ギャルゲ・ロワイアル2nd@ ウィキ

蠢動の刻へ

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蠢動の刻へ ◆HlLdWe.oBM



太陽が天へと昇る頃、殺戮が横行する島でその二人は出会った。
人形のような少年と人形のような少女。
それぞれの思惑をその胸に抱きつつ邂逅する。

「貴方はこの殺し合いに乗っていますか」

そう少年に問いかけたのは少女の方だった。
少女の名は深優・グリーア
誰も彼もが気づかぬうちに召喚され、殺し合いを強要されるこのゲームにおいて彼女は少々異質であった。
彼女の役割はジョーカー。
“優勝を目指して積極的に殺す”・“殺し合いが加速するよう、他の参加者を扇動する”ように主催者から依頼されたイレギュラーな存在。
彼女がその依頼に従う理由は唯一つ。
彼女が守るべき人――アリッサ・シアーズを救い出す事。
そのために深優・グリーアは行動する。

「…………」

少年は深優の問いを聞き、しばし沈黙する。
少年の名は黒須太一
彼もまたこのゲームにおいて少々異質であった。

――『人間』を集めて『エイリアン』を打倒し、地球の平和を守る。

彼は地球の未来を救うのは自分しかいないと切に信じていた。
それこそが自ら行うべき事だと信じ、彼は行動する。

「申し遅れましたが、私は深優・グリーアと言います。
 もう一度尋ねますが、貴方はこの殺し合いに乗っていますか」

深優は現在ウィンフィールドとの戦闘の影響で自身の能力による戦闘行為を自粛している。
一刻も早くアリッサ様を救い出したいと思うが、無理な行動を起こして自分が破壊されては元も子もない。
しばらくは無理な戦闘は極力避け、扇動に徹するべきと考えての接触だった。
黒須太一のデイパックにはあらかじめ嘘のスパイ情報を記した紙を忍ばせておいた。
これが吉と出るか凶と出るか、これからの交渉次第である。

(……頭がぼーっとする……)

まず太一が思った事はそれだった。
それも無理もない話である。
朝方から湖に落ちて川に流され、ようやく陸地にあがった矢先に思わぬ事故で再び川へ逆戻り。
おまけに川から上がる際に足を攣り、そのまま気絶。
風邪気味になるのは仕方のない事だった。
若干の発熱、軽いめまい、寒気。
太一が感じている症状は風邪の初期症状にあてはまる。
ふらつく身体を支え直し、霞む頭で太一は考える。

(「貴方はこの殺し合いに乗っていますか」って尋ねているなら、『人間』な……)

そこまで考えて太一は深優の服装に軽い既視感を覚える。
記憶を手繰るうちに既視感の正体を把握する。

藤乃静留』――数時間前に出会った『エイリアン』だ。

その『エイリアン』の服装と深優の服装はよく見たら似ている、というよりは色違いのようにも見える。
太一の疑惑はさらに押し進んでいく。
よく考えてみると、深優はまだ太一の名を尋ねていない。
普通ならまずは名前を尋ねるべきではないのだろうか。
熱に歪む頭で太一の深優に対する疑惑は高まる一方だった。

「その前に聞きたい。藤乃静留と知り合いなのか」

深優は唐突に発せられた太一の質問の意味を考える。
ここで彼女の名が出る事の意味は何であろうか、黒須太一と藤乃静留の関係は何であろうかと。
だが、とりあえず今の段階で誤魔化すのはあまり得策でないと判断を下す。
よって事実を述べる事にした。

「ええ、同じ学校の生徒です」

その答えを聞いた瞬間――太一は深優との距離を詰めにかかっていた。
太一の中ではもうすでに『深優・グリーア』=『エイリアン』という短絡的な方程式が出来上がっていた。
エイリアンと同じ所に所属しているならエイリアンである事は確定だ。
もう少し冷静に考える余地もあっただろうが、風邪で頭が朦朧としかけている今の太一では『エイリアン』という言葉だけで十分だった。
太一は自分の武器であるカラデで以てエイリアンを倒すべく熱に浮かされたように駆ける。

「――ッ!?」

一方の深優にしてみれば、この状況は半ば想定外だった。
交渉の末での仲違いならありえると考えていたが、いくらなんでも決裂には早すぎる。
それに深優には何故太一が攻撃を仕掛けてくるのか理解できなかった。
完全なイレギュラーなケースだ。

「…………」

太一は無言でカラデを繰り出していく。
その動きは素人の域には収まらないものだった。
サバイバルナイフ無き今太一の持つ唯一の武器。
それを『エイリアン』に向けて惜しみなく披露していく。
深優はそれをかわすばかりのように見えた。

(一般平均よりは上……しかしウィンフィールドには及ばない)

