ぬるり、と。
蛹を破って蝶が羽化するように。
あるいは、母胎の羊水から外界にまろび出て生誕するように。
"それ"は、闇色の墨の中から浮上した。
異様な巨躯の男だった。飢えた肉食獣のようにぎらついた輝きが瞳に宿っている。
粘つく黒墨が、まるで撥水加工でもされているかのようにぬらぬらと身体を伝い落ちていくと、傷一つない真新しい肉体が露わとなった。
実に心地良い。実に、清々しい。
まさに、生まれ変わったような心地だ。
受けた傷も、芯まで響く屈辱も、何もかもが真っ新な黒に塗り潰されて今や何の痛痒もない。
「――素晴らしい。やはり、拙僧の目に狂いはなかった」
男のクラスはアルターエゴ。骸の名をリンボ。
その真名は
蘆屋道満。
安倍晴明の宿敵、悪名高き道摩法師。
"かくあるべし"と願われて生まれた、ある哀れな法師のカリカチュア。
異星の神に使徒として選定され、悪逆の限りを尽くして敗れ、にも関わらず欠片たりとも懲りることなく一切嘲弄の宿業のままにあり続ける、醜く穢れ肥大化した自我(エゴ)の雫。
リンボが、一体いつから
北条沙都子という次善策を見出していたのかと問われれば、彼はしたり顔でこう答えるだろう。
そんなもの――最初からに決まっているではないか、と。
「怨嗟と絶望。そして、妄執。
実に、実に実に実に見事! この道満めが太鼓判を押しましょう、マスター。
御身のそれは紛れもなく、世界を喰む呪いに他なりませぬ」
そう、最初からだ。
初めてあの娘に召喚され、この地に降り立ったその瞬間から。
既にリンボは、北条沙都子という娘が秘めたる莫大な可能性に目を付けていた。
繰り返す者。時ではなく、世界/カケラの境界を越えて歩む者。
神に触れ、自らも神の如くに死を重ね、人の身ではありえぬ数のカケラを渡り歩いた少女。
沙都子はついぞ気付いていなかったようだが、彼女の魂には地層のように何重にも折り重なった神秘が蓄積されていて。
それを、この悪僧は見逃さなかった。
だから窮極の地獄界曼荼羅という分かりやすく凶悪で危険、かつ完成がすなわち勝利に直結するようなメインプランを掲げつつ、その一方でそれが頓挫することがあればいつでも沙都子を"使う"気で事を進めていたのだ。
とはいえ、綱渡りだったことは認める他ない。
あの時。鏡面の中で、取るに足らない雑兵と気にも留めていなかった傭兵から受けた"復讐劇"は、彼を本当に後一歩まで追い詰めていた。
あの場で龍の心臓と異界の触手を盗み出せていなければ、霊基を半壊どころでなく傷付けられたリンボが再起することは難しかったろう。
しかしリンボは賭けに勝った。
だからこそ、この美酒に浮かされたように心地良い"地獄"がある。
繭を抜け出たリンボが居た場所は、古めかしい蔵のような建物の中だった。
所狭しと並ぶ、悍ましいまでの凶念染み付いた拷問器具やら神像やら。
祭具殿。少なくない世界で惨劇の引き金となった、絶対不可侵の禁足地。
無論、こんな建物は本来の品川区には存在しない。
だが、此処はもはや既に品川という地域ではなくなっていた。
リンボの展開した擬似領域によって囲われ、帳を下ろされ、その上で北条沙都子の想念によって塗り潰された正真正銘の異界。
繰り返す惨劇で以って永遠になるのだと求められた、鬼の棲む村――その再現。
沙都子はかつて此処のことを楽園のように語っていたのをリンボは覚えていたが、とんだ皮肉だと彼は笑う他なかった。
「ええ、ええ。
確かにこれは楽園でしょう、大変に居心地がいい。午睡の一つもしたくなってきます。
我らのような獣には、思わず骨を埋めたくなるほど心地良い――地獄の楽園に他ならぬ!」
素晴らしい。
率直に言って期待以上。
これならば、これならば、我が大願を賭けてみる価値もあるというもの。
呵呵大笑しながら、アルターエゴ・リンボは歓喜のままにこの呪わしきエモーションの箱庭を"祝福"した。
此処は子宮だ。
北条沙都子という子どもが、永遠に満たされ微睡み続ける一つの母胎だ。
「存分に酔うがよろしい。夢を見、過去を抱き、想うモノを捕え続けるがよろしい。
何、ともに悪巧みをした仲です。界聖杯をこの腹に収めたその後も、奈落の夢ならいくらでも見せて差し上げましょう。
ふは、ふははは、ははははははははははははははははははははははははは」
沙都子の忠実な従者という顔すらかなぐり捨てて、アルターエゴ・リンボは立ち上がった。
これにて、再誕完了。
霊基、進展。
再臨の時来たれり、我は総てを弄ぶ者!
皆、皆、皆皆皆皆! この蘆屋道満が殺し喰らい骨肉に変えてくれよう!
