明日への翼 (前編) ◆CMd1jz6iP2
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10:45 G-4駅構内
10:45 G-4駅構内
九郎と理樹はG-4駅構内にいた。
「どうやら、犯人はもういないみたいだな」
二人がここに来る途中に見た、脱線した車両。
まあ電車もいろいろ大変なのはわかっていた。
あの乙女の猛攻で、さっきまで乗っていた電車もひどいことになっていた。
密かに電車も生き残りで必死だった。
「どうやら、犯人はもういないみたいだな」
二人がここに来る途中に見た、脱線した車両。
まあ電車もいろいろ大変なのはわかっていた。
あの乙女の猛攻で、さっきまで乗っていた電車もひどいことになっていた。
密かに電車も生き残りで必死だった。
「でも、電車も吹き飛ばすなんて……そんなすごい武器が支給されてるのかな?」
「支給品か能力かは知らないが、食らったらひとたまりもないな」
この惨状を作った張本人がまだ付近をうろついている可能性を危惧する。
その場合、この電車も狙われる可能性は高い。
二人は降りて周囲を散策したが、危険人物は見つけられなかった。
「支給品か能力かは知らないが、食らったらひとたまりもないな」
この惨状を作った張本人がまだ付近をうろついている可能性を危惧する。
その場合、この電車も狙われる可能性は高い。
二人は降りて周囲を散策したが、危険人物は見つけられなかった。
「死体も見つからない以上、脅威は健在しているはず。
あなた方の仲間にすぐ知らせるべきでしょう」
そう、二人からして危険人物と見て取れる存在は見つけられなかった。
あなた方の仲間にすぐ知らせるべきでしょう」
そう、二人からして危険人物と見て取れる存在は見つけられなかった。
「あなた方が探す犯人について知っている」
そう言い近づいた彼女は、電車破壊の犯人について話した。
(先ほどとは、逆のパターンですね)
太一の時とは反対に、生徒会長である静留と知り合っている理樹がいたために、あっさりと信用された。
やはり、あの太一が異常だったのだと深優は認識を深めた。
(先ほどとは、逆のパターンですね)
太一の時とは反対に、生徒会長である静留と知り合っている理樹がいたために、あっさりと信用された。
やはり、あの太一が異常だったのだと深優は認識を深めた。
深優は二人に犯人の情報を伝える。
何かとてつもない威力の武器で電車を攻撃したこと。
その男に襲われたが、消耗していたため命からがら逃げられたこと。
襲われた人については、安否も姿もわからない。
深優は「そういうことにしておいた」。
その容姿を聞き、理樹はアサシンに聞いていた人物を思い浮かべる。
「衛宮、士郎さんかな。正義の味方だって聞いていたけど」
「電車で乗っていたのが悪党って見方もあるが、ゲームに乗ったって考えたほうが自然だろうな」
恋人である間桐桜が呼ばれての方針転換は大いにありえた。
深優に襲い掛かったことも考えて、その線が濃厚だろうとうな垂れた。
その男に襲われたが、消耗していたため命からがら逃げられたこと。
襲われた人については、安否も姿もわからない。
深優は「そういうことにしておいた」。
その容姿を聞き、理樹はアサシンに聞いていた人物を思い浮かべる。
「衛宮、士郎さんかな。正義の味方だって聞いていたけど」
「電車で乗っていたのが悪党って見方もあるが、ゲームに乗ったって考えたほうが自然だろうな」
恋人である間桐桜が呼ばれての方針転換は大いにありえた。
深優に襲い掛かったことも考えて、その線が濃厚だろうとうな垂れた。
人の死は悲しい。友人の死はもっと悲しい。そして――
「っ……だとしたら、魔術による攻撃かな?」
「っ……だとしたら、魔術による攻撃かな?」
「疲労していたってことは、何か能力を使った可能性が高いな。
しかも連続使用は難しいらしい」
しかも連続使用は難しいらしい」
近代兵器なら弾数、魔術なら魔力。
消耗していた様子ならば、まず魔術かそれに類する力だと推測できた。
魔術だとすれば、この制限のかかった状態であの威力ということになる。
消耗していた様子ならば、まず魔術かそれに類する力だと推測できた。
魔術だとすれば、この制限のかかった状態であの威力ということになる。
(俺が同じ芸当をやらかすとしたら、マギウススタイルにイタクァ、クトゥグアは必要か?
ド畜生、アルがいないと本気で戦力になれそうにねぇぞ!)
ド畜生、アルがいないと本気で戦力になれそうにねぇぞ!)
九朗は、自分一人では行おうと思っても難しい惨状を目の当たりにし、憤りを感じていた。
だが、それは文字通り命懸けで放った一撃なのだから、仕方のないことなのだが。
だが、それは文字通り命懸けで放った一撃なのだから、仕方のないことなのだが。
「ともかく、戻って知らせよう。電車を狙う、危険な人物がいることを」
「ああ、本当に電車は危険だ。轢かれる危険性もあることも知らせるべきだ」
「ああ、本当に電車は危険だ。轢かれる危険性もあることも知らせるべきだ」
後者はみんな知ってるよね、と思いつつ理樹は時刻表を見る。
「このままF-2に行ったら、帰りに間に合う電車がないから、戻らないと」
どれだけ最速でも放送をオーバーしてしまう。
「このままF-2に行ったら、帰りに間に合う電車がないから、戻らないと」
どれだけ最速でも放送をオーバーしてしまう。
F-2からF-7駅に直行する電車は存在しない。
あまり長居していても、危険人物が来る可能性は低くはない。
あの電車の惨状が、どうしても最悪の予感をよぎらせる。
あの電車の惨状が、どうしても最悪の予感をよぎらせる。
『雑種よ! カラクリ車両が来るぞ! 跳ね飛ばされて死ぬような脆弱な肉体を持つ雑種は、精々白線の内側まで下がって震えているのがお似合いよ! ふははははは!!』
そんな焦燥感を和ます、いつものアナウンスが流れた。
「ちくしょう、イヤミか!? 轢かれかけた俺に対するイヤミか!?」
「馬鹿にしてるんだろうけど、慣れると笑えるよね……この人も主催側なのかな」
「馬鹿にしてるんだろうけど、慣れると笑えるよね……この人も主催側なのかな」
「それはわからないが、ひとつ確実なことはある。
声を聞いただけでわかるぜ、こいつは生まれついての金持ちだッ!
姫さんを含めたって、こんな金持ちには出会ったことがねえほどなァーーー!」
声を聞いただけでわかるぜ、こいつは生まれついての金持ちだッ!