深優は太一の攻撃をかわしつつ、そう結論づけた。
確かに太一は一般平均に比べたらポテンシャルは遥かに上だ。
だが深優は単体でHiMEやチャイルド、オーファンと渡り合える強者だ。
元のポテンシャルが違う上に、太一は風邪を引きかけている。
風邪の症状は太一から冷静な判断力と体力をじわじわと奪い、症状をさらに悪化させていく。
時間が経つうちに太一の動きが鈍くなってくるのは当然の理であった。
幸いにも攻撃をかわすぐらいなら現状でも問題なく実行できる。
深優はこのまま攻撃をかわし続ける事にした。

しばらく経っても二人の攻防は終わらなかった。
しかし攻防の終わりは突然訪れた。
不意に深優が何かに足を取られたかのようにバランスを崩したのだ。
これを好機と見た太一は己の持てる全力を込めた一撃を繰り出した。

「!?」

だがその一撃はあっさりと防がれた。
長時間に及ぶ戦闘で太一の体力は自身が思っている以上に消耗していたのだ。
それになにより――この隙は深優がわざと見せたものだった。
そして全力を出した後の一瞬の無防備な状態を捉えて――――

「ガァ!?」

深優は太一の首筋に手刀を叩きこんだ。
太一は堕ちそうになる意識を懸命に留めようとするが、追い打ちをかけるが如く鳩尾に深優の一撃が入った。

「エイリ、アン、め……」

太一はそれっきり意識を手放してしまった。
深優はその言葉の意味を訝しみながら太一を見下ろすばかりであった。


     ◇     ◇     ◇     ◇


(さて、どうしましょうか)

廃校の一室で深優は悩んでいた。
悩んでいる理由は目の前で気絶している黒須太一だ。
いきなり襲いかかられて隙を誘って気絶させたが、その後どうするか決めていなかった。
とりあえず自身の休息も兼ねて近くの廃校へと足を延ばしてみた。
一応廃校の倉庫に眠っていた備品の縄で縛って起きても大丈夫なようにしているが、起きる気配はなかった。
ここで殺してもいいのだが、深優はそれ以外の道を模索していた。

この島には自分ですら太刀打ちできないような者がまだいるに違いない。
そのような者と今の状態で戦いたくない。
寧ろできる事なら無理に戦わずに自身の責務を果たしたい。
ではどう対処するべきか。
考えた結果、深優は太一を利用する事を思い付いた。
その考えを行動に移すべく、太一の拘束を解いていく。
そして太一の意識を呼び戻すべく活を入れた。

「グッ……お前は……」
「気が付きましたか」
「エイリアンが――」
「一つ教えてあげましょう。この島にいる者はあなたを除いて全てエイリアンです」
「え!?」
「では、さようなら」
「ごふっ」

太一の鳩尾には再び深優の一撃が決まり、またもや太一は意識を手放す事となった。
太一が気絶したのを確認してから、深優はその場から立ち去って行った。

(これでいいでしょう。ただ殺すよりは役に立ってくれるはずです)

朝日が差し込む廊下を歩きながら深優は太一のこれからに期待する。
深優が見たところ、太一は少々頭が狂った少年のように見えた。
エイリアンだとか言っているので電波系という種類なのかもしれない。
強さも一般平均より上だが、自分には及ばない。
だが、そういう人物なら存分に場を掻き乱してくれると、密かに期待する。
わざわざ太一の神経を刺激するようにこの場にいる者は全てエイリアンだと言っておいた。
無論この後誰かに殺されてしまうかもしれないが、別に自分には何の損にもならない。
それに万一自分の事を誰かに話されてもあの様子では相手が信じる可能性も低いだろう。
やはり自分に損はない。
深優は次の手を打つべく廃校を後にした。


     ◇     ◇     ◇     ◇


「……う……ん、ここは……」

太一が再び目覚めたのは深優が立ち去ってからだいぶ経った頃だった。
寝起きと風邪の症状でぼやける頭で太一は今までの事を思い出す。
不意に見知った物が目に映った。
それは床に転がっているナイフ――しかも自分が失くしたものだった。
太一は知る由もないが、そのナイフは深優が廃校に来る途中で川に沈んでいるのを見つけて拾ったものだった。
刃物があったほうが何かと騒乱を起こし易いと思い、深優が太一の元へ残していったのだった。

「……エイリアン」

太一の頭に残る深優の最後の言葉。
真偽のほどは不明だ。

「くしゅん!」

寒気からか、まずは温泉に入って温まりたいと思う太一であった。



【D-6 廃校の一室/1日目 昼】
【黒須太一@CROSS†CHANNEL】
【装備】:サバイバルナイフ
【所持品】:支給品一式、ウィルス@リトルバスターズ!、第1次放送時の死亡者とスパイに関するメモ
【状態】:疲労(中)、やや風邪気味(軽い発熱・めまい・寒気)
【思考・行動】
0:『人間』を集めて『エイリアン』を打倒し、地球の平和を守る。
1:拡声器を使って、人と交流する。
2:『人間』をたくさん仲間にし、『エイリアン』たちを打倒する。
3:『支倉曜子』『山辺美希』『佐倉霧』と出会えれば、仲間になるよう説得する。
4:温泉に入りたい。
5:「この島にいる者は全てエイリアン」という言葉を測りかねている。

