注音符号(ちゅうおんふごう)
『言語学大辞典術語』
中華民国になって,中国政府が制定した字音を示す音標記号.はじめ,民国2年(1913)に,国語運動の一環として読音統一会を設け,それが,字音の表記のために考案した音標記号で,民国7年(1918)に公布した.最初は「注音字母」と称したが,のち(1930)に「注音符号」に改めた.〈表〉に示すように,頭子音を表わす声符が21,韻を表わす韻符が16からなっている.中国では,古くから反切とよばれる表音法が行なわれていた.これは,よく知られている2つの文字をもって,求める字の音を示す方法で,原則として上の字で頭子音すなわち声母を表わし,下の字で韻母を表わした.そこには,声母や韻母の分析的認識はあったが,その声母や韻母を抽出してこれを記号化することはなかった.注音符号では,その記号化が行なわれているが,それは西欧のアルファベットの影響によるものである.
中華民国になって,中国政府が制定した字音を示す音標記号.はじめ,民国2年(1913)に,国語運動の一環として読音統一会を設け,それが,字音の表記のために考案した音標記号で,民国7年(1918)に公布した.最初は「注音字母」と称したが,のち(1930)に「注音符号」に改めた.〈表〉に示すように,頭子音を表わす声符が21,韻を表わす韻符が16からなっている.中国では,古くから反切とよばれる表音法が行なわれていた.これは,よく知られている2つの文字をもって,求める字の音を示す方法で,原則として上の字で頭子音すなわち声母を表わし,下の字で韻母を表わした.そこには,声母や韻母の分析的認識はあったが,その声母や韻母を抽出してこれを記号化することはなかった.注音符号では,その記号化が行なわれているが,それは西欧のアルファベットの影響によるものである.
〈表〉
また,中国人は,反切以来,音節の分析を頭子音(すなわち声母)と,それ以後の部分(すなわち韻母)の2つに分ける二分法をとってきた.『韻鏡」などの韻図も,声母を縦の軸に,韻母を横の軸にとって,座標で音を示す図表であった.注音符号でも,その線に沿っているが,韻母の構造を,さらに補助母音(介母)と音節核の主要母音+末音(韻尾)に二分し,介母の記号化を行なって,韻符の中に独立させている.ただ,主要母音と末音の結合を区分していないのは,伝統的な表音法を継承しているのである.