Dホイール独特の疾走音と、マシンが風を裂く音。
聞こえるのは二つだけで、他は何も耳に入らない。
傍らに同行者がいても、一言も発さず前方を見据えるのみ。
軽くない傷を負ってるから、運転に集中したいから。
それらだけが理由でないとは、サイドカーで縮こまる百雲にも察しが付く。
聞こえるのは二つだけで、他は何も耳に入らない。
傍らに同行者がいても、一言も発さず前方を見据えるのみ。
軽くない傷を負ってるから、運転に集中したいから。
それらだけが理由でないとは、サイドカーで縮こまる百雲にも察しが付く。
(あいつ……)
ハンドル操作に意識を割く間、大我の脳裏には一体のバスグターが思い浮かぶ。
自身とラブリカは、決して友好的な関係じゃあなかった。
パラドやポッピーのような仲間に非ず、まして深い因縁で繋がるグラファイトとも違う。
悪質な恋愛ゲームで二度も痛い目を遭わされた、どこまでいっても敵対関係以外にない。
もし仮に向こうが危機に陥っていても、助ける選択肢は存在しない。
大我が同じ状況になったとて、あっちは静観を決め込むだろう。
自身とラブリカは、決して友好的な関係じゃあなかった。
パラドやポッピーのような仲間に非ず、まして深い因縁で繋がるグラファイトとも違う。
悪質な恋愛ゲームで二度も痛い目を遭わされた、どこまでいっても敵対関係以外にない。
もし仮に向こうが危機に陥っていても、助ける選択肢は存在しない。
大我が同じ状況になったとて、あっちは静観を決め込むだろう。
しかし先の場で、自分と百雲はラブリカに助けられた。
消滅(ゲームオーバー)覚悟で襲撃者の足止めを引き受けたが為に、自分達の命は現世に留まったまま。
内心で渦巻く想いは純粋な感謝や、消えて済々したと割り切るのとも異なる。
大我自身にも上手く説明が付かない、複雑極まるパズルに似ていた。
消滅(ゲームオーバー)覚悟で襲撃者の足止めを引き受けたが為に、自分達の命は現世に留まったまま。
内心で渦巻く想いは純粋な感謝や、消えて済々したと割り切るのとも異なる。
大我自身にも上手く説明が付かない、複雑極まるパズルに似ていた。
ポッピー達のように余程の例外でもない限り、バグスターは患者の生命を脅かす敵。
当然ラブリカもそこへ含まれ、百雲を攫われた際には二度と復活出来ないよう確実に潰すと怒りを抱いた。
だが一方で、自分達を逃がしたのは単なる気まぐれとも言い切れない。
デスゲームにおいては一介のNPCであれど、『ゲームキャラクター』としての己に彼なりの矜持はあったのだろう。
敵キャラクターを全うして散った、誇り高き紅蓮龍と同じように。
当然ラブリカもそこへ含まれ、百雲を攫われた際には二度と復活出来ないよう確実に潰すと怒りを抱いた。
だが一方で、自分達を逃がしたのは単なる気まぐれとも言い切れない。
デスゲームにおいては一介のNPCであれど、『ゲームキャラクター』としての己に彼なりの矜持はあったのだろう。
敵キャラクターを全うして散った、誇り高き紅蓮龍と同じように。
「……」
大我の抱える胸のしこりは、百雲にも理解出来る。
ラブリカに嬲られそうになった時、恐怖を感じたのは否定しない。
なれど自分達にとって、命を救った存在だったのも事実。
あの後彼がどうなったか、難しく考えなくたって分かる。
リゼが殺された時とは比べるまでもないし、涙を流すような関係になった覚えはないけれど。
いなくなって良かったと言うのも違う、残るのは後味の悪さだけだ。
ラブリカに嬲られそうになった時、恐怖を感じたのは否定しない。
なれど自分達にとって、命を救った存在だったのも事実。
あの後彼がどうなったか、難しく考えなくたって分かる。
リゼが殺された時とは比べるまでもないし、涙を流すような関係になった覚えはないけれど。
いなくなって良かったと言うのも違う、残るのは後味の悪さだけだ。
「あっ、ここって……」
ぼんやりと景色を眺めていたが、記憶に覚えのある街並みに思わず声が零れた。
それに反応してか大我もDホイールを一旦停車、視線が向かう先の建造物へ顔を顰める。
バットと野球ボールを模したキャラクターが、看板に描かれた施設。
何の変哲もないバッティングセンターも、二人には別の意味があった。
それに反応してか大我もDホイールを一旦停車、視線が向かう先の建造物へ顔を顰める。
バットと野球ボールを模したキャラクターが、看板に描かれた施設。
何の変哲もないバッティングセンターも、二人には別の意味があった。
(リゼちゃん達と最初に会った場所……)
平和な時間、というのはデスゲームにミスマッチな表現であり。
楽しいひと時、とは流石に不謹慎だと百雲自身も思うが。
勇気を持って打ち明けた性別の悩みに、偏見を持たず接してくれて。
この地で新しい友達を得て、一緒に強くなろうと特訓に励んだ。
殺し合いなんて物騒な真似はお断りだし、生きて帰りたいと願ったのも嘘じゃないけど。
リゼと出会った事までは、間違いと言いたくない。
楽しいひと時、とは流石に不謹慎だと百雲自身も思うが。
勇気を持って打ち明けた性別の悩みに、偏見を持たず接してくれて。
この地で新しい友達を得て、一緒に強くなろうと特訓に励んだ。
殺し合いなんて物騒な真似はお断りだし、生きて帰りたいと願ったのも嘘じゃないけど。
リゼと出会った事までは、間違いと言いたくない。
意図してここに戻って来た訳でなく、少しでも遠ざかろうと逃走に集中していただけと分かる。
でも友達を喪った場所を再度目にし、苦い記憶を余計意識するのは抑えられない。
同時に別行動中の仲間の安否へ、不安が鎌首を擡げる。
橘や海馬、明石達はあれからどうなったのだろう。
海神相手に生き残ったのに、別の参加者とぶつかり危機が訪れてはいないか。
自分なぞよりずっと強い人達で、信じたいけど。
一度浮かんだ悪い予感というやつは、簡単に払拭されてはくれない。
でも友達を喪った場所を再度目にし、苦い記憶を余計意識するのは抑えられない。
同時に別行動中の仲間の安否へ、不安が鎌首を擡げる。
橘や海馬、明石達はあれからどうなったのだろう。
海神相手に生き残ったのに、別の参加者とぶつかり危機が訪れてはいないか。
自分なぞよりずっと強い人達で、信じたいけど。
一度浮かんだ悪い予感というやつは、簡単に払拭されてはくれない。
(やらかしちまったか……)
顔を曇らせる百雲の様子へ、大我も内心で舌を打つ。
苛立つ対象は保護対象であり仲間でもある少年ではなく、迂闊な自分自身だ。
最初の定時放送前に襲撃が起きたこの場所は、彼のトラウマを引き摺り出すに等しい。
逃走への専念に意識をかまけ過ぎ、意図せず患者の精神にストレスを与えた。
主治医としてあるまじき失態に、己へ罵声をぶつけたい怒りに駆られる。
苛立つ対象は保護対象であり仲間でもある少年ではなく、迂闊な自分自身だ。
最初の定時放送前に襲撃が起きたこの場所は、彼のトラウマを引き摺り出すに等しい。
逃走への専念に意識をかまけ過ぎ、意図せず患者の精神にストレスを与えた。
主治医としてあるまじき失態に、己へ罵声をぶつけたい怒りに駆られる。
「っ、誰かこっちに来やがるな」
尤も、自分を責める時間に浸る暇はない。
険しい表情で振り向いた大我へ、何事かと尋ねるまでもない。
Dホイールの疾走音とは異なる、エンジンを吹かす音が近付いて来る。
二人の視界に黒い自動車が映った時にはもう、一定の距離を置いて停車。
NPCの類には見えず、十中八九プレイヤーが運転してるのだろう。
険しい表情で振り向いた大我へ、何事かと尋ねるまでもない。
Dホイールの疾走音とは異なる、エンジンを吹かす音が近付いて来る。
二人の視界に黒い自動車が映った時にはもう、一定の距離を置いて停車。
NPCの類には見えず、十中八九プレイヤーが運転してるのだろう。
「いつでも逃げれるよう構えとけ」
「う、うん」
「う、うん」
警戒を促す大我の声も、心なしか硬い。
仮面ライダーへの変身手段は全て奪われ、ガシャコンウェポン一つすらない。
もし戦闘へ発展した場合、デッキを持つ百雲の方がまだ戦力になる有様だ。
先のラブリカ相手に一皮剥けたと言っても、ジャックや海馬といった歴戦の決闘者には未だ及ばない。
どうにか足止めし逃げる、百雲の安全を第一に考えればそれがベスト。
Dホイールのエンジンは切らず、相手の出方を慎重に窺う。
仮面ライダーへの変身手段は全て奪われ、ガシャコンウェポン一つすらない。
もし戦闘へ発展した場合、デッキを持つ百雲の方がまだ戦力になる有様だ。