「ははははははははははははははははははははははははは――――!!」
視界の真下から伸びた血濡れの矛。
自身の心臓が死に際の虫のようにか細く脈打つ様すら愉快痛快で仕方がない。
はてさてまずは何から始めたものか。
目障りな方舟を穢しに穢し呪いに呪い、あらゆる悲劇を被せて絶望のままに狂死させるのも素晴らしい。
もしくは左府の大災厄をこの東京なる都にて再現し、悶えながら死んでいく要石達を嘲笑いながら嬲り殺しにするか。
際限なく湧き上がってくる悪心を善し善しと宥めながらリンボは浮き足立つ己を苦笑と共に諌めようとして……
――――――は?
そこでようやく。
術師蘆屋道満は、自分が何者かに"貫かれている"ことに気が付いた。
思考が空白に染まる。
なんだ、これは。一体何が。
この状況そのものに猛烈な既視感を覚えながら喀血するリンボの耳に届いたのは、これまた覚えのある耳障りな嘲笑だった。
「その、声は……!」
「オマエさ、ちょっとは学習しろよ。
カスみたいな格下に胸板ぶち抜かれて痛い目見たばかりじゃねえのか」
この声を、この男を、リンボは知っている。蘆屋道満は知っている!
人間ならば誰もが持つ魔力/呪力を一切持たない、故に英霊や術師の視点からは純粋な五感以外で一切認識することのできない透明人間!
神秘一つ持たぬ非才の身で、愚かにも晴明めさえ嘲ってのけた世にも滑稽なるケダモノ!
格の差を見せつけたものと思っていた。仮に再び相見えることがあったとしても、何ら労することはないと高を括っていた!
――だが!
「貴様――あの下賤な山猿かァッ!!」
凶手・
伏黒甚爾の賜った天与は規格外だ。
あらゆる感知能力をすり抜ける時点で十分に異常だというのに、彼の呪縛はその次元にすら留まっていない。
リンボは今この時に至ってようやく彼の"すべて"を理解した。
完成された天与呪縛。フィジカルギフテッドと呼ばれる人種の究極完成形。
術による感知はおろか――展開された領域の壁にすら阻まれることなく、その上で認識されることもなく、自由自在に出入りすることができる存在!
"術師殺し"とそう呼ばれた男の真髄を、癒えた屈辱をそっくりそのまま掘り返される激痛で以って思い知らされる憂き目に遭った。
「まあでも気にすんなよ、術師なんざ大体そんなもんだ。
持って生まれた力が強ければ強いほど、周りの有象無象がチンケな猿にしか見えなくなるんだろ? 山のように見てきたぜ、オマエらみたいな連中は。
だから安心しろアルターエゴ。オマエは何処に出しても恥ずかしくない、至って普通の、模範的な術師だよ」
「ほざけ猿がァァッ!!」
憤怒と共に、リンボの身体から爆発にも似た呪力が炸裂する。
逆鉾を引き抜いて飛び退いた甚爾は、憎たらしい笑みを浮かべながら悠々と回避。
しかも単に避けただけではなく、常人ならたちまち骨まで焦がされる熱の中に身を躍らせて瞬時に反転攻勢を仕掛ける。
どの道たかだか骨まで焼く程度の熱では、甚爾の肌すら焼けはしない。
リンボは口から胸までを真っ赤に染め上げながら、呪の濁流を祭具殿内部へすぐさま満たすことで彼の進撃を止めんとする。
武器庫呪霊を出そうものなら、すぐさま先の一戦でしたように呪殺を図る。今度は咄嗟に仕舞わせなどしない、一撃で、確実に、跡形も残さず祓ってくれる――
牙を剥いて猛る肉食獣に臆することなく、甚爾は手近な神像を蹴って中空から垂直方向に加速した。
焼き直しの足元潰しを無視し、新たな呪具など取り出すことなく釈魂刀を片手に、逆鉾を懐に携えながら襲う術師殺し。
「帳だけならともかく、領域まで展開したのは失敗だったな。
どこの誰が貼ったんだか知らねえが大気中の呪力量がとんでもねえ。
これだけ呪いで溢れた空間じゃ、流石の蘆屋道満サマも呪具の一つ二つは見落としちまうらしい」
「ンン、ンンンンン……! 赤ら顔でなんとも涙ぐましいことよ、流石は粗野な猿でありますなァ!!」
「そんなだからいつまでも二番手なんだよ、オマエ。一から十まで脇が甘えんだ」
有形無形を問わずすべて切り裂く釈魂刀の斬れ味に物を言わせた突撃が、リンボの術と呪を裂いてねじ伏せる。
閉所というロケーションに、不意打ちが成功していることの心理的アドバンテージ。
東京タワーでの交戦とは異なる二つの点を、甚爾は最大限に活用していた。
とはいえリンボもまた、流石に術師の最高峰。
自らの法衣の内より、異界のモノ……かの銀鍵の娘を思わす触手を無数に這い出させて、釈魂刀の柄とそれを握る手を絡め取らせる。
力比べで勝とうとは思っていない。
だがほんの〇.一秒でも稼げればそれで良し。
それだけの猶予があればこれしきの猿、笑えるほど容易く押し潰してやるぞと。
そう嘲笑を浮かべかけた、リンボであったが。
「いいぜ。欲しいならくれてやるよ、そんなもん」
「な――――ッご、ばあァァッ!?」
