この身体(モード)になったからこそ、見えるようになったことがある。
 それは敵の強さ。人間の身ではどれほど鍛えても認識し切れない力量の精緻。
 新たな視点を得たその上で、雪村鉄志は改めてこう結論づけた。
 英霊とは、サーヴァントとは――英雄カドモスとは、怪物であると。

 閃く槍、竜殺し。
 神の眷属を貫き穿つ、原初の栄光。
 ひとたび振るえば岩も鉄も、竜さえ穿ち抜く一撃が、冗談のような神速で迫る。

『どうかお気をつけて、機神装甲は万能ではありません。あの英霊の全力を受ければ、中身ごと貫かれます!』
「はッ! そんなことだろうと思ったぜ、何事も過信は禁物だよな……!」

 鉄志は、驕りや軽率とは無縁の男だ。
 彼は、それができる若さというものをとうに失っている。
 妻を喪った時か。娘を失った時か。今となってはもう定かでないが、皮肉にもその挫折が彼を戦士としてより強かで現実的に変えていた。

「――頼むぜ嬢ちゃん、武器をくれ。そういうモノがあるんだろ、この装甲(カラダ)にはッ」
『あい・こぴー!
 英霊外装鍛造機能、コード:アルケスティスより、ヘラクレス実行……!』

 それは、神の身代わりに選ばれた女の悲劇。
 該当する英雄は、半神半人。神の栄光。

 ――鉄志の腕に握られたのは、一本の棍棒だった。
 無骨と侮るなかれ。かの英雄はこれの一振りで山を崩し、海峡を作り、数多の栄光を欲しいままにした。
 鉄志はこれを速やかに振るい、自分の命脈を断たんと迫っていたカドモスの槍を迎え撃つ。
 人間を超えた膂力と反応速度、そして英霊の外装があり得ない打ち合いを可能とする。

「外装定着(インストール)――――完了(アイ・コピー)」

 ただ受け止めるだけでは終わらない。
 鉄志は身を低く構えながら、地を蹴り前へ出る。
 そうして振るう棍棒の一撃。顎、蟀谷、眼球、頚椎、急所以外を狙う気は端からない。
 何故ならこれは武術ではなく戦闘術。端から敵を調伏することだけを目的にしているのだから、流儀などという無駄に用はないのだ。

 棍棒を扱うにあたって、鉄志がイメージしたのは警棒だった。
 特務隊では通電機能や催涙ミストの噴射機能、果てには意識断絶の術式を込めたものまで幅広く使われていたが、此度のは只々シンプル。
 殴って当てれば、どんな化け物でも無事では済まない。
 そのシンプルさが今はありがたい。成り立ての超人でも、英雄の外装を遺憾なく扱いこなせる――!

「言うに事欠いてヘラクレスとは。届かぬ壁に挑むのだ、せめて験でも担げばいいものを」

 されど相手もまた英雄(かいぶつ)。
 鉄志の放つ打撃には、一切の無駄がない。
 速やかな制圧の原則とは先手必勝。
 そうでなくても畳み掛けることをこそ、いつかの特務隊は是としていた。

 それを、ことごとくに捌いてのける。
 見切れないほど速くはない。
 しかし彼の強さもまた、鉄志と同じ。
 恐ろしいほどに無駄がないのだ――武の理論値というものを、カドモスは息をするように叩き出してくる。

「幼子を背負って戦うには、些か縁起が悪かろう。
 ずいぶんと子供を殺すのが上手そうな名ではないか、なあ」
「ッ……! 余計なお世話だぜ、英霊……!」

 鉄志も気圧されなどしない、一撃弾かれたなら即座に次を用立てる。
 とにかくカドモスに攻撃へと移られたくなかった。
 それを避けるためには手数こそが肝要。それ以上の最良などない。
 が――

「ならば儂はこう言おう。賢しいぞ、人間」

 その最良を簡単に超えてくるからこそ、英霊だ。

 槍をくるりと曲芸のように回転させ、あろうことか空中に投げ上げる。
 予想を超える行動にも鉄志は怯まないが、どちらだろうと関係なかった。
 回転する槍の柄が、今まさに放たれた棍棒を打ち据え軌道をずらしたのだ。
 途端に外れる狙い、崩れるバランス。わずか一瞬の隙をも、王の慧眼は見逃さない。

「同じ土俵に立てたと思うたか。アレスの竜はもっと狡猾だったぞ」
「が、ァッ……!?」

 事もあろうに、此処で鉄志の喉笛を打ち抜いたのは拳。
 徒手空拳であった。竜殺しの槍を持つ英雄が、素手の拳を使ったのである。
 しかしこの変則は、的確に鉄志を窮地に追い込んだ。
 装甲がなければ喉を破壊され死んでいただろう衝撃を堪えながら地を転がり、体勢を立て直した時にはもうカドモスがそこにいる。

「う、おおおおおおッ!」

 ちょうどそのタイミングで空から王の手に戻ってきた鉄槍。
 まるで槍自身が意思を持って王に合わせているみたいに、つつがなく武装はあるべき場所へ帰り。
 得物を取り戻したカドモスの右腕は、地を這う不敬者を貫くべく処刑を振り下ろした。

(バケモンかよッ――ああいや、バケモンだったなぁ……!!)

 白刃取りなど試みる気にもならない。
 彼我の実力差を忘れるな。自分は、一個体として明確にこの英雄に劣っている。
 欲は掻かず、博打は最小限に留め、虎視眈々と制圧を狙え。
 すぐにヒートアップしたがる脳を理性で抑え、鉄志は棍棒で地を叩いた。
 生じる衝撃波が彼を吹き飛ばし、無様だが回避を成立させる。
 反動は機神装甲の強度に物を言わせ、無視。その上ですぐに食らい付く。そうするべく、また地を蹴って突貫する。

(夢なんて見るなよ、雪村鉄志――自分がどれだけ無力な凡人かなんてコト、てめえは嫌ってほど知ってんだろ……!?)

 魔術師というのは、恐ろしい存在だ。
 鉄志に言わせれば、生きた人間が一番怖いなんて大嘘である。

 人の理解が及ばないモノは、怖い。
 それが何であれ、ただの力であれ、ひどく恐ろしい。
 奴らは平然とこちらの予想を超えてくる。
 昨日まで想像もしなかった、寝入りばなの空想よりよほど恐ろしい非日常を当たり前みたいにけしかけてくる。
 そういうモノと戦う上で必要なのは、兎にも角にも驕らないこと。
 自分が悪の魔術師を狩るハンターだなんて夢想するな。そんなものは、教会の魔人どもにでも任せておけばいい。

 人間として、人間のまま、超常なるモノに勝ちたいのならば――

「ッづ、ぉおおぉおぉぉッ!!」
「……ち」

 ただ愚直に、どこまでも堅実に、食らいつけ。

 勇気と無謀を履き違えるな。
 マキナには悪いが、己は英雄なんて大した生き物にはなれない。
 だから冷静でいろ。計算をしろ。それが長生きの秘訣だと、部下へ冗談を飛ばしたこともあったろうが。



 ――分析。
 カドモスは、既にこちらを殺すべき敵へ格上げしている。

 だが、その認識は決して対等を意味しない。
 彼は王だ。傲慢を美徳とし、君臨を是とする治世者だ。
 だからこそそこには必ず、言ってしまえばこちらに対する侮りがある。
 明確に格下と踏んでいるからこそ、避け得ず生まれてしまう不足。
 戦士としてではなく、王として在ろうとするが故の避けられない陥穽。
 戦い方に一切の無駄がないのなら、突くべき余白はもうその"在り方"以外にはないと断じた。



