ギャルゲ・ロワイアル2nd@ ウィキ

踊り場の見えざる手

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踊り場の見えざる手 ◆LxH6hCs9JU



 風が、南東の方角から北西の方角に吹き抜けていくのがわかる。
 この南東風は海から水分を抱え込み、湿った風として島中央の山へとぶつかる。
 含まれた水分は大量の雨雲へと変じ、山の手前にある開拓地は雨の多い地域、山を越えた未開拓地は乾いた地域となる。
 ここが熱帯の島国だというのなら、スコールの可能性すらあり得るだろう。夕刻の風は、肌につくほど湿っていた。

 ――こんなものは、都会暮らしを主とする知識豊富な旅人の仮説にすぎない。
 風の性質、気候の状態、そもそもとしてこの島を取り巻く環境の全て、道理で考えていいものなのかも謎なのだ。
 雨が酷い――先に出会った憂鬱なる凡夫、クリス・ヴェルティンは空を見上げてそう言った。
 彼にしか見えないものが映っていたのか、それは幻覚の一言で片付けられるほど安易なものなのか、否か。

「なんと見事な水平線か……アーカムシティに身を置いていては、永遠に拝めることはないであろうな」

 壮大な思考とは裏腹な、ちんまりとした体を持つ少女――アル・アジフは感嘆した。
 摩天楼の群集によって形成される彼女の滞在先、アーカムシティは大陸の湾岸線から程遠い位置に点在している。
 よってアル自身、こうやって砂浜の上に立ち、果てしなく続く水平線を眺め、南国の情景に浸るというのも、極めて稀な体験だった。

 現在地は島の最南東。
 リゾートエリアに相応しいエメラルドグリーンの海面が、視界の端まで見渡せる絶景の位置である。
 夕日も傾き、水面が空模様を橙色に映すこの時刻、アルはわざわざ会場の隅にまで足を運んだのだった。
 その原因は、〝方舟〟と呼ばれるステージに突如姿を現した少年――いや、少女によるものが大きい。

「まったく、妾と九郎の出会いとて、あそこまで突然なものではなかったぞ……?」

 つい先ほどの動乱を思い起こし、アルは疲れ気味に苦笑する。
 そう……あの出会いは突然であり、劇的でもあり、そしてアルの『このゲームに対する考え方』に、多大な影響を及ぼすことになったのだった。


 ◇ ◇ ◇


 話は数時間前に遡る。
 トルティニタ・フィーネの話にあったクリス・ヴェルティンとの接触を果たし、羽藤桂が陰鬱としていた彼の雨雲を取り払った矢先のことだった。

 ――『え、あ、っと……その……き、キクチマコトデース!』

 アルと桂が訪れた〝方舟〟のホール、そのお立ち台が光に包まれ、霧散したところにジャージ姿の女の子が現れた。
 彼女はアルたちと目が合うや否や、甲高い声で菊地真と名乗った。
 アルと桂は当初、精悍な顔つきの彼女を男の子と見間違えていたのだが、クリスは異性ゆえの眼力か否か、すぐに真が女性であると気づいたようだった。

 ――『教会の懺悔室の扉を潜って、気づいたらここに出ただと? たわけたことをぬかすな!』

 面子が面子ゆえ、互いに敵意がないことはすぐに理解し合えた。
 各々の自己紹介も簡略に済ませ、アルたちが最も気にかけていた『真が突然現れた謎』へと話題が移ったとき、トラブルは起きた。

 ――『優しそうな女性の声に促された!? 馬鹿な、それはどう考えても、あの二人組の手の者ではないか!』

 真の軽率な判断に対し、アルが即行で糾弾したのだ。
 接触した直後は晴れやかな笑顔を浮かべていた真も、アルの言葉の矛を受けて、自らが起こした行動の迂闊さ、決断の良し悪しを重く考え直したようだった。
 その後は意気消沈。教会に至るまでのあらましを語れるだけ語り、海岸付近のログハウスで身を休めている。
 広大な海を眺めれば気持ちも安定するだろう、という桂の提案によるものだった。
 現在も、桂はクリスと共に真のケアを続けている。
 真が遭遇した事態を重々しく捉えたアルは、こうやってただ一人、邪魔の入らぬ環境で考察を練っているのであった。


 ◇ ◇ ◇


「……今回ばかりは、妾の考えすぎと保留にすることもできまい。懺悔室の謎の声、か」

 菊地真との遭遇。彼女が齎した情報の一端。
 並行世界の概念とその信憑性、教会という北西端に位置する施設の謎について。
 考え、片をつけていかなければならないものは山ほどある――それも、順々に攻略していく他ない。

(そうだな……まずは、真の言っていた並行世界の可能性について、か)

