第一の選択
このページをご覧になっている方には、当MODがVictoria 2のソックリな未発表MODであるA New Orderを元に製作されていることを覚えている方も多いと思います。そのタイムラインは、もちろん現MODと同じです。2014年頭に始めて、2016年にHearts of Iron 4がリリースされるまで2年もの間製作していました。
最初期のMODがVictoria 2で開発された理由は2つあります。
①Victoria 2は、この世界の設定を再現するのに最も適した、かつ最新のゲームだと感じていました。直後にEuropa Universalis 4とCrusader Kings 2が発売されましたが、どちらの設定もA New Orderの世界を適切に再現するには時代設定が古すぎる。また、当時発売されていたHearts of Ironシリーズの他のパラドゲーは、設定を殆どイジれない(Hearts of Iron 3)ものか、私が一度もプレイしたことがない(Hearts of Iron 2)ものでした。
Hearts of Iron 3を選ぶには他にもいろいろと問題がありましたが、そのほとんどはHearts of Iron 4にも当てはまり、後述しますが、要するに一番の問題は、そのゲーム設定が世界大戦を前提としているにも関わらず、A New Orderの世界大戦は回避できなければならないということです。
②Victoria 2は、他のほとんどのゲームよりも設定をうまく表現できました。スフィアシステム、植民地化(或いは、この場合再植民地化)、危機、列強、その他のシステムは、設定を活かすのに非常に役立ち、物語とフレーバーイベントに重点が置くものでした。必要なものすべてがVictoriaにあった、むしろ当時、これらの機能のいずれか一つでも持っていたバラドゲーは他には一つしかありませんでした(一応Europa Universalisには植民地化のメカニクスがありました。なお、当時はまだ列強システムが追加されていません)。
当時、Victoria 2が選ばれるのはあまりに自然だったのです。もちろん、それ自体にも問題はありましたが、それでも他のどのゲームよりもメカニズム的に最も理にかなっていました。一応最大のこだわりポイントは、当たり前ですが戦闘と派閥でした。そしてそれだけが、Victoriaにはなく、Hearts of Ironにはあった最大かつ重要な設定でした。より現代の戦争に近いゲームとしてはHearts of Ironの戦闘システムの方が好ましいですしA New Orderの世界は冷戦下であるので、派閥システムも必要でした。
しかし、他の要素も考慮すると、やっぱりVictoria 2を選択することにしました。前述のように、Hearts of Iron 3の最大の欠点は、その堅苦しさと、全く設定をイジれないところでした。もちろん、「Victoria 2が良かった」なんてことはちっとも思っていませんでしたよ。
Victoria 2なんてクソ喰らえ、マジで
ざっくり言えば、Victoria 2の改造は、夕食を作るために頭蓋骨をレンガの壁に叩きつけるようなものです。脳みそが飛び出して皿にこぼれ落ちるまで頭を壁に叩きつければ、、、おめでとう!食事ができました。ですがこれはひどい味で、みんなが多分嫌な思いをするでしょう。このMODの最大の壁は、地中海が埋め立てられていることと、Victoriaがステート区分の改造を拒んでくることです。
もちろん、私はアトラントローパ(地中海の陸地化)が無いことが許せず、なんとかその形をMODに削り出しましたが、なんかうまく動きませんでした。だから、アトラントローパ実装前の最初の数枚のスクショ以外で、MODが披露されなかったんですね。多くの結果のうちの1つをご覧に入れましょう。
結局、私はこのクソ要素を動かすことにうんざりしてしまい、結果、2か月に1回くらいしか手をつけなくなり、基本的には他の分野をイジることにしました。
Hearts of Iron 4、mod製作、サンドボックス機能
Hearts of Iron 4は、前作と比べて基幹システムと要素の分離が進んでいて重い、という批判が多く見受けられますが、むしろそれこそ私が乗り換えた最大の理由の1つかもしれません。イベントシステムとメカニクスの刷新で、新派閥の作成と旧派閥の破壊、派閥の変更、あるいは政府形態の変更が可能になったため、この新しいゲームはこのMODの制作に十分通用し得ると思いました。そして、そう思ったのは私だけではありません。そう、あのKaiserreichチームが新しいゲームに足場を固めた理由でもあります。
乗り換えによって、植民地化システム(Victoria 2のステート改造の仕組み上、既に不可能になっていた)、大国システム、多くのイベントのストーリー構造など、失うものが多い一方、多くの利点もありました。戦闘はより設定に忠実に、ダイナミックな派閥システムは、独/日/米の分裂を完璧に表現しつつ、あらゆる帰結を適切に描くことができました(アメリカの立場、ロシア地域の改革、帝国の分裂と新しい派閥形成など)。
もちろん、最大の変化は、Hearts of Iron 4がこれまでで最も改造しやすいパラドゲーになったことです。問題点はあるが、パラドゲーはシリーズを重ねるごとに改造が簡単になっていて、もちろんHearts of Iron 4も例外ではありませんでした。ざっくり言えば、A New Orderを動かすには、 Hearts of Iron 4の方が(比較的)簡単であり、マップにアトラントローパを適切に実装するのに、ほんの1週間ちょっとしかかかりませんでした。もちろん、ゲームにはもっとたくさんの要素があり、その中でも特に多くの人がマップを改造するなんて、開発者は考えもしなかったと思います。だからでしょうか、システムは多少不安定になってしまいましたが、それも内蔵の改造ツールや実際のエラーログなどの新機能により、ちっとも苦ではありません。パラドックスありがとう!