「そうまで惨死を望むか、下郎」

 鉄志の猛攻は、カドモスにとってそれほどの脅威ではなかった。
 確かに握られた棍棒の攻撃性能は特筆に値する。
 三騎士クラスのサーヴァントであり、紛うことなき英雄の格を有する己にさえ通じるだろう。
 だが、使い手が悪い。人の世でたかだか二桁年磨いた程度の戦闘術では、どうやったって本当の戦争と神秘を知る古代の英雄には届かない。

 にも関わらず、鉄志が此処まで命を繋げている理由。
 それは端的に、先に述べた彼のスタイルに起因するものであった。

「利口とは言い難いな。せめて逃げの一辺倒に徹しでもすれば微かな勝算もあるだろうに」
「は。流石は王様だな、庶民の感情なんて分かんねえか?」
「当然よ。王とは統べ、見下ろすモノ。それとも貴様は、まだ己の意地が王たる儂が傾聴するべき事象と思い上がっているのか?」

 攻め過ぎない。
 リスクが高すぎる道には走らない。
 たとえ自分の間合いでも、上記のルールに抵触するなら躊躇なく臆病風を吹かす。

 言うなれば、燃え上がるような意欲とは無縁の戦闘スタイル。
 これが、カドモスに手をこまねかせる。
 もしも鉄志が勇気に溢れ、それを押し通そうとするバイタリティに溢れた若者であったなら、とっくに戦いは決着していただろう。
 だが今の鉄志はそうではない。故に彼は、老いて尚強さを維持し続けるテーバイの英雄王と戦い続けられる。

「さぁな、この国は民主主義が原則だ。天皇陛下だって今じゃ国の象徴になって久しい。
 そんな平和な国で育った俺には、王様の気持ちなんてもん、正直とんと分からねえよ」

 カドモスの老いた腕が繰り出す、無数の槍撃。
 すべてが致死。無策に受ければそれだけで敗北が確定すると言っても過言ではない、王の死刑宣告。
 これを鉄志は、とにかく防ぐ。避ける。地面を転がって、漆黒の甲冑を土で汚すことさえ厭わない。

「だがな――」

 これをカドモスは、薄汚い鼠、と思う。
 神々に振り回され、前線で戦っていた頃の彼でさえ同じだろう。
 されど逃げる鼠ほど、捕まえるのに難儀する生き物もいないのだ。
 散る火花が、またもカドモスが仕留め損ねた事実を物語る。

 カドモスの槍を、栄光(ヘラクレス)の棍棒で凌ぎ、凌ぎ、凌ぎ、凌ぐ。
 かの大英雄の勇猛とは縁遠い、堅実謙虚の一辺倒。
 しかしその姿勢こそが、あり得ない奮戦という結果を成し遂げる。

「目の前でガキ苛められて澄まし顔してる奴なんてのは総じてクズだ。それだけは王様も、覚えといた方がいいと思うぜ」

 歯を砕けんばかりに食いしばり、力任せに槍を押し返す。
 ハイリスクは避けるが、許容可能なリスクなら受け容れるのも吝かではない。
 この曖昧な判断基準もまた、未だ驕りを捨てない老王の調子を狂わせる。

「……そうか」

 死物狂いで生み出した一瞬の隙へ、堂々踏み入っていく鉄志。
 棍棒の一撃が、此処で初めてカドモスの頬を掠めた。
 滲む血は、王の血。これが持つ意味を理解できない蒙昧なら、此処までの段階でもう百度は死んでいる。

「やはり聞くに値しない戯言だった。
 偽りの機神よ、その契約者よ、貴様らはひどく儂の機嫌を逆撫でする。
 もはや刎頸でさえ贅沢だ。ただ速やかに、この世から消えよ」

 途端に倍増しで増幅する殺意。
 装甲越しですら肌を刺し、骨まで軋ませる。
 生唾を呑み込まずにはいられない。
 これが英雄。これが、英霊。
 こんなもの――、人間が関わっていい存在であるものか。

 カドモスの槍が、再び真に構えられる。
 そう、真にだ。この構えを、既に鉄志は知っている。……既に、見ている。
 だからと言って脅威度は、ほんのわずかたりとも減少しない。

『っ――ますたー! お気をつけください、この構えは……!』

 マキナの警鐘が響くのも無理はない。
 無骨で、ともすれば陳腐とさえ言えるだろうただの鉄槍。
 そこに横溢する魔力は、決してそう大したものではない。
 いや、だからこそ恐ろしいのだ。これを警戒しないという選択肢が一瞬でも生じてしまう事実が、もう何より恐ろしい。

 これなるは、竜殺しの逸話の具現。
 カドモスという男が、如何にして英雄と呼ばれ、王になったのか。
 そのサーガを技を以って語り聞かせる、至高にして至上の一刺し。

 児戯のように放った時でさえ、全力で臨んだマキナを打ち破った。
 そんな怪物が、確かな殺意を秘めて繰り出す宝具。
 もし対処を誤ればどうなるかなど、計算するまでもないだろう。

「……なあ、王様よ。ひとつ聞かせちゃくれねえか」

 退くには遅い。
 受けて立つ、以外の選択肢はとうにない。
 されど、迎え撃って勝てる道理がないのもまた明白。

「あんた、そんなに悪い王様なのかい?」
「……何?」
「俺は正直、カドモスって言われてもピンと来ねえ。
 あんたのことだって話聞いてからスマホで調べたくらいだ。
 だから、そんな的を射たことは言えねえよ。けど、実際に会って分かったことがひとつだけある」

 ならばどうするか。
 答えは既に出ている。
 マキナにも伝えてある。
 マスターと英霊の間には、念話という独自の意思疎通法が存在する。

「あんた――ちょっと演技が過剰すぎるんじゃねえの?」

 鉄志が装甲の下でへらりと笑いながら告げた言葉。
 それは、なんてことのない軽口だ。
 だがその言葉は、此処まで彼が繰り出したどの攻撃よりも如実に。

「――――――――」

 一瞬。
 ほんの、わずかに一瞬。
 これより宝具を解き放とうとしていた英雄の裡から、動揺を引き出した。
 奇しくも、先ほどマキナがやってみせたように。
 普通なら二度使える手立てではない。何故それが効いたのかも、鉄志には分からない。

 警官というのは、悪と向き合う仕事だ。
 犯罪者はあの手この手で自分の悪事を隠そうとする。
 だから人の心が分からなければ勤まらないし、必然、この仕事をしていると人の感情の機微に対して敏感になる。

 今吐いた言葉は、決して単なる当てずっぽうではないし、マキナの成果に倣おうとしたわけでもない。
 鉄志が、カドモスという男に抱いた率直な印象だ。
 常に傲慢。他者を見下し、王としてそれらと臨む。

 そう、まさに、過剰なほど。
 見抜くのは難しくなかった。
 むしろ、容易かったと言ってもいい。
 これなら現代の詐欺師の方が、もう幾らか演技が上手いだろう。

 だからこそ二度目の空隙は成立し。
 この瞬間に、雪村鉄志は。


「行くぜ――――英雄王。心の準備はできてるか」


 此処まで大事に大事に守ってきた賭け金を、全額ベットする。
 特務隊の警官として、博打を打つようでは優秀とはとても言えない。
 だが今の鉄志は、もうとっくに警官ではない。
 特務隊は存在せず、此処にいるのはひとりの草臥れた男。