 潮の香りで気を落ち着かせながら、アルは言葉もなく冷静に、思考の海へと潜水する。

 並行世界――ある一点を分岐点とし、大樹の根のように無数に分かれた世界体型。
 それはしばしば「if」という名で、創作などの要素として取り入れられる。
 もしかしたらあったかもしれない、こことは違う、可能性の世界――それが、並行世界と呼ばれる概念だ。

 これに関しては、さして驚いたるものでもなかった。
 既に、死者が復活しているというおかしな事例――双子の鬼であるノゾミとミカゲの一件を、不可解な要素として思考の端に据えていたためだ。
 ネクロノミコンの名を冠するアルでさえ、死者蘇生の術法など知りえはしない。ただ否定できない可能性として、考慮だけはしておいた。
 死者蘇生と並行世界、それらをこのような催しのために繰れる者がいるとしたら、はたして前者と後者のどちらが、より存在する可能性が高いだろうか。

(どっちもどっち、天秤にかけることすら馬鹿馬鹿しい)

 真の同僚である高槻やよいなる少女が、真とはまったく違う活動を行っていたというのも、並行世界説の裏づけとしては十分な材料と成り得る。
 対して、死者蘇生の概念については未だ解答が及んでおらず、「自分は死んだはずだ」という人間にはまだ、巡り会っていなかった。

 ノゾミとミカゲに関しても、桂のいた世界では『サクヤに退治された』。見せしめとして殺された二人の世界では『退治されていなかった』と解釈することができる。
 魔術の枠組みで考えるならば、異なる世界の干渉も、時間軸の超越も、死者の蘇生も、どれも説明の仕切れる概念ではない。
 説明はできないが、どれも『あり得る』と仮定して――一番スマートに物事が片付くのが、真の唱えた並行世界説だったのだ。

(まあ、これに関しては考えても事なき、だな。それよりも、気になるのは……)

 教会のこと。懺悔室のこと。女性と思しき声のこと。瞬間移動のこと。
 菊地真がアル・アジフらと接触することになった経緯、その不可解さについてだった。
 アルは自身の中に刻まれたページ、真の証言の断片を、索引していく。

 ――『えっと、声は大人びてて……どう考えても女性だった。あと、一人称がボクと同じで〝僕〟だったかな』

 実際に懺悔室の主と会話をしての、真が受けた印象について考える。
 閉鎖された半密室において、頼れる情報は声質のみ。それも真のイメージに委ねるしかない始末。
 あくまでも参考程度のものとして、アルは声の正体に思い当たる節がないか探っていく。

 ――『参加者じゃなくて、教会に置かれた舞台装置の一環だって、自分でそう言ってた』

 ものは言いようだな、とアルは半ば感心し、それを真に受けた真に対し半ば呆れる。
 懺悔室の主は、自分は参加者ではない、とあからさまに主張しているように思える。
 殺し合いの場において、わざわざ教会の懺悔室に潜伏し、来訪者との人生相談を望む者など、確かに居はしないだろう。
 ならば、参加者ではないという弁にも納得はできる。
 魔術を用いた声だけの代替物か、もしくはもっと単純に、機械によって音声を作り出していたのか。

 ――『やよいとは一旦距離を取ったほうがいいって、そうアドバイスしてくれたんだ』

 決断こそ真に委ねたものの、仲間との別離という選択肢を与えたのは、紛れもなくその謎の声だ。
 だとすれば、声の目的は真を教会からこの地に移送することか、もしくは真が残してきた高槻やよいのほうか。
 教会という建物自体に、なにか調べられてはまずい要素が詰まっているとも考えられる。
 やり方としては回りくどいが、趣向としては理解できなくもない。このゲームの裏に潜む者の意志ならなおさらだ。

(そして、なにより気になるのは、やはり――)

 遥か北西の空を睨みつけ、アルは思索を中断する。
 頭の中で構成した幾つかの仮説を胸に、これを内に秘めてばかりでは意味がない、と一歩踏み出す。
 アル・アジフには仲間がいる。
 元のパートナーたる大十字九郎や、強力な支援者である覇道財閥の面々と比べれば些か頼りないが、贅沢は言っていられない。
 穏やかな波を背に、アルがビーチを去ろうとした、そのときだった。

「おーい! アールーさーん!」

 戻ろうとした拠点、砂浜からでも十分目視できる位置に建つログハウスより、ジャージ姿の少年……らしさを誇る少女が、手を振りながらアルに駆け寄ってくる。
 やはり、見た目から受ける印象はどう考えても美少年……とアルは心中で苦悶しつつ、友好的な素振りを見せる少女、菊地真を迎えた。
 先ほどまでは力なく項垂れていたはずの真だったが、徐々に近づいてくるその姿は、見るかに溌剌としている。