姫さんを含めたって、こんな金持ちには出会ったことがねえほどなァーーー!」
「いや、落ち着こうよ! アナウンス相手に怒んないでよ」
「はっ……す、すまん。急に頭に血が上って」
「はっ……す、すまん。急に頭に血が上って」
凄い敵意だった。
放っておけば
「貧乏いる世界に、汝ら金持ち、住まう場所無し! ツベコベ言わずに金寄越せェェッ!」とでもいいそうだった。
(それにしても……)
放っておけば
「貧乏いる世界に、汝ら金持ち、住まう場所無し! ツベコベ言わずに金寄越せェェッ!」とでもいいそうだった。
(それにしても……)
九郎の風貌を見て、理樹は思う。
怪しい風貌に加え結構ある筋肉。
真人ほどではないが、その筋肉具合とボケっぷりは理樹にとって懐かしいものだった。
怪しい風貌に加え結構ある筋肉。
真人ほどではないが、その筋肉具合とボケっぷりは理樹にとって懐かしいものだった。
(そういえば、加藤先生も、アサシンさんも、館長さんも、葛木先生も、あの侍も……みんないい筋肉してたな。
もしかしたら、真人の夢である筋肉革命が起こせたのかも……って、ああ僕も駄目だ)
もしかしたら、真人の夢である筋肉革命が起こせたのかも……って、ああ僕も駄目だ)
一応ツッコミ担当の理樹。しかし彼はたまにツッコミを放棄して共にボケる傾向がある。
一度、そのために虚構世界が筋肉で覆われる最悪の結末を迎えたのもそのためだ。
一度、そのために虚構世界が筋肉で覆われる最悪の結末を迎えたのもそのためだ。
その世界での経験を理樹と鈴に引き継がせることを防ぐため、どれだけ恭介が苦労したかは別の話である。
疲れているのだろう。そのまま空気に流されるほうが楽で、ついついボケに乗ってしまったことを恥じる。
(こんなことじゃ、駄目だよね。もっとしっかりしないと)
緩めてはいけないと、心を、決意を、硬く堅く引き締めなおした。
(こんなことじゃ、駄目だよね。もっとしっかりしないと)
緩めてはいけないと、心を、決意を、硬く堅く引き締めなおした。
そんなことをしている内に電車が到着する。
反対車線に止まった電車は、問題の壊れた車両だった。
一両ながら走るその姿は頑張れよ、とエールを送りたくなる。
時刻表によると、電車に割り振られた番号は「B」。
(頑張れ、B)
(健闘を祈ります、B)
反対車線に止まった電車は、問題の壊れた車両だった。
一両ながら走るその姿は頑張れよ、とエールを送りたくなる。
時刻表によると、電車に割り振られた番号は「B」。
(頑張れ、B)
(健闘を祈ります、B)
よくわからないエールを送ったのち、目の前の電車に理樹たちは乗り込む。
「ひゃあ!?」
「あら、確かにこれは……」
「……きゅう」
その後部車両に乗っていた先客。
ユメイ、千華留、りのは三者三様のリアクションを見せた。
「ひゃあ!?」
「あら、確かにこれは……」
「……きゅう」
その後部車両に乗っていた先客。
ユメイ、千華留、りのは三者三様のリアクションを見せた。
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11:00 G-4駅電車内
11:00 G-4駅電車内
「申し訳ありませんでしたあぁぁぁ!」
謝罪のベストオブベスト、土下座。
九朗は迷いなくそれを実行した。
教科書に乗せたいほどに美しい見事な土下座だった。
謝罪のベストオブベスト、土下座。
九朗は迷いなくそれを実行した。
教科書に乗せたいほどに美しい見事な土下座だった。
仮に主催者二人が参加者に向かって同じ土下座をして見せたなら、思わず許してしまう者が出るのではないだろうか。
そんな見事な土下座も、九朗のドギツイ格好が、その効力を相殺しているのだが。
全女性の味方、源千華留は断言する。
「変質者は女性の敵です」
「ごもっともです!」
苺狩りのプロ、源千華留は断言する。
「露出狂は女性の毒です」
「ごもっともです!!」
「理解した上で、あなたの口から紡がれるべき最良の言葉は?」
「変質者は女性の敵です」
「ごもっともです!」
苺狩りのプロ、源千華留は断言する。
「露出狂は女性の毒です」
「ごもっともです!!」
「理解した上で、あなたの口から紡がれるべき最良の言葉は?」
「この生きる価値無しの変態露出狂に寛大なご処置をぉぉぉ!!」
「まぁ、冗談はおしまいにして、お互い仲直りしましょうね」
「「えー!?」」←深優・グリーアを除く全員の叫び
「その格好で歩くことは、もはやそれだけで罪。汝ら変態、見れる場所無し、とでもいいましょうか。
だけど、ユメイさんも精神的に参っていたからと言って、彼と対話をしようともしなかった。
どちらも生きていて、どちらも悪いのだから喧嘩両成敗で済むことよね?」
「俺が吐いた人類最低限のプライドを返せぇぇぇ!!」
号泣する九郎。
裸で涙する姿は、女性に騙され身包みを剥がされたチェリーボーイのようだった。
だけど、ユメイさんも精神的に参っていたからと言って、彼と対話をしようともしなかった。
どちらも生きていて、どちらも悪いのだから喧嘩両成敗で済むことよね?」
「俺が吐いた人類最低限のプライドを返せぇぇぇ!!」
号泣する九郎。
裸で涙する姿は、女性に騙され身包みを剥がされたチェリーボーイのようだった。
「大十字……九郎さん。そ、その……本当に申し訳ありませんでした」
「ぐすっ、ユメイさん……俺こそ本当に悪かった。俺もこの格好をどうにかしないといけなかったんだ……」
「それでしたら……」
ごそごそとディパックから何かを取り出す動作をしてみせるユメイ。
期待のまなざしを向ける九郎。凍り付く千華留とりの。いやな予感を感じた理樹。
再び蚊帳の外の深優・グリーア。
「ぐすっ、ユメイさん……俺こそ本当に悪かった。俺もこの格好をどうにかしないといけなかったんだ……」
「それでしたら……」
ごそごそとディパックから何かを取り出す動作をしてみせるユメイ。
期待のまなざしを向ける九郎。凍り付く千華留とりの。いやな予感を感じた理樹。
再び蚊帳の外の深優・グリーア。
勢いよく、それを取り出した。
大十字九郎は、クトゥルーにまつわる、とある歌を思い出す。
海底から起きあがる。地中から這い上がる。
天空から舞い降りる。奴らはあらゆる所に偏在する
奴らは戻ってくるだろう。
奴らが戻るとき、人類は新たな恐怖を知る。
そして大十字九郎はそれを知った。
九郎を変態にしようと、それはどこにでも存在するのだ。
天空から舞い降りる。奴らはあらゆる所に偏在する
奴らは戻ってくるだろう。
奴らが戻るとき、人類は新たな恐怖を知る。
そして大十字九郎はそれを知った。
九郎を変態にしようと、それはどこにでも存在するのだ。
【No.14――光坂学園の制服】
「ローブの下にでも……あ、あら?」
真っ白に燃え尽きた九朗にあわてるユメイ。
自分の突きつけた死刑申告を、ユメイは理解できていないらしい。
「よく理解できません。防寒機能が上がるというのに、何を躊躇っているのです?」
「そりゃあ……グリーアさん、知り合いでもっとも体格良い人があれを着てるのを思い浮かべてみてよ」
知り合いで……と言われて、記憶をたどる。