甚爾はリンボの策に一切付き合わず、片腕の拘束を外そうとすることすらなく。
無茶な挙動によって生じる体への反動を、生まれ持った肉体強度のごり押しでまたもや無視してそのまま踏み込み。
そして握り締めた拳を、嗤う肉食獣の右顔面へ――隕石の着弾が如き衝撃で、叩き込んだ。
予想外。
リンボの脳が驚愕と衝撃に揺れる。
この男は、呪具に頼らねば英霊に触れることもできない筈ではなかったのか。
だからこそあの弱い呪霊を体内に飼っていて、先の一戦では己にそこを突かれたのではなかったのか。
リンボの考えは正しい。
実際、甚爾は彼を徒手で殴ったわけではなかった。最後の踏み込み、時間にして一秒に遠く満たないその刹那の内に懐の逆鉾を取り出し、リンボの顔面と自らの拳の間へ投げた。
後はまず逆鉾を殴り、その勢いのままリンボまで拳を到達させれば。
拳の威力はそのままに、非才の身でもサーヴァントを殴り飛ばせる冗談のような手品が完成する。
「何だ、要らねえのか? じゃあ返してもらうぜ。特級の呪具は高えんだよ」
触手からこぼれ落ちた釈魂刀を握り直し、地面に向けてそのまま切先を振り下ろすが――リンボと刀の間に、ふ、と赤紫色の光球が浮かび上がった。
「涙ぐましいと言ったぞ、猿め」
光が爆ぜる。
祭具殿に収められた祭具神具のすべてを焼き払うだけの熱波が吹き荒れ、甚爾は踏み止まれずに壁際まで跳ね飛ばされた。
ペッと吐き捨てた唾には血が混じっている。
内臓まで届く衝撃と熱であったことを、その有機的な赤色が物語っていた。
ゆらり、と。
リンボが、蘆屋道満が立ち上がる。
その顔面は醜く潰れていたが、すぐさま肉が波打ち、骨が泡立ち、血が渦巻いて元の美顔の形を取り戻していった。
貫かれて飛び出した心臓を胸の内側に手で押し戻し、じゅぶ、ぐぢゅ、と艶かしい音と共に復元させていく様は根の国の情事と見紛うほどのおぞましさに満ちている。
「貴様も、あの薄汚い傭兵めも……弱者というのは皆同じですなァ、強者の鼻を明かすことにすべてを懸けている。
そもそも力も技も足りぬから届かぬのだというのに、一撃必倒なる夢物語をいつも夢想している。
そんなものでは。持つ者と持たざる者の差なぞ、決して埋まらぬというのに。
斯くも涙ぐましい努力を重ねているその間にも、刻一刻と差は開いているのだというのに!」
「話が長えよ。手短に言え、坊さんの悪い癖が出てるぜ」
「――解りませぬか? もはや遊びは終わりだと、そう申し上げているのですよ」
瞬間。
アルターエゴ・リンボの放つ魔力反応の大きさが、一瞬にして二段階は跳ね上がった。
さしもの甚爾も眉を動かす。
単なる一介のサーヴァントでは明らかに実現不可能な次元の、急激なる超強化。
霊基再臨? いや、違う。これはそういうものではない。似て非なるものだ。
「……オマエ、龍脈を」
「然り然り然りィ! 愚鈍に逃げ惑う間抜け共の目を縫い簒奪するなぞ、このリンボの手にかかれば朝飯前の児戯よ!!」
要石にして巫女にして神体たる北条沙都子の覚醒に伴い、リンボの霊基にもその力が流れ込んでくるのは自明。
故、この瞬間に伏黒甚爾の死は確定した。
「欲を言えば開帳の頃合には拘りたかったが、しかし考えてみればこれもなかなかおあつらえ向き。
小細工と道具に頼ってせせこましく戦う山猿に、先人として本物の力の何たるかを享受してやるのも一興であろう」
奪い取った龍脈の力が彼の継ぎ接ぎの霊基に接合され、いっそ雑なまでの端的さでアルターエゴ・リンボという存在をサーヴァントとは別次元の怪物に変じさせていく。
魔力。呪力。リンボというハイ・サーヴァントの中で常に沸騰していたそれらが、邪悪の神聖を帯びてドロドロに煮詰まっている。
一秒ごとに、悪逆無道の辺獄は哀れな法師のカリカチュアという在り方すらかなぐり捨てて別な存在に変わっていった。
リンボの背後から、九つの龍の白骨化した首が伸びた。
生命も魂も抜け落ちて久しいと分かる無残な白骨が、何故にこうも激しい存在感を持って見る者に畏れの念を抱かせるのか。
これは。
例えるなら、災厄。例えるなら、禍津。例えるなら、暗黒の太陽。
視れば、視られれば、たちまち網膜を焼かれ魂のすべてを呪い尽くされる空の亡哭。
百鬼夜行の果てに現れると言われる、すべての妖魔が逃げ惑う真の恐怖。
あるいは九つの頭を持つ、荒れ狂い生贄を欲する龍神が如し。
「さあ、さあ、終焉の時である!
逃げてもよいぞ、何処までも追いかけて喰ろうてくれる!
刮目! せよ! これなるは穢土に眠る龍を血肉とし再誕した、辺獄ならぬ地獄界――」
人類悪に至れぬことは既に周知。
何故ならこの身に人類愛なぞ、依然欠片もないのだから!
しかし、しかし、平安京と同じ轍を踏みはしない。
取り込んだ龍は完全に支配下。あのじゃじゃ馬のように反旗を翻される可能性は絶無。
今此処に、アルターエゴ・リンボは真に陥穽のない究極の神霊級霊基を手に入れるに至った!