「ふっ、その様子だと振り切ったようだな。やはり桂に任せて正か――」
「アールーさーん!」
「ふごぉっ!?」

 悠々と真の笑顔を迎え、叱咤した者として賛辞の一つでもくれてやろうかと思ったところで、真は予想外にも、アルの身へと突貫してきた。
 華奢な体は衝撃を抑えきれず、勢いのままごろごろと砂浜の上を転がる。
 二転、三転ほどして、砂塗れになったアルと真が起き上がった。
 それぞれ、怒りと喜びの表情を浮かべて。どちらが前者でどちらが後者かは、語るまでもないだろう。

「こっ……の、うつけが! いきなりなにをするか!?」
「あ……その、ありがとうございます! なんか、とにかくお礼が言いたくて!」
「どこの世にタックルから入る礼があるのだ!? 汝はあれか、礼儀を知らぬのか!?」
「いやぁ、そういうのはどうも苦手なんで、勢いで。でも、感謝してるのは本当ですから!」

 いきなりの無礼に憤怒の意を表すアルだったが、真のさっぱりとした笑顔に気を削がれ、押し黙る。

「随分と晴れ晴れした顔つきだが……頭でもぶつけたか?」
「やだなぁ、別におかしくなっちゃったわけじゃないですよ。ちょっと感極まっちゃっただけですってば!」
「汝は感極まると人を襲うのか!? 沈んでおったと思えば急に元気になりおって、いったい――」
「おーい、アルちゃーん」

 不自然なほどに笑顔を振り撒く真。彼女をそうなるよう仕向けた根源が、遠くでのんきに、手を振っている。
 ああ、彼女しかいない。アルは、確かに真の精神回復を彼女の手腕に委ねたのだから。
 にしてもやりすぎだろう、とやや忌々しげな目線を送るが、おどけた表情を浮かべる彼女は意にも関さない。

「ボク、気づいたんです。住む世界が違ったとしても、やよいはボクの知ってるやよいなんだ、って。
 やよいも、やよいの知っているボクを見てくれてた。変な気づかいはいらない。
 だって、ボクは菊地真で、やよいは高槻やよいなんだから!
 あ~、ボクはなにをうじうじ悩んでたんだろう。らしくない!
 ボクは、アルさんと桂さんの言葉で目が覚めたんです! 大切なのは、信頼し合うことなんだ!」

 なにやらキラキラとした瞳で熱弁を振るう真だったが、アルはあえて視線を合わせない。
 真に変化を齎した元凶は、アルのもとまで駆け寄ると、可愛らしく首を傾げる。

「んー? どうしたのアルちゃん? なんだか苦いものでも食べたような顔してる」
「いや、少しばかり呆れていただけだ。桂よ……汝、人を励ます天才ではないか?」
「えぇ~、そんなことないよ~」

テレた素振りで否定する桂を見て、アルはわざとらしく溜め息をつく。
 が、桂も真もアルが呆れているとは微塵も考えないのか、純真な眼差しをアルに向けていた。

「……なんだか、苦労してるみたいだね。えっと……アル」

 少女たちが騒ぐ中、白一点とも言える純朴そうな少年が一人、アルに気づかいの言葉をかけた。
 クリス・ヴェルティン。数時間前には真以上に消沈していた彼だが、今見るその後背は、どこか明るい。

「汝も随分とマシな顔つきになったものだな。いったい、桂はどのような魔術を使ったのだ?」
「いやぁ……まあ、それは……いろいろと」

 はは、と頬を掻くクリス。
 アルの心労を察しているのは彼のみのようであり、彼自身の心も、他人に気を配れるほどには回復したようだった。

「……まあ、いい。各自、話し合いを行える程度には落ち着いたようだな。では、ログハウスまで戻るぞ」
「えー、泳がないのー? せっかくのリゾートビーチなんだよ?」
「んなっ!? なにをたわけたことを! 今が非常時だとわかっているのか!?」
「でも、ほら。あのログハウス、こ~んなかわいい水着が置いてあったんだよ」

 得意げにビキニタイプの水着を取り出して見せる桂。白一色の、やや大胆なラインが目を引いた。
 思わず拳を握り締めるアル。クリスはばつが悪そうに、桂の翳す水着から視線を外した。

「ええーい! いいからさっさと歩かんかうつけどもぉー!!」

 アルの一喝により、ようやく事態は進展する。


 ◇ ◇ ◇


海水浴における休憩所兼脱衣所兼台所といった風な木造建築は、異様なほど設備が整っていた。
 ガスや水道はもちろんのこと、バーベキューセットやビーチパラソル、水着や浮き輪も完備している。
 それら、リゾートには必須であろうアイテムになど目もくれず、アルたち四人は単なる人目避けとして、ログハウスの中で会議を開いていた。
 議題はもちろん、これからの方針――を決定するにあたって、共通の情報として纏め上げなければならない懸念事項、教会についてである。

