ギャルゲ・ロワイアル2nd@ ウィキ

Good Samaritan

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Good Samaritan ◆I9IoWegESk


『――やあ、参加者の皆さん、気分はどうだい?』

 まさか、橘教諭まで命を落とすとは。彼は生徒に随分頼られていたのではないだろうか。
残された生徒は訃報を聞いて、絶望に打ちひしがれているかもしれない。共にいた碧君も少し心配だ。

 そして、理樹君……君まで逝ってしまったか。私は大きくため息をついた。

 彼と鈴君こそがリトルバスターズの存在理由の全て。特に恭介氏は、彼の死を聞いて修羅の道を歩んでも不思議ではない。
おそらく、恭介氏の道を正すのは、今の私では無理だ。

 理樹君は眠り病という爆弾持ち、いつかはこの時が来ると予感がしていた。それでも、もし私が真剣に探していたら、彼を救えたかもしれない。
だが、私はクリス君を亡くしたと勝手に勘違いして、そして、心を求めるもその術を知らず、ただ無為に彷徨ってしまった。

 私は哀しみの連鎖を断ち切るどころか、広げてしまったようだな……。

 クリス君、こんな情けない私だがもう一度、君の側にいさせてくれないか。そして、私の心の空洞を埋めてくれ。
君は今、何処にいて何をしているのだろうか。そして、何を考えて何処へ向かっている?

(……川べり、だろうか)

 そこは私がクリス君と離れ離れになった場所。そして、旅館、森、大聖堂へ――彼なら、私と出合った場所を逆に辿って行きそうな気がする。

 いや、自意識過剰か。クリス君はそこまで私を必要としているのか分からない。
もしかすると、彼は私に流されていただけで、他の誰かでも良かったのかもしれないのに。
いや、そうであっても、私は君に会ってこの不思議な気持ちを確かめたい。

 だから、今は先へ進む、しっかりと前を見据えて。

 私は穏やかな風を浴びながら歩を進める。そして、ふと気付いた。
理樹君を失った時の感情は謙吾君や鈴君の時とは微妙に違っていたことに。
もしかすると、虚構世界に留まり続けていたなら、彼にクリス君と似た感情を抱いたのかもしれないと。

 ああ、そういえば、旅館で太一少年とも待ち合わせをしていたな。今からだと遅刻になるが顔見せくらいはするか。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「ぷはーっ、この瞬間のために生きてるなぁ」

 黒須太一はコーヒー牛乳を親父スタイルで一気飲みする。こうしている間にまた何人か死んでそうだけど、この幸福感は限りなく神に近い。

 死後数時間も経てば血液の凝固能力は失われる、と誰かが言ってた気がする。要するに、俺は死体の首を切れば確実に血を見てしまうわけだ。
他人の血は苦手。首輪の方は無理せずに、グロに強そうな来ヶ谷何某、通称姉御に頼むことにウッドボール(木鞠→きまり→決まり)。

 自分に妥協して、浴衣を纏ってみたら文豪の気分になった。なので、紙とペンを用意。放送が来るまで、徒然なるままに書き下ろしてみる。

『――やあ、参加者の皆さん、気分はどうだい?』

「8点、もちろん100点満点だ!」

 拡声器で天に向かって吼えてみる。司会者は変わったが、形式は前回と殆ど同じ。お前さんたちの放送はツマラン、本当にツマラン。

 きっと、エイリアンの母星でもコネや枕営業が幅をきかせてるのだろう。この業界の未来にスプーン一杯の同情をする。後で姉御に第一回目の放送もこんな感じだったのか聞いてみよう。

 非難するだけならサルでもできるので、先に何パターンか放送案を書いてある。我ながらなかなかの力作だと思う。
この島には上級エイリアンとのスパイがいるらしいので、そいつを見つけたら渡したい。
もちろん、エロスとタナトスまぐわる(微妙に太一語)放送カテゴリー2だ。
どうせ、採用されないだろうけど、己の力量のなさを知ってもらえればいいなと。

 士郎はまだ生きてたんだな。詰めが甘すぎるぞ、なごみん。
なごみんが殺さなくても、廃人になってそのまま野垂れ死にでもしてると思ったんだが、
どこかの心優しいサマリア人が拾ってくれたんだろう。
それはとても美しく、人間的な行為だ。まだ、誰も士郎を拾ってなかったら自分が拾ってみよう。