「――――――――禍津日神・九頭竜新皇蘆屋道満! 地獄界曼荼羅大陰謀、その第二幕である!!」
禍津日神。
荒ぶる日の邪神の号を、不遜にも名乗り。
九頭竜の髑髏を戴冠した新皇として、此処に即位を宣言した。
リンボの、手が。甚爾に向けて静かに翳される。
今の彼が振るえる力は、もはやサーヴァントの次元に収まっていい範疇のそれではない。
猛威を振るう最強生物、空の彼方に消えた混沌の王、そのいずれにも決して見劣りせぬ異次元の存在。
故に伏黒甚爾は、どうあがいたとて逃げられない。
彼は術師殺し。術師を殺すことはできても、しかし神を殺した試しはない。
「……こりゃ、手に負えねえな」
諦めるより他はなかった。
脱兎の如く逃げ出したとて、天与の脚でさえ逃げ切れはしないだろう。
これはもはや、そういうものではない。
逃げればどうにかなるだとか、そんな穏当な存在ではないのだ。
小さく嘆息し、祭具殿の壁に背を凭れた甚爾。
その無様な諦めに、リンボは嘲笑の貌を浮かべ。
享楽と高揚のままに、彼の五体を四散させる極大の呪を突き出した右手に収束させた。
「愚かで矮小な殺戮人形よ。御陀仏、なさいませ」
甚爾が、この呪詛師を殺そうと思うならば。
唯一の好機は、最初に仕掛けた不意打ちだった。
彼処で命を断てなかった時点で、後はどの道こうなるしかなかった。
龍脈の力を事実上その手中に収めたリンボを、猿の一匹で狩るなど不可能。
故にこれは約束された、予定調和の詰みであり。
伏黒甚爾は毎度ながら損な役回りだと愚痴を吐き捨てながら、静かに辞世の句を詠んだ。
「今だ。やっちまえ、フォーリナー」
◆◆
「――イグナ、イグナ、トゥフルトゥ・クンガ」
感情が、曖昧だった。
時たま、自分という存在が分からなくなる。
それはまるで、乳に水を注いで薄めたように。
薄れていく。変わっていく。内側から、あるいは遥かな外側から、自分という存在を何かが曖昧模糊にしていくのが分かる。
それでも。
こんな姿、こんな容(かたち)になっても。
まだ、はっきりと覚えている記憶が、あった。
「我が手に銀の鍵あり。虚無より現れ、その指先で触れ給う」
私と同じ、金色の髪。
私と同じ、碧色の眼。
優しくて、強くて、料理が上手で、お話が楽しくて、いろんなところに連れて行ってくれた。
自分に姉がいたなら、こんな感じだったのだろうか。
一緒の布団で隣り合って眠る時、英霊らしくもなくわくわくしながらそう思ったのを、覚えている。
今も、ずっと。
そして願わくば、これからも。
ずっと忘れたくないと、こんな姿になってもまだ、私は祈っていた。
清貧は終わり。敬虔は穢れ。後はもう、目覚めの時を待つばかり。
そうなっても、まだ。
私は、あの人のことが、好きだった。
「我が父なる神よ。我、その神髄を宿す現身とならん」
笑い声が、聞こえる。
――どうして?
そう思った。
もう、あの人はいないのに。
あの人を奪ってしまった者の声が、する。
笑っている。楽しそうに。
悦んでいる。自分の罪など忘れたように。
次に、そうか、と思った。
この声の主は、あの色鮮やかな獣は、分かっていないのだ。
自分が踏みつけにした人が、どれほど愛されていたのか。
どれほど尊く、うつくしい人だったのか。
わかっていないから、こうして笑えるのだ。
であれば、そうだ。導いてあげなくてはならない。
憎むのでは、なく。憤るのでも、なく。
銀の鍵を託されしお父様の巫女として、かの救い難き魂を誘ってあげなければ。
「――薔薇の眠りを越え、いざ窮極の門へと至らん――」
――門が、開く。
少女の想いが、鍵穴を回す。
救いの形をした怒り。怒りを塗装して仕上げた、信仰のかたち。
救うべき衆生(てき)は、領域の内側。
領域を自在に出入りするなんて芸当が可能なのは甚爾のような例外のみだ。
しかし。少女こそは、銀の鍵。窮極の門へと通じる、生きた鍵そのもの。
門を介することによって、その存在と意思はあらゆる空間座標に顕れる。
再臨の進行は今だ成長途中。しかしそれでも、領域というごく小さな閉鎖空間への介入であれば決して難しいことではない。
「『光殻湛えし虚樹(クリフォー・ライゾォム)』!」
開かれる、門。
銀の燐光を帯びて輝く"それ"の開門に、リンボは一瞬――目を奪われた。
「これ、は……」
それほどまでの神秘。
邪智暴虐の獣でさえ目を瞠る美しさ。
しかしそれも一瞬のこと。
違う――違う違う違う! 理性が咆哮する、魂が喚き立てている。
これは。これは、そんな生易しいものではない!
視認する。理解する。それだけで精神を存在を魂を冒し、無限の彼方へ誘わんとする冒涜の神聖!