「結論から言おう。真、汝が話した懺悔室の声とやらは、このゲームの参加者ではない。主催側に組するものだ」

 アルは一人の間に導き出した確定事項を、桂、クリス、真ら各人に伝達していく。

「主催側っていうと、あの神父さんと男の人だよね? えっと、名前はたしか……」
言峰綺礼神崎黎人ですよ、桂さん」
「あ、それそれ。あと真ちゃん、わたしの名前は呼び捨てでいいよ~」
「そう? ボクもそのほうが呼びやすいし……じゃあ、桂、で」
「うん。改めてよろしくね、真ちゃん」
「うおっほん! 進めてよいか、汝ら?」

 アルは不機嫌そうに咳払いをし、浮ついた様子でいる桂と真を萎縮させた。
 二人がしゅん、とするのを見届け、うむ、と頷いてから本題に入る。

「真の証言から考えた結果だが、やはりその声の主が我らと同じ殺し合いの参加者であるとは思えん。
 北西端に位置する教会から、南東端に位置する〝方舟〟まで転送した力がまず不可解だ。
 物体を長距離転送することができる魔術もないわけでもないが、そんなものが許されるはずもあるまい。
 ゲーム監査役の立場としては、いろいろ不都合が満載だからな。要制限対象だ。
 そもそもそれほどの力を持つ者であれば、真を葬ることなど雑作もない。
 能力面、目的性、メリットとデメリット、諸々を考慮しても、我らと同じ立場にいる人間の仕業ではあるまい」

木造のテーブルを囲みながら、三人はアルの示す会場地図に目をやる。
 真が懺悔を唱えた教会は、遥か北西に建つ。
 南東に位置する〝方舟〟とは、あまりにも離れすぎているということを改めて確認する。

「となれば、考えられるのはこのゲームの背後に潜む者――企画主催者たちの存在だ」

 聞き手の三人は思い思いに天を仰ぎ、誰もが知る神父と男子学生の姿を頭に浮かべた。

「でも、あの声はどう考えても女性でしたよ?」
「機械で声を変えてたんじゃないかな? 声でバレちゃったら大変だし」
「いや、そもそもあの二人が会場内にいるというのもおかしな話だろう。神父だから、など理由にならん」
「えっ……それじゃああの二人は、この島の中にはいないって言うんですか?」
「可能性としてはな。彼奴等の保有する技術力は未知数……身を潜めているのは島の外か、もしくは亜空間か」
「な、なんかえすえふちっくな話だね」
「やっていることがことだからな。真の唱えた並行世界説も合わせれば、なんでもありでもおかしくはない」
「あの二人じゃないとしたら……いったい誰なんだろう?」
「ふむ。桂には以前話したが、このゲーム自体、言峰と神埼の二人だけで運営されているとは思えん」
「もっと強大な、黒幕がいるっていう話?」
「うむ。彼奴等の主か、もしくは部下か。役職はわからんが、声の主はあの二人の協力者と見て間違いない」
「あの二人以外にも、まだ……けど、だとしたらいったい誰なんだろう?」
「妾も、当初はマスターテリオンが絡んでいると考えておったが……」
「あの……ちょっといいかな」

 幼い少女たちの若々しい声が飛び交う中を、ややトーンの低い男声が割って入る。
 控えめな挙手とともに皆の視線を誘ったのは、クリス・ヴェルティンだった。
 西洋男児の容貌を和の衣装に包み、纏う印象はどこか儚げで、危うい。
 口数もあまり多そうではない少年に対し、アルは促しの視線を送る。

「話を聞いていると、アルはその声の主に心当たりがあるように思えるんだけど……どうなのかな」
「ふむ……なかなか鋭いではないか、クリス。ズバリだ。妾はその声の正体に心当たりがある――ような気がする」

 アルは、クリスの指摘に笑みを作ったかと思えば、即座に口元を固く結んだ。
 懊悩の渦中にあるような顔つきで、判然としない言動の真意を示す。

「そう……『ような気がする』だけで、ハッキリとは出てこぬのだ。どうにも説明が難しいのだがな」
「ド忘れしちゃった……って感じなのかな?」
「そうだな。人間の感覚で言うならば、それに近いだろう。
 実際のところ、妾にはその声の正体についての心当たりなどない。
 が、どうにも釈然としない違和感が残るのだ……ひょっとしたら、ただ忘れているだけのようにも思える。
 あえて考えぬようにしておいたが、この違和感は些か不可解だ。もしかしたらだが……」

 アルは顎に手を当て、心中に思い浮かべた可能性を提示するか否か、思案する。
 ――記憶を改竄された、という可能性。
 アル・アジフとは、膨大な情報量を誇る魔道書『ネクロノミコン』の化身である。
 魔術に関しての知識はもちろん、彼女自身も長年の時を生きているため、蓄積された知は老婆の如くだ。
 その情報の引き出しの中に、懺悔室の一件に関する答えが詰まっている『ような気がしてならない』。
 これが気のせいではなく、単に索引が不能となっているのだとしたら――ド忘れなどという症状はありえず、人為が及んでいると考えるのが妥当だった。