 それにしても姉御の来るのが遅い。もしかして、自分は見捨てられたのか。
俺はロンリーハートを紛らわすために、荒らされたロビーを綺麗にする。部屋を片付ければ気分すっきり皆仲良し、窓ガラス理論だ
掃除の最中に身震いして大きいくしゃみを三連発。風邪気味なのにちょっと無理しすぎたかもしれない。

 そんな俺を労うためか、テーブルの上には唐突にお粥入りの鍋が置かれている。まだ温かい。
凡人なら、毒殺の罠と警戒するところだが、俺は躊躇せず茶碗によそって食う。
なぜなら、こういうことをする女に覚えがあるからだ。

「うん、これは曜子ちゃんの味だ」

 具は名も知らぬ野草とキノコ。さっぱりした味付けで病人にも優しい。
ごはんは支給品なんだろうけど、殺し合いの場でいつの間にこんなものを用意したのやら。

 いつもなら、彼女相手にじらしプレーをするところだが、今は人恋しい。そこで窓に向かって拡声器で叫んでみる。
「でも、まだあんまりお腹空いてないんだよね。折角だから無理して食べちゃうけど、一人で食べるのは寂しいなあ~」

「うわぁっ、これ美味しくてほっぺが落ちそう。誠や間桐さんにも負けないくらいよ。
 これだけでひとっ走りした甲斐があったわ」

 太一が後ろを振り返ると、そこには勝手に粥を食らうアホ毛の少女がいた。

「ダレですかアンタわ? 人のものを勝手に食べちゃいけないって、親御さんに習わなかったの」

 彼女は人懐っこそうな笑顔で悪びれずに応答する。
「ごめ~ん、駄目だった? 誰かと食べたいって言ってたから、お言葉に甘えちゃおうかなあって」
「うーん、まあいいけどね」

 遠目で見た第一印象は、母性と子供っぽさのアンバランスに同居する少女。
今はウザいところもあるだろうが、将来、いい女になるかもしれない。


◇ † ◇ † ◇ † ◇ † ◇ † ◇ † ◇ † ◇ † ◇ †


「私は神宮司奏、可愛い名前でしょ。けっこう気に入っているんだ」
「俺は純愛貴族、黒須太一。職業は正義の味方のスカウトだ」

 とりあえずはふたりで自己紹介。俺はいつものようにセクハラ奥義を仕掛けようした瞬間、
彼女の異常に気付いて思わず手を止める。
彼女の肉感的な生肌に点在する小さな蛆、蛆、蛆――

「あっ、ゴメン、ビックリしちゃった? 大丈夫、苛めたりしなきゃ酷いことはしないから。
 こうやって付き合ってると、結構愛着湧いてくるよ」

 奏たんはパレオ代わりのパーカーを外し、腹部を愛おしそうに撫でる。
そこにはびっしりと敷き詰められた蛆が治り掛けの傷口を懸命に修復していた。

 ナノマシンみたいなもんかなと思いながら顔を上げると、彼女はお粥をスプーンに付いた蛆ごと食っている。
この調子だと鍋にも蛆落ちちゃっただろうな。グッバイ、マイ晩ごはん。
こうなってくると例のカタカナ5文字が脳裏に浮かぶ。

「今までお肉ばっかりだったけど、たまにはヘルシーなのも食べないとね。栄養が偏っちゃうもん」
「そのお肉って、何処で手に入れるのかな。支給品が肉ばっかりだったの?」
「何処って、そこら中に歩き回っているじゃない」
「人間なんて食べたらクールー病にかかっちゃうよ」
「大丈夫、大丈夫。そういうのに掛かるのって、ほんの一部でしょ。
 ×野家の牛丼食べて、狂牛病になった人なんて聞いたことないし」

 奏たんは食べたそうな目でこちらを見つめている。彼女は間違いなくエイリアン、それも食人仕様だ。自分が打倒すべきターゲットである。
俺は×野家の絶妙な汁ブレンドについて、小一時間語りたい衝動を抑えつつ、彼女の対策を考える。

 ここは必殺のカラデで、といきたいところだが、風邪と疲労でガッツが足りない。深優・グリーアの時のように返り討ちに遭う危険大。

「ブルーレンジャー、曜子ちゃんカモーン」
 太一は指笛を吹いた。しかし、その音はあたりに虚しく響き渡った。仲間の力を借りる、これも失敗。

「ロープ、ロープッ、食べないでぇ」
「失礼ね。お腹空いただけで、取って食ったりしないわよ。野良犬じゃないんだから」
 ならば戦略的撤退、降伏のポーズをとってみる。意外にも、静留の時と同じく成功。
困った時はサレンダー、太一はエイリアンの文化をひとつ理解した。