 であれば。
 時と場合に応じてセオリーを放棄するというギャンブルにうつつを抜かしたって、誰にも責められやしないのだ。


『英霊外装、フォーム:ヘラクレス。
 時の氏神は、掲げる慈悲を此処に示す。
 仮想宝具起動回路励起――All's well that ends well(終わりよければ全てよし)!』


 そして彼のサーヴァントは、理屈の放棄を是として赦す。
 此処に起動する、英雄の外殻、その真髄。
 雪村鉄志は神機融合を以って人間を超え、この瞬間を以って神話に至る。

 カドモスが、目を瞠った。
 信じ難いものを見る眼だった。
 鉄志が駆けるその速度が、数秒前と比にならない。

「馬鹿な……これは……!」

 まさしく、英霊の域ではないかと。
 零れる驚愕が、繰り出される理不尽を物語る。
 ヒトが神と混ざり合い、あまつさえ英雄をも驚かす。
 まさにご都合主義。終わりよければ全てよしを地で行く、大団円の具現。





「コード:ノウブル。是――――『射殺す百頭(ナインライブズ)』」





 瞬速の踏み込み。
 次に繰り出されるのは、またも急所狙いの一撃だった。

「ッ……!」

 当然カドモス、これを防ぐ。
 だが、これは一振りでは終わらない。

「ぬ、おッ……!?」

 英霊の視覚でさえ、線のように見える連撃。
 瞬きの暇もない無数の殺意が、攻勢に転じる暇を与えず殺到する。
 当然、もはやカドモスに宝具を解放する暇などなかった。

 いやそれどころか、防御に徹するのが精一杯。
 この瞬間、初めて王の瞳から驕りの色が完全に消え失せる。
 眼前に迫る男(にんげん)を――王が、対等な敵として認識する。

 しかしそれは、認識を改めるにはあまりに遅すぎた。

 槍が動く。
 槍が防ぐ。
 アレスの竜を殺した英雄の武勇、翳りなく。
 だというのに止まらぬ、人間の連撃。栄光の進撃。

 神の血すら宿さず。
 神との縁だけを寄る辺に、雪村鉄志はこれを成す。
 英雄カドモスに、今この瞬間だけ後塵を拝させる。

「貴、様――神秘も宿さぬ人間ごときが――!」

 カドモスは、当然のようにその屈辱を許容しない。
 迸る怒気。浮き出る血管が老王の憤激を物語る。
 確殺を狙う連撃を防ぐ槍に力が籠もり、猛り立ちながらも冷静に戦闘論理が構築されていく。

「儂という難業を踏破できるなどと、思い上がるな……!」

 是(これ)、射殺す百頭。
 神速神殺の九連撃。
 本家本元のヘラクレスが繰り出したなら、本物の神だとて斬り伏せるだろう極みの絶技。

 だが、ひと目で分かるほどにこれは完璧とは程遠い。
 あくまで眼前の人間は、ヘラクレスを僭称するただの人間でしかない。
 その脆弱な素体に、機神の機能を用いて強引に外装へ該当する英雄の情報を転写。
 装甲の性能に物を言わせて物理的限界を押し破り、強引に絶技を引き出しているだけだ。

 その事実を冷静に認識した上で、カドモスは動くことを許されぬままに躍動する。
 つまりは、神速の九発をすべて防ぐという離れ業。
 絶技には絶技。己は紛い物の英雄などに劣らぬという自負と、それを裏打ちする確かな技量経験がその難業を成し遂げさせる。
 七撃を無傷にて防ぎ切り、八撃目にして初めて被弾を許容する。

「ぐ、ぅ…………!」

 腹部に着弾した棍棒。
 内臓の軋む感覚と共に喀血するが、被弾はしていても直撃ではない。
 逆に言えば、カドモスをして直撃は不味いと判断させる威力がそこには備わっていた。
 身体をわずかに後ろへ反らすことによって可能な限り威力を殺し、躱し切れない一撃を屈辱の中で許容。

「――舐めるなよ、儂はカドモスぞ!
 これしきの窮地、見飽きておるわ!!」

 あえて被弾を是とすることで、対応不能を対応可能に変える。
 振るう槍の穂先で、連撃の終わりたる九番目の打擲を凌いだ。
 ヘラクレスの神話はこれにて終幕。
 人間の背伸びでは、所詮どうやっても真の英雄は超えられない。

「……無力を噛み締めて死ぬがいい、人間ッ!」

 希望は転じて絶望へ。
 大団円は成らず、現実は理想を超えてくる。

 だからこそ、雪村鉄志は無言。
 カドモスという壁の大きさを、寄せ来る悲劇の強さをしかと噛み締めながら、彼は――

「……約束したもんな、嬢ちゃん」
『はい。はい! 当機は――それを、覚えています……!』

 退かない。
 棍棒を、その場で取り落とす。
 一見すると不可解極まりない行動。
 が、合理で動く老王を貫くにはこれが最善と、彼は思考の果てにそう判断した。

「この爺さんの横っ面、一発ぶん殴るってよ――!」

 カドモスが先にやったのの、意趣返しのように。
 武器を捨て拳を使うという不合理で、合理を貫く。
 放たれる、漆黒の拳。神機融合、男と少女を一体にした鉄拳。
 その一撃は、確かに――老いたる王の顔面へ、真横から、迫って――















「見つけた」

 ――――声、が。

「お前ね、救済機構」

 響いて――――














 ――――世界のすべてが、星の輝きに塗り潰された。



◇◇



 雪村鉄志が命を拾った理由は、マキナの咄嗟の機転があったからに過ぎない。
 第二宝具展開中、マキナは創り上げた〈英雄〉の補助に全力を費やす。
 だが、あくまでもこの宝具は英霊デウス・エクス・マキナの力。
 その気になれば〈英雄〉から装甲の主導権を奪取し、強引に自らの指示を遂行させることも一応、可能ではある。

 最初に星の落隕を悟ったのはカドモスであったろう。
 しかし次に認識したのは、間違いなく鉄志ではなく未熟とはいえ英霊であるマキナだ。
 対城級の宝具出力を感知するなり、マキナは一も二もなく独断での防御行動を実行へ移した。

 英霊外装、防御特化型。フォーム:アテネの起動である。
 これによって瞬時に身の丈ほどもある大きな盾を呼び出し、一瞬先の死を回避させたのだ。
 まさに九死に一生を得る機転。マキナの咄嗟の判断は彼女のマスターの命を繋いだ。
 が、単に命を繋いだからと言って――それで状況が好転するわけではない。

「が……ぁ、ア………………?」

 全身のすべてが、悲鳴をあげている。
 装甲越しでも分かる熱感は、もし目の前の盾がなかったら自分がこの状態であろうと熱死していたことを物語っていた。
 肺の酸素がない。呼吸するだけで喉笛が苦しげに哭き、末期の肺病患者のような聞くに痛ましい呼吸音を漏らさせる。
 無事を問うマキナの声すら、今の鉄志の耳には入らない。
 自分が今生きていること。何か、途方もない破滅が落ちてきたこと。
 そのふたつの事実を噛み締めるだけが、彼の脳では限界だった。

(な…………に、が――――――――)