「……いや。懺悔室の声に関しては、正体を想像したところで、どうやっても仮説の域を出ん。
 心苦しいが、今は深くは考えぬほうがよいだろう。どつぼに嵌るのも滑稽だからな」

 仮説の仮説を述べたとしても、解決には向かわない。過度の情報提示は、集団に混乱を齎す。
 だからこそ、アルは自身の中で蟠っている懸念事項を飲み込み、最も重要な本題へと、論点を移した。

「声の正体については保留。我らが今、第一に考えなければならぬのは――真を転移した、その目的についてだ」

外見の幼さに反した、重苦しい発言が飛ぶ。
 質疑の眼差しは、真へと促された。

「真よ。懺悔室の主は、いったい真をどうしたかったと思う?
 相談に乗る以外で、声の目的はいったいなんだったのか。わかるか?」
「懺悔室にいた人の目的、ですか? 言われてみれば……特にあっちが得するようなこともないしなぁ」
「声は、真に対し『高槻やよいと一旦距離を取ったほうがいい』と促したのだろう?
 最終的に決断を下したのは真自身だが、選択肢を与えたのは声の意志だ。ならば、答えは二つに絞られる。
 一つは、『菊地真を高槻やよいのグループ、あるいはその内の誰かから離したかった』。
 そしてもう一つは、『菊地真を我らのグループ、あるいはその内の誰かに会わせたかった』、だ」

 そう言って、アルは二枚のメモ用紙に、述べたとおりの選択肢をそれぞれ書き起こし、

「ちなみに妾は、こちらの線が高いと睨んでいる」

『菊地真を我らのグループ、あるいはその内の誰かに会わせたかった』と書かれたほうの紙を皆に示した。

「ふむふむぅ……その心は?」
「前提として、妾は真との遭遇が偶然によるものだとは思っておらん。おそらくは、その声の主の意志によるものだ」
「けど、こっちの可能性だって十分にあるんじゃないかな。アルはどうして、こっちだと思ったんだい?」

 クリスが、『菊地真を高槻やよいのグループ、あるいはその内の誰かから離したかった』と書かれたほうの紙を示す。
 それに対しアルは、考え込むような顔はそのままに、軽く腕組みをして木製のチェアに凭れる。

「ふむ。やはり違和感を覚えたのは妾だけか」

思わせぶりな一言で皆の注目を買い、アルはまた、真を追及するような目で見た。

「真、汝は気づいておぬか? 汝自身が、重大な矛盾を抱えていることに」
「ボクが、抱えてる、矛盾?」

 問い直すように言葉を吐露し、真はう~んと唸るも、返答は返せない。
 それを咎めたりはせず、アルは諭すように口を開いた。

「菊地真に問おう。真たちが教会に辿り着き、懺悔室の声に促されるがまま扉を潜ったのは、何時だったか?」
「えーと、放送を聴いてすぐに出発したから……一時過ぎかな? 二時に近かったかもしれないです」
「では、羽藤桂に問う。妾たちがクリスと接触し、〝方舟〟で光包まれる真を発見したのは、何時だったか?」
「たしか、四時を回ってたと思う。双七くんたちと別れてから結構経ってたし」
「では、菊地真に再度問う。汝、扉を潜った直後の記憶はあるか?」
「それはもちろん。真っ黒な扉を潜ったら、不思議な光に包まれて……気づいたら、あのお立ち台に」
「ふむ……では、最後にクリス・ヴェルティンに問おう。ここまでで、なにか違和感を覚えぬか?」
「……時間、かな?」

 クリスの穏やかな回答に、アルは微笑を零す。

「うむ、正解だ。クリスはなかなか優等生なようだな」

 アルは、クリスの模範的な回答に賛辞を与える。

「よいか? 真が懺悔室を出たのは約二時。我らが〝方舟〟で真を見つけたのは、約四時。
 そこには二時間の空白があるものの、真は懺悔室を出てすぐ、気づけばそこは〝方舟〟だったという。
 これらが全て事実だとするならば……真は距離だけでなく、時間すらも飛び越えたことになるのだ」

 アルの言葉に、桂と真が、あっ、と声を漏らす。両者共に盲点だったらしく、クリスは途中から気づいた様子だった。

「最大の問題はそこだ。その、空白の二時間……真はいったい、どこでなにをしていたのか?」
「ぼ、ボクは嘘をついてなんかっ!」
「落ち着け。別に、汝の証言を疑っているわけではない。
 ただ事実として、真には二時間の空白があるというだけだ。
 その二時間で、真の身になにが起こったのか……。
 なにかあったとすれば、それは声の主、即ち主催者たちが関与していた可能性が高い。
 なにしろ真に二時間の空白を与えた存在など、主催者たち以外にはあり得ぬのだからな」