 共に食うと書いて共食いと呼ぶ。なら、人を食うのも殺し合いと同じくらい人間的な行為だ。
ただし、彼女にとって人間は異種族なので、人肉は純粋な文化の範疇になるだろう。
食文化論争は平行線を辿りやすいので、こちらから折れることにする。

「ごめん、ちょっと過剰反応しちゃったかも」
「別にいいよ。それより曜子ちゃんって、もしかして君の恋人?」
「えっ……いや、一緒に暮らしていただけだよ」
「それって同棲じゃない。もしかして、セフレ?」
「いや、そういうのでも、とは言い切れないか……いや、やっぱり違うや」

 曜子ちゃんの紹介から、なし崩し的に情報交換に入った。
アホ毛の君も第一回放送はあまり聞けなかったそうで、ちょっと残念。

「……間桐さんはお腹赤ちゃんを元気にしてくれたんだ。だから、私もあの子のために頑張らないと」
「赤ん坊は大切だよね、赤ん坊は。
 で、もう一度聞くけど、桜ちゃんが誰に殺されたかは分からないんだね?」
「うん、私が見つけた時にはもう死んじゃってたし」

 奏たんはああ言ってるが、本当は桜ちゃん、ついでに伊藤誠を殺して食ったのかもしれない。
もうちょっと、突っ込んでみようかな。
赤い人に教えたら復讐鬼として復活しそうだ。二人の鬼ごっこはどうなるかなあと妄想してみる。
ただ、こちらとしては、彼には正義の味方になってくれないと、あまり意味が無い。

 奏たんはこちらの不穏な空気に気付いたのか、唐突にこぶしで手のひらを打った。
「あっ、そういえば私、温泉に浸かりに来たんだっけ。ちょっと行ってきても良いかな?」
「どうぞどうぞ。そういや、客室に浴衣があるから探してみたら」
「ありがと。発情してエロいこと考えるなよ」
「俺はそんな変態じゃないよ。仮にそうだとしても変態という名の紳士だよ」
「最低、変態、エロス、ベー!」

 アホ毛の君は凡庸なラブコメにありがちな台詞を吐いて、ロビーから去っていった。
そして、鍋の粥は俺の身代わりとなり、(非性的な意味で)すっかり食われてしまった。おお胃袋の友よ、いつか仇を取ってやるからな。

 自分を人だと思い込んでいるエイリアン。それが太一が奏と称する少女に抱いた印象だった。
自覚が無いので人への擬態も中途半端。だがそれゆえ、人でありたいという思いは自分よりも純粋だ。
いっそ、俺が女王様は裸だと叫んでしまいたい。怪物としての破壊衝動がもたげてくる。

 でも、ほんとうに壊しちゃって良いのかな?

 たとえ、いくら好戦的なエイリアンでも、母胎を危険に晒してまで、殺し合いに参加するはずがない。彼女も無理やり連れてこられた犠牲者なのではないか。

 そんなことを考えているうちに、だんだん目蓋が重くなってくる。ちょっと張り切りすぎたかもしれない。

――ごめんね……それだけしか残してあげられなくて

 太一の脳裏に映像がフラッシュバックする。どこか見覚えのある少女が壁に寄りかかり、嬰児を抱きかかえている。
これは何なのだろう。その意味を吟味する間もなく視界は暗転し、記憶に残らぬ思考の狭間に消えていった。


† † † † † † † † † † † † † † † † † †


―Plastic Lies 見つめるだけで満たされた~♪
―Paper Heart あの頃には戻れないから~♪

 世界は浴衣を腕に抱え、鼻歌交じりに更衣室にやってきた。腹の傷は大分治ったので、湯にひざをつける位は大丈夫だろう。

 世界はなぜ、旅館を目指したのだろうか。彼女は今の自分の身体能力をしっかり把握したいと考えた。
とは言え、平野や市街地で暴れたならば目立ちすぎる。
そこで彼女は北東の町へは山道を経由することにして、その道中で色々と試そうと決めた。
決めたのだが……ほとんど旅館まで突っ走るだけの結果で終わってしまった。

 そう、これは走力と持久力のテストよ。
ぐんぐん走ったら、昔やったローラーブレードみたいで気持ちよかったとか、走ったら土埃でまた身体が汚れたから、
いっそ旅館で温泉探しちゃうとかは、あくまで結果よ、結果。