というわけで、しばしの熟考の末、ついに乗り換えを決意しました。
何が消え、何が残るか
もちろん、移行によって失ったものもありました。Hearts of Iron 4がかなりアーケード風のゲームであるのに比べ、Victoria 2には非常に奥深い機能がたくさんあり(MODに落とし込むのには骨が折れましたが)、ゲームに組み込んで動かすことは楽しかったです。完全な経済システムで、各陣営がいかに産業大国であることを示すことができ、人口システムにより、ドイツのカースト制度(そしてその恐ろしさ)を適切に示すことができ、このMODでドイツ(或いは日本)がいかに奴隷制の上の楼閣であるかを徹底的かつ分かりやすく表現できました。さらにVictoria 2の技術システムでは、Hearts of Ironシリーズのような10年程度の短い、近視眼的な研究を越えており、長期的な研究開発を促進できました。
また、我々は列強とスフィアシステムも失いました。これは本当に痛かった。特にスフィアシステム。『A New Order』は冷戦下の世界を描くため、日本、ドイツ、アメリカ、その他の国々は、小国を味方につけ、自らに隷属させるために、当然外交の場で激しく争うことになります。さらにスフィアシステムは、西欧諸国がライヒと密接に結びつきながらも、名目上は独立していることを表現することができました。
もちろん、このシステムも決して完璧ではありませんでした。初期のバージョンでは、モスコーヴィエン国家弁務官区は第8位の列強になってしまい、ドイツ圏から離脱できてしまうほどに強大な産業と人口を持っていることになっていました。イタリアとイベリアは、独自の勢力圏を持てるほどに大きく強力すぎました。この8大国の設定に準拠せざるを得ず、三極世界の間はあまりに開きすぎていました。
それでも、Victoria 2は、私にとって乗り換えが嫌に思えるほどに魅力的だったのです。特に、私が一番好きなパラドゲーだったことは大きい。
完璧なんて無いんだよ
そしてもちろん、私はいつも1つの問題にぶつかっています。ざっくり言えば、Paradoxは冷戦期のゲームをリリースしたことがありません。そして、A New Orderはまさにその冷戦に陥った世界です。つまり何が言いたいのかといえば、Hearts of Iron 4は設定としては最高ですが、私がどうしても対処しようのない様々な問題を抱えているということです。中でも最大のものは、A New Orderがそもそも世界戦争シミュではないことです。もちろん、第三次世界大戦の可能性はあり、A New Orderのプレイヤーがそれを目にする可能性は高いものの(もちろん、核による破滅ですね)、ゲーム自体は三極による膠着状態を軸にしています。
Hearts of Iron 4は、単にそれをシミュレートするためにできていないのです。それでも、新しい緊張度システムのおかげで、それをシミュレートするのに最適なHearts of Ironではありますがね。でもやはり、Hearts of Ironというゲームは避けられない戦争に至るまでの過程が九割を占めています。このゲームには、内政を楽しむためのシステムがあまりないため、その間にドイツ内戦や日本の内乱のような、やるべきことをわざわざ追加せざるを得ませんでした。少なくとも、A New Orderで大国である為には、他国との覇権争いと同じくらい、国家の統一のために同胞と戦わなければなりません。
でもやはり、この領域はこのMODで表現するのが最も難しいものになるでしょう。さらに難しいのは、もちろん、核戦争の脅威です。これをどうやって実装しようかは正確には決まっていませんが、第三次世界大戦自体はそれを楽しいゲームにしたいと思っています。そして、プレイヤーがいずれかの大国(或いは他の国家)として、ある程度の期間は核戦争に陥ることなく戦うことができるようにしたいと思いました。もちろん、それの理由と共にね。もちろん、核兵器は依然として存在する必要があります。そして、核兵器は、時が来たら(仮にね)、その役目を果たして世界を終わらせるようにしなければなりません。
総括
これにて、私がこのMODをVictoria 2ではなくHearts of Iron 4のMODとして開発に取り組んでいる理由、或いはこのMODの構想と製作において私が経験した苦労の断片を伝えられたことと思います。今後の開発日誌では、国自体の解説やゲームプレイについてさらに詳しく説明する予定ですが、それまではこれを予告として覚えておいてくださいね。マップがほとんど完成したので、このMODが何かしらの形で公開されるのはもうすぐでしょう。
もちろん、ParadoxがVictoria 3、或いは冷戦のゲーム("もし"ね)を発売することがあれば、考え直すこともあるかもしれませんがね。それでは!
翻訳元
最終更新:2024年09月22日 10:39