 アルの低い声に、真が僅か、身震いする。

「言わば、その二時間は意識も奪われ、拉致の状態にあったと考えていい。
 体になにか違和感はないか? 知らぬ間に改造人間などにされていたら事だぞ?」
「お、驚かせないでくださいよ!?」
「驚かせているつもりなどない。十分にあり得る可能性を述べているだけだ。
 そうだな、記憶の改竄やマインドコントロールなどもあり得るケースか」
「な、な、な……」

 身の震えだけでなく、健康的な顔色までもが、怖気に支配され青く変化する。

「あ、アルちゃん。あんまり脅かしたら、真ちゃんがかわいそうだよ」
「だから、妾は脅かしてなどおらん。ああそうだ、知らぬ間に性転換手術などの可能性も……」
「うわあああっ! そんなのイヤだあぁ~っ!?」

 頭を抱えながら、机上に突っ伏す真。アルの提示していく仮説に打ちのめされ、本気で怯えている様子だった。

「とまぁ、この空白の二時間についてはいろいろと考えられるわけだが……これについては、結局のところ答えはでない。
 ただ真よ、酷なことを言うが、自分の身になにかが起こった可能性があるということを、どうか忘れないでくれ」

すっかり意気消沈してしまった真は、俯いていた顔を僅かに持ち上げ、小さく頷いた。
 これに関しては気にするだけ重荷かもしれないが、最低限の危機感だけは持っていて欲しい、というのがアルの願いだった。
 なにしろ、懺悔室の主は考えれば考えるほど、得体が知れない。
 空白の二時間で、真が本当に改造手術や性転換手術を受けていてもおかしくはない、そう思わせるほどに。

「でもアルちゃん。アルちゃんの言うように、単純に時間を飛び越えただけ、って可能性もあるんじゃないかな?
 なんだかなんでもアリっぽい人だし、それくらいできちゃいそうだけど?」
「確かにな。死者蘇生や並行世界の話が挙がっている以上、時間跳躍の可能性とて十分に考えられる。
 が、それはそれで考えるところがあるのだ。
 例えば、時間の帳尻まで合わせて、真を我らの前に送った理由はなんなのか――などな」

 アルが、声をさらに鋭くして言う。

「ニ時間の空白を作ったとしても、時間を跳躍させたとしても、懺悔室の主が頃合を見計らい、
 真を我らの前に出現させたのは間違いない。問題はその真意だ」

 アルたちと真の出会いは単なる偶然。この仮説は、時間の齟齬が発生している時点で既に成立しない。
 懺悔室の主はまず間違いなく、真をアルたちに巡り会わせるのが目的だった。
 ならば、要点は次へ。巡り会わせて、いったいどうしたかったのか――それが謎だった。

「なぜ、我らだったのか。他の者たちではいけなかったのか。羽藤桂でなければならなかったのか、
 クリス・ヴェルティンでなければならなかったのか、アル・アジフでなければならなかったのか。
 誰と巡り会わせることが目的だったのか、もしくは、こうやって考えさせること自体が目的ではないのか。
 だとすれば、妾はその者の手の平で踊らされているだけではないか――と、考えればキリがない」

アルは首を振り、軽く息をついた。

「よって、教会について考えることは一旦保留とする。が、皆も気には留めておいてほしい。
 我らの知らぬところで、既に神の見えざる手が蠢いてるやもしれぬから――な」


 ◇ ◇ ◇


 一同に警戒心を植え付けるだけの意義はあった会談が終了し、時は三度目の放送を迎えようとしていた。

「とりあえずは、ここで放送を聴くとしよう。問題は以後の活動だが、各自、案や希望はあるか?」
「ボクは……もう一度、誠さんややよいたちに会いたい。喧嘩別れみたいになっちゃったし」
「わたしはこれまでどおりアルちゃんについていくけど……アルちゃんはなにかある?」
「妾はやはり、一度教会に赴いてその懺悔室とやら調べてみたいな。いつまでも違和感を抱えたままでは、気味が悪い」
「でも教会まで結構な距離があるよねぇ。双七くんたちとの約束もあるし」
「うむ……それが問題だな。ときにクリス、汝はまだ、トルタに会う気はないか?」
「えっ」

 アルの不意打ちじみた質問に、クリスはドキリとさせられる。

「妾と桂は、第四回放送を目処にトルタたちと合流する約束をしている。
 クリスがトルタと会いたくないというのであれば伏せるが……我らと行動を共にするならば、黙っておくにも限界はある」

 三人の視線が、一斉にクリスへと向く。
 決断を迫られているのは、ただ一人の少年だった。

(トルタ……か。今、彼女には、キョウスケっていうパートナーがいる)