深優に、このゲームのジョーカーになれと誘った主催者二人。
真っ白に燃え尽きた九朗にあわてるユメイ。
自分の突きつけた死刑申告を、ユメイは理解できていないらしい。
「よく理解できません。防寒機能が上がるというのに、何を躊躇っているのです?」
「そりゃあ……グリーアさん、知り合いでもっとも体格良い人があれを着てるのを思い浮かべてみてよ」
知り合いで……と言われて、記憶をたどる。
深優に、このゲームのジョーカーになれと誘った主催者二人。
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「ここは……?」
気がつくと、深優は薄暗い部屋に居た。
周囲に響くのは何か硬質の物体同士がぶつかる様な音。
「やあ、深優さん。ゲームが始まるというのに、引き止めてしまって悪いね」
「ここは……?」
気がつくと、深優は薄暗い部屋に居た。
周囲に響くのは何か硬質の物体同士がぶつかる様な音。
「やあ、深優さん。ゲームが始まるというのに、引き止めてしまって悪いね」
その声に正面を見据えると、そこには女学生服姿の男と女学生服を着た屈強な体格の神父が居た。
私は迷わずミサイルを撃ち込んだ。
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私は迷わずミサイルを撃ち込んだ。
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「なるほど、理性的な行動を不可能にする、と」
あの時、もし二人があの服を着ていたならば、形容しがたい感情に流されアリッサを救う機会を失っていただろう。
深優は、理由まではわからないが、確かに短絡的な思考を取りたくなることを理解した。
(あれを、うまくこの殺し合いに使えれば……)
などと深優が本気で考えているとは、誰も思うまい。
あの時、もし二人があの服を着ていたならば、形容しがたい感情に流されアリッサを救う機会を失っていただろう。
深優は、理由まではわからないが、確かに短絡的な思考を取りたくなることを理解した。
(あれを、うまくこの殺し合いに使えれば……)
などと深優が本気で考えているとは、誰も思うまい。
騒ぐ声も収まり、時間が惜しいと、電車が駅につくまでの時間を利用しての情報交換が始める。
「そうか、恭介と会ったんだ」
「……ええ、残念ですが今どこで何をしているかはわかりませんけれど」
「……ええ、残念ですが今どこで何をしているかはわかりませんけれど」
恭介と食事をして、情報を交換したこと。
少し離れるはずが、一発の銃声の後、二人が戻って来なかったこと。
理樹への説明を聞いている内に、りのにもある事実が理解できた。
「私たち、恭介さんとトルタさんを見捨てたん、ですね」
ユメイも、あの時の強引な行動の理由がようやく合点がいった。
(守ろうとしてくれた? 初対面の私のことまで)
少し離れるはずが、一発の銃声の後、二人が戻って来なかったこと。
理樹への説明を聞いている内に、りのにもある事実が理解できた。
「私たち、恭介さんとトルタさんを見捨てたん、ですね」
ユメイも、あの時の強引な行動の理由がようやく合点がいった。
(守ろうとしてくれた? 初対面の私のことまで)
殺人肯定者がいるかもしれない場所から、一刻も早く遠ざけるために。
「あ、あの! 理樹さん、怒るなら私を! 千華留さんは、全然悪くなくて……」
「……仕方ないよ。恭介のことは心配だけど、仲間を守ろうとした千華留さんを責めるのは筋違いだし……」
トルティニタ=フィーネ。
恭介と一緒にいた恋人のような存在。それを理樹は知らない。
「恭介が、何かをたくらんでる可能性は……十分にある」
「えっ!?」
りのは、理樹の言葉に驚く。仲間だと言っていたはずなのに、どうして疑うんだろう。
「恭介は、僕と鈴を助けるためなら……命だって賭けてくれる。本当に頼もしい仲間なんだ。
でも、だからこそ……そのためなら、非情になれるのが、僕が尊敬する親友にしてリトルバスターズのリーダー、棗恭介なんだ」
最強の味方でもあり、最強の敵ともなりうる。
それが棗恭介だと、直枝理樹は断言する。
「あ、あの! 理樹さん、怒るなら私を! 千華留さんは、全然悪くなくて……」
「……仕方ないよ。恭介のことは心配だけど、仲間を守ろうとした千華留さんを責めるのは筋違いだし……」
トルティニタ=フィーネ。
恭介と一緒にいた恋人のような存在。それを理樹は知らない。
「恭介が、何かをたくらんでる可能性は……十分にある」
「えっ!?」
りのは、理樹の言葉に驚く。仲間だと言っていたはずなのに、どうして疑うんだろう。
「恭介は、僕と鈴を助けるためなら……命だって賭けてくれる。本当に頼もしい仲間なんだ。
でも、だからこそ……そのためなら、非情になれるのが、僕が尊敬する親友にしてリトルバスターズのリーダー、棗恭介なんだ」
最強の味方でもあり、最強の敵ともなりうる。
それが棗恭介だと、直枝理樹は断言する。
トルタという少女との関係が気になる。利用するつもりなのか、本当の仲間なのか。
「吊橋効果で本当に……という可能性もあるのですけれどね。
ちなみに理樹さんは、恭介さんが好みの女性のタイプなどはご存知ありませんか?」
「そうだな、ぅぅん……ロリ?」
「あー」
「そんな「なるほどなぁ」って顔しちゃうの!?」
「理樹さん、ロリとは? 聞き覚えのない単語ですが」
今まで会話に参加していなかった深優が妙なところで参加してきた。
ちなみに理樹さんは、恭介さんが好みの女性のタイプなどはご存知ありませんか?」
「そうだな、ぅぅん……ロリ?」
「あー」
「そんな「なるほどなぁ」って顔しちゃうの!?」
「理樹さん、ロリとは? 聞き覚えのない単語ですが」
今まで会話に参加していなかった深優が妙なところで参加してきた。
「実年齢、もしくは外見がいつまでも幼い娘を優しく愛でる趣向のことですわよ」
「……そう、ですか。……そう、だったのですね」
なぜだか、深優の挙動がおかしい。
「どうしたんですか?」
「いえ、大したことではありません。このゲームの主催者の一人も、その趣向の持ち主でしたので」
「……そう、ですか。……そう、だったのですね」
なぜだか、深優の挙動がおかしい。
「どうしたんですか?」
「いえ、大したことではありません。このゲームの主催者の一人も、その趣向の持ち主でしたので」
ある意味大したことだった。
「たしか、同じ学園の生徒会副会長、なんですよね?」
「参加者にはいませんが、同じ学園の生徒である美袋命……
背の小さな彼女のことを、妙な目で見つめているのを、何度か見たことがありました」
こんなゲームを開催して、更にロリ。
神父の飾りのように思えたがとんでもない。
誰もが神父同様、相当の外道らしいと認識を改める。
「参加者にはいませんが、同じ学園の生徒である美袋命……
背の小さな彼女のことを、妙な目で見つめているのを、何度か見たことがありました」
こんなゲームを開催して、更にロリ。
神父の飾りのように思えたがとんでもない。
誰もが神父同様、相当の外道らしいと認識を改める。
