世にも奇妙なことが連続して起こり、人々の凄惨な死が垂れ流される放送を尊徳達は眺めていた。
NPCを撃破した彼らだが、画面越しに存在する忌々しい男には何も出来ない。指の一本も触れられずただただ惨劇を眺めるしかない。
NPCを撃破した彼らだが、画面越しに存在する忌々しい男には何も出来ない。指の一本も触れられずただただ惨劇を眺めるしかない。
「なんて悪趣味な奴らだ……!」
悪趣味極まりない放送に尊徳が顔を顰めた。
あの磯野やハデスとかいう男は様子を見る限り、付き従っているだけかもしれないが――檀黎斗は間違いなく自分の意思でこの残酷なゲームを開いているのだろう。
あの磯野やハデスとかいう男は様子を見る限り、付き従っているだけかもしれないが――檀黎斗は間違いなく自分の意思でこの残酷なゲームを開いているのだろう。
それは誰が見ても明らかであり、尊徳は怒りを募らせるが――今の彼に出来ることは何もない。
ユキも今は鏡ではなくモニターを注視。真剣な瞳で放送を見ている。
ユキも今は鏡ではなくモニターを注視。真剣な瞳で放送を見ている。
「あいつ……人の命をなんだと思ってるのさ……」
そして影山も尊徳の言葉に同意するように、そう呟いた。
あのゲームマスターは神を称しているが、彼はそんな自称神よりも気高き天の道を往き、総てを司る男を知っている。
きっと彼や自分の兄貴分、矢車がここに居たらなんとかしてくれるだろう、と――どこか他人頼みなことを思いつつ、自身も光を掴むために戦わねばならないと理解している。
あのゲームマスターは神を称しているが、彼はそんな自称神よりも気高き天の道を往き、総てを司る男を知っている。
きっと彼や自分の兄貴分、矢車がここに居たらなんとかしてくれるだろう、と――どこか他人頼みなことを思いつつ、自身も光を掴むために戦わねばならないと理解している。
(兄貴……。俺、今度こそ光を掴めるのかな……)
初っ端からこんな放送を見せられて不安にならないと言えば、嘘になる。
影山は勇敢に戦った青年――葛葉紘汰と同じく仮面ライダーだ。彼の世界ではマスクドライダーシステムと呼ばれているが、その本質は変わらない。
影山は勇敢に戦った青年――葛葉紘汰と同じく仮面ライダーだ。彼の世界ではマスクドライダーシステムと呼ばれているが、その本質は変わらない。
だが影山は紘汰ほど勇気があるわけでも、ヒーロー気質でもない。世界を救った始まりの男でも、天の道を往き、総てを司る男でも、神に代わって剣を振るう男でもない。
影山瞬とはどこまでも人間臭い男だ。
正義の味方の燃えカスこそあるが過去の栄光に執着するあまりプライドを捨てきれず、情けない姿を晒したこともある。
そんな影山だが決して正義感がないわけじゃない。小悪党的なことをしていた時期こそあり、その頃は悪人のようなこともしてきた。
だが少なくともパンチホッパーとなって以降はそういう悪い面はなりを潜め、人間臭くも悪党ではない――むしろ彼は兄貴と共に光を掴もうとすら考えるようになった。
正義の味方の燃えカスこそあるが過去の栄光に執着するあまりプライドを捨てきれず、情けない姿を晒したこともある。
そんな影山だが決して正義感がないわけじゃない。小悪党的なことをしていた時期こそあり、その頃は悪人のようなこともしてきた。
だが少なくともパンチホッパーとなって以降はそういう悪い面はなりを潜め、人間臭くも悪党ではない――むしろ彼は兄貴と共に光を掴もうとすら考えるようになった。
だから自業自得とはいえネイティブと化してしまった時――彼は死を望んだ。
どこまでも人間臭くて、情けなくて、みっともなくて――それでも燃えカスのような正義感や光を求める気持ちは捨てきれず。
化け物になるよりも人間のまま死ぬことを望んだ男――それが影山瞬である。
どこまでも人間臭くて、情けなくて、みっともなくて――それでも燃えカスのような正義感や光を求める気持ちは捨てきれず。
化け物になるよりも人間のまま死ぬことを望んだ男――それが影山瞬である。
そんな影山が再びこうして人の身で蘇ったことは奇跡と呼ぶしかない。
ゲームマスターである檀黎斗の気まぐれだろうが、それでも人の身で生きていることを影山はありがたいとすら感じる。
もちろん殺し合いなんて反対だし、今度こそ光を掴むために黒幕達は倒すつもりだ。自分だけならともかく、天道総司なら不可能すら可能にするだろう。
そして兄貴である矢車が居たら――彼とならば影山はどこまでも戦える……!