 棗恭介。唯湖の話にあった、リトルバスターズの一員だ。
 又聞きした程度の印象だが、彼になら、トルタを任せられる。
 いやむしろ、任せておくべきなのだ。今のクリスでは、トルタと再会したとて実は結ばない。

(そうだ……僕は、ユイコのために)

 哀しみの連鎖を止める。
 例え、この心が満たされなくとも。
 唯湖が望んだクリス君でいようと。
 静留やなごみが背負っている哀しみを、
 まだ見ぬ誰かが背負っている哀しみを、
 身を呈して、拭い去ろうと、心に決めた。

「……まぁ、決断は放送を聴いてからでも遅くはない。
 再会を望まぬというのであれば、連絡を取り別行動に徹してもよい。
 妾としても、クリスを一人にするのは心苦しいしな」

 トルタとの再会は望まない――けれどそれは、トルタを思ってのことなのか、それとも自分自身を思ってのことなのか。
 哀しみを拒む心は、目的と願いを抽象的に捉えはしても、明確な行動としてどう動けばいいのか、判断しきれない。

(ユイコ、僕はこのまま、アルたちと進んでいいのかな?)

「あー、それと真。妾に敬語は要らぬ。汝も柄ではないだろう?」
「あ、やっぱりわかる? いやぁ、でもアルさんの実年齢聞いちゃったから……」
「その気遣いだけ受け取っておこう。なに、その歳で礼儀を弁えているというのは誇らしいことだ」
「へへ、やーりぃ! じゃあ、改めてよろしくね、アル!」
「むぅ~……なんだかアルちゃん、クリスくんと真ちゃんには妙に優しい……」
「こらこら、汝はなにをむくれておるのだ」

 女児三人の姦しい光景は、唯湖と碧のときとはまた違った居心地の悪さがある。
 繊細な少年の心が、女性特有の雰囲気にのまれていく。

(このアルは、アリエッタとは随分違うんだ。同じアルでも……)
「ふぅ、しかし考え事ばかりで些か疲れたな。よし桂、汝の血を補充させてもらうぞ!」
「えっ……きゃ、きゃあ~」
(アリエッタは、こんな風に女の子の首元に噛み付いたりは……うぇっ)
「よいではないか、減るものでもない!」
「だから減るって! ゲージで見えちゃうから!」
(…………)
「真ちゃん、助けて~」
「や、ごめん……知らなかったよ。アルと桂が、そんな……」
(……えーと)
「それに、なんだか……桂って、不思議なくらいいい匂いがするよね……」
「ふぇええ~、真ちゃんまでなんか目をトロンとさせてる~!?」
(…………うう、なんか居心地悪いかもぉ……)

 女の子たちが繰り広げるパヤパヤな騒動に、肩身の狭さを思い知るクリス少年だった。


【H-8 海岸付近のログハウス/一日目/夕方(放送直前)】

【クリス・ヴェルティン@シンフォニック=レイン】
【装備】:和服、防弾チョッキ、アルのページ断片(ニトクリスの鏡)@機神咆哮デモンベイン
【所持品】:支給品一式、ピオーヴァ音楽学院の制服(ワイシャツ以外)@シンフォニック=レイン、フォルテール(リセ)、ロイガー&ツァール@機神咆哮デモンベイン、刀子の巫女服@あやかしびと-幻妖異聞録-
【状態】:Piovaゲージ:90%
【思考・行動】
 基本:無気力。能動的に行動しない。哀しみの連鎖を止める
 1:放送を聴く。
 2:アルたちと共に行くか、トルタと会うかどうか、もう一度考える。
 3:哀しみの連鎖を止める。
 4:静留を止める。そのためになつきを探す。
 5:ユイコの為にそれ以外は考えない。
【備考】
 ※雨など降っていません。Piovaゲージ=鬱ゲージと読み替えてください。増えるとクリスの体感する雨がひどくなります。
 ※西洋風の街をピオーヴァに酷似していると思ってます
 ※巫女服が女性用の服だと気付いていません。
 ※巫女服の腹部分に穴が開いています。
 ※千羽烏月岡崎朋也の外見的特長のみを認識しています
 ※リセの死を乗り越えました。
 ※記憶半覚醒。
 ※静留と情報交換済み。
 ※唯湖が死んだと思ってます。
 ※島の気候の異常に関して、何らかの原因があると考えました。
 ※リセルート、12/12後からの参戦です。
 ※トルタに暫く会う気はありません。