先のラブリカ相手に一皮剥けたと言っても、ジャックや海馬といった歴戦の決闘者には未だ及ばない。
どうにか足止めし逃げる、百雲の安全を第一に考えればそれがベスト。
Dホイールのエンジンは切らず、相手の出方を慎重に窺う。
運転席のドアを開け、車を降りたのは二人共に見覚えのない男。
白いコートを着こなし、整った顔立ちなれど安易に近寄り難い威圧感が発せられている。
百雲には恐怖の象徴であり絶対的存在の、父親をどこか重ねるプレッシャー。
とはいえ海馬という例もあるので、初対面の印象だけで全てを決められないが。
白いコートを着こなし、整った顔立ちなれど安易に近寄り難い威圧感が発せられている。
百雲には恐怖の象徴であり絶対的存在の、父親をどこか重ねるプレッシャー。
とはいえ海馬という例もあるので、初対面の印象だけで全てを決められないが。
「そこで止まれ。まずこっちに質問させろ」
怯む百雲に代わり、睨み付ける大我が口を開く。
男の持つ赤塗りの鞘へ納めた剣に、最大限警戒を払うのを忘れずに。
男の持つ赤塗りの鞘へ納めた剣に、最大限警戒を払うのを忘れずに。
「何の目的で俺らの前に顔を見せた?襲う為か?」
「違う、お前達と同じでこちらに争う気はない」
「違う、お前達と同じでこちらに争う気はない」
友好的とは程遠い視線をぶつけられても動揺はなく、毅然と言葉を返す。
虚勢を張ってるだけ、とも言い切れない堂々とした態度。
男が相応に修羅場を潜って来たが故かは、一旦置いておく。
虚勢を張ってるだけ、とも言い切れない堂々とした態度。
男が相応に修羅場を潜って来たが故かは、一旦置いておく。
「まだ俺達がどうするかなんざ、一言も言ってねぇだろ。何でそう言い切れる?」
「俺を警戒する間も、同行者へ意識を常に割いているからだ。自分以外の安全を前提に考える者が、積極的に仕掛けるとは思えない」
「よく見てやがんな……」
「俺を警戒する間も、同行者へ意識を常に割いているからだ。自分以外の安全を前提に考える者が、積極的に仕掛けるとは思えない」
「よく見てやがんな……」
別に間違った内容を言われてはいない。
ただそれはそれとして、言い当てられたのには少々不機嫌そうに独り言ちる。
堅物そうに見えてその実、深い部分まで見透すような男らしい。
悪意があってではなく、観察眼へ非常に優れているが故だ。
ただそれはそれとして、言い当てられたのには少々不機嫌そうに独り言ちる。
堅物そうに見えてその実、深い部分まで見透すような男らしい。
悪意があってではなく、観察眼へ非常に優れているが故だ。
まだ完全にシロと断言出来ずとも、警戒心を引き下げる方へ傾きつつある。
もう少し問いを重ねようとし、中断せざるを得なくなったのは直後のこと。
会場中央の上空へ、突如浮かび上がった巨大モニター。
参加者にはこれで三度目となる光景に、今更誰も疑問を持ちはしない。
もう少し問いを重ねようとし、中断せざるを得なくなったのは直後のこと。
会場中央の上空へ、突如浮かび上がった巨大モニター。
参加者にはこれで三度目となる光景に、今更誰も疑問を持ちはしない。
「これって……!」
「丁度12時間経ったってことか」
「丁度12時間経ったってことか」
息を呑む百雲の隣では、大我もモニターへ映ったゲームマスターを険しい瞳で射抜く。
チラと見やれば白コートの男もまた、視線は主催者へ。
流石に定時放送を無視してまで対話を行いはせず、両者は伝達事項へ耳を傾けた。
禁止エリアは既に指定済のE-3以外、新たに追加された箇所は自分達への影響が薄い。
よって考えるべきは続く情報、脱落者の発表に移る。
チラと見やれば白コートの男もまた、視線は主催者へ。
流石に定時放送を無視してまで対話を行いはせず、両者は伝達事項へ耳を傾けた。
禁止エリアは既に指定済のE-3以外、新たに追加された箇所は自分達への影響が薄い。
よって考えるべきは続く情報、脱落者の発表に移る。
『海馬瀬人』
「なっ!?」
二人目の死亡者で呼ばれた名に、顔色を変える。
まさか自分達が離れて間もなく襲撃を受け、力尽きたのか。
だが冥王やしんのすけ、ジャックの名が続き勘違いだったと気付く。
脱落者は死亡順に発表され、先の海神戦で喪った仲間達よりも先に呼ばれたということは。
恐らく名簿にあったもう一人の海馬が、死んだのだろう。
百雲にとっては厳しくも激励した、決闘者の師と言える人物。
死生観のドライさから自分と相性が悪いと、大我も自覚はあるが死んで欲しいとは思っていない。
あからさまに顔に出さないが、自分達の知る海馬が無事なのは少なからず安堵があった。
まさか自分達が離れて間もなく襲撃を受け、力尽きたのか。
だが冥王やしんのすけ、ジャックの名が続き勘違いだったと気付く。
脱落者は死亡順に発表され、先の海神戦で喪った仲間達よりも先に呼ばれたということは。
恐らく名簿にあったもう一人の海馬が、死んだのだろう。
百雲にとっては厳しくも激励した、決闘者の師と言える人物。
死生観のドライさから自分と相性が悪いと、大我も自覚はあるが死んで欲しいとは思っていない。
あからさまに顔に出さないが、自分達の知る海馬が無事なのは少なからず安堵があった。
『桐生戦兎』
幾らか間を開けて呼ばれた名に、大我は僅かに眉間へ皺を寄せる。
直接の面識はないが、以前ネビュラバグスターの事件の際。
最上魁星相手に共闘した戦士だと、永夢やパラドから話は聞いた。
信用していい参加者の脱落は、当然嬉しい情報な訳がない。
自分達の世界に迷い込んだ青年、万丈龍我とは元々の仲間だったらしい。
現在の動向は不明だが、精神的な傷が悪影響を及ばさないのを今は祈るしか出来ない。
直接の面識はないが、以前ネビュラバグスターの事件の際。
最上魁星相手に共闘した戦士だと、永夢やパラドから話は聞いた。
信用していい参加者の脱落は、当然嬉しい情報な訳がない。
自分達の世界に迷い込んだ青年、万丈龍我とは元々の仲間だったらしい。
現在の動向は不明だが、精神的な傷が悪影響を及ばさないのを今は祈るしか出来ない。
黎斗曰く、ポセイドンは本物の神だったと追記のように伝えられた。
実際に戦った身からすれば、わざわざ教えられるまでもない。
「それはそうだろう」としか言えず、むしろ次の情報の方が遥かに重要だ。
実際に戦った身からすれば、わざわざ教えられるまでもない。
「それはそうだろう」としか言えず、むしろ次の情報の方が遥かに重要だ。
「えっ……?マヤちゃんって、確か……」
兎にも似た不思議な生物を、嬉々として惨殺する少女。
映像に映るのは全参加者が存在を知る、ポセイドンの最初の犠牲者。
リゼの友人でもあった彼女は、主催側の手で蘇生の恩恵に与った。
九条貴利矢や他ならぬ黎斗自身のように、バグスター化するのとは違う。
正真正銘、冥界から魂を引き上げたのはこの目で見ても俄かに信じ難い。
映像に映るのは全参加者が存在を知る、ポセイドンの最初の犠牲者。
リゼの友人でもあった彼女は、主催側の手で蘇生の恩恵に与った。
九条貴利矢や他ならぬ黎斗自身のように、バグスター化するのとは違う。
正真正銘、冥界から魂を引き上げたのはこの目で見ても俄かに信じ難い。
マヤ以外の追加プレイヤーや、人質扱いだった美遊・エーデルフェルトのプレイヤー昇格。
その他盤面に大なり小なり影響を与える事実が明かされ、ゲームマスターの高笑いで放送は幕を閉じた。
その他盤面に大なり小なり影響を与える事実が明かされ、ゲームマスターの高笑いで放送は幕を閉じた。
「ふざけやがって……!!」
黎斗の声が聞こえなくなるや、心底忌々し気に吐き捨てる。
6時間前の定時放送と同じ、悉く死者をゲームの駒にしか見ていない。
しかもあの男は死した参加者を蘇らせ、再度ゲームへ放る暴挙に出たのだ。
大我を含めドクター達は、たった一つしかない患者の命を救うべく日々戦っている。
まだ生きたい、やりたい事がもっとある、明日も笑顔で迎えたい。
患者自身が抱く生きる意欲を最大限に支え、希望と活力を持って退院するまで全力でサポートする。
それこそドクターの在り方な故に、ゲーム感覚で命の価値すら貶める黎斗には憤りを隠せない。
百雲達の前でなければ、苛立ちに任せ壁を蹴りつけるくらいはやっただろう。
6時間前の定時放送と同じ、悉く死者をゲームの駒にしか見ていない。
しかもあの男は死した参加者を蘇らせ、再度ゲームへ放る暴挙に出たのだ。
大我を含めドクター達は、たった一つしかない患者の命を救うべく日々戦っている。
まだ生きたい、やりたい事がもっとある、明日も笑顔で迎えたい。