ゲームマスターである檀黎斗の気まぐれだろうが、それでも人の身で生きていることを影山はありがたいとすら感じる。
もちろん殺し合いなんて反対だし、今度こそ光を掴むために黒幕達は倒すつもりだ。自分だけならともかく、天道総司なら不可能すら可能にするだろう。
そして兄貴である矢車が居たら――彼とならば影山はどこまでも戦える……!
「アユミ――!」
影山が戦う意思を固めてる間にも放送は進み、ナルシスト男の娘――ユキの悲痛な声が響き渡る。
彼の仲間であるアユミが首輪の爆発によりその命を散らした。
彼の仲間であるアユミが首輪の爆発によりその命を散らした。
あまりにも呆気なく、いとも容易く命が潰える瞬間に尊徳は息を呑んだ。この中で戦場に最も慣れていないのが彼だ。
条河麻耶や葛葉紘汰とは違い、抵抗すら許されぬ一方的で理不尽な死。これほど恐ろしいものはない。
しかもユキの仲間ということは、彼女もまた何らかの戦う力を持っていたに違いない。それなのにこんなにもあっさりと、一瞬で……。
影山やユキは有能だが、それでもゲームマスターを倒すことは困難極まりないないだろう。
しかもユキの仲間ということは、彼女もまた何らかの戦う力を持っていたに違いない。それなのにこんなにもあっさりと、一瞬で……。
影山やユキは有能だが、それでもゲームマスターを倒すことは困難極まりないないだろう。
そんなこと、とっくにわかっていた。だがこうも一方的で理不尽な死を何度も見せ付けられて。ルール違反すらしていない。本田と違い、警告すらされていないのにいきなり少女が殺されて。
これほど理不尽な死もなかなか無いだろう。
警告を無視して殺された本田ヒロトの死がまだマシにすら思える。
これほど理不尽な死もなかなか無いだろう。
警告を無視して殺された本田ヒロトの死がまだマシにすら思える。
それに乱入者の葛葉紘汰は、あそこに辿り着いてる時点でかなりハイレベルなプレイヤーだ。だというのにああもあっさり殺された時点で、このゲームの難易度を痛感せざるを得ない。
更に恐るべき理不尽を黎斗は突き付けてくる。
『そして今から一つ運試しのゲームをする。私がこのボタンを押した瞬間―――君たち本戦出場者のうち何人かがランダムでゲームオーバーになるゲームだ』
普段から朝霧海斗という理不尽を絵に書いた様な存在と過ごして、傍若無人な彼に振り回されてきた尊。
しかしそんな海斗が全然可愛く思えるほどの理不尽を黎斗は強いる。
しかしそんな海斗が全然可愛く思えるほどの理不尽を黎斗は強いる。
ピ、ピ、ピ――――。
「なにっ!?この音は……!」
最も聞きたくなかった不快な音が、自分の近くから聞こえる。
その瞬間、尊とユキは誰かに強く押された。直後に乱雑に誰かのデイパックを投げ捨てられる。
その瞬間、尊とユキは誰かに強く押された。直後に乱雑に誰かのデイパックを投げ捨てられる。
「兄貴……」
その誰か――影山が悲しそうに呆然と立ち尽くし、呟く。不快なノイズは彼の首輪から発せられていた。
