東名首都圏電気鉄道25000系電車
25000系電車(25000けいでんしゃ)は、東名首都圏電気鉄道が保有する特急形直流電車。2010年3月11日から営業運転を開始した。

主要諸元
起動加速度 | 2.8km/h/s以上(車輪径820mm) |
営業最高速度 | 160km/h |
設計最高速度 | 200km/h |
減速度 | 常用5.6km/h/s(車輪径860mm)・非常6.2km/h/s(車輪径860mm) |
全長 | 21,100mm |
車体長 | 先頭車:20,670mm 中間車:20,600mm |
全幅 | 2,915mm |
全高 | 先頭車:4,090mm 中間車:3,855mm |
パンタ折り畳み高さ | 3,970mm |
車体高 | 3,490mm |
床面高 | 1,125mm |
軌間 | 1,067mm |
電気方式 | 直流1,500V |
主電動機 | かご形三相誘導電動機(M-MT105A) |
主電動機出力 | 連続定格:255kW(1,100V/175A) |
制御装置 | 3レベルPWMIGBT-VVVFインバータ M-PC11(1C1M) |
駆動装置 | WN平行カルダン歯車形たわみ軸継手方式 |
台車 | 軸梁式軽量ボルスタレス台車(アクティブ制振装置・ヨーダンパ付) |
歯車比 | 1:5.22 |
固定軸距 | 2,100mm |
車輪径 | 860mm |
ブレーキ方式 | 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ (応荷重、遅れ込め制御、直通予備、救援、耐雪、抑速、駐車ブレーキ付き) |
保安装置 | ATS-SW2形・武鉄ATS・東鉄CS-ATC・ATC-IM 列車防護無線装置・EB・TE装置 |
製造メーカー | 川崎重工業・近畿車輛・東名車輛 |
概要
東名首都圏電気鉄道と武蔵野鉄道の間で運転されている直通特急「あかぎ」には従来、特急「サンダーバード」用の12000系が用いられてきたが、12000系は元々本数が少ないため、トラブル等によってダイヤが乱れると「サンダーバード」に使用する車両が足りなくなり、他形式による代走や武蔵野鉄道線内に戻れなくなった武蔵野鉄道300系を急遽借り出して「サンダーバード」に使用するなど、自社の車両管理ばかりではなく直通他社にも迷惑を掛けるなど、運行状態としては最悪に近い状態であった。そこで、「あかぎ」と「サンダーバード」の運用を分離すべく製造されたのが本形式である。
構造
車体
本形式は一刻も早い投入が求められた一方で、12000系の先頭部デザインをそのまま流用することは、踏切が存在する武蔵野鉄道線内での正面衝突対策を鑑みるとなるべく避けたい事態であった。そこで、先頭車先頭部構体は当時既に設計が完了していた、衝撃吸収構造を持つ24000系のものを、屋根および側構体は12000系4000番代のものをそのまま流用し、設計・製造期間の短縮とコスト削減を図っている。
前述の通り、12000系と24000系の設計をそのまま流用した本形式はこれら2形式と同様にアルミダブルスキン構体を採用しており、先頭部には衝撃吸収構造を持つほか、コーナー部にはオフセット衝突対策が施され、安全性を高めている。車体配色はこれら2形式を踏襲せず、パールホワイトのボディにダークレッドとダークグレーの2色の太帯を入れ、更に車体上部をダークグレーで塗装している。この塗装は北越急行の681・683系に似通った塗装であるが、社長の眞飛鳥氏はそれらの681・683系の塗装を「邪道」として嫌っているため、関連性は不明である。
登場当初はロゴやエンブレムが何も貼り付けられていなかったが、2013年9月以降、先頭部両サイドと一部の空きスペースに本形式が使用される特急「あかぎ」をイメージした、「特急赤城」のロゴが入っている。フォントは特急がHG正楷書体-PRO、赤城がHG行書体となっている。なお、このロゴはこちらも「あかぎ」と同様に赤城山を名称の由来とする、旧日本海軍空母「赤城」に感化されて取り付けられたものとされている。
機器
機器類に関しては12000系並びに武蔵野鉄道300系と取り扱いを統一するため、ほぼ全ての機器が武蔵野鉄道でも導入実績のある12000系4000番代と共通化されている。
制御装置は1C1M方式の3レベル電圧形パルス幅変調式IGBT-VVVFインバータ、M-PC11形を採用し、電動車に主回路部4基、補助電源部1基の計5基を1基にまとめた車両制御装置の内部に格納している。CVCF制御にも対応しており、補助電源部が故障した場合には主回路部をCVCF制御して補助電源のバックアップとする構造となっている。
M-PC11によって制御される主電動機には、連続定格出力255kW(1,100V/175A)のM-MT105A形を採用、電動車に4台装荷している。武蔵野鉄道線内の急勾配に対応するため、低回転域の出力増強と冷却効率を大幅に引き上げる勾配対応モードも設けられている。
空気圧縮機(CP)は近年の新型車両では標準装備のスクリュー式CPである、M-MH3098-M-RC1600を電動車に1基搭載、編成全体では3基搭載している。唯一集電装置のみ12000系と異なり、直流専用のM-PS28Dを搭載している。これは本形式が都心近郊のあらゆる路線が走破可能であることを目指した12000系と異なり、東名電鉄~武蔵野鉄道直通のみに使用されること以外を想定していないためである。
東海旅客鉄道(JR東海)・西日本旅客鉄道(JR西日本)N700系新幹線電車や名古屋鉄道2000系電車で搭載されている、車体傾斜装置を搭載している。傾斜角度は最大3度で、半径600mのカーブで本則+25km/hでの走行が可能となっている。ただし、これについてはスピードアップなどのために搭載したのではなく、N700系が山陽新幹線区間で行っているように車体を水平に保つ制御に使用して乗り心地を向上させるためである。その後、武蔵野鉄道線内において曲線通過速度の向上による所要時間の見直しが検討されたため、武鉄ATS投入時に車体傾斜を行うよう制御プログラムの改良が行われている。