患者自身が抱く生きる意欲を最大限に支え、希望と活力を持って退院するまで全力でサポートする。
それこそドクターの在り方な故に、ゲーム感覚で命の価値すら貶める黎斗には憤りを隠せない。
百雲達の前でなければ、苛立ちに任せ壁を蹴りつけるくらいはやっただろう。
「クソッ……」
一回目の放送時はハイパームテキガシャットを奪われた危機感や、間を置かずに起こったポセイドンの襲来で深く考える余裕もなかったが。
改めて、ゲームという名で覆った殺し合いなんぞで仲間の。
永夢の命が奪われた事実が重く圧し掛かる。
失うものがなく、半ば自暴自棄に己一人で全ての汚れ仕事を背負う気だった時に出会い。
青い理想を掲げる永夢とは、お世辞にも良好な関係と言えなかったが。
仮面ライダークロニクルを巡る一連の事件を経て、志を共有する戦友になったのだ。
悪趣味な黎斗のゲームを終わらせ、この先も多くの患者が必要とするだろう小児科医はもういない。
涙こそ流れないが、やり切れなさに胸がささくれ立つ。
改めて、ゲームという名で覆った殺し合いなんぞで仲間の。
永夢の命が奪われた事実が重く圧し掛かる。
失うものがなく、半ば自暴自棄に己一人で全ての汚れ仕事を背負う気だった時に出会い。
青い理想を掲げる永夢とは、お世辞にも良好な関係と言えなかったが。
仮面ライダークロニクルを巡る一連の事件を経て、志を共有する戦友になったのだ。
悪趣味な黎斗のゲームを終わらせ、この先も多くの患者が必要とするだろう小児科医はもういない。
涙こそ流れないが、やり切れなさに胸がささくれ立つ。
「リゼちゃんの、友達が……」
友人を守ってやれず、リゼが悔やんでいたのは百雲もハッキリ覚えている。
そんなマヤが生き返り、しかも殺し合いに乗るよう細工までされた。
今の彼女は白い生物を手に掛けたように、他者を殺す以外何も頭に無いのか。
リゼの死を知っても、どうでもいいとしか思わないのだろうか。
これじゃあリゼが何の為に、強くあろうとしていたのか分からなくなる。
彼女達の友情が踏み躙られる現実へ、悪夢を見せ付けられた気分だった。
そんなマヤが生き返り、しかも殺し合いに乗るよう細工までされた。
今の彼女は白い生物を手に掛けたように、他者を殺す以外何も頭に無いのか。
リゼの死を知っても、どうでもいいとしか思わないのだろうか。
これじゃあリゼが何の為に、強くあろうとしていたのか分からなくなる。
彼女達の友情が踏み躙られる現実へ、悪夢を見せ付けられた気分だった。
「どうやら、君達の方も色々と訳有りみたいだね」
二人の意識を引き戻したのは、高級車から聞こえた声。
助手席のドアが開いており、白コートの男がそちらに近付く。
乗っているだろう者と何かを話し込み、少々考える素振りを取った後で頷いてみせた。
車内に腕を伸ばし、出て来た時には先程まで影も形もいなかった存在。
メガネを掛けた少女を片腕に抱き上げ、大我達へ向き直る。
助手席のドアが開いており、白コートの男がそちらに近付く。
乗っているだろう者と何かを話し込み、少々考える素振りを取った後で頷いてみせた。
車内に腕を伸ばし、出て来た時には先程まで影も形もいなかった存在。
メガネを掛けた少女を片腕に抱き上げ、大我達へ向き直る。
「こんな体勢で申し訳ないとは思うけど、僕一人じゃ自力で立つのにも苦労してね。大目に見てもらえると助かるよ」
「え、う、うん。それは全然大丈夫だけど……」
「え、う、うん。それは全然大丈夫だけど……」
自分よりもずっと年下の、小学生程の年齢だろうに。
いやに落ち着いた態度で話し掛けられ、戸惑いを覚える。
威圧感の強い男が片腕に少女を抱える絵面は、シュールでもありどこか様にもなっていた。
いやに落ち着いた態度で話し掛けられ、戸惑いを覚える。
威圧感の強い男が片腕に少女を抱える絵面は、シュールでもありどこか様にもなっていた。
「このまま様子見してても良かったんだけどね、お互い少々刺々しい空気じゃ話も進まないだろう?僕が間に入った方が、スムーズに運ぶと思ってそうさせてもらったよ」
「お互い仕掛ける気がないなら、戦闘に発展する理由もないだろう」
「それは否定しないけど、鋼牙お兄さん相手で少々緊張してるみたいだよ。変な誤解でもされたら、困るんじゃないかな?」
「お互い仕掛ける気がないなら、戦闘に発展する理由もないだろう」
「それは否定しないけど、鋼牙お兄さん相手で少々緊張してるみたいだよ。変な誤解でもされたら、困るんじゃないかな?」
「僕はお兄さんを信じてるから、そんなこと思わないけどね」、と。
少女本人だけに聞こえる声量で、呟いたとは誰も気付かず。
眠たげな顔で窘められ、何とも言えない表情を白コートの男が浮かべる。
意図したものではないが、両者の間に流れる緊張感が幾分解れ出す。
大我が訝しく見やるのも束の間、小さく鼻を鳴らし警戒を緩めた。
少女本人だけに聞こえる声量で、呟いたとは誰も気付かず。
眠たげな顔で窘められ、何とも言えない表情を白コートの男が浮かべる。
意図したものではないが、両者の間に流れる緊張感が幾分解れ出す。
大我が訝しく見やるのも束の間、小さく鼻を鳴らし警戒を緩めた。
「ガキのお守りやってる奴に、誰彼殺す暇がある訳ねぇか」
「当然だろう?僕が守ってもらっているのは事実だけど、お兄さんへの疑いは的外れもいい所だよ」
「当然だろう?僕が守ってもらっているのは事実だけど、お兄さんへの疑いは的外れもいい所だよ」
感情の揺らぎが皆無に等しい、淡々とした物言いなれど。
自分を抱き上げる男が、殺し合いに乗る者ではないと少女なりに訴えて来た。
捉えどころのないがしかし、彼女がそう擁護するだけの信頼を築けてるのなら。
愛想と縁がないだけで、悪人じゃないのかもと百雲も緊張を解く。
自分を抱き上げる男が、殺し合いに乗る者ではないと少女なりに訴えて来た。
捉えどころのないがしかし、彼女がそう擁護するだけの信頼を築けてるのなら。
愛想と縁がないだけで、悪人じゃないのかもと百雲も緊張を解く。
「お互い敵意が無いと改めて分かったなら、外にいるよりどこかへ身を隠して話すのを勧めるよ」
「ああ、別にこっちも断る理由はねぇが……」
「ああ、別にこっちも断る理由はねぇが……」
少女の提案は間違っていないが、一番近場の施設に入るのは。
自分だけならまだしも、百雲には精神的に負担となりかねない。
仲間同士の交流を深めた場も今では、軽くない苦痛を覚えるタブー地点。
顰めた顔でバッティングセンターから視線を外した。
自分だけならまだしも、百雲には精神的に負担となりかねない。
仲間同士の交流を深めた場も今では、軽くない苦痛を覚えるタブー地点。
顰めた顔でバッティングセンターから視線を外した。
「……場所はここ以外でもいいか?理由も後で話す」
○
4時間近くをバッティングセンターや、付近のカフェテラスで過ごしたのもあってか。
エリア全体の把握は行っておらず、大我達も初めて見る施設は一つ二つじゃない。
今いる診療所もその内の一つ。
聖都大学附属病院レベルの充実さは流石に無いが、医療機関だけあって物資は置かれている。
傷の処置と体力回復、両方済ませるのに持って来いの場所。
ざっと見て回り院内が無人なのを確認後、一同は待合室に腰を下ろした。
エリア全体の把握は行っておらず、大我達も初めて見る施設は一つ二つじゃない。
今いる診療所もその内の一つ。
聖都大学附属病院レベルの充実さは流石に無いが、医療機関だけあって物資は置かれている。
傷の処置と体力回復、両方済ませるのに持って来いの場所。
ざっと見て回り院内が無人なのを確認後、一同は待合室に腰を下ろした。
「異論が無ければ俺が先に話す。構わないか」
口火を切った鋼牙に、特に文句を飛ばす者もいない。
承諾を得て、簡単な自己紹介を挟みゲームでの動向を説明。
出会った時点で手遅れだった青年、星合翔李を介錯し首輪を手に入れたのが鋼牙のスタートだ。
承諾を得て、簡単な自己紹介を挟みゲームでの動向を説明。
出会った時点で手遅れだった青年、星合翔李を介錯し首輪を手に入れたのが鋼牙のスタートだ。
「……そいつは、どうしても斬るしかなかったのか?」
「ああ、ホラーに憑依された時点で助かる術はない。他の者を襲う前に斬る、それ以外に方法はない」
「そうかよ……」
「ああ、ホラーに憑依された時点で助かる術はない。他の者を襲う前に斬る、それ以外に方法はない」
「そうかよ……」
ドクターとしての倫理観からすれば、僅かな可能性でも助ける方へ全力を尽くすべき。
だがホラーなる存在のエキスパートの鋼牙が断言する以上、あれこれ文句を言うのもお門違い。