 悪鬼の憎しみ、魔導書の狂気、贄の血の誘惑、この世全ての悪の呪い……これらはひとつだけでも人の心を壊すに十分な代物である。
まして、これら全てが重なれば、精神の弱い彼女は理性なき亡者と化すのは当然の理。
しかし、混沌の神の悪戯か、それとも恋人や親友の強い思いが奇跡を起こしたのか、
彼女の中で狂気が狂気を相殺し合い、世界の侵食を押し留めていた。

 黒須って子、バカっぽかったけど悪い奴じゃないかな。正義の味方かぁ……ウチのお母さんなら目の色変えてはしゃぎそう。

 世界は母なら司令官やりたがるだろうなと想像しながら、スカートを下ろし、上着のボタンをひとつずつ外していく。

 そして、シャツを脱ぎ終えようとしたまさにその時、背後の清掃ロッカーがバタンと開いた。
微かな火薬の臭いと強烈な殺気が溢れ出してくる。決して、ただの覗き魔ではあるまい。

 世界はしまったと後悔する。温かい湯に漬かれると浮かれてしまい、周囲の警戒を怠っていた。
確かに、彼女の五感は悪鬼の力で強化されている。だが、意識しなければその特権を十全には生かせない。

 この体勢から即座に防御や回避の行動をとるのは難しい。
ランチャークラスの直撃を食らえば、流石にただではすまなくなる。まして、デイバッグから武器を取り出す余裕はない。

 だが、世界には仲間がいるのだ。暗殺者が引き金を引こうとする刹那、世界の長く伸びた影から桂言葉が姿を現した。そして、世界の盾になるように相手に向かって突撃する。

「桂さん、ナイスアシスト!」

 世界はシャツを投げ捨てて後ろを振り返る。すると、ふざけた仮面を被った怪人が対戦車砲を持ったまま屈んでいた。
怪人は突然の怪現象に反応が遅れたようだ。この間合いで引き金を引けば本人もただではすむまい。
言葉はチップカットソーのモーターを回し、小太刀を扱う要領で袈裟懸に切り込む。

 桂さん、湖の時とは別人みたい。もうちょっとこう、ホラーゲームみたいに動くと思ってた。ほら、ああいう武器持ってるゾンビいたよね。

 怪人はロッカーから飛び出し、砲身を盾にして斬撃を受け止める。更に、そのまま力に物を言わせ、言葉を突き倒す。
言葉はわざと飛ばされて勢いを殺そうとするも、足を滑らせて着地に失敗、そのまま膝を突いてしまう。

 でも、この怪人はもっとヤバそう。そもそも仮面に穴が開いてなのに、どうしてこんなに動けるの? 桂さん、大丈夫かな……。
そういえば、黒須は支倉曜子のことをスーパーくのいちと呼んで、完璧超人ぶり説明してたっけ。

「もしかして、貴女が支倉さん?」

 怪人は世界の問いかけに無反応。言葉を横目にRPG-7V1をデイバックにしまい、左手で腰のカリバーンを掴もうとする。
言葉はその隙を狙い、低い姿勢から右半身を狙って狼の刃を向ける。
相手はこれを左足をバネに左ナナメにステップして回避。その反動を利用し、デイバックの中身の一部をぶちまける!
 言葉もこのフェイントを予期していたのか、斬撃の勢いを押し殺して防御体勢をとる。だが、それでも重量の凶器を食らうのは免れまい。

「桂さん、下がって!」

 世界は慌てて右手を前に突き出し、言葉を影にしまい込む。
ただ、チップカットソーは一寸間に合わず、文壱の重量に押し潰されてしまった。

 満身創痍の状態で右半身を庇いつつ近接戦闘を続ける――本来なら無謀としか言いようが無い。
だが、怪人の強靭な意思と斉藤の仮面の力をもってすれば、不可能も可能となる。

 怪人は葛木と同じく戦闘のプロ、世界が苦手とするタイプの人間だ。ならば逃げるのか、それとも立ち向かうのか?