「ッ、ご――ぬ、ゥ、ゥウウウウウウ……! 小癪、小癪小癪小癪ゥッ。
考えましたな猿めが! 災厄(カミ)を鎮めるならば巫女を用立てる、ンンンン実に筋の通った思考で、あります、がァ……!!」
"門"から溢れ出したのは、触手の波濤。
かつて呪わしき殺人鬼は、そこに"手"を見た。
それは、決して間違った認識ではない。
この世そのものにまつろわぬ神々が差し伸べる"手"には違いないのだ。
たとえそれが、蛸や烏賊といった海洋生物に酷似した、艶かしく冒涜的に照り輝く触手の群れだったとしても。
「外なる神、何するものぞ!
真体が出張ってくるならいざ知らず、親の七光を翳すばかりの惰弱な巫女など!
この九頭竜新皇蘆屋道満を打ち砕くには、役者が足りぬわア――!!」
だが、だが。
リンボとて、今や神のきざはしに手をかけた存在。
自らを押し潰し、何処かへ誘わんとする導きの手を、力任せに押し退けて引き千切ってみせる。
呪われた村の血塗られた祭具殿が、両者の攻防の余波を受けて文字通り木端微塵に倒壊した。
挑むのは、伏黒甚爾。天与の暴君、殺戮人形。
そして
アビゲイル・ウィリアムズ。降臨者、銀鍵の巫女、そして
仁科鳥子の忘れ形見。
「呼んどいてなんだが、見ての通り相当強えぞ。やれるか?」
「ええ……。勿論、やってみせるわ。あの人を導いてあげるのも、私の役割ですもの」
受けて立つのは――禍津日神・九頭竜新皇蘆屋道満。
「ハ。面白いことを言うものだ、この拙僧を導くと?
ンンンン子女の背伸びにしても分不相応。拙僧を導ける教義(おしえ)とはそれ即ち拙僧なり。
……しかし儂もかつては法師として世のため人のため尽くした身。
迷える哀れな子女をどれ、一つ。先立った片割れの下まで送って差し上げましょう!」
銀の鍵を用い窮極の門を開くというのであれば。
リンボは、それに対して禍津の門を開くことで対抗する。
この身この霊基の中で渦を巻く、自分自身にさえ桁の計り切れない膨大な力。
そのすべてを使い、神も猿も等しく屠ってみせよう。それに――
(理外の僥倖。拙僧を出し抜いたと思っているのでしょうが、笑止。
この欲深なリンボめが、一つ手に入れた程度で満足したとでもお思いか)
まだ、己は何も諦めていない。
("百年の累積"、"龍脈の力"。此処まで手に入った。此処まで集まった。
であれば初志貫徹、必ずや――貴様のそれも手に入れてみせようぞ、"窮極の門"よ。
この儂が、欠片程度簒奪しただけで満足だなどと笑止千万ッ)
欲望と執着をぎらつかせて嗤うリンボ。
彼は、気付いていなかった。
ひらり、と。その顔の横を、一片の桜花が横切ったことに。
神を僭称する邪悪。
その討伐に挑むのは、猿と巫女の二人だけではない。
リンボは、高揚のあまりにかまだ見落としていた。
自分の前にかつて立ち塞がり、野望を頓挫させた女。
神々の地で原初神を斬って消え、それでもこんな辺境の時空まで自分を追って現れた剣狂いの存在を。
見落としていたからこそ、彼は。
「――――何?」
三度目の瞠目という無様を晒す。
神を名乗るに相応しい強度を有する筈の、その右腕が。
桜の花弁が通り過ぎる軌道に合わせて、寸断されたのだ。
それ自体は大した損傷でもない。一秒もあれば癒せる程度の傷に過ぎない。
問題なのは、そこではなく。
卓越した術師であり、今や災厄そのものの力を宿すに至っておきながら――その自分が、斬られるまで攻撃されたこと自体認識できなかったということにこそ、あった。
「ずいぶん大層な肩書きを名乗っているみたいだけど。力に驕るあまり、前にも況して鈍ったんじゃないかしら」
◆◆
アビゲイルの報告を受けて、伏黒甚爾はすぐに動いた。
方向的に彼女が言っているのは品川の方だと分かったから、甚爾の足ならばそれほど時間もかからない。
そして判明した事実が一つ。
品川区。その全域を囲うようにして、何者かの手で結界が貼られている。
帳、と甚爾はそう言った。
外からの侵入を無条件に拒む、非常に強力な檻であると。
此処まで割れれば、必然的に術者の正体も見え透いてくる。
術師殺しである甚爾にこうまで言わせるほどの術師など、そうはいない。
健在だった頃の
峰津院大和ならば可能かもしれない、それほどまでの大結界。
その用途はすぐに思い浮かんだ。
外敵の侵入を拒むというのは、即ち中に入られたくない理由があるということ。
例えば、傷を癒すだとか。何かの準備をするだとか。そういう理由だと想像できる。
そしてその点、甚爾達は目の前で結界の主と推定される人物が致命傷を負うのを見ていた。
殺しても死なないを言葉通りの意味で体現するような怪僧だが、本体をああまで傷付けられてはそう容易く再生などできない筈だ。
更にアビゲイルの言った、かの地から漂う奇妙な気配。これも、あの怪僧が一枚噛んでいるとすれば合点が行く。
この界聖杯に集められたサーヴァントは数居れど。
こと悪巧みをすることにかけて、アレ以上に貪欲な輩はそう居まい。