海馬のようにドライな死生観の持ち主なら、多少は食って掛かったかもしれないが。
態度の端々に見え隠れする気遣うような態度が、単なる冷血漢でないと分かる。
だから大我も複雑さはあれど、それ以上聞かず続きに耳を傾けた。
だがホラーなる存在のエキスパートの鋼牙が断言する以上、あれこれ文句を言うのもお門違い。
海馬のようにドライな死生観の持ち主なら、多少は食って掛かったかもしれないが。
態度の端々に見え隠れする気遣うような態度が、単なる冷血漢でないと分かる。
だから大我も複雑さはあれど、それ以上聞かず続きに耳を傾けた。
「橘さんが知ったら凄く怒りそうだね……」
「あの野郎のことだ、橘がそうなるのに期待してその汚ぇ男に支給したのかもな」
「あの野郎のことだ、橘がそうなるのに期待してその汚ぇ男に支給したのかもな」
ブレイバックルを使う、見た目も中身も非常に汚い男。
装備の特徴を聞くに、別行動中の仲間と関係がある可能性が高い。
仮面ライダーの鑑とも言うべき橘と違い、鋼牙達を襲ったのは真逆のスタンスらしいが。
装備の特徴を聞くに、別行動中の仲間と関係がある可能性が高い。
仮面ライダーの鑑とも言うべき橘と違い、鋼牙達を襲ったのは真逆のスタンスらしいが。
話は怒れる海神、ポセイドンとの死闘へ続く。
仲間の喪失と、間を置かずに起こった最初の定時放送。
そしてエーデルフェルト邸での乱戦を経て、大我達と会うに至った。
仲間の喪失と、間を置かずに起こった最初の定時放送。
そしてエーデルフェルト邸での乱戦を経て、大我達と会うに至った。
一連の流れを聞き終えると、今度はこちらが話す番。
ゴブリン突撃部隊に襲われた百雲を助けたのを切っ掛けに、二人で行動。
今自分達がいるエリアで、新たに別の仲間と出会い暫くは平和な時間が続いた。
が、天災の如き怪物の襲撃があってからは嵐の連続。
海神との死闘を終えたと思いきや、NPCの手で百雲が連れ攫われる事態が発生。
どうにか追い付き二人で撃退を試みたが、想定通りに事が進まなかったのは言うまでもない。
ゴブリン突撃部隊に襲われた百雲を助けたのを切っ掛けに、二人で行動。
今自分達がいるエリアで、新たに別の仲間と出会い暫くは平和な時間が続いた。
が、天災の如き怪物の襲撃があってからは嵐の連続。
海神との死闘を終えたと思いきや、NPCの手で百雲が連れ攫われる事態が発生。
どうにか追い付き二人で撃退を試みたが、想定通りに事が進まなかったのは言うまでもない。
「お前達があの男を?」
「ぼくはほとんど動けなかったけど……頑張ったのはジャックさんや海馬さん達だから……」
「ぼくはほとんど動けなかったけど……頑張ったのはジャックさんや海馬さん達だから……」
ポセイドン討伐メンバーの一人ではあれど、正直そこへ数えられるのは百雲自身恐れ多い。
貫通ダメージでマトモに動けず、他の皆の方が余程死力を尽くしていた。
気まずそうに言い淀むも、ポセイドンが討たれた事実には変わりない。
強大な力を持つ神の犠牲者が、これ以上増えない点では間違いなく朗報。
とはいえ犠牲無しで乗り切れる程、海神は脆弱に非ず。
ジャックを始め、三人もの死者を出した上での苦い勝利だ。
もしも自分が倒せていれば、彼らが死ぬ事態は防げたんじゃないか。
みふゆが足止めを引き受ける事にも、ならなかったのでは。
終わった闘争に後悔を募らせても無意味と、分かっていてもそう思わずにはいられない。
貫通ダメージでマトモに動けず、他の皆の方が余程死力を尽くしていた。
気まずそうに言い淀むも、ポセイドンが討たれた事実には変わりない。
強大な力を持つ神の犠牲者が、これ以上増えない点では間違いなく朗報。
とはいえ犠牲無しで乗り切れる程、海神は脆弱に非ず。
ジャックを始め、三人もの死者を出した上での苦い勝利だ。
もしも自分が倒せていれば、彼らが死ぬ事態は防げたんじゃないか。
みふゆが足止めを引き受ける事にも、ならなかったのでは。
終わった闘争に後悔を募らせても無意味と、分かっていてもそう思わずにはいられない。
「お前が気に病む必要なんざどこにもないだろ、余計な気を回してんじゃねぇ」
渋面を作る鋼牙の内面を察してか、どことなく突き放す物言いが飛び出る。
勘違いされかねない言葉なれど、挑発の意図は無い。
大我なりに、鋼牙の憂いへ気にしなくていいと伝えただけだ。
実際、鋼牙達がポセイドン相手に敗走した件を責めるつもりは微塵もない。
むしろ戦う力を持ちながら、守るべき者を取り零した後悔は。
鬼舞辻無惨にリゼを殺された大我にだって、痛い程理解出来る。
勘違いされかねない言葉なれど、挑発の意図は無い。
大我なりに、鋼牙の憂いへ気にしなくていいと伝えただけだ。
実際、鋼牙達がポセイドン相手に敗走した件を責めるつもりは微塵もない。
むしろ戦う力を持ちながら、守るべき者を取り零した後悔は。
鬼舞辻無惨にリゼを殺された大我にだって、痛い程理解出来る。
「あ、あの!大我さんは別に怒ってるとかじゃなくて……!」
「分かっている。済まない、気を遣わせた」
「大真面目に返すなよ……」
「分かっている。済まない、気を遣わせた」
「大真面目に返すなよ……」
誤解されやしないかと、慌てて百雲がフォローに出るも杞憂で済んだ。
発言の意図は鋼牙も気付いており、空気が拗れはしない。
却って言った大我当人のがむず痒そうにし、誤魔化すようにそっぽを向く。
発言の意図は鋼牙も気付いており、空気が拗れはしない。
却って言った大我当人のがむず痒そうにし、誤魔化すようにそっぽを向く。
「彼が優しさをストレートに出すのが苦手な人だと分かった所で、僕からも良いかな?」
「おい、前半の件は絶対いらねぇだろうが」
「君達を襲い、ガッシャットなる物を奪った男についてだ」
「おい、前半の件は絶対いらねぇだろうが」
「君達を襲い、ガッシャットなる物を奪った男についてだ」
本気で言ってるのか揶揄ったのか、茫洋な表情からは読み取れない。
いまいち捉え切れないガキ、という視線はスルーしねむが挙げたのは大我達が逃走へ追い込まれた原因。
名前は名乗っておらず、分かってるのは壮年男性らしき声。
それと複数の変身ツールを使い分けた事と、バグルドライバーが響かせた大我の記憶にない奇妙な電子音声。
上記を繋ぎ合わせれば、何者なのかが見えて来る。
いまいち捉え切れないガキ、という視線はスルーしねむが挙げたのは大我達が逃走へ追い込まれた原因。
名前は名乗っておらず、分かってるのは壮年男性らしき声。
それと複数の変身ツールを使い分けた事と、バグルドライバーが響かせた大我の記憶にない奇妙な電子音声。
上記を繋ぎ合わせれば、何者なのかが見えて来る。
「お前達を襲ったのは、氷室が言っていたエボルトの可能性が高いな」
「惑星を渡り歩いて滅ぼす生命体、だったね。彼のいた地球も崩壊手前まで追い込まれたとか」
「惑星を渡り歩いて滅ぼす生命体、だったね。彼のいた地球も崩壊手前まで追い込まれたとか」
今は亡き仲間、幻徳が最大限に警戒を向けた参加者。
残忍性や狡猾さのみならず、変身可能な幾つかの姿の特徴も聞いていたのが功を為した。
血濡れの宇宙服を思わせる装甲に加え、『エボルクロノス』なる音声。
導き出される該当者は、星狩り以外に存在しない。
残忍性や狡猾さのみならず、変身可能な幾つかの姿の特徴も聞いていたのが功を為した。
血濡れの宇宙服を思わせる装甲に加え、『エボルクロノス』なる音声。
導き出される該当者は、星狩り以外に存在しない。
「地球を滅ぼす、って……」
「そんな野郎がライダークロニクルのガシャットを奪いやがったのかよ」
「そんな野郎がライダークロニクルのガシャットを奪いやがったのかよ」
正真正銘の神たるポセイドンも十分規格外だったが、今度は星を喰らうエイリアンと来た。
余りにもスケールが違い過ぎて、元々一般人の百雲は軽く眩暈を覚える。
大我もまた、思わぬ強敵の情報に表情は険しくなるばかり。
聞くだけでも危険極まるプレイヤーが、よりにもよって時間停止(ポーズ)を手に入れた。
ハイパームテキガシャットはおろか、変身手段すらない今の自分では足止めさえも務まらないだろう。
余りにもスケールが違い過ぎて、元々一般人の百雲は軽く眩暈を覚える。
大我もまた、思わぬ強敵の情報に表情は険しくなるばかり。
聞くだけでも危険極まるプレイヤーが、よりにもよって時間停止(ポーズ)を手に入れた。
ハイパームテキガシャットはおろか、変身手段すらない今の自分では足止めさえも務まらないだろう。