※第一回放送を聞き逃しましたが、死亡者のみ名前と外見を把握しました。
※太一の言う『エイリアン』とは、超常的な力を持った者を指します。
※登場時期は、いつかの週末。固有状態ではありません。
直枝理樹(女と勘違い)、真アサシン、藤乃静留、玖我なつき(詳細は知らない)、深優・グリーアをエイリアンと考えています。
※スパイに関するルールはでたらめです。


     ◇     ◇     ◇     ◇


深優・グリーアは観察していた。
Segway Centaurを使用して限られた地域ではあったが、参加者の動向を探っていた。
自身が戦闘行動を起こせるまではまだ時間がかかる。
なのでその間に他の参加者の様子を調べる事にしたのだ。
これにより自分は相手の事をいくらか知った状態になるので有利な立場で戦闘ができるだろう。

深優が目撃したのは衛宮士郎による羽藤桂、アル・アジフを襲撃した一連の顛末であった。
まず衛宮士郎が羽藤桂、アル・アジフを追っているのを発見。
三人は市民会館へと入っていき、しばらくしてそこに浅間サクヤも入っていった。
程なくして衛宮士郎が市民会館より撤退。
少し時間を置いて残った三人が出てくるが、その瞬間を狙って衛宮士郎が狙撃を敢行。
結果、浅間サクヤは死亡、羽藤桂がショックを受けたのかその場から走り去るとアル・アジフが一瞬の間を置いて追跡。
その少し後に誰もいなくなった場に玖我なつきが到着し、白い生物とデイパックを回収してその場を離脱。
その後玖我なつきは民家、劇場と移動してG-4の駅へ向かっていった。
入れ違いで羽藤桂、アル・アジフが狙撃された場所に帰還。
浅間サクヤの遺体に何かした後で簡単に埋葬。
その後二人はG-6の雑居ビルの中に入っていき、現在はそこに潜伏中。
一方衛宮士郎は追撃を行わずにそのまま狙撃場所より離脱。
カジノに立ち寄り、その後は一心不乱に北上中。

以上が深優の目撃した一連の顛末だった。
もちろん相手の姿が判別できるギリギリの場所から望遠視力を用いているので気づかれる可能性は低いだろう。
実際誰も自分の事に気づきはしなかった。
放送まで後少し。
もう戦闘行動を起こしても大丈夫だ。
殺し合いに乗っている衛宮士郎。
その衛宮士郎の襲撃を受けて負傷したと思われる羽藤桂とアル・アジフ。
その二人と入れ違いですぐにその場を去った玖我なつき。
もしくはまだ見ぬ参加者。
いずれに接触するにせよ先程のような失態は許されない。
アリッサ様を救えるのは自分だけなのだから。



【G-5 歓楽街/1日目 昼】
【深優・グリーア@舞-HiME 運命の系統樹】
【装備】:遠坂家十年分の魔力入り宝石、グロック19(拳銃/弾数15+1/予備48)、Segway Centaur@現実
【所持品】:支給品一式、拡声器、縄
【状態】:自身の能力での戦闘は正午まで不可(もうそろそろ戦闘可能)、全参加者の顔と名前は記憶済み
【思考・行動】
 0:アリッサを救うために行動する。
 1:"優勝を目指し積極的に殺す"。
 2:必要に応じて"殺し合いが加速するように他の参加者を扇動する"。
 3:ここにいるHiME(玖我なつき、杉浦碧、藤乃静留)を殺す。
 4:必要に応じて内通者は複数人いると思わせる。
【備考】
 ※参加時期は深優ルート中盤、アリッサ死亡以降です。
 ※場合によってはHiME能力に覚醒する可能性があります。
 ※アリッサが本物かどうかは不明です。
 ※ミサイルの残弾数については基本はゼロ、あっても残り1発。
 ※グロック19は他人に気づかれない場所にしまってあります。
 ※スパイのルールはでたらめです。
 ※衛宮士郎による羽藤桂、アル・アジフを襲撃した一連の顛末を目撃しました。
 ※どこへ向かうかは後続の書き手にお任せします。


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127:雨に煙る 時系列順 134:交錯する雄と雌~綺麗な雫~
101:it(それ)と呼ばれた少年少女 深優・グリーア 147:明日への翼 (前編)
101:it(それ)と呼ばれた少年少女 黒須太一 137:例えば孤独なら傷つくのは、一人ぼっちの自分だけだと

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