希苑組SS


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タイトル







★★★安価リレーSS第5話『恐るべき反逆者』★★★


― 2年前 ―

「文化財の遺跡をかってにかきかえたって!?
 おとうさんはいったいどんな研究をしていたのかね?」

「考古学です……でも父は、学会では異端でした。
 稗田先生。あなたと同じように」

「……そうか。こんな研究結果が学会で受け入れられるはずもない……
 この土地のどんな伝承にも、こんな『神』の存在は伝えられてないからね」

「はい……本当につい最近……1、2ヶ月前の事だったんです。
 アレが現れたのも、私の父が消えてしまったのも!」

「そして君は、遺跡の中に飲み込まれたおとうさんを助けるために、
 壁画の文様を書き換えた……そして中にいたものが……」

  オォォォォ……

「……」

「日本にある遺跡の石室は、死そのものの象徴でもあったのだ……
 死者は外からの光を閉ざすよう石で囲って、石室へと葬った。
 『古事記』の天岩戸……イザナギが黄泉の国へ置いた道反の大神……
 あるいは賽の河原では、死んだ子供は石を積み上げる刑罰を受ける……
 古代人は石そのものに霊力を感じ、それを死と関連付けた……」

オォォ……

「石の向こうにいたこの存在は……異界の……常世の国の存在だ。
 私の手に負える存在ではない……おとうさんの事は残念だが……」

「はい……でも私、この遺跡を開けてしまって……!」

オォ……マ…ダ

「自分を責める事はない。里の人達はわたしが説得してみる。
 この事は忘れて、親戚の誰かを頼りなさい……
 分かったね。カナメ未来君」

――マダ
        マ、テ……

「……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「こ、この中に裏切り者がいるだと…」

――そして、現在。
青空の会との決戦を間近に控えた希苑組に、戦慄が走る。
新たに仲間に加わったヤクザクワガタ……
彼のもたらした情報は、あまりに衝撃的なものだった。

「落ち着けっ
 若き故に見えぬことがあるはずだっ」

「クワガタさん! でも!」

「間違いない……ワシらヤクザクワガタはテレパシー的なもんで会話できるからの。
 この中にくだらん考えを持っとる奴が紛れ込んどるこたぁ、すぐに分かったんじゃ。
 いるんじゃろ? さっさと出て来いや……!」

「……」

「……ふ、」

「ふ、ふ、ふふ……まさか……
 まさかこんな所で見破られるなんてね……!
 ヤクザクワガタ――お前のせいで計画が崩れたよ……」

SRR――!

「そんな! 俺達はSRRを中心にして今までやってきた!
 それが全部仕組まれた事だったというのかっ!!」

絶叫する希苑組の面々。

「ふふ……残念ながらそのとおりさ。
 君達は整合性の取れた舞台で、踊り続けていただけだった。
 そう、このSRR……いや『マダマテ』が用意した舞台の中でね!」

「『マダマテ』……そういえば、聞いた事がある。
 伝奇物のギャルゲーでは、虚無世界『アデル』に潜む、世界を喰らう存在だと。
 ゲームの中だけの設定じゃあなかったんだな」

今までPFPの画面に目を落としていた珪馬が呟く。
『世界』――! 青空の会どころではない。
自分達は今、スケールの違いすぎる敵を相手にしようとしている!

「SRR、いやマダマテと呼んだ方がいいのかしら?今までいくつの世界を喰らって来たの?」

「そんな些細なことはあまり思い出に残っていないなぁ…フフフフフ…」

ダンゲロス子の問いに余裕で答える『マダマテ』。
その答えに、再びダンゲロス子がぶち切れた!!

「ぜったいにゆるさんぞ虫ケラども!!じわじわとなぶり殺しにしてくれる!!」

「フ……愚かな。
 堕落せよ!! 『オメガハック』!!」

マダマテの叫びと共に、足元に死の領域『ダーク・デリュード』が展開する!
踏み込んだ人間の『存在』を自分と同化し、即座に操作する異次元の技……しかし!