「彼がここにいたら、もっと詳しく聞けたんだけどね……」
「……」
「……」
変わらないと思えた顔をどこか曇らせ、ねむがポツリと独り言ちる。
言葉に出さずとも、表情に影が差すのは鋼牙も同じだ。
重傷を負った仲間は自分達が見付ける前に、無情にも脱落を告げられた。
多くは語らなかったが、過去に大罪を犯したと察しは付く。
己の過ちに後悔し、今を生きる者の為に戦いへ身を投じた幻徳は。
共有した時間が短かろうと、間違いなく自分達の仲間だったと断言出来る。
故にこそ、一足先に逝ってしまった事実に喪失感を隠せない。
言葉に出さずとも、表情に影が差すのは鋼牙も同じだ。
重傷を負った仲間は自分達が見付ける前に、無情にも脱落を告げられた。
多くは語らなかったが、過去に大罪を犯したと察しは付く。
己の過ちに後悔し、今を生きる者の為に戦いへ身を投じた幻徳は。
共有した時間が短かろうと、間違いなく自分達の仲間だったと断言出来る。
故にこそ、一足先に逝ってしまった事実に喪失感を隠せない。
(目を逸らすな、か)
生前の幻徳が向けた言葉は、意味があったとねむ自身も思う。
みふゆの頼みを受け入れられない後ろめたさを、握り潰してしまったら。
自分と灯花のやり方ではいろはの心を殺すに等しい過ちへ、目を逸らしていたら。
単なる道具としては鋼牙を見れずにいる己自身を、押し殺したら。
今ここにいられるかどうかも、分からなかったろう。
みふゆの頼みを受け入れられない後ろめたさを、握り潰してしまったら。
自分と灯花のやり方ではいろはの心を殺すに等しい過ちへ、目を逸らしていたら。
単なる道具としては鋼牙を見れずにいる己自身を、押し殺したら。
今ここにいられるかどうかも、分からなかったろう。
いろはと灯花に並ぶ程、深い関係にあった訳ではない。
だけど、自分の行いを知って尚も受け入れてくれた者の一人だった。
お人好しで扱い易いと、前のように冷めた目ではもう見れない。
流す涙はない、でも死んで欲しくない人であったと今なら言える。
だけど、自分の行いを知って尚も受け入れてくれた者の一人だった。
お人好しで扱い易いと、前のように冷めた目ではもう見れない。
流す涙はない、でも死んで欲しくない人であったと今なら言える。
更に悪い情報として、幻徳が信頼する仲間だと言った桐生戦兎も既に退場。
加えてねむとは良い関係でないが、確実に殺し合いを否定するだろう七海やちよまで脱落者に名を連ねる事態だ。
デスゲームに乗っていない実力者が次々命を落とし、現状の厳しさを物語っている。
加えてねむとは良い関係でないが、確実に殺し合いを否定するだろう七海やちよまで脱落者に名を連ねる事態だ。
デスゲームに乗っていない実力者が次々命を落とし、現状の厳しさを物語っている。
朗報と言って良いのかは分からないが、遊戯とイリヤはどうやら無事らしい。
特に遊戯は重傷を負っており、放送まで耐え凌げるかも怪しかったが呼ばれなかったのはつまり。
何らかの回復手段が手に入ったと、そう見て良い筈。
肝心の居場所が不明なので、万事解決とは言い切れないが。
特に遊戯は重傷を負っており、放送まで耐え凌げるかも怪しかったが呼ばれなかったのはつまり。
何らかの回復手段が手に入ったと、そう見て良い筈。
肝心の居場所が不明なので、万事解決とは言い切れないが。
(肉体的にはともかく、精神面で不安が残るのは彼女もだね)
現在位置不明の仲間と言えば、イリヤもその内の一人。
彼女の場合は傷がどうこう以上に、先の定時放送で少なからず衝撃を受けたろう点を危惧する。
まさか人質扱いだった美遊が、自我を持った願望器だとは予想だにしなかった。
何故このタイミングで、浮世英寿なる男に役割を鞍替えしたかはともかく。
美遊を標的に据えたハンティングゲームの開始と、大々的に知らされたイリヤとの関係。
彼女らにとっては、非常にマズい流れとなる。
彼女の場合は傷がどうこう以上に、先の定時放送で少なからず衝撃を受けたろう点を危惧する。
まさか人質扱いだった美遊が、自我を持った願望器だとは予想だにしなかった。
何故このタイミングで、浮世英寿なる男に役割を鞍替えしたかはともかく。
美遊を標的に据えたハンティングゲームの開始と、大々的に知らされたイリヤとの関係。
彼女らにとっては、非常にマズい流れとなる。
(僕達が屋敷で戦ったあの二人、それに灯花も必要ならどんな手も使う筈だ)
美遊の情報を引き出す為、或いは美遊を誘き出す餌に使う為。
そういった目的でイリヤを捕らえ、痛め付けるくらいは平然とやるだろう。
追加ミッションによって全プレイヤーが敵と化す者は、美遊だけじゃなくイリヤもだ。
魔法体系は自分達と違えど、魔法少女の括りで見たら相当な実力者。
そんなイリヤであっても、この状況下では心身共に余裕が削られるのは確実。
鋼牙や遊戯、いろはのような確実に安全と言える仲間がいれば話は別だが。
そういった目的でイリヤを捕らえ、痛め付けるくらいは平然とやるだろう。
追加ミッションによって全プレイヤーが敵と化す者は、美遊だけじゃなくイリヤもだ。
魔法体系は自分達と違えど、魔法少女の括りで見たら相当な実力者。
そんなイリヤであっても、この状況下では心身共に余裕が削られるのは確実。
鋼牙や遊戯、いろはのような確実に安全と言える仲間がいれば話は別だが。
「そういえば大我お兄さん。武器を奪われたなら、これが役に立つんじゃないかな」
思い出したように取り出し、差し出された物へ大我の目が見開かれる。
記憶にあるのと寸分違わぬソレで、嘗ては何度か苦い思いをさせられた。
現在では仲間になったバグスターの変身ツール、ガシャットギアデュアルである。
記憶にあるのと寸分違わぬソレで、嘗ては何度か苦い思いをさせられた。
現在では仲間になったバグスターの変身ツール、ガシャットギアデュアルである。
「パラドの!?そんなもんまで支給されたのかよ……」
「正確に言うと、僕は拾っただけだけどね」
「正確に言うと、僕は拾っただけだけどね」
魔法少女の力があれば、手放したとて問題無い。
可能な限り魔力は温存する気だったが、もう悠長に構えてられる段階は過ぎた。
未だ不透明な箇所が存在すれど、ドッペルが使える以上魔女にはならない。
大我としても、戦闘手段が手に入るのは正直に言って有難かった。
スナイプ程使い慣れてはいないが、ガシャットを用いたシステムなら振り回される事態にはならない筈。
礼を言って受け取り、ふと別の問題が頭に浮かぶ。
可能な限り魔力は温存する気だったが、もう悠長に構えてられる段階は過ぎた。
未だ不透明な箇所が存在すれど、ドッペルが使える以上魔女にはならない。
大我としても、戦闘手段が手に入るのは正直に言って有難かった。
スナイプ程使い慣れてはいないが、ガシャットを用いたシステムなら振り回される事態にはならない筈。
礼を言って受け取り、ふと別の問題が頭に浮かぶ。
(あいつ、大丈夫だろうな……)
パラドクスへの変身ツールを奪われたタイミングで、良からぬ事態に巻き込まれてやいないか。
飛彩や貴利矢達もいるとはいえ、外部は今頃どうなっているのだろうか。
厄介なゲームマスターの事だ、自分達とは別に騒動を仕組んでも不思議はない。
連絡手段もロクにない現状、想像を重ねる以外に出来ずもどかしかった。
飛彩や貴利矢達もいるとはいえ、外部は今頃どうなっているのだろうか。
厄介なゲームマスターの事だ、自分達とは別に騒動を仕組んでも不思議はない。
連絡手段もロクにない現状、想像を重ねる以外に出来ずもどかしかった。
「これも渡しておく。俺では使いこなせん」
ここにいない仲間への不安を内心抱える大我へ、鋼牙からも譲渡があった。
幻徳がスカルに変身した際、使っていた物と似たデザインの銃。
魔戒剣士の鋼牙は飛び道具を用いず、デイパックに眠らせたままだったが装備に不足する者へ渡すのなら問題ない。
元々遠距離戦が得意なスナイプに変身しており、大我も銃を譲ってもらえるのは悪い話じゃなかった。
幻徳がスカルに変身した際、使っていた物と似たデザインの銃。
魔戒剣士の鋼牙は飛び道具を用いず、デイパックに眠らせたままだったが装備に不足する者へ渡すのなら問題ない。
元々遠距離戦が得意なスナイプに変身しており、大我も銃を譲ってもらえるのは悪い話じゃなかった。
「さて、お互いこれまでの経緯を伝えた所で一度僕の話に耳を傾けて欲しい」
バッティングセンター前で顔を合わせるまでに何があったか、各々把握は済んだ。
タイミングを見計らい、改めてねむが自身に注目を向けさせた。
