインタビューの抜粋である。
実験前のD-52882は、罪を犯して財団のお世話になる前は料理好きのサラリーマンであり、愛すべき妻と子供がいたことが確認されている。

+ 対象: SCP-1990-JP-1〔D-52882〕
インタビュアー: ███博士

付記: 実験後██県██市において料理店を経営していたSCP-1990-JP-1(D-52882)に雑誌の取材と称してインタビューをした記録です。

博士「ところで、最近不思議な夢を見たことはありませんか?」
SCP-1990-JP-1「え?なんでまたそんなこと聞くんだ?まあ確かに見たな」
博士「詳しく聞かせてもらってもいいですか?」
SCP-1990-JP-1「構わねえよ」
博士「ありがとうございます」
SCP-1990-JP-1「たしか…少ししか覚えてねえけどな。普通にサラリーマンやっててさ。嫁みてえな人と仲良く暮らしてる夢だよ」
博士「…子供は…居ませんでしたか?」
SCP-1990-JP-1「子供?居なかった気がするな。というか俺子供嫌いなんだよな。手間かかるしよ」
博士「なるほど。ありがとうございます」

備考:子煩悩であったはずのD-52882の記憶から、なぜか子供に関する記憶だけがスコーンと抜け落ちており、改変された現在の人生においても子供の存在は影も形も無かった。


その下に遺体が埋まっていたのは桜だけではないのかもしれない

調査の一環として、SCP-1990-JPが最初に発見された場所の地面を掘り返してみた結果、なんと土中から無数の約10歳前後と思われる子供の遺体が発掘されてしまった。
遺伝子鑑定の結果、その全員がSCP-1990-JP-1となってしまった人物の何れかと親子の関係であったことが判明している。

財団は、薔薇が接触した人間の過去を改変する過程で、存在そのものが抹消されてしまった子供を改変の代償として奪い取って養分にしており、更に子供への愛情を「子供が嫌い」と最悪な上書きをするのではないかと推測、更なる調査を続行中である。


類似するSCiP

過去に干渉することで、対象となった人物の人生を書き換えてしまうSCiPはこの薔薇以外にも存在している。

SCP-2140(通称・過去改変画像)
対象に目視させる事により、《あなたは昔から財団に所属していました、だからあなたは今でも財団に所属している職員です》という財団にとって実に都合の良い形に過去改変を引き起こしてしまう財団謹製のSCiP。
元は紀元前に存在していた【ダエーバイト文明】という人外の存在が支配していた文明の遺物であったものを、財団がリメイクして生み出した存在である。

SCP-646-JP(通称・過去改変協力者)
特定の電話ボックス内に添付された番号に、電話をかけることでのみ会話することが出来る怪人。
如何やら時間移動の能力を持っているらしく、彼自身の能力の及ぶ範囲でありとあらゆる手を尽くして対象の過去を改変してくれる。




追記・修正は長年の夢がかなった方にお願いします。
貴方のご成功、心より祝福いたしますね。

…でも、本当にこれでよかったんですか?


SCP-1990-JP – 幸せのバラ
by AMADAI
http://ja.scp-wiki.net/scp-1990-jp
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