生き人形〜doll〜始まり〜侵食
塾の行き帰り,いつもその子犬は,そこにいた。
「あそこのケーキ屋の近くに子犬がいるの知ってる?」
「子犬? あそこはたまに通るけど,いたっけか?」
「いるよ! 小さくてすごく可愛いの」
「でも,捨て犬でしょ? 汚くない?」
「ううん,多分飼われてるよ。毛並みとか,すごくきれいだし」
「ふーん,でも見たことないなぁ,マナの見間違いじゃない?」
だけど,私以外その子犬を見たって人はいない。
塾の行き帰り,私がそこを通ると,その子犬はまん丸の瞳で私を見つめている。
ある日,思い切って話かけてみると,子犬は嬉しそうに私の胸に飛びついてきた。
「きみ,なんていうのかな? いつもここにいるけど飼い主さんは?」
そう言うと,子犬はまるで私の言葉が解っているかのように首を横に振った。
「あれ? 私の言葉わかるのかな?」
子犬は今度は縦に首を振った。
「あはは,まさかね。塾があるから,ちょっと行ってくるね」
そう言い残し,私は子犬を置いて,塾へと急いだ。
最終更新:2009年07月23日 12:18