「私達を甘く見ましたね、SRRさん」


「ここは屋上! 地形を侵食する能力なら、空から攻めればいいだけだよねっ!」
[………ゴォォォ――]

――のり子。ドダイ

「なッ……どういう事だ!?
 飛行している2人はともかく……何故エン・ジェルまでもが私の目の前に!
 何故『ダーク・デリュード』に侵食されない!!」

「いいえ。私の生徒は私が守るわ……
 SRRさん……あなたも……守りたかった」

「――雛森瑞穂!」

「ケッ、そして射程内に捉えたぜ……!
 エン・ジェル先生の高速移動に気を取られたなッ!」

「離れ…」

半休眠状態のこの身体では、近距離戦では不利だ。
それを悟り、ダンゲロス子から距離を取ろうとするマダマテ……だが。

「……行かせない。『エイトボール完全犯罪』」

「ッしゃああああ!! 喰らえ『フレイムレイン』!」

「『レインソード』!」


      ―『ダブルレイン完全犯罪!!』―

ド バ ァ ァ

「グオオオォォ……! おのれ……!」

炎を纏った無数の刃に貫かれ、崩れていくマダマテの体!
並みの魔人であれば、数十回は死んでいておかしくないほどの多大なダメージ……
だがその肉体もすぐにアメーバ状になり、元のように再構成されていく。

「フハ、フハハハハハハ!
 私に利用されるだけのゴミ共の分際で……随分とやってくれたな。
 だが私は虚無次元に潜む混沌そのもの! この世で何度肉体を破壊しようとも、
 私の本体を殺す事は決してできぬのだぁ!!」

「――それはどうかな」

「ぐ……桂珪馬……ッ!
 いつの間に私の背後に!」

「さっき君の上空を取ったドダイに誰かが『乗っていた』と考えなかったのか?
 そして高無次元の能力のおかげで、高さを無視して接近できた……」

思わず上空のドダイを見上げるマダマテ。
そして気付く……元から『平面』であれば、ドダイの上に張り付いて……
誰もいないかのように偽装して……!

「ふん、ゲームにしか興味がないと思っていたが……
 お前がこの取引に応じてくれてよかったよ、桂」

「……『二次元の世界に行かせてやる』なんて言われて断るゲーマーがいるか?
 そう、そしてまずはお前の攻略が先だったな、『マダマテ』。
 ダブルレインで傷ついたその身体が治癒するのに何秒かかる? 3秒か? 4秒か?
 一人のキャラの攻略にそこまでかけちゃあ、やり込みプレイにもならないな……」

「ぐ、う……!
 『シーサイド・クロウズ』ッ! 『ブッダガヤ』でこのクソ共を消滅させろォォォ――ッ!!」

その瞬間、屋上に集う希苑組の魔人達に巨大な影が差した。
空を埋め尽くすほどの巨大な核ミサイル――!
追い詰められたマダマテは、自分もろともこの学園を吹き飛ばす策に出た!
しかもマダマテ自身は、核が直撃したとしてもいずれ再生するのだ!

「ふん、予想通りの大技が出たのぅ! やったれや嬢ちゃんッ!」

「障害、確認……」

「排除。『B.R.シュート』」

EA01β版のランチャーが火を噴いた!
正確に信管を打ち抜かれ、起爆機能を失う核ミサイル!

「わ、私は……私は『転校生』だぞ……!
 この第六次の戦いを支配し、ダンゲロス史上最強の座を得るはずのこのマダマテが……!
 私がこんな!! たかが一介の生徒ごときに!!」

「違うっ。転校生なんかいらないっ!!この学園を支えるのはそんなたった2人の存在なんかじゃあない。
 学園に登校する一人一人の生徒の思いがこの学園を支えるんだっ!」

「なんだ、この不快な感情は?これは人間で言うところの恐怖?このSRRがたかが一介の生徒に恐怖しているというのか?」

上空からののり子の叫び。
そして地上で自分を取り囲む、意思を秘めた無数の眼差し。
マダマテは今――初めて『恐怖』を知った……紛れもなく恐怖していた――

「ミサイルはワシとワシのクワガタ軍団が支えちょるけえのう!
 珪馬の坊主ッ、早くそいつをブチのめすんじゃあ!!」

だが――

「僕は……」

「ボクは、現実(リアル)の女と手をつないだことすらない!!」

突然の珪馬の絶叫。その場にいる誰もが状況が分からず、
ただ呆然とわけの分からないことを言い出した珪馬を見ているしかない……

「来るな、ドリアンこっちくんな!臭い!アイドルを何だと思ってるんだ!!」

「のり子! お前までどうしたんだ!」

「うるせー!いつもいつも使えねーとか役立たずとか好き勝手言いやがって!いい機会だからブチのめしてやんよ!!」

「ゲロ子まで!?」

「またまた御冗談を(AA略」

「雛森先生……!」

ゴ  ゴ  ゴ  ゴ  ゴ  ゴ  ゴ

「フン……身の程を知らぬ連中だ。
 貴様らの強化体質は誰のおかげだと思っている……
 気付かなかったか? 以前のドリアンパーティーでの混乱……
 あれは私の細胞から逆流した外部思念によるものだったのだよ。
 だからこそ、強化細胞のないカナメ未来は一人だけ正気を保ち、無事家に帰ることができたのだ」