「お、おい! 趣味趣向は人によるし、そういう偏見は良くないんじゃないか?」
そして、墓穴を掘った裸の変態王がここに。
「九朗さん……」
冷たい。こんな冷たさを、九朗は知らない。
真冬の公園で体を洗うときも、吹雪吹き荒れるイタクァとの戦いの時だってもっとマシだった。
冷たい。こんな冷たさを、九朗は知らない。
真冬の公園で体を洗うときも、吹雪吹き荒れるイタクァとの戦いの時だってもっとマシだった。
「ま、待ってくれ! 頼む、最期のチャンスを!」
「……どうぞ」
千華留の了承を得て、大十字九朗は吼える。
「俺はロリじゃなくてペd」
ドッヂボールを顔面に浴びて、大十字九朗のチャンスは終わった。
「……どうぞ」
千華留の了承を得て、大十字九朗は吼える。
「俺はロリじゃなくてペd」
ドッヂボールを顔面に浴びて、大十字九朗のチャンスは終わった。
お互いの情報を交換していく。
理樹は作戦を伝え、星を千華留と深優に渡す。
理樹は作戦を伝え、星を千華留と深優に渡す。
「よかったぁ! プッチャンも無事なんだ!」
プッチャンがゲームに乗っていない人に拾われたことを、りのは喜んだ。
生きて喋る腹話術の人形。そんなものが主催者の目に留まらないわけがない。
参加していないという望みは薄かったため、良い人と行動しているのは幸いだった。
「でも、奏会長は……怖い目にあってないかなぁ」
「重ね重ねスマン……」
プッチャンがゲームに乗っていない人に拾われたことを、りのは喜んだ。
生きて喋る腹話術の人形。そんなものが主催者の目に留まらないわけがない。
参加していないという望みは薄かったため、良い人と行動しているのは幸いだった。
「でも、奏会長は……怖い目にあってないかなぁ」
「重ね重ねスマン……」
謎の仮面男。いったい何者なのか疑問のみが募る。
ユメイにトラウマを与えた存在。かといって、殺し合いに乗っているわけではないらしい人物。
「ユメイさんは可愛いですから、攫おうと思う気持ちは理解できますけど」
「理解しないでください……」
涙目のユメイ。だが、羽藤桂の話となり、その顔色は変わる。
ユメイにトラウマを与えた存在。かといって、殺し合いに乗っているわけではないらしい人物。
「ユメイさんは可愛いですから、攫おうと思う気持ちは理解できますけど」
「理解しないでください……」
涙目のユメイ。だが、羽藤桂の話となり、その顔色は変わる。
「桂ちゃんは、アル・アジフという方と一緒に?」
「そのはずだ。大丈夫、アルは優秀だから平気さ」
クトゥルー神話。九朗以外の人間にとって、それは創作の存在に過ぎない。
アル・アジフという魔導書の精霊などという存在も、かろうじて似た存在であるユメイだけは想像できるくらいだ。
だが、心のどこかで誰しもが理解していた。
ここでは、今までの常識など何一つ通用しない。
どれほど常識はずれでも、目の前の現実を現実を受け止めなければ、生きることさえままならない。
「そのはずだ。大丈夫、アルは優秀だから平気さ」
クトゥルー神話。九朗以外の人間にとって、それは創作の存在に過ぎない。
アル・アジフという魔導書の精霊などという存在も、かろうじて似た存在であるユメイだけは想像できるくらいだ。
だが、心のどこかで誰しもが理解していた。
ここでは、今までの常識など何一つ通用しない。
どれほど常識はずれでも、目の前の現実を現実を受け止めなければ、生きることさえままならない。
(魔術、ですか)
深優もまた、HiMEとは違う超常の力を知り考察する。
深優もまた、HiMEとは違う超常の力を知り考察する。
(ワルキューレたちの戦いのように、これが何らかの儀式なら……
人を蘇らせることも、不可能ではない。ですが……)
それならば、すでに蘇っている人はどういうことなのか。
(人を蘇らせることなど容易く……それ以上のことを起こそうとしている?)
情報はまだ足りない。
今は、迷い無くアリッサを救うことだけを考えようと、そこまで考え疑念を捨てた。
人を蘇らせることも、不可能ではない。ですが……)
それならば、すでに蘇っている人はどういうことなのか。
(人を蘇らせることなど容易く……それ以上のことを起こそうとしている?)
情報はまだ足りない。
今は、迷い無くアリッサを救うことだけを考えようと、そこまで考え疑念を捨てた。
「そうさ……俺なんかと違って、今頃頑張ってんだろうなぁ」
顔面に赤い跡が残る九朗は、電車の端っこで体育座りをしている。
「く、九朗さん。せっかく武器を貰ったんだから、それで挽回できるよ」
「こんだけ長い剣、いや刀か。使いこなすのは難しそうだな……」
九朗のローブから出っ張った刀、物干し竿。
顔面に赤い跡が残る九朗は、電車の端っこで体育座りをしている。
「く、九朗さん。せっかく武器を貰ったんだから、それで挽回できるよ」
「こんだけ長い剣、いや刀か。使いこなすのは難しそうだな……」
九朗のローブから出っ張った刀、物干し竿。
裸の男の、ローブの下から何か棒らしきモノが出っ張っている。
「なんて……馬鹿なことをしたのかしら」
千華留は、丸腰だと言う九朗に武器を与えたことを後悔した。
裸に武器は、何があろうと犯罪だったのだ。
千華留は、丸腰だと言う九朗に武器を与えたことを後悔した。
裸に武器は、何があろうと犯罪だったのだ。
ガタンと、それぞれに思い悩む乗客の意思に関係なく、定刻を迎えた電車は動き出した。
######################################
11:25 F-7駅構内
11:25 F-7駅構内
「虎太郎先生は、あの作戦をどう思います?」
近辺の捜索の成果もなく駅へと戻った二人。
しばらくして、美希が虎太郎に話しかけた。
「理樹の作戦か? どうした、お前は賛成していたと思ったが」
「で、でもほら。やっぱり子供の考えた作戦なんて、大人が見れば穴があるかもしれないじゃないですか」
「まぁ、たしかに穴だらけだな」
美希が固まるのも気にせず、虎太郎は続ける。
近辺の捜索の成果もなく駅へと戻った二人。
しばらくして、美希が虎太郎に話しかけた。
「理樹の作戦か? どうした、お前は賛成していたと思ったが」
「で、でもほら。やっぱり子供の考えた作戦なんて、大人が見れば穴があるかもしれないじゃないですか」
「まぁ、たしかに穴だらけだな」
美希が固まるのも気にせず、虎太郎は続ける。
「考えても見ろ。この星が本当に信用できる相手に渡る保証はない。
集まったところを一網打尽にするつもりのペテン師や、殺した相手から奪って持っているやつも現れかねない」
「だったら、どうして反対しなかったんです?」
虎太郎は、答える前にタバコを取り出し……火がないことを思い出して閉まった。
集まったところを一網打尽にするつもりのペテン師や、殺した相手から奪って持っているやつも現れかねない」
「だったら、どうして反対しなかったんです?」
虎太郎は、答える前にタバコを取り出し……火がないことを思い出して閉まった。
「……これぐらいせんと、人は集まらないだろうからな」
危険を度外視して、人を集める。本気で脱出するとしたらそれしかない。