何事かという視線を見つめ返すは眠た気な、同時に真剣味も含んだ瞳。
あくまで仮説の段階と前置きし、自身の首元を指差す。
参加者の命を縛り、ゲームマスターのスイッチ一つで生死が左右される枷。
爆弾付きの首輪についてと分かれば、三人共に表情も引き締まる。
タイミングを見計らい、改めてねむが自身に注目を向けさせた。
何事かという視線を見つめ返すは眠た気な、同時に真剣味も含んだ瞳。
あくまで仮説の段階と前置きし、自身の首元を指差す。
参加者の命を縛り、ゲームマスターのスイッチ一つで生死が左右される枷。
爆弾付きの首輪についてと分かれば、三人共に表情も引き締まる。
「僕達全員の首輪には本田やアユミという人と同じ、爆弾が仕込まれている大前提で話す」
遊戯の友人の一人や、ヴァイスフリューゲルのメンバー。
少年少女が首輪の爆発で命を奪われる、惨たらしい最期はハッキリと覚えている。
自分達が命を握られた立場と理解させるのに、これ以上ないデモンストレーションだろう。
更に会場には禁止エリアも設けられており、首輪に爆弾が仕掛けてあるのは事実と参加者へ知らしめてあった。
実は首輪の爆弾はダミーだとか、楽観的な仮説は無視して話を進める。
少年少女が首輪の爆発で命を奪われる、惨たらしい最期はハッキリと覚えている。
自分達が命を握られた立場と理解させるのに、これ以上ないデモンストレーションだろう。
更に会場には禁止エリアも設けられており、首輪に爆弾が仕掛けてあるのは事実と参加者へ知らしめてあった。
実は首輪の爆弾はダミーだとか、楽観的な仮説は無視して話を進める。
「アユミは分からないけど、御伽お兄さんの話を聞くに本田という人は普通の人間だ。だから首輪の爆弾で死ぬのは分かる」
けれど、と。
一拍置いて鋼牙達を順に見やる。
一拍置いて鋼牙達を順に見やる。
「率直に聞こう。このサイズの首輪に収まる程度の爆弾で、ポセイドンを殺せると思うかい?」
「それは……」
「辛い質問と承知の上で聞くけど、君達が襲われた触手の男。彼も首輪の爆発で殺せるのかな?」
「それは……」
「辛い質問と承知の上で聞くけど、君達が襲われた触手の男。彼も首輪の爆発で殺せるのかな?」
ねむの問いに口を噤むも、浮かんだ答えは全員同じ。
不可能である、と。
触手の男は純粋な力のみならず、傷を瞬く間に再生する驚異的な生命力があった。
ポセイドンに至ってはジャック達が何枚もの手札を切り、ようやっと死ぬ寸前にまで追い詰めた怪物。
成程確かに、如何な強者と言えども頭部を爆破されれば死は避けられない。
だが人間を超越したプレイヤーを、爆弾一つでどうにか出来るのか?
爆薬の量を増やそうと、首輪内部に仕込むのには必ず限界があるだろうに。
不可能である、と。
触手の男は純粋な力のみならず、傷を瞬く間に再生する驚異的な生命力があった。
ポセイドンに至ってはジャック達が何枚もの手札を切り、ようやっと死ぬ寸前にまで追い詰めた怪物。
成程確かに、如何な強者と言えども頭部を爆破されれば死は避けられない。
だが人間を超越したプレイヤーを、爆弾一つでどうにか出来るのか?
爆薬の量を増やそうと、首輪内部に仕込むのには必ず限界があるだろうに。
「檀黎斗が僕達に提示したクリア条件は、大きく分けて二つ。優勝かゲームマスターの打倒。要は殺し合いに乗った側と乗らない側に分けられる。この内後者が、クリアまでに必ず行わなきゃいけないのは何だと思う?」
「……首輪の解除か?」
「そう。これがある限り仮に檀黎斗達の元へ辿り着いても、スイッチ一つで勝負が決まる。首輪を外さなければ、僕達に勝ち目はゼロだ」
「……首輪の解除か?」
「そう。これがある限り仮に檀黎斗達の元へ辿り着いても、スイッチ一つで勝負が決まる。首輪を外さなければ、僕達に勝ち目はゼロだ」
当然の話だ。
首輪をどのタイミングで爆破するかは、黎斗の気分次第。
倒せる寸前まで追い詰めても、首輪を外せていなかったら勝敗は一瞬で覆る。
首輪をどのタイミングで爆破するかは、黎斗の気分次第。
倒せる寸前まで追い詰めても、首輪を外せていなかったら勝敗は一瞬で覆る。
「運営側が自分達との直接対決を禁止にしていない以上、首輪解除もゲームの一環なんだろうね。そしてクリア条件の一つに組み込んでるくらいだ、技術者がいれば外せる仕様になってると見ていい」
簡単に外せるとは限らないが、絶対に解除不可能な作りではない。
ゲームクリアを前提にしないゲームは最早、クソゲーとすら呼べない。
倫理観には大いに問題がある一方で、ゲームクリエイターとしての矜持を未だ持ち合わせるなら。
黎斗が首輪解除を不可能にはしない。
ゲームクリアを前提にしないゲームは最早、クソゲーとすら呼べない。
倫理観には大いに問題がある一方で、ゲームクリエイターとしての矜持を未だ持ち合わせるなら。
黎斗が首輪解除を不可能にはしない。
「ここでさっきの話に戻るけど。爆弾“だけ”で殺せる可能性がゼロに等しい参加者にとって、首輪は脅威じゃない。でも檀黎斗は首輪の爆発ならどんな参加者も死ぬと言った。この矛盾を解消する仮説として僕は、“爆弾で死ぬくらいに弱らせる”仕掛けが首輪にあると思う」
「弱らせる仕掛け……」
「弱らせる仕掛け……」
考え込む一同の中で、真っ先に顔を上げたのは大我。
首輪に仕込めるサイズで尚且つ、弱らせる=生命力を衰退させる類。
黎斗と最も関りが深いものが何かと言うと、思い当たるのは一つしかない。
首輪に仕込めるサイズで尚且つ、弱らせる=生命力を衰退させる類。
黎斗と最も関りが深いものが何かと言うと、思い当たるのは一つしかない。
「まさか……バグスターウイルスを仕込みやがったのか……!?」
あり得ない話、でもない。
黎斗が運営側にいる事実を加味すれば、バグスターウイルスを利用する可能性は決して低くなかった。
首輪の爆発に合わせて、ウイルスを装着者に流し込む。
といった方法を用いれば確かに、誰にとっても首輪は抑制の働きを示す。
もし真実であるなら、新たに浮上する問題は一つ。
ポセイドンのような一部の参加者だけでなく、全プレイヤーの首輪にバグスターウイルスが仕込まれてるとすれば。
話は大きく変わって来る。
黎斗が運営側にいる事実を加味すれば、バグスターウイルスを利用する可能性は決して低くなかった。
首輪の爆発に合わせて、ウイルスを装着者に流し込む。
といった方法を用いれば確かに、誰にとっても首輪は抑制の働きを示す。
もし真実であるなら、新たに浮上する問題は一つ。
ポセイドンのような一部の参加者だけでなく、全プレイヤーの首輪にバグスターウイルスが仕込まれてるとすれば。
話は大きく変わって来る。
「首輪を解除する為に手を付けたのがトリガーになって、感染する。そういう事態が起きないとも言い切れないね」
「あの野郎なら、それで死人が出ても馬鹿笑いでゲームオーバーとほざきやがるんだろうがな」
「あの野郎なら、それで死人が出ても馬鹿笑いでゲームオーバーとほざきやがるんだろうがな」
腹立たしい笑みを頭から追い出し、予想以上の深刻さに大我も眉間に皺が寄る。
あくまで仮説であり、本当にバグスターウイルスが利用されてるかは不明。
だが正しかった場合、首輪解除の難易度は大きく上がる。
明石や遊星、元々研究職な為に知識は持ち合わせる橘などの面々が集まれば首輪の解体“だけ”は可能だろう。
しかしバグスターウイルスの除去となると、医療関係者で尚且つ前々から存在を知る者。
つまり大我以外に、解決出来るプレイヤーが現状いない。
あくまで仮説であり、本当にバグスターウイルスが利用されてるかは不明。
だが正しかった場合、首輪解除の難易度は大きく上がる。
明石や遊星、元々研究職な為に知識は持ち合わせる橘などの面々が集まれば首輪の解体“だけ”は可能だろう。
しかしバグスターウイルスの除去となると、医療関係者で尚且つ前々から存在を知る者。
つまり大我以外に、解決出来るプレイヤーが現状いない。
(益々迂闊に死ねなくなった、ってことか……)
この場では百雲の主治医であり、同時に共に戦う仲間と認めたのもありもとより死ぬ気はない。
なれど自分の死が打倒主催者を掲げる者達の、詰みに直結しかねない可能性が出来て来た。
確定ではなくとも簡単に流せず、使命感とプレッシャーの両方が圧し掛かる。
同時にもう一人、こういった役目に相応しい人物。
エグゼイドの変身者たるドクターが既に力尽きた事実を、今一度噛み締めざるを得なかった。
なれど自分の死が打倒主催者を掲げる者達の、詰みに直結しかねない可能性が出来て来た。