 霞む視界を意地で鮮明化させる。
 戦略爆撃でも受けたように、変わり果てた周囲一帯の景色。
 カドモスの廃寺さえ今は瓦礫の山と化し、地下へ続く洞穴の入り口が口を開けている始末。
 そんな破滅的な光景の中にひとり立つ、奇妙な風体の少女の姿を、鉄志の両眼は捉えた。

「げ……凄いな、今の耐えるんだ……。
 うーん、やっぱりもうちょっと狙い絞った方がよかったかぁ……。二兎を追う者何とやら、って本当ね」

 英霊と呼ぶにはフランクな物言いだが、彼女の姿を一度見れば、誰もがその面影を脳裏から振り解けなくなるだろう。
 古めかしい民族衣装風の装束に、ホラー映画の怨霊宜しく無数の札を貼り付けて佇む少女。
 短い黒髪はまるで夜空の色を直接抽出して染めたみたいな、漆黒より尚冥い、美しい黒色を湛えていた。

 その手に握られるのは、一張りの弓。
 わずか一射にして戦況を激変させた御業が、この一張りと細腕から生み出されたものであるなど、誰が信じられようか。

「ま、いいや。どっちみち、なんか、思ったほど強くなさそうだし?」

 はあ、とため息がひとつ。
 気の抜けたようなその音を、鉄志の鼓膜が捉えた次の瞬間。
 "敵"は、未だ立ち上がることもままならず片膝を突いた鉄志の眼前にいた。

「ぐ、あ…………!」
『ますたー!!』

 いけない。まずい。やばい。
 速やかに反応を――思考できたのはそこまで。
 思考を追い越す速さで放たれた膝蹴りが、盾越しに鉄志の身体を空中へとかち上げる。

 防御は成功した。
 鉄志の反応によってではなく、相手の攻撃の杜撰さで。
 どこか投げやりにも見える、武術というより喧嘩のような暴力。
 だがそれでも、如何に英霊外装の盾であろうとも、突き抜ける衝撃までは防げない。

 彼女がやったことが、鉄志には分かる。
 救世神の装甲によって底上げされた五感がそれを見抜かせた。
 ――"超高速で接近して"、"その速さを殺さないまま"、"蹴り抜いた"。
 要するに、とてつもないハイスピードで蹴り飛ばした。理屈としてはこれだけである。

「適当に何発か射てば死ぬでしょ。楽ちん楽ちん」

 着地の猶予を与えることなく引き絞られる、破滅の弓。凶星の光。
 弓矢の体を成していたのは引き絞る動作まで。
 放たれ、弓から解き放たれた途端、弓は闇色の光に変わって流星に化けた。

 何の冗談かと、マキナは解析結果に身体なき身で驚愕する。
 児戯のように放たれた一撃が、当たり前のように対軍以上の火力を秘めているのだ。
 それが音を遥かに置き去る信じられない速度で空中の鉄志へ迫ってくる。
 敵方いわく雑に放った一射でアレなのだ。狙いを絞ったなら、破壊規模を代償にどれほどの殺傷力が生まれるか考えるだに恐ろしい。

「マ、キナ……!」
『はいっ――背部スラスター起動、滑空による回避態勢へと移行!
 並びに英霊外装をコード:アルケスティスに置換。フォーム:ヘラクレスを再実行します……!』

 マキナのスキル、魔力放出(機構)。
 スラスターを用いた魔力のジェット噴射で強引に矢の軌道から逃れる。
 上空彼方で猛烈な爆発を引き起こした閃光を振り向いて仰ぐ余裕はない。
 更に言うなら、初体験の高速飛行に感じ入る余裕もだ。
 外装をアテナの盾からヘラクレスの棍棒へ戻し、戦闘態勢を再構築する。

 撃ち合いの土俵に対応できないわけではない。
 元が警官である鉄志には人並み以上の射撃の心得があるし、装甲には弓の外装が登録されている。
 にも関わらず鉄志も、そしてマキナもそれを選択しなかった理由は明快だ。

「避けないでよ。嬲り殺しは趣味じゃないんだってば」
「ッッ……!」

 単純明快。
 恐らくこいつには、速すぎて当てられない。

 当たり前のように空中、移動経路上まで浮上してきた星の弓手(アーチャー)に舌を巻く。
 カドモスはどちらかと言えば速度ではなく、完璧の域まで編み上げられた武芸で圧倒してくるタイプだった。
 だがこのサーヴァントは違う。速い、ただ速い。速度というその一点が、他者を寄せ付けないほど特化している……!

 番え放たれた矢の回避には常に全力を費やす必要がある。
 カドモスの槍以上に被弾を許されない状況に脳裏がひりつく。
 が、怯えているわけにはいかない。これを前に悠長な戦術を講じるのは自殺志願と同義だ。
 故に、皮肉にも此処で鉄志は、対魔逮捕術の基本理念へと立ち返る。

「舐めてんじゃ、ねえぞ……!」

 対魔逮捕術の大原則とは先手必勝。
 狡猾な魔術師を、何もさせずに制圧する。
 何かされる前に伸してしまえば、魔術師も人間と変わらない。
 それを今こそ活かす時だと判断するなり、鉄志は魔力噴射の速度に任せて接敵した。

 が……

「舐めてるのはどっちよ。言っとくけどその判断、正気じゃないからね」

 敵手、退かぬ。
 動揺すらなく、むしろ前へと向かってくる。
 純粋な速度の優位に飽かして、それだけを寄る辺に弓で棍棒と打ち合ってきた。

 愚直。考えなし。
 が、その愚直が、何より強い。
 機神の躯体を鎧として纏い、転身前とは比にならない身体能力を有する筈の鉄志。
 ヘラクレスの棍棒も、テーバイの英雄と真っ向から打ち合って破壊されないほどの強度を秘めている。
 なのに少女の言うなればゴリ押し一辺倒の戦術を前に、彼はただ押されていた。

(く、そ……! 重てえ、ッ……!)

 理屈の正体は語るまでもなし。
 速さは重さ。それがすべてだ。

 常に超高速で駆動するアーチャーの全行動は、その時点で破壊的な暴力を宿す。
 もはや破壊力だけで言うならば、一撃一撃のすべてが宝具と呼んでも過剰ではない。
 鉄志が同じことをしようとしても、恐るべきことに、スラスターの魔力噴射による高速でさえこの弓兵には追い付けない。
 威力。速度。その両方で、鋼の英雄は星の写身の後塵を拝している。

『……、針音……?』

 一方でマキナは、奇妙な音を聞いていた。
 鉄志とは違い、彼女には思考の余裕が広く残されている。
 だからそれに気付けた。アーチャーの身体から聞こえる、断続的な、ちいさな音。
 チッ、チッ、と時を刻む、時計の針のような音を聞き取ることができた。

 だが気付けたからと言って、どうなるわけでもない。
 更に言うなら都市の真実を知らない少女神では、その音の得体を暴くことも出来やしない。

「へー。結構硬いんだ」

 叩き込まれた拳が棍棒の防御を跳ね除けて鉄志を打ち据える。
 それだけで、血を吐きたくなるほどの衝撃が彼を襲う。
 棍棒を取り落とさずに済んだ自分を褒めてやりたくなったが、余分をするのは後だ。

「……ッ、お前――さっき、妙なことほざいてやがったな……!」

 鉄志は、胸を打ったアーチャーの細腕を掴んでいた。
 彼女も腕を引こうとするが、膂力に優れないのか、すぐには上手いこと行かないらしい。
 苛立ちも露わに、小さく舌打ちの音が響く。