「殺し合いを避けて、一人で逃げ隠れれば禁止エリアによって燻り出される。
知り合いだけで団結し、協力して生き延びてもエリアが狭まり、消耗した末に死ぬ。
なら、探すしかあるまい。危険は承知でも、この首輪を外せる知識を持つ人物をな」
危険を度外視して、人を集める。本気で脱出するとしたらそれしかない。
「殺し合いを避けて、一人で逃げ隠れれば禁止エリアによって燻り出される。
知り合いだけで団結し、協力して生き延びてもエリアが狭まり、消耗した末に死ぬ。
なら、探すしかあるまい。危険は承知でも、この首輪を外せる知識を持つ人物をな」
「脱出の手段なんて……本当にあるんでしょうか」
「少なくとも、主催者の見立てでは0%なんだろうが……」
虎太郎は何か考えているのか言葉を切り、突然問いかけた。
「少なくとも、主催者の見立てでは0%なんだろうが……」
虎太郎は何か考えているのか言葉を切り、突然問いかけた。
「山辺。お前、俺を殺せると思うか?」
「えっ? む、無理ですよそんなの!」
発言の真意が読み取れず、美希は戸惑いつつも答える。
「別に正々堂々戦えとは言っていない。だまし討ちでも、不意をつくでもいい。
どんな方法を取ってもよければ、俺を殺せると思うか?」
「えっ? む、無理ですよそんなの!」
発言の真意が読み取れず、美希は戸惑いつつも答える。
「別に正々堂々戦えとは言っていない。だまし討ちでも、不意をつくでもいい。
どんな方法を取ってもよければ、俺を殺せると思うか?」
「……罠を仕掛けたり、マシンガンで不意をつくとか、なら」
「そうだな、今の俺ならそれで死ぬだろう。
山辺や霧が俺程度の力を持つ相手を殺さねばならない場合、頭を使う必要がある」
虎太郎は、戸惑ったままの美希に本題を話す。
「想像してみろ。この殺し合いが円滑に進んで残り三人。
一人は山辺。二人目はあの悪鬼。三人目は2メートルを超える仮面の男。
この状況で、生き残る自身はあるか?」
美希はうなり、返答に困る。
「そうだな、今の俺ならそれで死ぬだろう。
山辺や霧が俺程度の力を持つ相手を殺さねばならない場合、頭を使う必要がある」
虎太郎は、戸惑ったままの美希に本題を話す。
「想像してみろ。この殺し合いが円滑に進んで残り三人。
一人は山辺。二人目はあの悪鬼。三人目は2メートルを超える仮面の男。
この状況で、生き残る自身はあるか?」
美希はうなり、返答に困る。
もしその状況になったら、どうするか。
虎太郎のように頼れる相手はいないし、どちらかに取り入るなど不可能。
虎太郎のように頼れる相手はいないし、どちらかに取り入るなど不可能。
二人が争っている隙をつくしかないが、両方を同時に倒すなど一般人相手でも難しい。
トラップをしかけるとしても、あの運動能力を持つ相手に聞くトラップを用意する間に襲われてしまうかもしれない。
そもそも、エリアも狭まっているだろうし、不意をつくことすら無理がある。
トラップをしかけるとしても、あの運動能力を持つ相手に聞くトラップを用意する間に襲われてしまうかもしれない。
そもそも、エリアも狭まっているだろうし、不意をつくことすら無理がある。
「ちょっと、無理かもしれません」
「だが、乗っていようと乗っていまいと、そこまで進んでしまえば脱出も糞もない。
もはや選択肢は自分が生き残ることをおいて他にはない。
……今はまだ違う。悪鬼に堕ちた者はいる、殺し合いを楽しむものもいる。
それでも、本気で脱出したいと願う奴らは少なからず存在する。
その中には、ゲームに乗ってもおかしくないような悪党だっているかもしれん。
乗った者、乗らない者の双方にとって、集まると言う行為は重要だ。
乗らない者に紛れて狩るチャンスであり、乗ったものを撃破する好機でもある。
そして……本来交わらない双方が出会うことで、得られる情報もあるかもしれん」
「だが、乗っていようと乗っていまいと、そこまで進んでしまえば脱出も糞もない。
もはや選択肢は自分が生き残ることをおいて他にはない。
……今はまだ違う。悪鬼に堕ちた者はいる、殺し合いを楽しむものもいる。
それでも、本気で脱出したいと願う奴らは少なからず存在する。
その中には、ゲームに乗ってもおかしくないような悪党だっているかもしれん。
乗った者、乗らない者の双方にとって、集まると言う行為は重要だ。
乗らない者に紛れて狩るチャンスであり、乗ったものを撃破する好機でもある。
そして……本来交わらない双方が出会うことで、得られる情報もあるかもしれん」
なるほどと美希は思う。
危険は承知の上。それでも集まらなければ脱出するための手がかりはバラバラのまま。
パズルを壊そうとする者ですら、パズルを完成させるピースを持っているかもしれない。
危険は承知の上。それでも集まらなければ脱出するための手がかりはバラバラのまま。
パズルを壊そうとする者ですら、パズルを完成させるピースを持っているかもしれない。
(危険は避けたいけど……たしかに、人数が減ったときのことは考えないとね)
脱出計画中の危険は、先生やお人よしの九朗が守ってくれるだろう。
だが、その分消耗は早いかもしれない。
一緒に行動していく間に、危険人物と守ってくれそうな人物を餞別していく。
脱出計画が失敗した場合、最終的に殺しあう必要が出てきてしまう。
その相手のほとんどが、会話もできないような怪人では困る。
そういう意味では、人が集まった際に無害な優しい子という顔を売っておくのもいいかもしれない。
脱出計画中の危険は、先生やお人よしの九朗が守ってくれるだろう。
だが、その分消耗は早いかもしれない。
一緒に行動していく間に、危険人物と守ってくれそうな人物を餞別していく。
脱出計画が失敗した場合、最終的に殺しあう必要が出てきてしまう。
その相手のほとんどが、会話もできないような怪人では困る。
そういう意味では、人が集まった際に無害な優しい子という顔を売っておくのもいいかもしれない。
虎太郎先生や九朗が死んだとき、涙ながらに近づけば保護してもらえるようなお人よし。
そういう人物に危険人物の情報を流し、せめて相打ちでも倒してもらう。
それで生き残った人がいれば、守ってもらい、最後の二人となる瞬間を待つ。
自分は守ってもらう対象であり続ける。最後の最後に引き金を引くことになるまでは。
それが山辺美希の出した結論だった。
そういう人物に危険人物の情報を流し、せめて相打ちでも倒してもらう。
それで生き残った人がいれば、守ってもらい、最後の二人となる瞬間を待つ。
自分は守ってもらう対象であり続ける。最後の最後に引き金を引くことになるまでは。
それが山辺美希の出した結論だった。
(パソコン……壊すなら、本当によく考えないと)
適応係数が高い人間だなどと書いていては困る。
あの黒須太一と同類に見られては困るのだ。
黒須太一は、どうやら適応係数の高さからか、すでに現実離れを始めている。
まともな会話もできない異常者と同類に見られては終わりだ。
適応係数が高い人間だなどと書いていては困る。
あの黒須太一と同類に見られては困るのだ。
黒須太一は、どうやら適応係数の高さからか、すでに現実離れを始めている。