確定ではなくとも簡単に流せず、使命感とプレッシャーの両方が圧し掛かる。
同時にもう一人、こういった役目に相応しい人物。
エグゼイドの変身者たるドクターが既に力尽きた事実を、今一度噛み締めざるを得なかった。
○
情報開示がひと段落し、待合室には百雲一人が残された。
半日かそこらで目まぐるしく状況が激変、ようやっと落ち着ける時間が生まれ肩の力が抜ける。
忘れていた喉の渇きを覚え、ちびりちびりとミネラルウォーターで潤す。
半日かそこらで目まぐるしく状況が激変、ようやっと落ち着ける時間が生まれ肩の力が抜ける。
忘れていた喉の渇きを覚え、ちびりちびりとミネラルウォーターで潤す。
鋼牙と大我は診療所内の物資を調達、ついでに自分達の傷の処置を別室で行っている。
先に手当てを施された百雲は、こうして別室で待機中。
性の悩みを抱えているのもあり、如何に大我の前とはいえ肌を晒すのに幾分か躊躇はあったものの。
態度を変えるような真似はせずにこれまでと同じ、自然体で包帯を巻いてくれたのが嬉しかった。
先に手当てを施された百雲は、こうして別室で待機中。
性の悩みを抱えているのもあり、如何に大我の前とはいえ肌を晒すのに幾分か躊躇はあったものの。
態度を変えるような真似はせずにこれまでと同じ、自然体で包帯を巻いてくれたのが嬉しかった。
手当てを行い体力を暫し回復させた後に、どう動くか。
安全を優先するなら四人で固まるべきだが、効率を考えると二手に分かれた方が良い。
ガシャットギアデュアルを譲渡され、大我も戦闘が可能になった。
片方へ戦力が偏るのは防げる為、別々に行動するのはそこまで悪手でもない。
安全を優先するなら四人で固まるべきだが、効率を考えると二手に分かれた方が良い。
ガシャットギアデュアルを譲渡され、大我も戦闘が可能になった。
片方へ戦力が偏るのは防げる為、別々に行動するのはそこまで悪手でもない。
「疲れているようだね。無理もない話だけれど」
「あっ、うん」
「あっ、うん」
不意に掛けられた声へ咄嗟に返すも、短く無難なものしか出なかった。
診療所で見付けた車椅子に乗り、自分でタイヤをここまで動かしたらしい。
診療所で見付けた車椅子に乗り、自分でタイヤをここまで動かしたらしい。
「……」
「何か言いたいことでもあるのかな?」
「えっ、ご、ごめん!その……ねむちゃんも鋼牙さんも、ぼくを見ても驚かなかったなぁって思って……」
「何か言いたいことでもあるのかな?」
「えっ、ご、ごめん!その……ねむちゃんも鋼牙さんも、ぼくを見ても驚かなかったなぁって思って……」
顔立ちこそ中性的で、少女に見える百雲だが。
声の低さや喉仏は誤魔化しが効かず、体格を悟られないように白衣で体を隠す様子を見れば。
事情を説明されずとも、ある程度の察しは付く。
しかし鋼牙達は百雲の性別へ触れず、かといって露骨に気を遣うでもない。
あくまで自然に接しており、安堵を抱かせたのがついさっきのこと。
声の低さや喉仏は誤魔化しが効かず、体格を悟られないように白衣で体を隠す様子を見れば。
事情を説明されずとも、ある程度の察しは付く。
しかし鋼牙達は百雲の性別へ触れず、かといって露骨に気を遣うでもない。
あくまで自然に接しており、安堵を抱かせたのがついさっきのこと。
「あえて深く掘り下げる理由もないからね。鋼牙お兄さんも偏見を持つような人間じゃないよ」
百雲が男と気付きはしたが、背景や悩みを事細かに聞く意味はない。
良く言えば気にしない、悪く言えば興味がない。
ねむの場合はシンプルに、そんな理由だった。
良く言えば気にしない、悪く言えば興味がない。
ねむの場合はシンプルに、そんな理由だった。
一方で鋼牙は性別故に抱える息苦しさへ、覚えがないでもない。
仲間の一人に、烈火という名の魔戒法師がいる。
魔鏡ホラー・カルマの事件の際に出会った彼女は、幼少時に魔戒騎士を目指した過去を持つ。
とはいえ騎士になれるのは男のみ、女に生まれた烈火はどう足掻いてもなれない。
性別の壁に激しく悔やんだ仲間を知るだけに、デリケートな部分への安易な詮索を自ら拒否したのだ。
仲間の一人に、烈火という名の魔戒法師がいる。
魔鏡ホラー・カルマの事件の際に出会った彼女は、幼少時に魔戒騎士を目指した過去を持つ。
とはいえ騎士になれるのは男のみ、女に生まれた烈火はどう足掻いてもなれない。
性別の壁に激しく悔やんだ仲間を知るだけに、デリケートな部分への安易な詮索を自ら拒否したのだ。
といった事情は知らず、百雲には偏見や奇異を向けないでくれるだけで有難い。
それに最初ねむを見た時は、小学生ながら達観したような態度に少々戸惑いを覚えた。
けど会話を重ねる内に、幾つか分かった事もある。
それに最初ねむを見た時は、小学生ながら達観したような態度に少々戸惑いを覚えた。
けど会話を重ねる内に、幾つか分かった事もある。
「ねむちゃんは、鋼牙さんを信頼してるんだね」
「……どうしてそう思うんだい?」
「……どうしてそう思うんだい?」
表情は変わらないものの、一瞬固まったのは気のせいだろうか。
僅かばかりの沈黙を挟んで問われる。
僅かばかりの沈黙を挟んで問われる。
「何て言うのかな、ぼくや大我さんと話す時と、鋼牙さんの時で雰囲気が違う気がして……変に身構えないで、自然に自分を曝け出してるみたいな……」
変わった者を見る視線に、百雲はうんざりする程覚えがあった。
当然と言えば当然、だろう。
生物学上の性別が男でありながら、女性の衣服を着て髪型も少女のソレへ近付ける。
全員が全員そうだと言う気はなく、受け入れてくれる人達には感謝しているが。
優しいだけの世界じゃないのも知っており、時折恐怖を感じた事も一度や二度じゃない。
自身へ向かう視線に敏感なのが影響し、百雲は他人の機敏な変化に目敏い。
だからねむが鋼牙と話す時だけ、どことなく和らいだ仕草になると気付けた。
当然と言えば当然、だろう。
生物学上の性別が男でありながら、女性の衣服を着て髪型も少女のソレへ近付ける。
全員が全員そうだと言う気はなく、受け入れてくれる人達には感謝しているが。
優しいだけの世界じゃないのも知っており、時折恐怖を感じた事も一度や二度じゃない。
自身へ向かう視線に敏感なのが影響し、百雲は他人の機敏な変化に目敏い。
だからねむが鋼牙と話す時だけ、どことなく和らいだ仕草になると気付けた。
「まあ……否定はしないよ。君も大我お兄さんには、心を許してるようだったけど」
「そう、だね。うん。大我さんがいてくれなかったら、ぼくも今ここにいられたか分からないし」
「そう、だね。うん。大我さんがいてくれなかったら、ぼくも今ここにいられたか分からないし」
少しだけ目を逸らし頷くねむへ、照れくさそうに返す。
愛想の無い態度の裏には、不器用な優しさがあり。
粗暴に見えて、その実ドクターの信念を宿し命の尊さを重んじる。
決して患者を諦めない彼と最初に会えなかったら、自分は脱落者に加わってないと果たして言えただろうか。
守られるばかりじゃなくて、一緒に戦おうと決意出来たかも分からない。
愛想の無い態度の裏には、不器用な優しさがあり。
粗暴に見えて、その実ドクターの信念を宿し命の尊さを重んじる。
決して患者を諦めない彼と最初に会えなかったら、自分は脱落者に加わってないと果たして言えただろうか。
守られるばかりじゃなくて、一緒に戦おうと決意出来たかも分からない。
喪失と痛みに苛まれる、悪夢同然のゲームに巻き込まれたけど。
大我達との出会いは、間違いなんかじゃない。
そう信じたかった。
大我達との出会いは、間違いなんかじゃない。
そう信じたかった。
【F-2 診療所/一日目/日中】
【冴島鋼牙@牙狼-GARO-シリーズ】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大・処置済み)、自分への強い怒り
[装備]:冴島鋼牙の魔戒剣@牙狼-GARO-、魔導火のライター@牙狼-GARO-
[道具]:基本支給品、黒塗りの高級車@真夏の夜の淫夢、ランダム支給品×0~2、首輪(星合翔李)
[思考・状況]
基本方針:守りし者として人々を守る。この決闘も終わらせる。
1:散り散りになった仲間達を探す。
2:ねむを守り、環いろはを探す。約束を違える気はない。
3:逃げた男(野獣先輩)から必ず仮面ライダーの力を取り戻す。
4:首輪の解析が出来そうな参加者を探し、この首輪を託す。
5:零……
6:葛葉紘汰、あの男の事は忘れない。
7:あの黒い騎士(葉霧)は何者だ…?