「……やっぱり、そうなんだよね? 支倉さん、改めて始めまして。えっと、私は神宮司奏、ということにしておいて」

 これが回答だ。世界は拳を広げたままゆっくりと曜子に近づいていく。
なぜなら、今の世界は取っておきの武器を持っているから。
それは剣でも銃でも、まして魔導書でもなく、西園寺世界そのもの。

「支倉さんがこんな格好をしてるのは、ボロボロの身体を隠すためかな?」

 そう、悪鬼の鼻は彼女の火傷を嗅ぎ付けていた。曜子はカリバーンを構えたまま動かない。
だが、悪鬼の耳は怪人の呼吸が一瞬止まったのを聞き逃さない。

 世界は緊張を押し隠して、声の調子を落として優しく語りかける。
「好きな子に素顔を見せられないのって辛いよね……。そうだよね、恋する乙女だもんね」

 怪人はそれを挑発と受け取ったのか、スリングで投石してきた。
世界はそれを右手でしっかり掴んで粉砕、追撃が来る前に早口でまくしたてる
「ちょっ、ちょっと待って。別に嫌味で言ったわけじゃないの! 
 私がその傷を綺麗に治してあげよっかなって」

 支倉さんから穴が開くほどの視線を感じる。これは下着姿の私が魅力的って訳じゃなくて、蛆の力が気になるのだろう。
でも、私が言っているのは天狗秘伝の塗り薬の方。まだ、使ったことないけど凄い傷薬らしい。
そう、今の私は貧しい少女にドレスを与える親切な魔女。

 私は指を口元に当ててそのまま会話を続ける。ここからが本番だ。
「だからさ、私のお願いも聞いてくれないかな。私、新鮮で無傷な死体が欲しいなって、思ってるんだ。
 それが衛宮、ファル、深優、静留だったらもっと嬉しいかも」

 でも、魔女に魔法をかけてもらうには条件があったりするわけ。で、今回はこれ。柚原さんだけは特別だから、自分で殺さないとね。
 私、皆を酷い目に合わせるぞって意気込んでみたけど、別にひとりで背負い込まなくてもよいんだよね。
私は赤ちゃん守らなきゃいけないもの。黒須の言ってたようにみんなの助けを借りればよいんだ。

 世界は本来、他人任せの人間だ。自力で行動するのは、追い詰められた時や激情に駆られた時だけ。
そう、これは多少安定した彼女にとって、ごくごく自然の行動である。

 曜子はうんとも寸とも言わず、支給品をしまい始めた。取引を考えているのか、攻撃の隙を窺っているのかはよく分からない。

 ふっふっふっ、でもねえ支倉さん、鼓動がちょっと速くなってるよ。こういうのってなんか楽しいかも。
「恋に不器用だと、ついつい背伸びしちゃうんだよね。そういう気持ち分かるわ。
 でもさ、本音を押し殺していると、結局回りも不幸になるんだよ。
 修羅場を乗り越えた恋の先輩として、ちょっとしたアドバイス」

 あれ、あんまり反応ないね。さすがは孤高の君、ガードがかたいか。
「……えっと、相手はバラバラに殺しちゃってもいいよ。でも、ちゃんとデイバッグに入れてきてね」

 世界がそう語った時、遠くで誰かが踵を返し、走り去るのが聞こえた。
曜子にも気付いたのか、こちらに刃を向けたまま徐々に後退する。

 これじゃ全てが台無しになる。私は思いついたことをそのまま吐き出した。
「えっと、6回目、6回目の放送の時に学校で待ち合わせ。 アンダンスタン!?」

 そして、彼女は十分な距離が開くと、肯定とも否定とも取れぬ態度を示したまま、全力で走り去っていった。

 世界は言葉を影から出して、彼女の肩にぐったりと寄りかかる。
「うへぇ……桂さん、ちょっと疲れたよー。なんか、死体の中に爆弾仕掛けそうなカンジの子だし、ちょっと怖い。
待ち合わせ場所の下調べくらい、先にしておいたほうが良いかも」

 言葉はいつものぎこちない人形に戻り、世界の言葉を無言で受け止める。

「桂さん、本当はお揃いの浴衣を着せたかったけど、ペラペラの布地だと危ないよね。
 その代わり、エクスカリバーの方は桂さんに預けるよ。貴女の方が上手く使えそうだし」