以上をもって、甚爾達はこう結論づけた。
品川区に、アルターエゴ・リンボがいる。
傷を癒しながら、次の何かをしでかす準備をしている。
そして、そうと決まれば選択肢は一つしかなかった。
甚爾はともかくとして、そのマスターにとっては……やるべきことは一つだったのだ。
「……負けないでよね。中から出てきたのがあのクソ坊主だったら、あんたら二人纏めて呪い倒してやるから」
領域の内側は、敵の腹の中のようなものだという。
だからこそ、空魚は品川と港区の境界に立って二人の帰りを待っていた。
本当なら、直接この目でリンボの死に様を見たかった。
鳥子の仇。八つ裂きにして内臓をすべて引きずり出しても飽き足らない怨嗟を、空魚はかの肉食獣に対して燃やしている。
サーヴァントは殺しても死体が残らない。それをこうも惜しいと思う日が来るとは思わなかった。
血が出るほど強く拳を握り締めながら、今頃中で始まっているだろう戦いに思いを馳せる。
――此処での私は、どこまで行っても役立たずだな。
改めてそう思わされ、無性に自分の弱さに腹が立った。
<裏世界>の冒険ではいつだって自分達が主役だったのに、此処じゃまるで添え物だ。
あの世界に帰りたい。
あの、青くて恐ろしい世界に。
死ぬような思いを何度もしたのに、それでも気付けば恋しくなっている。
もしかしたら自分も肋戸のように、既に<あちら側>の狂気に冒されてしまっているのかもしれない。
――でも。
――だとしても。
「……いいよ、それでも」
狂っていたって、いい。
それでも、帰りたいのだ。あの日常に。
鳥子が居て、一緒に未知を求めて二人だけの世界を冒険する。
日常に帰ってきたら騒がしい後輩や怖がりなお姉さん、クソ生意気なJKなんかに囲まれてあれこれ騒がしい日々を過ごすのだ。
あの日々を取り戻せるのなら、空魚は正気だろうがなんだろうがすべて捨ててやる覚悟だった。
アルターエゴ・リンボ。あの嘲笑う怪僧を殺すのは、その第一歩だ。
「やっちゃってよ、アサシン。
ぶちのめしてこいよ、フォーリナー。
……あんなクソ坊主、欠片一つ残さずすり潰しちまえ」
負けないでね。
そう言われたから。
負けんじゃないぞ。
そう祈る。
鳥子を穢したあいつなんかに。
鳥子を殺したあいつなんかに。
鳥子を奪ったあいつなんかに。
絶対に負けるなと、心から空魚はそう願っていた。
たとえ蚊帳の外でも、きっと何もしないよりはマシだと信じて。
らしくもなく手を合わせる背中に、ふと。
声が、かかる。
「もし、そこのあなた」
女の声だった。
振り向いて、ぎょっとする。
そこに居たのは、あまりに異色な二人だったから。
多刀を携えた女侍。そして白髪の、身体中から花を咲かした小さな少女。
「そこの孔、あなたのサーヴァントが開けたのかしら」
「あ……は、はい。えっと、今この中でリンボっていうめちゃくちゃ悪い奴が悪巧みをしてて」
「――そ、ありがとう。これ、使わせてもらうわね」
はっきり言って、ぞっとしなかった。
何しろ今の自分は丸腰で。
頼みの綱のサーヴァントは結界の中へ投入している状態だったから。
しかし、女侍にも桜の少女にも空魚への敵意らしいものは一切見られず。
結果、空魚は彼女達が帳の内側、領域の中へと入っていくのをただ見届ける形になった。
――あいつらも、リンボを狙ってるのか……?
だとしたら、ますます因果応報と呼ぶ他ない。
今まで好き放題やって来たツケだ。
誰も彼もから、大切なものを奪って嗤ってきた奴に年貢の納め時がやって来たんだろう。
「……ま、私もそれをやろうとしてるわけなんだけど」
自嘲するようにため息をついて、空魚はその場にあぐらをかいて座り込んだ。
自分にできることはない。もう後は、シュレディンガーの猫箱だ。
最後。此処から出てくるのが、リンボかそれ以外か。
リンボの敗北と自軍の勝利を祈りながら、空魚は空を仰いだ。
――見てるか、鳥子。
――おまえの遺言、ちゃんと守るからな。
そう呟いた声は、果たして。
今は遥か彼方の彼女に、届いたのだろうか。
◆◆
彼女の存在を認識できなかったのは、何もリンボだけではない。
アビゲイルも、甚爾も同じ。
リンボの腕が落ちるまで、誰一人気付けなかった。
彼女は――それほどまでに速く、それでいて鋭かった。
吹く風に輪郭を見出すことができないように。
そのあまりの冴えを、誰もが盲点に置いてしまった。
甚爾は驚きを。アビゲイルは「まあ。速いのね」と微笑みを。
そして斬られたリンボはと言えば、納得したように切り落とされた右腕を見つめていた。
「…………………………そう、か」
最初は、静かに。
次の瞬間には、高らかに。
「そうか、そうかそうか、そうかそうかそうか! なるほどそうでなくては甲斐がない!
獣国を越え神々の海を越え、星間都市にまで乗り込んで尚取り逃したのですから!
ようやく追い付いたかと思えば、既に無辜の子女が一人荼毘に臥した後!