まともな会話もできない異常者と同類に見られては終わりだ。
もし、脈絡もなくパソコンを壊せば、たとえ内容を見られずとも奇異の眼差しで見られてしまう。
パソコンを使用しようとして、ついうっかり壊す……自然だが、使えない子のレッテルが貼られる。
それでは守ってもらえなくなる。
それに、お人よしの人間を探すのに詳細名簿は役に立つかもしれない。
壊すより、利用する方法も考えるべきではと美希は悩む。
パソコンを使用しようとして、ついうっかり壊す……自然だが、使えない子のレッテルが貼られる。
それでは守ってもらえなくなる。
それに、お人よしの人間を探すのに詳細名簿は役に立つかもしれない。
壊すより、利用する方法も考えるべきではと美希は悩む。
「まぁ難しい顔をするな。お前のことは守ってやる。だから、あまり離れるなよ?」
「た、頼りにしています」
そんな会話も終わりかけたころ、電車のアナウンスが響く。
「……誰か乗っているようだな。山辺、念のため下がっていろ」
電車が止まるよりも早く、気配を察する。
美希が後ろに下がったのとほぼ同時に、電車のドアが開く。
「た、頼りにしています」
そんな会話も終わりかけたころ、電車のアナウンスが響く。
「……誰か乗っているようだな。山辺、念のため下がっていろ」
電車が止まるよりも早く、気配を察する。
美希が後ろに下がったのとほぼ同時に、電車のドアが開く。
「……よう、ずいぶん収穫があったみたいだな」
そこには、6人になって帰ってきた理樹たちの姿があった。
そこには、6人になって帰ってきた理樹たちの姿があった。
######################################
11:40 F-7駅構内
11:40 F-7駅構内
電車に乗っている間、理樹は交換した情報をメモしていた。
それを貰った虎太郎と美希は、その内容に目を通す。
「やれやれ、うちの生徒も無事だと良いんだがな」
まったく入ってこない神沢学園の生徒の情報。
これだけ人数が集まっても目撃情報がないとなると、虎太郎も不安にはなる。
「ま、便りがないのは無事な証拠という。指導が必要なことをやってなければ尚の事いい」
それを貰った虎太郎と美希は、その内容に目を通す。
「やれやれ、うちの生徒も無事だと良いんだがな」
まったく入ってこない神沢学園の生徒の情報。
これだけ人数が集まっても目撃情報がないとなると、虎太郎も不安にはなる。
「ま、便りがないのは無事な証拠という。指導が必要なことをやってなければ尚の事いい」
「私としては……曜子さんの動向も気になるんですけど」
二人の知り合いの情報は、まったくなかった。
二人の知り合いの情報は、まったくなかった。
「ユメイと言ったか。あの時は誘拐犯から守りきれなくてすまなかったな」
「いえ、気絶していて覚えがありませんが、助けてくれようとしたこと、感謝いたします」
「なに、美しいお嬢さんを守ることは男の義務だからな」
大人の魅力と言葉に、赤くなるユメイ。
「……中々の強敵ね」
「ち、千華留さんの眼が燃えてます!」
「いえ、気絶していて覚えがありませんが、助けてくれようとしたこと、感謝いたします」
「なに、美しいお嬢さんを守ることは男の義務だからな」
大人の魅力と言葉に、赤くなるユメイ。
「……中々の強敵ね」
「ち、千華留さんの眼が燃えてます!」
そんな騒ぎを続けても、一向に待ち人は現れなかった。
虎太郎と九朗が周囲を見張り、おのおのは分かれて話している。
虎太郎と九朗が周囲を見張り、おのおのは分かれて話している。
もうすぐ、放送前の最後の電車が来る。
これに乗っていなかったら、おそらく放送には間に合わない。
放送しだいで待つ必要もなくなる。
そんな不安を誰しもが思い出したとき、電車が到着を知らせるアナウンスが流れた。
これに乗っていなかったら、おそらく放送には間に合わない。
放送しだいで待つ必要もなくなる。
そんな不安を誰しもが思い出したとき、電車が到着を知らせるアナウンスが流れた。
######################################
11:55 F-7駅構内
11:55 F-7駅構内
到着した電車のドアが開く。
中から出てきた人物は、しかし待ち人の誰でもなかった。
「なっ、何だお前たちは? そんな大人数で……」
こちらの様子に驚く女性。
まずは、警戒を解こうと話しかけようと理樹が前に出る。
中から出てきた人物は、しかし待ち人の誰でもなかった。
「なっ、何だお前たちは? そんな大人数で……」
こちらの様子に驚く女性。
まずは、警戒を解こうと話しかけようと理樹が前に出る。
警戒した女性の手には、いつの間にか銃があった。
虎太郎が理樹を静止しようとするのとほぼ同時に。
虎太郎が理樹を静止しようとするのとほぼ同時に。
発砲音が鳴り響いた。
「えっ……?」
源千華留の思考は停止した。
そんなはずはない。ないはずだった。
千華留はその身を、りのの盾となるように立っていた。
だから、撃たれて倒れるのは何があっても千華留のはずだった。
だけど。
源千華留の思考は停止した。
そんなはずはない。ないはずだった。
千華留はその身を、りのの盾となるように立っていた。
だから、撃たれて倒れるのは何があっても千華留のはずだった。
だけど。
後ろから撃たれたのでは、りのの壁になることも無意味だった。
「ア、え、……や、やだ……」
白く柔らかい肌は、無骨な鉛によって汚された。
りのの足が赤く染まる。
白く柔らかい肌は、無骨な鉛によって汚された。
りのの足が赤く染まる。
刹那、時間は止まった。
だが、りのを撃った人物の動きは止まらない。
すぐに銃口を放心状態の千華留へと向ける。
「ッ……!?」
突然、視界を蝶のようなものが塞ぐ。
特殊な攻撃だと判断した襲撃者―――深優・グリーアは撤退を開始する。
崩れ落ちた蘭堂りのをつかみ上げ
「後は頼みます、なつきさん」
そう、女性――玖我なつきに捨て台詞を残して。
だが、りのを撃った人物の動きは止まらない。
すぐに銃口を放心状態の千華留へと向ける。
「ッ……!?」
突然、視界を蝶のようなものが塞ぐ。
特殊な攻撃だと判断した襲撃者―――深優・グリーアは撤退を開始する。
崩れ落ちた蘭堂りのをつかみ上げ
「後は頼みます、なつきさん」
そう、女性――玖我なつきに捨て台詞を残して。
「りのちゃん!」
千華留は銃を片手に走る。
それを追うユメイ。
「なっ、なっ――!」
「理樹、九朗も行け! こいつは俺が相手をする」
狼狽していたなつきは、何も理解できぬまま、しかし迎撃体制に入る。
千華留は銃を片手に走る。
それを追うユメイ。
「なっ、なっ――!」
「理樹、九朗も行け! こいつは俺が相手をする」
狼狽していたなつきは、何も理解できぬまま、しかし迎撃体制に入る。
「理樹、りのを追うぞ! まだ助けられる!」
「う、うん!」
「う、うん!」
走り出す理樹と九郎。
駅に残ったのは、虎太郎、なつき。
そして隠れている者だけだった。
駅に残ったのは、虎太郎、なつき。
そして隠れている者だけだった。
(一瞬でこんなことに……最悪じゃないのっ!)