 言葉は世界から騎士王の宝具を受け取ると、再び深遠の影に沈んでいった。

【D-6 温泉旅館/1日目 夜中】

【西園寺世界@SchoolDays】
【装備】:防刃チョッキ、桂言葉の死体(改造処理済)@SchoolDays、浴衣@現実
【所持品】:支給品一式×4、エクスカリバー@Fate/staynight[RealtaNua] 、
BLOCKDEMOLITIONM5A1COMPOSITIONC4(残り約0.60kg)@現実、時限信管@現実×2、89式小銃(28/30)、37mmスタンダード弾×5発、手榴弾1つ、妖蛆の秘密@機神咆哮デモンベイン、ICレコーダー、
きんぴかパーカー@Fate/staynight[RealtaNua]、ゲーム用メダル400枚@ギャルゲロワ2ndオリジナル、贄の血入りの小瓶×1、天狗秘伝の塗り薬(残り90%)@あやかしびと-幻妖異聞録-、
スペツナズナイフの柄、このみのリボン、アーチャーの騎士服@Fate/staynight[RealtaNua]
【状態】:疲労(小)『この世、全ての悪』受胎、精神錯乱、思考回路破綻(自分は正常だと思い込んでいます)、多少腹部損傷(蛆虫治療)、悪鬼侵食率55%
【思考・行動】
基本:元の場所に帰還して子供を産む。島にいる全員を自分と同じ目に遭わせる。
0:もう一度、休もう。今度こそ、自分の身体能力をちゃんと把握する。
1:新しい服を探すため北東の中心街へ向かう。また武器を手に入れる。
  もしくは、学校に行って下調べをしておく。
2:新鮮な内臓をもっと食べたい。
3:このみ、黒髪の女(烏月)、茶髪の男(フカヒレ)を見つけたら今度こそ喰い殺す
4:自分より強そうな人間には闇雲に襲わず様子を見る。弱い人間を優先して喰い殺す。
  他に利用方法があれば、そっちも考えてみる。
5:支倉曜子を利用するため、黒須太一はとりあえず生かしておく。
6:名乗る必要があるときは、様子を見ながら偽名(神宮司奏)を使う。
【備考】
 ※誠とは今までにあった事ではなく、元の世界の事しか話してません。平行世界の事を信じました。
 ※侵食に伴い、五感が鋭くなっています。
 ※ゲーム用メダルには【HiMEの痣】と同じ刻印が刻まれています。カジノの景品とHiMEの能力に何らかの関係がある可能性があります。
 B-2中心部に回収出来なかったゲーム用メダル@現実が100枚落ちています。
 ※妖蛆の秘密は改造されており、殺した相手の霊を本に閉じ込める力があります。そして、これを蓄えるほど怨霊呪弾の威力が増します。
 そのほかのルールは他の書き手にお任せします。
 ※腹の中の胎児に、間桐桜の中に居た『この世、全ての悪』が受肉しています。
 ※桂言葉の死体(改造処理済)、エクスカリバー、アーチャーの騎士服は『影』の内部に収納しています。
 ※黒須太一と情報交換しました。彼の発言には一部、妄想が混じっているかもしれません。
 ※第六回目の放送時に学校で支倉曜子と待ち合わせしています。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 来ヶ谷は追撃者から逃れるため、全力で坂を下った。周囲を見回した限り、一応は振り切ったように見える。

 だが、油断は出来んな。あの仮面を被っていたということは、恭介氏と同じく心眼を使えるということだ。一筋縄ではいかんだろう。

 川べりにも旅館にもクリス君はいなかったか。いや、この状況だとその方がよかったかもしれないな。
あとは私の勘が外れて、クリス君が単身旅館に向かわないことを祈るだけだ。

 彼女の側のクリーニングカートがモゾモゾと動き、中から銀髪の青年がひょっこりと顔を出す。

「はっはっは、目覚めたかね太一少年。おねーさんは眠れる美少年を見ると、ついつい攫ってみたくなるのだよ」

 太一をそれを聞いて多少芝居じみたポーズをとる。
「お願い、食べないでぇ! 姉御ぉっ!」
「食うとは性的な意味かい? 生憎、私には先約があるのでね」

 ふむ、中性的な顔立ちと華奢な体型、女装が似合いそうだ。だが、クリス君ほどではないな。

「あっ、姉御はエイリアンじゃなかったな。じゃあ、今のは聞かなかったことに。
それから、鷲鼻の俺に向かって美少年呼ばわりは何かの皮肉ですか?」

「君のどこが鷲鼻なんだね。まあ、言われてみれば、少し曲がっているかもしれんが、気にするほどのものではないぞ」

 自己嫌悪から来る過剰な容姿コンプレックスというやつだな。
もしかすると、この少年は周囲から悪意の理由を外見に求めたのかもしれん。
他人の心理はこうも冷静に分析できるのに、自分の気持ちは分からないのだな、私は。

 彼は暫くうな垂れた後、何かを悟ったのかあっけらかんと言い放つ。
「ま、いいや、容姿なんて。偏向しきった物語の主人公が、テキストで平凡って描写されていても絵では美形なのが変わることはないのだし」