「そして今ッ! 私はその現象を『意図的に』引き起こしたッ!
 『ダーク・デリュード』が無効化されるとしても!
 我が『ヴァルギリエンス』の副作用は貴様らを確実に狂気へと陥れるぞォ――ッ!!」

全ての魔人達が静かに狂っていく中、マダマテの哄笑が高らかに響く。
マダマテは今、自分の完全な勝利を確信していた。
……『転校生』による秩序! この無敵の力ッ!

「『リリカルマダラーR.I.P.』」

「げぼはぁっ!?」

「能力頼りでここまでやってきたんか? 脇が甘いのう、ガキ……」

吐血するマダマテ。
ヤクザクワガタが自分の知らない能力を……
奴の能力は『夢遊病』ただ一つだけのはず!

「い、一体……」

「まだ足りんか? 『哀れな淳二にBT神のご加護を・・。』」

ドピュピュピュ―――ッ!!

「うぼぁぁぁぁぁぁぁ」

何故……? 何故こいつ如きが複数の能力を?

「ハッ……!?」

気配に振り向くマダマテ。
そこには、エン・ジェルの白濁液と混ぜ合わされた……

「この能力で利用できるのが虫だけだと誰が言った……?
 私の中二力は53万。全ての果物の王……」

液体が声を発する。それもまた、内に秘められた強力な中二力ゆえか。

「そしてこのワタクシ、『バナナ』はその一番の小物」

「ドリアンン――――ッッッ!!!」

「これで終いじゃあッ! 『リィンカーネーション・リプライズ』!」

凄まじい衝撃に屋上から叩き落され、瀕死のまま地を這いずるマダマテ。
『リィンカーネーション・リプライズ』で、致命傷が自分の次元にまで『越境』したのか……!
マダマテが生きてきた悠久の時の中で……最悪の屈辱、そして危機。

「く……ぐ……!」

『奴ら』は切り札だったが……もう仲間に頼るしかない。
参加者にも秘密にしていた『隠しキャラ三闘神』を……!

「くっ……誰か!! 誰か来て私を助けるんだっ!
 寺門修司! 金雀児カナデ! ……杉崎ルミネ
 莫迦な……!?」

「反応消失……全滅、だと……!?
 全員が転校生級の実力者だぞ……!!」

「悪いが」

「……!? 貴様……!」

「『転校生級の実力者』は、あんたらだけの専売特許じゃないんでね――」

地に伏すマダマテの横に立つ影。
こいつは――!

「あなたは……! ダンゲロス子に戦術的価値を否定され、
 絶望しながら消えていったはずの……!」

「夏川さんッ!!」

「Yes! I am!!」

  バァ―――z____ン!!

「な…なんてこった…夏川さん…負けたと思ったら…
 すでに…勝っていたのか…ッ!!!」

「『相手が勝ち誇ったとき、そいつはすでに敗北している』。
 勘違いするな希苑組……テメーらのためじゃねぇ。
 俺はこいつに返してもらいに来ただけだ……
 今まで好き勝手使ってきた、俺の転校生としての力をな――!!」

嘘だ……こんな事が……私が負けるはずはない……
何世紀も未来へ! 永遠へ………… 生きるはずのこのマダマテがッ!

「ウォォオォォォオォォ
 おのれェェェェェェェェ!!」

メキメキメキ

「「「第二形態ッッ!?」」」

「見せてやろう。転校生の力の一端をっ!
 今の俺はその力を10分1までに抑えられているのだっっ!!
 はぁぁぁぁフルパワーだ!力が漲る!!!」

際限なく巨大化していくマダマテを前に……
二丁の銃を携えた夏川が、ニヤリと笑う。

「ククク……ようやく……
 面白くなってきたじゃねぇか……!」


――――→TO BE CONTINUED!!!







最終更新:2009年07月30日 22:49