【羽藤桂@アカイイト】
【装備】:今虎徹@CROSS†CHANNEL~toallpeople~
【所持品】:支給品一式、アル・アジフの断片(アトラック=ナチャ)、魔除けの呪符×6@アカイイト、古河パン詰め合わせ27個@CLANNAD、誠の携帯電話(電池二個)@SchoolDaysL×H
【状態】:強い決意、全身に擦り傷、鬼、アル・アジフと契約、サクヤの血を摂取
【思考・行動】
 1:放送を聴く。
 2:尾花の行方が心配。
 3:クリスと真と一緒に行動したい。
【備考】
 ※古河パン詰め合わせには様々な古河パンが入っています。もちろん、早苗さんのパンも混じってます。
 ※魔除けの護符は霊体に効果を発揮する札です。直接叩き付けて攻撃する事も可能ですし、四角形の形に配置して結界を張る事も出来ます。
  但し普通の人間相手には全く効果がありません。人外キャラに効果があるのかどうか、また威力の程度は後続任せ。
 ※マギウススタイル時の桂は、黒いボディコンスーツに歪な翼という格好です。肌の変色等は見られません。
  使用可能な魔術がどれだけあるのか、身体能力の向上度合いがどの程度かは、後続の書き手氏にお任せします。
 ※制限によりデモンベインは召喚できません。
 ※B-7の駅改札に、桂達の書いたメモが残されています。
 ※桂はサクヤEDからの参戦です。
 ※桂は、士郎の名前を知りません(外見的特徴と声のみ認識)
 ※桂はサクヤの血を摂取したお陰で、生命の危機を乗り越えました。
 ※サクヤの血を摂取した影響で鬼になりました。身体能力が向上しています。
 ※失った右腕にサクヤの右腕を移植しましたが、まだ満足に動かせる状態ではありません。
 ※憎しみに囚われかけていましたが、今は安定しています。しかし、今後どうなるかはわかりません。
 ※桂の右腕はサクヤと遺体とともにG-6に埋められています。
 ※クリスの幻覚は何かの呪いと判断。
 ※クリスの事を恭介達に話す気は今のところない。
 ※第四回放送の頃に、カジノで恭介たちと合流する約束をしています。

【アル・アジフ@機神咆哮デモンベイン】
【装備】:サバイバルナイフ
【所持品】:支給品一式、ランダムアイテム×1
【状態】:魔力回復、肉体的回復、羽藤桂と契約、微妙につやつや、恭介を微妙に警戒
 基本方針:大十字九郎と合流し主催を打倒する
 1:放送を聴く。
 2:桂と協力する。
 3:クリスと真と行動する。場合によっては、恭介たちに別行動を取ると連絡する。
 4:教会を調べたい。
 5:九郎と再契約する。
 6:戦闘時は桂をマギウススタイルにして戦わせ、自身は援護。
 7:信頼できる仲間を探す。
 8:時間があれば桂に魔術の鍛錬を行いたい。
【備考】
 ※制限によりデモンベインは召喚できません。
 ※B-7の駅改札に、桂達の書いたメモが残されています。
 ※アルは士郎の名前を知りません(外見的特徴と声のみ認識)
 ※アルからはナイアルラトホテップに関する記述が削除されています。アルは削除されていることも気がついていません。
 ※アルはサクヤと情報交換を行いました
 ※クリスの幻覚は何かの呪いと判断
 ※クリスの事を恭介達に話す気は今のところないです。
 ※第四回放送の頃に、カジノで恭介たちと合流する約束をしています。

【菊地真@THEIDOLM@STER】
【装備】:電磁バリア@リトルバスターズ!
【所持品】:支給品一式(水なし)、金羊の皮(アルゴンコイン)@Fate/staynight[RealtaNua]、レミントンM700(7.62mmNATO弾:4/4+1)、予備弾10発(7.62mmNATO弾)
【状態】:背中付近に軽度の火傷(皮膚移植の必要無し)、傷治療中、肉体疲労(小)、精神疲労(中)
【思考・行動】
基本:誠と共に行動する。
 1:放送を聴く。
 2:やよいや誠たちと合流して、謝りたい。
 3:やよいや、他の女性を守る王子様になる。
 4:巨漢の男に気をつける。
 5:誠さんは駄目な人だけど、それでも……
【備考】
 ※天狗秘伝の塗り薬によって休息に外傷を治療しました。大体の軽い傷は治療されました。
 ※誠への依存心が薄れ、どういう人間か理解しました。
 ※愛佳の死を見つめなおし、乗り越えました。
 ※元の世界では雪歩とユニットを組んでいました。一瞬このみに雪歩の面影を見ました。
 ※また、平行世界の可能性で若干動揺しています。
 ※誠も真も、襲ってきた相手が大柄な男性(真人)であることしか覚えていません。
 ※フカヒレからツヴァイの危険性、渚を殺害したことのみ聞きました。
 ※平行世界や死者蘇生の可能性について知りました。
 ※『空白の二時間』の間に、懺悔室の主になにかをされた可能性があります。


176:instant servant 投下順 178:めぐり、巡る因果の果てで(大人編)
172:i 時系列順 179:運命はこの手の中廻り出すから
163:hope クリス・ヴェルティン 179:運命はこの手の中廻り出すから
羽藤桂
アル・アジフ
菊池真

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