人が集まることの危険性は、たしかに虎太郎の言うとおりだった。
だが、その危険は予想以上だった。
このまま脱出計画に乗っていいのか、美希が疑問を抱くには十分なほどに。
人が集まることの危険性は、たしかに虎太郎の言うとおりだった。
だが、その危険は予想以上だった。
このまま脱出計画に乗っていいのか、美希が疑問を抱くには十分なほどに。
外に出た九郎と理樹は周囲を見渡すが、りのどころかユメイたちまでいなかった。
「それじゃあ、見つけたらこのトランシーバーで連絡して」
「わかった!」
理樹は九郎にトランシーバーを渡して二手に分かれた。
深優・グリーアに騙されていた事は悲しむ暇もなく、りのを探す。
ユメイと千華留の姿も見当たらない。
走る。
走る。
走る。
あれからほんの数分、だというのに影も形も見えないことに焦りが生まれ――
「それじゃあ、見つけたらこのトランシーバーで連絡して」
「わかった!」
理樹は九郎にトランシーバーを渡して二手に分かれた。
深優・グリーアに騙されていた事は悲しむ暇もなく、りのを探す。
ユメイと千華留の姿も見当たらない。
走る。
走る。
走る。
あれからほんの数分、だというのに影も形も見えないことに焦りが生まれ――
「――さて、放送の時間だ。
悪魔は、それに追い討ちをかける。
悪魔は、それに追い討ちをかける。
「―――あ」
放送は終わった。
理樹は、急いで取り出したメモに放送の内容をまとめる。
まとめて、その名前を書くときに手が震えた。
先ほど聞いたばかりの事実を、書いていく。
放送は終わった。
理樹は、急いで取り出したメモに放送の内容をまとめる。
まとめて、その名前を書くときに手が震えた。
先ほど聞いたばかりの事実を、書いていく。
真アサシンに。
棗 鈴 に。
これで、本当になってしまった。
こんな現実を見つめるために、ナルコレプシーを克服したわけじゃない。
戻ってしまいたかった。現実から目をそらしてしまいたかった。
名簿を取り出したときに姿を覗かせた骸骨の面が理樹を見つめる。
こんな現実を見つめるために、ナルコレプシーを克服したわけじゃない。
戻ってしまいたかった。現実から目をそらしてしまいたかった。
名簿を取り出したときに姿を覗かせた骸骨の面が理樹を見つめる。
大丈夫だよと、語りかける。
まだ、戦えると。鈴を奪われた怒りは、憎悪は、立ち上がり、進む力をくれる。
だけど、進む道はどこだったろう。
先ほどまで進んでいた道を外れていないだろうか。
この道は、途切れていないだろうか。
わからない、いくら考えても進んでいた道がわからない。
理樹は足を止める。
その答えを求めるために。
まだ、戦えると。鈴を奪われた怒りは、憎悪は、立ち上がり、進む力をくれる。
だけど、進む道はどこだったろう。
先ほどまで進んでいた道を外れていないだろうか。
この道は、途切れていないだろうか。
わからない、いくら考えても進んでいた道がわからない。
理樹は足を止める。
その答えを求めるために。
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12:20 F-7を中心としたどこか
12:20 F-7を中心としたどこか
「ちくしょう、理樹! 応答しやがれこの野郎!」
放送を聞いて、嫌な予感がした九郎は理樹を探した。
トランシーバーで呼びかけても、その返答はなかった。
(何の役にも立てないのかよ、俺は! 俺ってやつは!)
アルがいなければ三流魔術師。そんなことはわかっているとはいえ悔しい。
九郎は願う。何か力になりたい、俺の、俺ごときでもできる何かがあることを。
放送を聞いて、嫌な予感がした九郎は理樹を探した。
トランシーバーで呼びかけても、その返答はなかった。
(何の役にも立てないのかよ、俺は! 俺ってやつは!)
アルがいなければ三流魔術師。そんなことはわかっているとはいえ悔しい。
九郎は願う。何か力になりたい、俺の、俺ごときでもできる何かがあることを。
だから
『九郎……さん』
「理樹!」
今、この返答こそが俺にできることだと、相手の名を強く叫んだ。
「理樹!」
今、この返答こそが俺にできることだと、相手の名を強く叫んだ。
「どこにいる、すぐ行くから教えやがれ!」
『僕は……どうすればいいんだろう』
理樹は、九郎の声など聞いていないかのように言葉を発するだけだった。
『鈴を殺した奴が憎い。殺してやりたい、八つ裂きにしてやりたい。
でも、こんな恨みや憎しみじゃあ、鈴は喜んでくれない!』
『僕は……どうすればいいんだろう』
理樹は、九郎の声など聞いていないかのように言葉を発するだけだった。
『鈴を殺した奴が憎い。殺してやりたい、八つ裂きにしてやりたい。
でも、こんな恨みや憎しみじゃあ、鈴は喜んでくれない!』
やはり、と九郎は血が出るほど拳を握る。
鈴の死は、理樹の心を大きく揺さぶっている。
硬い、堅い、固い決意は続いた衝撃に砕けてしまったのだ。
今、理樹は二つの感情が争っているのだ。
「僕は……この怒りを捨てられない、この憎しみを忘れられない。
僕は、これを捨ててまで……みんなのために、戦えないよ……!」
鈴の死は、理樹の心を大きく揺さぶっている。
硬い、堅い、固い決意は続いた衝撃に砕けてしまったのだ。
今、理樹は二つの感情が争っているのだ。
「僕は……この怒りを捨てられない、この憎しみを忘れられない。
僕は、これを捨ててまで……みんなのために、戦えないよ……!」
「ああ、捨てるな。そんな必要はない」
『――え?』
ただ平然と、答えを口にした。
「なんで怒りを捨てる必要がある! お前は、自分の半身を失ったんだぞ!
怒れ、吼えまくれ、泣きまくれ、恨みつらみを吐き捨てろ、ピー音入るような罵詈雑言をぶつけてやれ!!」
予想外の答えだったのか、理樹の返答はない。
「問題はその後だ、直枝理樹。お前は止まっちまうのか? 縦にか横にか半分体を失った「程度」で!