「はっはっはっ、君は相変わらず面白いな。本当にユニークで予測不可能だ」
 いや、この男に関しては別か。飄々としてつかみどころがない。だが、それでも彼の死に涙流す者もいるだろう。

――別にバラバラに殺しちゃってもいいよ。ちゃんとデイバッグに入れてきてね。

 太一少年は何らかの薬物で眠らされていた。そして、温泉の方から聞こえた女の声……怪人のターゲットはおそらくこの彼だ。

「君に重要なことを教えよう。いいかい、君はカーニバルの怪人に……」
「ええと、ちょっと待ってくれる。俺の拡声器、知らないかな?」

 彼は自分の命にあまりにも無用心過ぎる。少なくとも彼の仲間と合流するまでは、近くにいてやったほうが良いな。

 やれやれ、これではクリス君を探すのもままならないな。
だが、彼を見捨てるわけにはいくまい。これ以上、哀しみの連鎖を拡大させたら、クリス君に嫌われてしまう。

 クリス君、どうかそれまで無事でいてくれ。

【D-7 廃校付近/1日目 夜中】

来ヶ谷唯湖@リトルバスターズ!】
【装備】:デザートイーグル50AE(6/7)@Phantom-PHANTOMOFINFERNO-
【所持品】:支給品一式、デザートイーグル50AEの予備マガジン×4
【状態】:脇腹に浅い傷(処置済み)、全身に打ち身、肉体疲労(小)
【思考・行動】
 基本:殺し合いに乗る気は皆無。
 0:知りたい……
 1:クリス君……どこにいる?
 2:哀しみの連鎖を広げないため、カーニバルの怪人(曜子)から太一を守る
 3:碧達の安否が気になる
 4:いつかパイプオルガンを完璧にひいてみたい
 5:他のリトルバスターズのメンバー、特に棗恭介を警戒する
【備考】
 ※クリスはなにか精神錯覚、幻覚をみてると判断。今の所危険性はないと見てます
 ※千羽烏月、岡崎朋也、椰子なごみの外見的特長のみを認識しています
 ※静留と情報交換済み
 ※西園寺世界の声だけ聞いています
 ※来ヶ谷は精神世界からの参戦です
 ※美希に僅かに違和感(決定的な疑念はありません)

【黒須太一@CROSS†CHANNEL】
【装備】:サバイバルナイフ、浴衣@現実
【所持品】:支給品一式、S&WM37エアーウェイト(5/5)、ウィルス@リトルバスターズ!
 S&WM37エアーウェイトの予備弾12、第1次放送時の死亡者とスパイに関するメモ、放送案の原稿
【状態】:肉体疲労(中)、やや風邪気味(軽い発熱・めまい・寒気)、左肩銃創痕
【思考・行動】
基本方針:『人間』を集めて『エイリアン』を打倒し、地球の平和を守る。
 0: 拡声器はどこだ!?
 1:『人間』や『エイリアン』と交流を深め、強大な『エイリアン』たちを打倒する。
 2:『支倉曜子』『山辺美希』や『殺し合いに乗っていない者』に出会えれば、仲間になるよう説得する。
 3:士郎に出会ったら、どうしようかなあ……
 4: 「この島にいる者は全てエイリアン」という言葉には懐疑的
 5: スパイに自分の書いた放送案を渡してみる。
【備考】
 ※第一回放送を聞き逃しましたが、死亡者のみ名前と外見を把握しました。
 ※太一の言う『エイリアン』とは、超常的な力を持った者を指します。
 ※登場時期は、いつかの週末。固有状態ではありません。
 ※直枝理樹(女と勘違い)、真アサシン、藤乃静留、玖我なつき(詳細は知らない)、深優・グリーア、西園寺世界(神宮司奏?)をエイリアンと考えています。
 ※スパイに関するルールはでたらめです。
 ※NYP兵器、ウィルス。相手に肉体的疲労を与えます。威力は個人差あり。
 ※西園寺世界と情報交換しました。彼女の発言には嘘が混じっています。


† ◇ † ◇ † ◇ † ◇ † ◇ † ◇ † ◇ † ◇ † ◇


目的:
 太一の状態と安全を確認し、離脱する。
 G-4は禁止エリア指定されたため、他の変電所、発電所を用いてインフラを遮断する。

 太一は人死を見れば暴走し、激しい対立が起きても暴走する。
 よって、彼の精神を守るためには個を保つ必要がある。

 これらを遂行する際、本人に気付かれることは極力避ける。

問題A:
 太一が拡声器を所持し、利用している。
 これは参加者を無差別に呼び寄せ、彼の生命を危機に晒す。

対策A:
 非常手段として、太一の飲食物に誘眠性のある野草を混入、眠らせる。
 その間に彼の拡声器を回収、周囲の安全を確認した後、遠隔式トラップで彼の覚醒を行う。