車内
内装・接客設備は12000系4000番代のものに更に改良を加え、より人に優しい車両としている。
座席は東名電鉄の特急形車両としては標準的な回転式リクライニングシートを採用している。グリーン車は1+2列配置でシートピッチ1,160mm、普通車は2+2列配置でシートピッチ970mmで展開する。背もたれ・座面の形状が12000系4000番代から更に改良され、ほとんどバケットシートに近いホールド性を有している。また、グリーン席・普通車席ともにN700系で採用されている、「シンクロナイズド・コンフォートシート」と同様のリクライニングと連動して座面後部が沈み込む機構を採用し、座り心地を改善している。クッション材もこれまでのポリウレタンを重ねる構造をやめ、金属製のSばねを加えた複合ばね構造として長時間の着座でも快適な座り心地となるよう改良している。
各車両には出入り口上部に12000系4000番代と同様の大型3色LED式車内案内表示装置と、各種携帯端末の充電などに使用できるモバイル用コンセントを設置している。モバイル用コンセントの設置は12000系4000番代ではグリーン車全席と普通車の車端部のみに限定されていたが、本形式では普通車も全席に設置を拡大し、9両編成で558個のコンセントを備えている。コンセントの搭載数が編成定員を超えているが、この理由については後述する。
N700系と同様に無線LANによるインターネット接続サービスを実施している。N700系ではプロバイダとの契約が必要であったが、本形式では東名電鉄側がプロバイダと契約する形で提供しており、特にプロバイダとの契約がなくても利用可能である。なお、武蔵野鉄道線内の一部区間では電波が入りにくくなるなどの問題があるため、インターネット接続サービスは使用不可となる。
3両に2両の割合で便所(小便器1か所と洋式大便器1か所)が設置されている。更に、バリアフリー設備として多目的室や車いすスペースが編成中に1か所設置されている。
2・6・8号車には携帯電話用の電話室を設けている。12000系4000番代のそれが喫煙ルームからの転換であるのとは異なり、本形式では当初から携帯電話用の電話室として設計されたため、電話室内に充電用のモバイル用コンセントを4個備えている。編成定員よりもコンセントの数が多いのはこのためである。
乗降扉は後位に690mmの引戸で1か所設置している。車いすスペースが設置された車両については前位に1,000mmの引戸を追加し、2か所設置している。
車内チャイムは「WHITE ALBUM」を採用している。始発・終着駅ではサビの部分をアレンジしたものが、途中駅ではBメロをアレンジしたものが使用される。また、東名電鉄線内では終着駅到着時にBGMとして「WHITE ALBUM」の原曲が流される。当初はPCゲーム「WHITE ALBUM」のOPテーマとして使用されていたものを流していたが、2012年9月1日以降は「WHITE ALBUM 2」で使用された、小木曽雪菜(CV:米澤円)歌唱のバージョンが使用されている。
形式
- クモハ25000形 (Mc)
-
普通席を備える貫通型の制御電動車。サハ25100形とユニットを組んで使用される。赤城方運転台・乗降扉が1か所設置され、車両制御装置・蓄電池・空気圧縮機を搭載する。定員64名。
- クロ25100形 (T'sc)
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グリーン席を備える貫通型(準備工事のみ)の制御車。小田原方運転台・乗降扉1か所・トイレ・洗面所が設置されている。定員32名。
- モハ25000形
- 普通席を備える中間電動車。サハ25100形とユニットを組んで使用される。車両制御装置・蓄電池を備える。
- 0番代 (M)
-
乗降扉2箇所が設置されている。定員72名。- 300番代 (M3)
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乗降扉1か所、車販準備室が設置されている。定員72名。
- サハ25000形
- 普通席を備える付随車。
- 0番代 (T)
-
乗降扉1か所・電話室・トイレ・洗面所が設置されている。定員64名。- 200番代 (T2)
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乗降扉1か所・業務用室・トイレ・洗面所が設置されている。定員64名。
- サハ25100形
- 普通席を備える付随車。クモハ25000形・モハ25000形とユニットを組んで使用されている。集電装置・蓄電池を搭載する。
- 0番代 (Tp)
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乗降扉1か所・電話室・トイレ・洗面所・自動販売機が設置されている。定員64名。- 400番代 (Tp4)
-
乗降扉2箇所・トイレ・洗面所・車椅子対応設備・多目的室・業務用室・車掌室が設置されている。定員50名。
編成表
左側が蓮田・赤城方、右側が小田原方である。
クモハ25000 -0 (Mc) |
サハ25100 -0 (Tp) |
サハ25000 -200 (T2) |
サハ25000 -0 (T) |
モハ25000 -300 (M3) |
サハ25100 -400 (Tp4) |
モハ25000 -0 (M) |
サハ25100 -0 (Tp) |
クロ25100 -0 (T'sc) |