お前は、止まるのか? 半身が歩みたかった道を、まだ歩けるのに! やり遂げたかった想いをまだ果たせるのに!
お前は……彼女の分も、お前をマスターと呼んだあの人の分も戦えるのに!」
『――え?』
ただ平然と、答えを口にした。
「なんで怒りを捨てる必要がある! お前は、自分の半身を失ったんだぞ!
怒れ、吼えまくれ、泣きまくれ、恨みつらみを吐き捨てろ、ピー音入るような罵詈雑言をぶつけてやれ!!」
予想外の答えだったのか、理樹の返答はない。
「問題はその後だ、直枝理樹。お前は止まっちまうのか? 縦にか横にか半分体を失った「程度」で!
お前は、止まるのか? 半身が歩みたかった道を、まだ歩けるのに! やり遂げたかった想いをまだ果たせるのに!
お前は……彼女の分も、お前をマスターと呼んだあの人の分も戦えるのに!」
『……………辛いね、正義の味方は』
「ああ、好きでやってるんじゃなきゃ、願い下げだぜ」
トランシーバーから聞こえる声の質が変わった。
トランシーバーから聞こえる声の質が変わった。
「でも、わからないよ。こんな気持ちが……誰かを救えるの?」
「――理樹、憎悪と邪悪は違うものだ。お前は怒り、されど魂を黒く染めるな!
その怒りを忘れるな。その憎悪を捨てるな。だが、けして間違うな!
その怒りを凝縮しろ、その憎悪を剣と成せ! その剣を手に取れ!」
だからこそ、紡ぐ。
「――理樹、憎悪と邪悪は違うものだ。お前は怒り、されど魂を黒く染めるな!
その怒りを忘れるな。その憎悪を捨てるな。だが、けして間違うな!
その怒りを凝縮しろ、その憎悪を剣と成せ! その剣を手に取れ!」
だからこそ、紡ぐ。
「憎悪の空より来たりて」
紡ぐ。
「正しき怒りを胸に」
紡ぐ。
「我等は、魔を断つ剣を執る!」
――最強の聖句を、紡ぐ!
「汝、無垢なる刃――デモンベイン!」
紡ぐ。
「正しき怒りを胸に」
紡ぐ。
「我等は、魔を断つ剣を執る!」
――最強の聖句を、紡ぐ!
「汝、無垢なる刃――デモンベイン!」
『正しき、怒り……』
「間違った怒りは、その矛先を見誤る。無関係な人まで傷つける。
だが、正しい憎悪なら! それは魔を断つための剣になるんだ!
―――鈴の分まで、強く生きろ、直枝理樹。
鈴の分の剣を、銃を。お前は一人で持って戦わないとならないんだからな」
「間違った怒りは、その矛先を見誤る。無関係な人まで傷つける。
だが、正しい憎悪なら! それは魔を断つための剣になるんだ!
―――鈴の分まで、強く生きろ、直枝理樹。
鈴の分の剣を、銃を。お前は一人で持って戦わないとならないんだからな」
トゥーソード/トゥーガン
『―――本当に大変だ。それじゃあ、まるで……二 闘 流 だね』
『―――本当に大変だ。それじゃあ、まるで……二 闘 流 だね』
これで大丈夫。九郎は安心し理樹に居場所を尋ねる。
「理樹、すぐそっちに行く。お前今どこに……」
「理樹、すぐそっちに行く。お前今どこに……」
返答が無い。
帰ってきたのは、銃声らしき音のみ。
(くそっ、どこだ!?)
帰ってきたのは、銃声らしき音のみ。
(くそっ、どこだ!?)
それきり、トランシーバーから応答はなかった。
九郎は走る。
(このままじゃ、口だけの男になっちまうだろぉがぁぁぁ!!)
すでに大きな使命を果たしたことに気がつかず。
九郎は走る。
(このままじゃ、口だけの男になっちまうだろぉがぁぁぁ!!)
すでに大きな使命を果たしたことに気がつかず。
【F-7を中心としたどこか /一日目 日中】
【大十字九郎@機神咆吼デモンベイン】
【装備】:物干し竿@Fate/stay night[Realta Nua]、キャスターのローブ@Fate/stay night[Realta Nua]
手ぬぐい(腰巻き状態)、
【所持品】:アリエッタの手紙@シンフォニック=レイン、凛の宝石5個@Fate/stay night[Realta Nua]
木彫りのヒトデ7/64@CLANNAD、
【状態】:疲労(大)、背中にかなりのダメージ、股間に重大なダメージ、右手の手のひらに火傷
【思考・行動】
0:理樹を、りのを救う。
1:アルと桂、奏を捜索。
2:人としての威厳を取り戻すため、まともな服の確保。
3:アル=アジフと合流する。
4:ドクターウエストに会ったら、問答無用で殴る。ぶん殴る。
5:変態で役立たずなのを返上するんだぁぁぁぁl!!!
【備考】
※千華留、深優と情報を交換しました。
深優からの情報は、電車を破壊した犯人(衛宮士郎)、神崎の性癖?についてのみです。
※仮面の男(平蔵)をあまり警戒していません。
※理樹の作戦に参加しています。 把握している限りの名前に印をつけました。
【大十字九郎@機神咆吼デモンベイン】
【装備】:物干し竿@Fate/stay night[Realta Nua]、キャスターのローブ@Fate/stay night[Realta Nua]
手ぬぐい(腰巻き状態)、
【所持品】:アリエッタの手紙@シンフォニック=レイン、凛の宝石5個@Fate/stay night[Realta Nua]
木彫りのヒトデ7/64@CLANNAD、
【状態】:疲労(大)、背中にかなりのダメージ、股間に重大なダメージ、右手の手のひらに火傷
【思考・行動】
0:理樹を、りのを救う。
1:アルと桂、奏を捜索。
2:人としての威厳を取り戻すため、まともな服の確保。
3:アル=アジフと合流する。
4:ドクターウエストに会ったら、問答無用で殴る。ぶん殴る。
5:変態で役立たずなのを返上するんだぁぁぁぁl!!!
【備考】
※千華留、深優と情報を交換しました。
深優からの情報は、電車を破壊した犯人(衛宮士郎)、神崎の性癖?についてのみです。
※仮面の男(平蔵)をあまり警戒していません。
※理樹の作戦に参加しています。 把握している限りの名前に印をつけました。
146:崩壊/純化 | 投下順 | 147:明日への翼 (後編) |
146:崩壊/純化 | 時系列順 | |
138:再起 | 大十字九郎 | |
138:再起 | 直枝理樹 | |
138:再起 | 加藤虎太郎 | |
138:再起 | 山辺美希 | |
139:ストロベリーミサイル | 源千華留 | |
139:ストロベリーミサイル | 蘭堂りの | |
139:ストロベリーミサイル | ユメイ | |
132:蠢動の刻へ | 深優・グリーア | |
118:I am me | 玖我なつき | |
131:それでも君を想い出すから | 鉄乙女 |