「きっしょ……触んないでくれる、オッサン」
「〈救済機構〉って、何のことだ。
 まさかそれは……俺のサーヴァントのことを、言ってんのか?」
「は~…………」

 しかし優位が一瞬でも成立したのは、この瞬間だけだった。
 刹那、鉄志の間近で闇の爆光が炸裂。彼は手を離し吹き飛ぶのを余儀なくされたからだ。
 爆ぜたのはアーチャーの手。彼女は事もあろうに、自分の腕を起点にその魔力を爆発させたのだ。
 自傷も厭わない、短絡的で暴力的な現状打破。白煙をあげて吹き飛ぶ鉄志に、いま再び星弓の照準が合わせられる。

「話す義理、あると思う?」

 見えた光明は、一転して破滅の光に変わった。
 星神の弓から解き放たれる、必滅の暗黒光。
 天津神さえ恐れ慄き、背筋を震わせた悪神の神威が空に帯を描く。

 やはり喰らえない。
 回避に最大限のリソースを割くべきなのは明々白々。
 それに――こいつを相手取る上では間違いなく、近接戦の間合いを捨てるべきではない。

「なら……力ずくででも、話して貰うぜ」

 再加速しつつ、掠めるかどうかの間合いで滅びの流星と並走する。
 闇色の光という矛盾がどういう原理で成り立っているのか、少し考えるだけでも己が挑まされるモノの超常性に気が遠くなるが。
 だとしても、この女からは話を聞かなければならないと鉄志の直感が告げていた。
 一瞬聞こえた〈救済機構〉というワード。明らかに自分のサーヴァントに関連するであろう、その単語。
 これを後回しにしていたら必ずとんでもないことになるという"元刑事の勘"が、鉄志にまだまだ無茶を許してくれる。

「マキナ、もうちょっと無茶をする! 無理言ってるのは承知だが、アシストを頼む……!」
『あい・こぴー、ますたー……! 背部・腕部パーツ展開開始。当機の意地にかけて、あのアーチャーを逃しません……!』

 分散して飛んだマキナの、今は鉄志の躯体が、人工衛星のように空中へと展開された。
 これは言わずもがな、アーチャーが速度に任せてあちこち飛び回るのを防ぐための網だ。
 一番手に負えないのは無軌道に移動され、ひたすら距離を取られながら引き撃ちされること。
 それをされれば詰みだと分かっているから、以心伝心、主の意向を叶えるべく少女神が下知を飛ばす。

 斯くして再度成立する、英雄と星神の接近戦(インファイト)。
 このアーチャーは兎にも角にも速すぎる。が、やはり真の脅威はその放つ矢だ。
 従って放つ隙を与えないこと。そこに全力を投じることを、既に鉄志は決めていた。

「仲良しなのね、自分の英霊と」
「はっ、そう見えるか? なら何よりだ」
「はー、やだやだ。殺した後の後味悪いじゃん……まあ」

 さりとて、相手は超常の神威。
 神に弓を引き、その星光で故郷の平定に抗い続けた星の悪神。
 カドモスの時と同じだ。成りたての英雄が相対するには、この少女は如何せん強すぎる。
 生物としての規格が、何から何まで違いすぎている。

「だからって、手が鈍るとかそういうことはないんだけどね」

 間近で炸裂する、闇の輝き。
 このアーチャーはマキナが持ち、鉄志も先ほどから使い続けている魔力放出を、より高い領域で会得している。
 移動ではなく攻撃、弓兵が本来苦手とする筈の接近戦で活用される星光の爆裂。
 無論尋常ではない威力だが、エウリピデスが夢を託した機神の躯体、その強度もまたさるものだ。

 鉄志、不退転のままに棍棒を振るう。
 その姿はまさに、如何なる難業難題にも屈さず、栄光のままに進撃し続けたヘラクレスの如し。
 時に棍棒で光そのものを殴り落としながら、対魔逮捕術という"人間"の発明品を駆使して少しずつ"圧倒"を崩し始めていた。

「どいつもこいつも、英霊ってのは蛮族が基本なのかよ。少しくらい話を聞いてくれないもんかね……!」
「聞くわけないでしょ。これから殺す相手と仲良くなってどうするのさ」

 ち。この戦い、二度目の舌打ちを鉄志は確かに聞いた。
 単なる応用の小技では、どうやら倒し切れないと判断したらしい。
 アーチャーが小手先の抵抗をやめる。となると、次に来る展開は嫌でも予想がついた。
 咄嗟に棍棒を守勢のために構える鉄志。その判断は慧眼だが、しかしあくまで常識の範疇。

 彼は人間、敵は英霊。英霊は――あらゆる常識を超えてくる。

「狙いは悪くないけど、あんたさっきから英霊を舐めすぎ。
 ちょっと背伸びした人間が実行できる程度の浅知恵でどうにかなるとか、まさか本気で信じてた?」

 次にアーチャーが取った行動は、あろうことか、ただの"体当たり"だった。
 弓を武器代わりにするでもなく、強引に矢を番えるでもなく、正面からぶつかったのだ。
 もちろんこれも爆速だから、威力としては人間ひとりを全身圧潰の肉塊に変えられる程度の威力はある。
 だが、機神の装甲を打ち破るにはいささか心許ないと言わざるを得ない。いわば、その程度の攻撃。
 これが一撃で終わる攻撃だったなら、そう謗ることも可能だったろう。

(おい、おい……マジか、こいつッ……!)

 体当たり。からの、踵を返してもう一回体当たり。
 次は角度を変えて。そこからまた同じ軌道で往復。
 次も角度変更。往復。次も。往復。次も。次も、次も次も次も次も――。
 足場も壁もない空中、その上マキナの援護展開状態で行動範囲の限られているそこを、星神は縦横無尽に飛び回りながら、その移動行動そのものを攻撃手段として鉄志を打擲し続けているのだ。

 さながらそれは、戦闘機と生身でドッグファイトさせられるようなもの。
 ぶつかっても壊れないし性能も落ちない戦闘機が、Gの影響も全無視して、機体性能すべてを活かして同じ高みに立つ敵を轢殺しに来るのだ。
 では鉄志も離脱すればいいという話だが、そうすることもままならない。
 速すぎる。魔力放出で抜けようにも、噴射の始点を衝撃で潰され、強引に元の座標に戻される。
 逃げ場はなく、逃げようとすることさえ許さない無法の極み。
 "速い"ということが示せる攻撃性のすべてを、今まさに雪村鉄志は体感していた。

 とはいえ、確かにこれで殺し切るには相当な時間がかかる。
 けれど彼女はアーチャー。最初から必殺手段を持つ彼女にとって、確殺の状況を整えられるだけですべての行動には意義がある。
 極悪なる連撃の締めに叩き込んだのは踵落とし。
 それで真下に撃ち落としながら、悠然と、星の少女神は遂に弓を番える。

「ご――が――?!」

 鉄志はそれを見上げるしかない。
 今から外装を切り替えるのでは、間に合わない。
 詰み。圧倒的な、行き止まり。
 焦燥の中で意識はひたすらに加速するが、ああ、それでも。


「はい終わり」


 ――夜空を奔る星の方が、遥かに速い。


「『神威大星・星神一過(アメノカガセオ)』」


 真名開放。
 星の弓兵――悪神・天津甕星の擬なる神体、その銘。

 この射撃に用いる矢は、星神の身体(うつわ)そのものだ。
 だからこそ本来は、おいそれと乱射できるものではない。
 が、今の天津甕星はその弱点を超克している。
 無尽蔵の魔力供給をもたらす、外付けの、サイバー風に言うならば強化パーツ。
 それが最速の星神が抱える唯一の陥穽を埋め合わせ、今や彼女の輝きは完全無欠。
 昼も夜も、何にも遮られることなく天で輝く、闇色の星――憎悪の神威が、地を焼き払う再びの落隕を下す。

 ただし今度は、ただ一体の〈救済〉を摘むために。
 救世神の神話を断ち切る涜神の一矢が、輝く悲劇を具現させた。



◇◇



 ――何故?