そろそろこの怨敵を討ち果たさなくては、魂まで汚名で錆び付くのは確かに自明か!!」
嗤う、嘲笑う、リンボ。
いや、敢えて此処はこう呼ぼう。
異星の使徒、三体のアルターエゴが一角。
亜種並行世界の下総国で宿業をばら撒き厭離穢土の大呪法を成就させ、蓮の台地では孤独な神を誑かし。
神々と人が共存する星間都市山脈にあってさえ、変わらず揺るがず嘲弄と悪意を囀り続けた美しき肉食の獣。
英霊剣豪を斬り、原初神をも斬り伏せた一人の剣士が。
ついぞ最後の最後まで、仕留めること叶わなかった宿敵。
龍脈の力を取り込んで肥大を極めた霊基は、もはや下総で見えた時の比ではなく。
二度の混沌斬りを成し遂げた剣士(かのじょ)でさえ、正面切って相手取るには手に余る相手と言う他はない。
されど。
女は、ただ涼やかに笑っていた。
肌を刺し、魂を侵す禍津日神の邪視を受け流しながら。
いや、その鋭く研ぎ澄まされた佇まい一つで斬り伏せながら。
桜の花弁を、はらりはらりと舞い散らせて。
因縁、醜悪なる汚穢の化身。
九頭竜の骸を背負い牙を剥く暗黒の悪玉。
悉く喰らい尽くす闇の前に凛と立つ、美しきその面影は――まさに夜桜の如し。
「ならば善し! 昏き陽の下に、因縁三種纏めてぺろりと喰ろうてくれようぞ!
はは、はははは、ふはははははははは――――!!」
膨張する、神の影。
雛見沢に昏き陽が昇る。
オヤシロさまに非ず、笑覧する上位存在にも非ず。
新たな信仰の神像が、世界を終わりに導く悪意の化身が、高らかに産声をあげる。
"術師殺し"が釈魂刀を構えた。
"銀鍵の巫女"が、静かに無数の蝙蝠を顕現させた。
そして"真打柳桜"は、満開のままに抜刀する。
「貴方のことは心底嫌いだけれど、此処まで永い因縁になったんだもの。
そこに関してはまあ、多少は思うところがないわけじゃないわ」
方舟の少女を殺し。
梨花の親友を利用し、自分の欲望を満たそうとするリンボに憤る境地はもう過ぎた。
何しろ相手は悪逆の獣である。
人類悪にさえなれない愛を知らぬこれにいちいち怒っていたら日が暮れる。
「でもね。貴方がいつまでものさばってたら、"あの子達"が笑えないのよ」
だから。これは義に基づく戦いではなく。
昏き陽の下にて行われる、あの時の焼き直し。
欲を言うならば一対一が良かったが、そこは龍脈などという反則技に頼っているのだからおあいこだ。
勝者は進み。敗者は命を失う、屍山血河の御前死合。
「斬らせて貰うわ、アルターエゴ・リンボ。悪逆なりし蘆屋道満。新免武蔵の名において、宿業両断仕る――!」
――いざ尋常に。
――勝負。
◆◆
「やっぱり、いいところですわねえ。
東京の細々した町並みと濁った空気に慣れた今じゃ、余計にそう思いますわ」
昏き陽に照らされて、豊かな自然と古めかしい情景がレリーフのように浮かび上がる。
それを丘の上から見下ろしながら、北条沙都子は微笑んだ。
最初から好きだったわけじゃない。
辛いこと、苦しいこと。たくさんあった。
意地悪な叔母に虐められて、大好きな兄が消えてしまって。
お買い物に出かけて小銭を零しても、誰も拾うのを手伝ってくれない。
そんな寂しい時間はしかし、いつしか過去のものへと変わっていて。
あの昭和58年6月、永遠に繰り返した運命の終点を乗り越えた後には、そんな苦しみも寂しさも影も形も残らず消えてしまった。
辛い記憶は、消えないけれど。
此処には、そんなことお構いなしに自分を楽しくさせてくれる仲間がいる。
いつまで一緒にいたって飽きることのない、最高の仲間達。
彼らとこの美しい村で永遠に過ごせたのなら、それに勝る幸せなどこの世にあるものか。
たとえ、時を繰り返してでも。
楽しい時間の行き着く先が、必ず惨劇になってしまうとしても。
そうまでしてでも留まり、しがみつく価値のある時間が此処にはある。
沙都子は、そう信じている。だからこうして、時の止まった雛見沢を作り上げたのだ。
「……私ね、雛見沢が大好きなんですのよ。
不思議なもので、村を離れて初めてそのことに気付きましたの。
見慣れた風景も、古臭いと思っていた家々も、今時の娯楽なんてさっぱり流れてこない時代遅れぶりも。
全部、ぜんぶ、懐かしくて堪らなかった。帰りたくて、戻りたくて……独房の中で毎日気が狂ったみたいに泣いていましたわ」
固有結界。
あるいは、領域。
永遠不変の雛見沢。
やがて世界のすべてを塗り潰す、閉じることのないノスタルジア。
そんな中に、北条沙都子は立っていた。
黒灰の浄衣は、神に傅く者の聖性を意図して歪めたような冒涜感に溢れている。
淫らさすら感じさせる、蠱惑の装い。
触手と異形の虫に群がられ、あるいはしがみつかれて。
過去の防人、異界の巫女。庭園の主、社の神として――降臨/君臨する。
「楽しい時間はいつか終わるもの。
私達の部活だって、魅音さんが卒業してしまってからは退屈で味気ないものに落ちぶれてしまいました。
だからきっとこれは、どうしようもないこと。人間が生きていく上で、決して縁を切ることのできない苦しみなのでしょう。
だけど私、あなたも知っての通り子どもですの。わがままなんですのよ。
仕方ないことなんだから諦めろだなんて、そんなことで……納得して堪るものですか」
人にはそれぞれ、思い描く未来のかたちがある。
たとえ道が分かたれても、時間のすべてが無駄になるわけではない。
誰かの旅立ちを、自分の価値観で否定してはいけない。
で、だから?