「俺、結局また光を掴めなかった……」
影山にはやり残したことも、後悔も山ほどある。
まだまだ生きたかった。兄貴や新しい仲間達と一緒に光を求めたかった。
でも――もうダメみたいだ。
黎斗が運試しをすると言って、この首輪が音を発した。それがどういう意味かわからないほど、影山は馬鹿じゃない。
まだまだ生きたかった。兄貴や新しい仲間達と一緒に光を求めたかった。
でも――もうダメみたいだ。
黎斗が運試しをすると言って、この首輪が音を発した。それがどういう意味かわからないほど、影山は馬鹿じゃない。
だから近くにいた尊徳とユキを突き飛ばした。彼らを爆発に巻き込んでしまう可能性を危惧しての行動だ
影山は決して善人と言えるような人間ではないが――これから共に戦おうとした仲間を巻き込むほど、腐ってもいない。
影山は決して善人と言えるような人間ではないが――これから共に戦おうとした仲間を巻き込むほど、腐ってもいない。
次に自分のデイパックを尊徳へ投げた。もしかしたらホッパーゼクターが彼らに力を貸してくれるかもしれない。
色々と未練はあるが、せめて今は自分に出来る精一杯のことをする。ネイティブ化してしまった際、光を諦めて死を望んだあの時のように……。
色々と未練はあるが、せめて今は自分に出来る精一杯のことをする。ネイティブ化してしまった際、光を諦めて死を望んだあの時のように……。
「……どうせ俺はここで死ぬ。だから尊徳――ホッパーゼクターはお前に託してやる」
生きることは諦めた。これはもう、どう足掻いても詰みだ。
だから――――みっともなくとも良い。生きてるうちに尊徳に言いたいことがある。
ほんとは兄貴に言いたいけど、この場には居ないから。
だから――――みっともなくとも良い。生きてるうちに尊徳に言いたいことがある。
ほんとは兄貴に言いたいけど、この場には居ないから。
「尊徳、ユキ……。俺の仇を取ってくれ……!」
ボン☆
――突然聞こえたそれは、影山瞬の生命の終わりを告げるノイズだった。
――突然聞こえたそれは、影山瞬の生命の終わりを告げるノイズだった。
「……ふざけるな。どうして僕が見ず知らずの貴様の仇を取らなければならないんだ」
呆気に取られていた尊徳がようやく、絞り出すように声を発する。
その言葉は影山の頼みを拒否したようでもあるが――その心はそうじゃない。
尊徳はデイパックのホッパーゼクターを静かに眺める。
その言葉は影山の頼みを拒否したようでもあるが――その心はそうじゃない。
尊徳はデイパックのホッパーゼクターを静かに眺める。
『……どうせ俺はここで死ぬ。だから尊徳――ホッパーゼクターはお前に託してやる』
(――まったく、何が託してやるだ。
海斗のように上から目線であんなことを言って、その挙句に仇をとってくれだと?
――ふん。ふざけるのも大概にしろ。僕は初対面の相手の願望を聞いてやるほど、お人好しじゃない)
海斗のように上から目線であんなことを言って、その挙句に仇をとってくれだと?