 それが、雪村鉄志の胸中を占める最大の思考。
 装甲の所々が破損して、中の肉体が覗いている。
 もしも第二宝具を使っていなければどうなっていたかなど、想像するまでもない。

 幸いにして装甲には自動修復機能がある。
 マキナの権能で不可逆の損傷にはならないが、これも万能ではない。
 完全修復までには多少のインターバルを要するし、魔力も喰う。
 マキナの抱える欠点を解消できるこの形態とはいえ、痛い出費だ。
 だが何よりも今は、"すぐに直しきれない"という事実が鉄志達の未来を重暗い影で閉ざしていた。

「……まだ生きてんの? しぶとすぎでしょ流石に。
 結構殺すつもりで撃ったんだけどなあ……もうちょっと弓の練習しないと駄目かなあ……」

 地に降りた死神の星がため息交じりに見下ろしている。
 アーチャー・天津甕星。彼女は端的に言って、鉄志とマキナにとって限りなく最悪に近い相性の相手だった。

 自律行動モードのマキナでは、言わずもがなまず勝てない。少なくとも今は。
 速度任せのゴリ押しですべて粉砕されるし、例の矢などもはや論外だ。
 ではかと言って第二宝具、神機融合モードなら与せるかというと、その答えは現状が物語る通り。
 近接戦はそれこそスペックで蹂躙。遠距離戦ではそもそも当てられない。防御に徹したら、鈍重を良いことに嵌め殺される。

 凶悪なまでに相性が悪く、その打破に繋がる活路さえ見出させて貰えない。
 まさしく最凶の敵だ。機体性能でも人間性能でも、すべてを彼女は着の身着のまま超えてくる。
 絶望の二文字が、人の形を取って顕れたかのような存在。
 そんなサーヴァントがどういうわけか、明確にデウス・エクス・マキナへ敵意を抱いて襲ってくるこの現状は率直に言って悪夢じみていた。

 けれどその悪夢も、もうじき終わりだ。
 此処から天津甕星は、考えなしに矢を撃っていればそれだけで勝てる。
 鉄志がどれだけ技を尽くしても、マキナがどれだけ機能を尽くしても、目の前の無体に届かない。

 矢が再び、番えられる。
 滅びの矢。闇色の星。暴虐でしかない星の光。日向の対極。
 錆びついた機械のように緩慢な動作で身を起こしながら、鉄志はそれを睨むしかなかった。
 何をどうやったって間に合わない。けれど、それでも。傷だらけの装甲で、男は言葉を紡ごうとする。

「……聞きたいことが、ある」
「だから答えないって。それに今更時間稼いだって、もうどうにもなんないよ」

 にべもない答え。
 にべもない正論。
 ギリッ、と鉄志の拳が音を奏でた。
 益体もない正しさなんて、あの日からもう飽きるほど聞いてきた。だから、もう耳は貸してやらない。

「俺の娘は、三年前に、忽然と姿を消した」

 腹の中からせり上がってくる血反吐を堪えるのに意味はない。
 そこに余力を使うことさえ、今は惜しく思える。
 堪えるのを頑張るくらいなら、声をあげることにそのリソースを使いたかった。

「カミサマに会いに行く。そう書き置きを残して、今も見つからねえままだ」

 悪あがきにも程がある。
 けれどきっと意味があると信じて、まだ呼吸の追いつかない喉に無茶をさせる。
 身体中が痛い。迫る死の予感に本能が震えている。
 こんな今日に流れ着いてもまだ死ぬのは怖いらしい。

 己の情けなさを自嘲したいが、今はそれより優先することがある。
 草臥れた壮年の自傷行為なんていつでもできる。
 履き違えるなと、年甲斐もなく沸き上がった熱いものが。
 この装甲が、悲劇の迎撃者という外殻が、枯れた心に灯る消えかけの熱を励ましてくれる。

「事故、事件、もしくは単なる家出。
 いろいろ言われたよ。でも、俺は、そうじゃねえと信じてる。
 だから俺は今でも追いかけてるんだ――そいつを。顔の見えねえ、いるかどうかも分からない犯罪者(ホシ)のことを……!」

 意味があるか? ないか?
 知るかよ、そんなもん。
 コインの裏表は投げてみるまで分からない。
 そうだろ、そんなもんだろ。

 雪村鉄志は理性を感情でそう説き伏せて、続く最後の言葉を、紡いだ。


「――〈ニシキヘビ〉という存在を追ってる。冥土の土産がてらによ、知ってたら教えてくれよ………英霊」


 戯言。
 雑音。
 遺言未満の断末魔。

 語るに落ちる、愚者の言葉。
 輝く星に紡がれる、悪あがき。
 ああ、いつか、星空を見に絵里と出かけたことがあったなあと、鉄志は思い出していた。

 妻の美沙が死んで、葬儀やら諸々が一通り片付いて。
 ようやく家族の時間ってものを取れるようになった頃だった。
 少しでも娘の心を慰めたくて。
 天体観測なんてしたこともない癖に、星の見える丘として有名な場所に出かけた。

 満天の星空、光の絨毯。
 それを見上げていた、あの時の絵里は。
 あの笑顔は、心からのものだったのだろうか。
 そうであってくれと祈る資格はないと、鉄志は思っている。

 肝心な時にそばにいられず。
 闇路へ往く手を引くこともできず。
 すべて終わってから、過ぎ去ってから、思い出したみたいに悔やむ父親になど。
 そんな資格があるものかと、自罰的なほどにそう信じ続けている。

 なのに、美しく。
 あの日の星空のように佇む死神へ、言葉を求めてしまうのは端的に自分の弱さなのだろう。

 女々しく情けなく、語るに落ちる愚者の肖像。
 錆びついた心は、ほんのわずかの希望にでも縋りたいものだから。
 だから鉄志は問うた。星へ。星の神へ。あの日、自分と絵里を見下ろしていた輝きの主へ。
 狂気にすらなれない未練を後生大事に抱き締めながら、ただ問いかけた。

 そして。


「…………、…………っ」


 問われた英霊は、星の神は。
 確かに一瞬、わずかに。
 目を逸らした。





「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――は?」





 思考が停止する。
 時間も止まったかと思った。
 見間違い、普通ならそう断ぜるだろう一瞬。わずかに一瞬、いや刹那。
 されど雪村鉄志はかつて、警官だった。
 虚言を弄し、平気な顔で人を騙し、正義に抗い、自分の悪行を隠すために全力を尽くす。
 そういう妖怪どもと切った張ったの日々を送っていた、そういう人生を過ごしてきた。