問題B:
 神宮司奏と称する参加者が旅館へ乱入。
 彼女は高い移動速度を誇り、太一への接触阻止に失敗。

対策B:
 太一が奏から離れた時を狙って、彼女を殺害、最低でも排除。

結果B:
 奏の殺害に失敗。彼女への野草の効果は一時的に五感を鈍らせるに留まる。
 相手は身体能力が高く、未知の部分も多いため、戦闘の続行は危険。
 彼女からの提案は現時点では保留。
 治癒手段が支給品に依存し、かつリスク乏しいものならば、殺してでも奪う。

――たとえ、肉体が元に戻っても、私はすでに怪人だ。
     太一が私を受け止めれば、やはり彼は壊れてしまうのではないか。
       でも、少し、ほんの少しの時間だけならば……

結果A:
 太一の誘眠、及び拡声器の回収に成功。

問題C:
 しかし、神宮司奏の予期せぬ行動に翻弄され、
 長髪の女、来ヶ谷と推測される参加者に太一を拉致されてしまった。

対策C:
 奏はあのような提案を持ちかけてきた以上、すぐに太一を狙う可能性は低い。
 彼女の殺害は後回しにして、来ヶ谷を追跡。見失うも行き先は廃校方向と推測される。

――二人が別れた隙を突いて、彼女を殺す。
      別れないなら、一方を誘導した後に彼女を殺す。
               彼女の好意が本物であっても殺す。
    彼女の好意が擬態であっても殺す。
  殺す。


【D-7 中央/1日目 夜中】

【支倉曜子@CROSS†CHANNEL~toallpeople~】
【装備】:カリバーン@Fate/staynight[RealtaNua]、投石器、全身に包帯、トレンチコート(男物)、マスク・ザ・斉藤の仮面@リトルバスターズ!
【所持品】:石材3個、首輪4つ(蒼井、向坂、橘、鉄)、工具一式木彫りのヒトデ×1@CLANNAD 、斧、拡声器、オペラグラス、バカップル反対腕章@CROSS†CHANNEL、斬妖刀文壱@あやかしびと-幻妖異聞録-、ドラゴン花火×1@リトルバスターズ、支給品一式、木彫りのヒトデ2/64@CLANNAD、怪盗のアイマスク@THEIDOLM@STER、RPG-7V1(1/1)@現実、OG-7V-対歩兵用弾頭x3
     真っ赤なレオのデイパック:何も入っていません
【状態】:肉体疲労(やや大)、右半身大火傷(処置済み)、胸部に激痛(処置済み)、右目が充血(視力低下)、髪を切りました
【思考・行動】
 基本方針:太一の為に、太一以外を皆殺し。
 1:来ヶ谷を黒須太一から引き離して殺す。
 2:ゲームの参加者も他の生き物もとにかく殺す。
 3:投石器で殺す。なくなったら斧で殺す。殺したら相手の武器を奪ってそれでまた他の人間を殺す。
 4:遠隔爆破装置を作成し、任意のタイミングで交通・通信網を分断、電力を遮断して殺す。
 5:殺す。
 6:(…………………………………………太一)
【備考】
 ※登場時期は、いつかの週末。固定状態ではありません。
 ※佐倉霧、山辺美希のいずれかが自分の噂を広めていると確信。
 ※支倉曜子であることをやめました。
 ※「ゲーム」の主催者は脱出も想定していると考えました。
 ※G-4変電所の周囲に無数のブービートラップを仕掛けました。
 ※ドライの能力のみを信頼、確実に殺せるその時までは援護する意思があります。
 ※第6回放送時に学校に待ち合わせという、西園寺世界の提案は保留。
  最終的には殺す気ではいますが、すぐではないようです。
 ※時間があれば、石材を3個まで調達します。


184:大天使の息吹 投下順 186:kind
194:乙女はDO MY BESTでしょ?~じゅうななさいばーじょん~ 時系列順
170:モノの価値は人それぞれ 黒須太一 187:The tower
174:Little Busters! (後編) 支倉曜子
167:know 来ヶ谷唯湖
180:夕暮れの湖畔にて 西園寺世界 195:メモリーズオフ~T-wave~(前編)

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