――ふん。ふざけるのも大概にしろ。僕は初対面の相手の願望を聞いてやるほど、お人好しじゃない)
影山に対して毒づくが――だがあの時、彼が自分達を突き飛ばしていなければどうなっていたかわからない。もしかしたら巻き添えで殺されていたかもしれない。
だから尊徳は毒づきながらも、影山の立派な行動を否定は出来ない。その在り方はボディーガードの尊徳にとって、感心すらするものだ。
だから尊徳は毒づきながらも、影山の立派な行動を否定は出来ない。その在り方はボディーガードの尊徳にとって、感心すらするものだ。
「――まあ仕方ない。不本意だがその願い、僕が叶えてやろう。僕とユキであのイカれたゲームマスター達を倒してやる」
どの道、ゲームマスターを倒さなければゲームを脱出するのは難しい。ならばいつか戦わなければならない運命だ。
――尊徳は影山の最期の行動に敬意を払い、ユキと共に戦う覚悟を決める。
――尊徳は影山の最期の行動に敬意を払い、ユキと共に戦う覚悟を決める。
「しょうがないなぁ、ボクも一緒に戦ってあげるよ。それなりにギルドのメンバーのことも気に入ってたし……アユミの仇も取らなきゃね」
ヴァイスフリューゲルのメンバー、アユミの死。それはユキにとってずっしりと重くのしかかる、悲しい現実だ。
されども下を向いてばかりでいる彼じゃない。いや――もしかしたら暫くずっと俯いていた未来も有り得たかもしれない。
だが影山の命を賭した行動や尊徳の覚悟は、ユキの心情に多少なりとも影響を与えた
されども下を向いてばかりでいる彼じゃない。いや――もしかしたら暫くずっと俯いていた未来も有り得たかもしれない。
だが影山の命を賭した行動や尊徳の覚悟は、ユキの心情に多少なりとも影響を与えた
「ああ。あの子の仇も必ず取ってやろう」
アユミの仇――尊徳はその重い言葉を受け取り、彼なりに気遣ってやる。
友人が死んだら悲しいのは当然だし、この状況で立ち直れたユキの心の強さには目を見張るものがある。
ユキはアユミの仇を取るといった。復讐心に駆られるだとか、そういう類のものではない。
悲惨にも命を散らしたアユミの雪辱を晴らすべく、仇をとる。ならばその行為を否定する意味もなし。
要するに尊徳やユキの方針は当初と変わらず、ゲームマスターを倒すことだ。
友人が死んだら悲しいのは当然だし、この状況で立ち直れたユキの心の強さには目を見張るものがある。
ユキはアユミの仇を取るといった。復讐心に駆られるだとか、そういう類のものではない。
悲惨にも命を散らしたアユミの雪辱を晴らすべく、仇をとる。ならばその行為を否定する意味もなし。
要するに尊徳やユキの方針は当初と変わらず、ゲームマスターを倒すことだ。
「……でもボクは真正面から前線で戦うタイプじゃないから前衛はキミに任せるよ。ボクが傷付いたら、それすなち全人類にとって損失だからね♪」
「ばんなそかな!?」
「ばんなそかな!?」
――わかりきってたことだが、改めてユキのナルシストっぷりを痛感する尊徳であった。
まあユキが平常心に戻っただけ進歩したと考えるべきなのだろう、きっと。
まあユキが平常心に戻っただけ進歩したと考えるべきなのだろう、きっと。
【一日目/深夜/C-8】
【宮川尊徳@暁の護衛 トリニティ】
[状態]:健康
[装備]: ホッパーゼクター&ZECTバックル@仮面ライダーカブト
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~5
[思考・状況]基本方針:僕たちがゲームマスターを倒す!
1:ユキと一緒に影山とアユミの仇を取る
2:このベルトで僕も変身出来るのか……?
3:まさかとは思うが、海斗のやつも参加してないだろうな……
[備考]
※色々ありすぎてまだ名簿を確認してません
【宮川尊徳@暁の護衛 トリニティ】
[状態]:健康
[装備]: ホッパーゼクター&ZECTバックル@仮面ライダーカブト
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~5
[思考・状況]基本方針:僕たちがゲームマスターを倒す!
1:ユキと一緒に影山とアユミの仇を取る
2:このベルトで僕も変身出来るのか……?
3:まさかとは思うが、海斗のやつも参加してないだろうな……
[備考]
※色々ありすぎてまだ名簿を確認してません
【ユキ@プリンセスコネクトRe:Dive】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:ボクの美しさをクロトやハ・デスにも知らしめてあげる
1:タカノリくんはボクが応援してあげるよ ♪
2:モニカさんは大丈夫かな?
3:アユミ……
[備考]
※色々ありすぎてまだ名簿を確認してません
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:ボクの美しさをクロトやハ・デスにも知らしめてあげる
1:タカノリくんはボクが応援してあげるよ ♪
2:モニカさんは大丈夫かな?
3:アユミ……
[備考]
※色々ありすぎてまだ名簿を確認してません
025:神様、キサマを殺したい。 | 投下順 | 027:漆黒の太陽に灼かれて♪渡の決意 |
時系列順 | ||
047:個性的だけど悪くはない奴ら | 宮川尊徳 | 069:託されし意志 |
ユキ |