 だからこそ、彼の鍛えられた眼力はそのわずかな一瞬を見逃させてなどくれず。
 見てしまったからこそ、問うた側とは思えないほどの空白を生み出してしまう。

「……………………待、てよ。なあ。まさか――――おまえ」

 言葉がうまく出せない。
 いいや、出てくれない。
 喉の奥に餅でも詰まったみたいな閉塞感がもどかしい。

 嘘だろ。
 嘘だと言ってくれた方が、むしろありがたいかもしれない。
 そんなことさえ、今の彼は思ってしまう。
 だってそれほどまでに。その一瞬は、反応は、彼にとって、雪村鉄志にとって。

 この世のどんな福音よりも待ちわびた、あの日からずっと待ち続けていた、宝石のような刹那であったから。

「知ってる、のか………………?」
「知らない。あの世で一生自問してれば?」

 だが、ああ、ああしかし。
 既に物語は悲劇に変わっている。
 英雄は、抗いようのない現実に負けてしまった。
 伸ばした手は、夜空の星に届かず。夜空の星は、静かにそれを見下ろす。

 少女の声も、矢を放つまでの動作も、まるで引き伸ばした走馬灯みたいに見える。
 それがせいぜい、物語という大いなる流れに取り込まれた人の子の限界。
 覆せない大河のせせらぎ。いいや鉄砲水のように、残酷な運命は容赦なく人という生き物を浚っていく。

 ――何故?

 その疑問だけは、混乱を極める鉄志の胸中で今も躍っていた。
 だってそれには理由がない。だから、無視もできない。
 不可解という名の最も特定するべき不明瞭が幅を利かせて居座っている感覚はひどく据わりが悪く。

「『神威大星――――」

 引き伸ばされたような一瞬の中。
 ああしていればよかった、こうしていればよかった、という未練。
 死んでたまるか、終わってたまるか、という闘志。
 そのふたつが絶え間なく燃え盛る中で、雪村鉄志は。



「――――『我過ちし栄光の槍(トラゴイディア・カドメイア)』」



 巌のような重さを持って響くそんな声を、確かに聞いた。
 彼と彼女の物語は、星神の登壇によって悲劇へと堕した。
 求めた勝利は得られず、頑然とした現実は決して覆らない。
 そんなありふれた、改めて綴るまでもない悲劇。

 けれど。
 いいや、だからこそ。
 彼女の、そしてその父の流儀に則るならば――。


 物語が悲劇で幕を下ろすなら。
 そこに駆けつけるべきは、〈英雄〉であるべきだ。


 竜殺しの英雄が、栄光の国の王が、今。
 遥か異国の星神を貫くべく、その槍を神速にて轟かせていた。



◇◇



「――!?」

 アーチャー・天津甕星は確かに怪物である。
 その体内は信仰者達のカタコンベ。故にあらゆる服従を頑なに拒み。
 その矢は神を穿ち、空の果てにまで届く夜空の如き矢を放つ。
 慟哭する金星は最速最美。誰も天駆ける彼女を捉えられない。

 が――この悪神は、技を知らない。
 神の矜持もそうたらんとするモチベーションも始まりの瞬間から皆無。
 半ば八つ当たりのように得た力を振り回すと、それだけですべてが何とかなってしまう。
 経津主も武甕槌も破れなかった悪の星神。彼女は能力と成功体験こそあれど、逆に、想定外の事態というものには脆い。

 迸る神速の一槍を彼女が認識したのは、既に放たれた後だった。
 咄嗟に魔力を噴出させ、光帯の残像を残して避けようとするが、遅い。
 竜殺しの槍、はじまりの王権、そのひとつ。
 英雄カドモスの鋼が、天津甕星の脇腹を確かに抉っていた。

「っづ……! 痛ったぁ……!!」

 漏れる苦悶と血液。
 少女神の血を払うように槍を一振りし、カドモスは厳かに呟く。

「いかにも小娘らしい陥穽だな。速く動けはしても、反応速度まではその限りでないらしい」

 威厳溢れる王の痩身には、確かなダメージが見て取れた。
 『神威大星・星神一過』による最初の奇襲攻撃。
 その爆発に身を焼かれ、所々に火傷が確認できる。
 しかし何より目を引くのは、右の頬に浮かび上がったわずかな腫れだろう。
 まるで殴られたような痕跡は、凡そこの老王には似合わない手傷だった。

「……ああもう、面倒臭いなぁ……!
 黙ってれば後に回してあげるし、逃げるなら見逃してあげてもいいのに、なんでわざわざ死にたがんのよ」
「阿呆か? 貴様。そこの機神もどきよりどう考えても貴様の方が厄介な敵だろうが。
 三つ巴ならまずは出る釘から打つのが戦の鉄則よ。物を知らぬ薄汚い不敬者ならば尚更な」

 天津甕星の襲撃が、すべてを有耶無耶にしてしまったが。
 あの直前、雪村鉄志の拳はカドモスに届いていた。
 切った啖呵の通り、彼は王を殴り付けていたのだ。

 だからこそ二度目の真名解放を受け、死を直感した時。
 装甲の脇部分をスパルトイの矢に撃たれ、その衝撃で天津甕星の宝具の狙った座標から逃れることに成功した時――何故、と思った。

 正直なところ、カドモスが天津甕星の存在に構わずこちらを殺しに来る可能性さえ腹の中では想定していた。
 あの矜持高く、傲慢を是とする王が、下賤の輩に頬を張られて只で済ませる筈がないと。
 故にこそ彼が援護射撃を行い、あまつさえ天津甕星に対して武力行使で介入したのは想定外も想定外。
 まさにご都合主義(デウス・エクス・マキナ)が味方した物語を読んでいるような、そんな気分にならざるを得なかった。

「おい、あんた……」
「勘違いなどするな、紛い物の契約者よ。
 王に触れ、血を流させた不敬は必ず貴様らの命で償わせる。
 これは単に優先順位の問題だ。それに」

 鉄志の疑問に、にべもない答えが返ってくる。
 うげ……という声を出さずにいられたのは奇跡だ。
 天津甕星を退けたら、今度は改めて怒髪天を衝き直したカドモスが襲いかかってくる。そう予告されたようなものだ、無理もなかろう。
 しかし。


「今この時を以って事情が変わった。星の娘、回答を許す。アレは何だ?」


 続く言葉と、空間に轟く超重量の震動が、この後のことを考えるという楽観をすべて吹き飛ばした。


「……おい、おい」

 断言できる。
 さっきまで、こんなモノは彼処にいなかった。

 焼け野原と瓦礫の山と化した住宅地の一角。
 未だ黒煙立ち昇る惨状の中に、黙し佇むモノがある。
 いい加減突拍子もない存在、展開にも慣れてきたと思っていたが、その前言は撤回するしかない。

「なあ、マキナ――俺の幻覚か、アレ?」
『わ……わかり、ません。ですが……ですが……』

 ……日が落ち、夜の闇が支配する杉並区。
 そこに、巨大な"ヒトガタ"が立っていた。

 それには目がない。口もない。手足はあるが、肌は人間の色をしていない。
 だからこそ、これを形容するにはヒトガタという表現が正しかった。
 潔癖なイメージを想起させる純白の体表。関節の代わりに用意された大仰な機構。腕に刻まれた《Seraph(セラフ)Ζήνων(ゼノン)》の文字。
 背に生えた翼は三対六枚。神話に語られる熾天使の特徴に似ているが、その翼もまた、明らかに人工物と分かる無機的な質感を帯びている。

 人間で言う目の部分に相当する位置には、アルビノの眼球を思わす真紅のランプが煌々と灯り。
 耳を澄ませれば重機械の製造工場に似た、鋼の機構による駆動音が聞こえてくる。
 先の轟音と震動は、これが地に降り立った音なのだろう。
 全長は目算にして20メートル弱。その巨体が持つ重量など、一体どれほど規格外か分からない。