[備考]
※参戦時期は牙狼-GARO- ~MAKAISENKI~終了後。
※心意システムとねむの魔力を分け与えられた影響で、黄金騎士・牙狼翔に進化しました。鎧召喚時の全能力が上昇しています。
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大・処置済み)、自分への強い怒り
[装備]:冴島鋼牙の魔戒剣@牙狼-GARO-、魔導火のライター@牙狼-GARO-
[道具]:基本支給品、黒塗りの高級車@真夏の夜の淫夢、ランダム支給品×0~2、首輪(星合翔李)
[思考・状況]
基本方針:守りし者として人々を守る。この決闘も終わらせる。
1:散り散りになった仲間達を探す。
2:ねむを守り、環いろはを探す。約束を違える気はない。
3:逃げた男(野獣先輩)から必ず仮面ライダーの力を取り戻す。
4:首輪の解析が出来そうな参加者を探し、この首輪を託す。
5:零……
6:葛葉紘汰、あの男の事は忘れない。
7:あの黒い騎士(葉霧)は何者だ…?
[備考]
※参戦時期は牙狼-GARO- ~MAKAISENKI~終了後。
※心意システムとねむの魔力を分け与えられた影響で、黄金騎士・牙狼翔に進化しました。鎧召喚時の全能力が上昇しています。
【柊ねむ@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中・処置済み)、右掌に火傷(ある程度回復済)、魔力消費(大)、いろはの存在へ動揺、灯花の変貌へ困惑、鋼牙への信頼、罪悪感
[装備]:車椅子@現実
[道具]:
[思考・状況]
基本方針:手段を選ばず主催者の力を奪って魔法少女を救済する。そのつもりだったけど……
1:散り散りになった皆を探す。
2:鋼牙お兄さん達と行動。信じてみたい、と思う。
3:魔法少女への変身はなるべく控える、なんてもう言ってる場合じゃないね。
4:灯花のあの様子は……。
5:もしいろはお姉さんと会ったら僕は……。
6:希望…か……。
7:ドッペルが使えたのは何故だろう?
[備考]
※参戦時期は死亡後。
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中・処置済み)、右掌に火傷(ある程度回復済)、魔力消費(大)、いろはの存在へ動揺、灯花の変貌へ困惑、鋼牙への信頼、罪悪感
[装備]:車椅子@現実
[道具]:
[思考・状況]
基本方針:手段を選ばず主催者の力を奪って魔法少女を救済する。そのつもりだったけど……
1:散り散りになった皆を探す。
2:鋼牙お兄さん達と行動。信じてみたい、と思う。
3:魔法少女への変身はなるべく控える、なんてもう言ってる場合じゃないね。
4:灯花のあの様子は……。
5:もしいろはお姉さんと会ったら僕は……。
6:希望…か……。
7:ドッペルが使えたのは何故だろう?
[備考]
※参戦時期は死亡後。
【花家大我@仮面ライダーエグゼイド】
[状態]:心身の疲労(大)、ダメージ(大・処置済み)、バグスターウイルスの後遺症
[装備]:ガシャットギアデュアル@仮面ライダーエグゼイド、シュラウドマグナム+ボムメモリ@仮面ライダーW
[道具]:基本支給品、雑賀のDホイール@遊戯王5D’s
[思考・状況]基本方針:このゲームは俺がクリアする
1:一旦は、あの連中と合流。
2:バグスターウイルスが利用されてるのか?
3:エボルトからガシャットを取り戻したい、が……
[備考]
※参戦時期は仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング終了後
※遊戯王OCGのルールを多少把握しました
[状態]:心身の疲労(大)、ダメージ(大・処置済み)、バグスターウイルスの後遺症
[装備]:ガシャットギアデュアル@仮面ライダーエグゼイド、シュラウドマグナム+ボムメモリ@仮面ライダーW
[道具]:基本支給品、雑賀のDホイール@遊戯王5D’s
[思考・状況]基本方針:このゲームは俺がクリアする
1:一旦は、あの連中と合流。
2:バグスターウイルスが利用されてるのか?
3:エボルトからガシャットを取り戻したい、が……
[備考]
※参戦時期は仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング終了後
※遊戯王OCGのルールを多少把握しました
【百雲龍之介@不可解なぼくのすべてを】
[状態]:心身の疲労(中)、ダメージ(中・処置済)、大我とともに闘う決意
[装備]:デュエルディスクとデッキ(ウィッチクラフト)@遊戯王OCG
[道具]:基本支給品、リゼの支給品
[思考・状況]基本方針:大我さんと一緒に戦う。
1:大我さん。僕も一緒に戦うから
2:リゼちゃんの友達が生き返った……?
[備考]
※参戦時期は少なくとも十四話以降かつ二十三話までのどこか
※遊戯王OCGのルールとウィッチクラフトの回し方をだいたい把握しました。
海馬とのデュエルで、さらに成長しているかもしれません
[状態]:心身の疲労(中)、ダメージ(中・処置済)、大我とともに闘う決意
[装備]:デュエルディスクとデッキ(ウィッチクラフト)@遊戯王OCG
[道具]:基本支給品、リゼの支給品
[思考・状況]基本方針:大我さんと一緒に戦う。
1:大我さん。僕も一緒に戦うから
2:リゼちゃんの友達が生き返った……?
[備考]
※参戦時期は少なくとも十四話以降かつ二十三話までのどこか
※遊戯王OCGのルールとウィッチクラフトの回し方をだいたい把握しました。
海馬とのデュエルで、さらに成長しているかもしれません
※四人が同行するか、二手に分かれて動くかは後続の書き手に任せます。
『支給品解説』
【シュラウドマグナム@仮面ライダーW】
シュラウドが護身用に携えているエネルギー光弾銃。
基本的な概観は、トリガーマグナムやスカルマグナムと同一であるが、カラーリングはそれらとは大きく異なり、赤を基調としたものとなっている。
また、射撃時の姿勢安定を司る本体側面のシルバーの部位も「S」の字を横倒しにする形とされているのが特徴の一つである。
ボムメモリをスロットに装填し、マキシマムドライブを発動することも可能。
シュラウドが護身用に携えているエネルギー光弾銃。
基本的な概観は、トリガーマグナムやスカルマグナムと同一であるが、カラーリングはそれらとは大きく異なり、赤を基調としたものとなっている。
また、射撃時の姿勢安定を司る本体側面のシルバーの部位も「S」の字を横倒しにする形とされているのが特徴の一つである。
ボムメモリをスロットに装填し、マキシマムドライブを発動することも可能。
【ボムメモリ@仮面ライダーW】
「爆弾の記憶」を内包した、赤色のガイアメモリ。上記のシュラウドマグナムとセットで支給
端子は銀色で、丸い爆弾とそこから伸びる導火線が「B」の字を象ったイニシャルマークが特徴である。
シュラウドマグナムのスロットに装填し、マキシマムドライブを発動することが可能。
作中では仮面ライダーアクセルを変身解除に追い込む程の威力を発揮した。
「爆弾の記憶」を内包した、赤色のガイアメモリ。上記のシュラウドマグナムとセットで支給
端子は銀色で、丸い爆弾とそこから伸びる導火線が「B」の字を象ったイニシャルマークが特徴である。
シュラウドマグナムのスロットに装填し、マキシマムドライブを発動することが可能。
作中では仮面ライダーアクセルを変身解除に追い込む程の威力を発揮した。
| 147:最悪の時間 | 投下順 | 149:接続章:まだ届かないあの天辺で風が騒ぐ |
| 146:愛ゆえに苦しむ | 時系列順 | 151:出来損な愛でも許して |
| 119:Now or Never(前編) | 冴島鋼牙 | |
| 柊ねむ | ||
| 132:不可解なBugs── | 花家大我 | |
| 百雲龍之介 |