 雪村鉄志がこれを見て思い浮かべた単語はひとつ。
 あまりにも荒唐無稽で馬鹿げてて、なのに代わりになる言葉が見つからない。

 そう、これは――
 このヒトガタを、一言で言い表すならば――


『機、神…………?』


 ――巨大ロボット、と、そう呼ぶのが最も的確だろう。
 そして実際、それで合っている。
 そう証明するように、佇む巨大機人の頭頂部に立つひとりの少年の姿を、鉄志もマキナも見含めた。

 水色の頭髪が特徴的な、小柄な少年だった。
 姿だけ見れば少年なのだが、纏う雰囲気は幼子のようにも、老人のようにも見える。
 幼気と老練を同時に併せ持ったアンバランスさが、ちいさなシルエットの中で同居を果たしている。
 鉄志が眉を顰めた理由は、マスターとしての視界に表示された彼のステータスが、あまりにも低すぎることだ。
 だが不気味。並ぶEの文字に添えられた無数の+表記が、これを侮ってかかることを許さない。

「上出来だ、アーチャー。
 此処まで早く辿り着いてくれるとはな。おかげでボクも手間が省ける」
「わざわざ出張ってくるなら最初からあんたがやりなさいよ。
 まあ貰うもんは貰ってるし、ねちねち文句言う気もないけどさ」

 星の弓兵と語らう言葉は、彼こそが〈救済機構〉すなわちマキナの討伐を彼女に命じた張本人であることを示しており。
 であればその彼が今此処に、自ら姿を現したことの意味も明白だった。

 時を刻む双眸が、天の高みから鉄志を見下ろす。
 いいや、見ているのは彼であって彼じゃない。
 彼と融合し、今も同じ視界を共有している少女神。
 ある優しい詩人が遺した理想のカタチ。それをこそ、冷めた眼差しで睥睨している。

「さて」

 マキナはその視線から、どうしてか意識を反らすことができなかった。
 脳裏に蘇るのは、数刻前に対峙したある女神の言葉だ。

 しかし、此度の接触は先達が彼女へ示した"課題"の解決にはなり得ない。
 何故なら彼の者、この世界の神に非ず。
 あるいはマキナは、未熟とはいえ救世神として、その本質を本能的に感じ取っているのか。
 定かではなかったが、どうであれ今から起こることは決まっている。

「終わろうか、エウリピデスの空想」

 神との対話、未だ叶わず。
 夜の手前の都市で、救世神/特異点の卵は獣と対峙す。



 ――永久に救い満たされた未来文明の使徒たる無限時計巨人が、全身から無数の白い光を放ち、熾天使の降臨が如くに偽神の撃滅を宣言した。



◇◇



【杉並区・廃寺跡/一日目・日没】

【雪村鉄志】
[状態]:神機融合モード、精神的動揺、疲労(大)、全身にダメージ(大)、装甲に損傷(修復中)
[令呪]:残り三画
[装備]:『杖』
[道具]:探偵として必要な各種小道具、ノートPC
[所持金]:社会人として考えるとあまり多くはない。良い服を買って更に減った。
[思考・状況]
基本方針:ニシキヘビを追い詰める。
0:何だ――こいつ。
1:アーチャー(天津甕星)は、ニシキヘビについて知っている……?
2:今後はひとまず単独行動。ニシキヘビの調査と、状況への介入で聖杯戦争を進める。
3:同盟を利用し、状況の変化に介入する。
4:〈一回目〉の参加者とこの世界の成り立ちを調査する。
5:マキナとの連携を強化する。
6:高乃河二琴峯ナシロの〈事件〉についても、余裕があれば調べておく。
[備考]
赤坂亜切から、〈はじまりの六人〉の特に『蛇杖堂寂句』、『ホムンクルス36号』、『ノクト・サムスタンプ』の情報を重点的に得ています。
※マキナの『熱し、覚醒する戦闘機構(デア・エクス・チェンジ)』により、彼女と一体化しています。

【アルターエゴ(デウス・エクス・マキナ)】
[状態]:神機融合モード、疲労(中)
[装備]:スキルにより変動
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:マスターと共に聖杯戦争を戦う。
0:これは、いったい……
1:マスターとの連携を強化する。
2:目指す神の在り方について、スカディに返すべき答えを考える。
3:信仰というものの在り方について、琴峯ナシロを観察して学習する。
4:おとうさま……
5:必要なことは実戦で学び、経験を積む。……あい・こぴー。
[備考]
※紺色のワンピース(長袖)と諸々の私服を買ってもらいました。わーい。
※『熱し、覚醒する戦闘機構(デア・エクス・チェンジ)』により、雪村鉄志と一体化しています。

【ランサー(カドモス)】
[状態]:全身にダメージ(中)、顔面にダメージ
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:いつかの悲劇に終焉を。
0:目の前の状況に対処。
1:当面は悪国の主従と共闘する。
2:悪国征蹂郎のサーヴァント(ライダー(戦争))に対する最大限の警戒と嫌悪。
3:傭兵(ノクト)に対して警戒。
4:事が済めば雪村鉄志とアルターエゴ(デウス・エクス・マキナ)を処刑。
[備考]
 本体は拠点である杉並区・地下青銅洞窟に存在しています。

【アーチャー(天津甕星)】
[状態]:私だけヤな展開になってきたなこれ……帰ろっかな……って顔、脇腹に損傷(修復中)
[装備]:弓と矢
[道具]:永久機関・万能炉心(懐中時計型)
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:優勝を目指す。
0:えぇ……めんどくさぁ……
1:当面は神寂縁に従う。
2:〈救済機構〉なるものの排除。
[備考]
※キャスター(オルフィレウス)から永久機関を貸与されました。
 ・神寂祓葉及びオルフィレウスに対する反抗行動には使用できません。
 ・所持している限り、霊基と魔力の自動回復効果を得られます。
 ・祓葉のように肉体に適合させているわけではないので、あそこまでの不死性は発揮できません。
 ・が、全体的に出力が向上しているでしょう。

【キャスター(オルフィレウス)】
[状態]:健康
[装備]:無限時計巨人〈セラフ=ゼノン〉
[道具]:
[所持金]:
[思考・状況]
基本方針:本懐を遂げる。
0:〈救済機構〉の破壊。
1:あのバカ(祓葉)のことは知らない。好きにすればいいと思う。言っても聞かないし。
2:〈救済機構〉始めとする厄介な存在に対しては潰すこともやぶさかではない。
[備考]



 ◇――――マテリアルが更新されました


『無限時計工房(クロックワーク・ファクトリー)』
 ランク:B++ 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
 現界と同時に、自身の第一宝具である永久機関が搭載された機械兵器を製造する『工房』を自動展開する。
 言うなれば24時間全自動で稼働する工場を持つようなものであり、本来ならば魔力の消費は甚大どころの騒ぎではない。
 が、万能の炉心を持つオルフィレウスはそのデメリットを恒久的に無視することができる。
 現在確認されている『発明品』は六枚の翼を持つ白い機人、無限時計巨人〈機体名:セラフ=ゼノン〉。他の巨人(ゼノン)が存在するかは不明。

 ――この宝具は、オルフィレウスが〈幼体〉の段階から使用可能である。



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最終更新:2025年02月02日 00:31