沙都子は、そんな道徳の時間みたいな正論に耳を傾ける必要など毛頭なかった。
かつて。人だった頃の彼女は、親友の気持ちと決定に寄り添った。
雛見沢を出て、外の世界を見てみたいというその気持ちを尊重した。
結果は、後悔だけだ。その後悔は巡り巡って、彼女を人ではなくした。
もう、"人間"の北条沙都子はどこにもいない。
"魔女"の北条沙都子は、寄り添うのではなく囚えることで親友に未来を諦めさせようとしたが。
此処で佇み、微笑み、想いを吐露するこれはあいにくもう魔女ですらなかった。
絶対の意思が、未来を紡ぐ。
気高く強い願いは、必ず現実となる。
少女は、神になったのだ。
力の大きさに耐え切れず、リンボの苗床になる未来すらあったろうに、彼女はそれを乗り越えた。
神は、理不尽なものだ。
だからもう、神たる沙都子は"諦め"すら求めない。
「ですから私は、私達の夏を永遠にしてみせますわ。
私達が、一番私達らしくあれたあの夏を。
毎日遊んで、遊び倒して、明日になってもまた楽しい時間が始まるばかりだった六月を、永久に遊び尽くすんですの。
くす、どうかしら。考えるだけで、わくわくしてきませんこと?」
くるくると、期待を堪えられずに舞い踊りながら。
沙都子は、新たなる神は、自分の前へ戻ってきた"彼女"を見た。
粘ついた視線は虚ろな妖艶さを孕んでおり、かつての沙都子のそれとは明らかに異なった異彩を放っていたが。
かく言う"彼女"の方もまた、以前鬼ヶ島で邂逅した時とはかけ離れた姿に変貌していた。
白い髪、白い肌。
身体中から咲いては散る、桜の花。
瞳にまで花弁を浮かべ、一人立つ姿は異様の極み。
しかし。しかし――その両目に宿る意思の光だけは、沙都子が知っている"彼女"のままだ。
「ねえ――梨花?」
「……ええ、そうね。
私だって、腐っても部活メンバーだもの。
分かるわ。それはきっと、とても楽しい世界。
だけど夢見心地なんて優しいものじゃない。毎日怒涛のような勢いで遊んで、笑い合って、そうやって過ごす……楽しいことしかない世界」
「そう、そうなんですのよ。
だから梨花、私と共に行きましょう?
あなたがこの手を取ってくれるのなら私、嬉しくて嬉しくて、もうなんだってできそうですわ」
永遠に終わらない部活。
それは、さぞかし楽しいことだろう。
あの最高の仲間達と過ごす以上に退屈しないことなんて、そうそうあって堪るものか。
そこについては、梨花だって異論はない。――けれど。
「馬鹿沙都子。やっぱりあんた、何も分かってないわ」
「……梨花?」
「あんな胡散臭い坊主に唆されて、そんなものに成りさらばえて。
酔っ払ったみたいなこと言うのはやめなさい。此処の――これの、どこが私達の雛見沢なのよ」
だからこそ、認められないのだ。
あの夏が尊く楽しいものだったことに同意するからこそ、沙都子の世界(ユメ)を認められない。
否定する。あんたのそれは叶えちゃいけない夢だと、正面切って否を突きつける。
「私とあんたが生まれ育った村に、あんなものはあった?」
昏き太陽が、照らしている。
禍々しい、人を不幸にしかできない不吉の象徴が。
嘲笑うように光を放って、雛見沢の景色を下品な薄闇に染め上げている。
「私達が毎日駆け回った村は、こんなに静かだった?」
人など、一人としていない。
まるで村の模型を、無理やり原寸大のサイズまで巨大化させたみたいに虚ろな村。
それに。
古手梨花と北条沙都子が今も愛するあの夏を再現したというのなら、そこには絶対的に足りないものが一つある。
静かすぎる。そう、"この"雛見沢は静かすぎるのだ。
「ひぐらしの一匹も鳴いていない、この陰気な村の――いったいどこを指して、あんたは雛見沢だなんて騙っているのよ」
「あら。梨花には聞こえませんの? こんなに賑やかに鳴いているじゃありませんの。ほら、カナカナと」
鳴いている。
ひぐらしが、鳴いている。
蝉の声が、今も沙都子の耳には聞こえ続けている。
何故なら此処は彼女の領域だから。心象風景だから。
けれど梨花には、そんなものは一切聞こえなかった。
聞こえるとすれば、それは。
沙都子が纏う、邪なる浄衣に付着した異形の羽虫が奏でる羽音だけ。
「何も聞こえないわ。そして、何も見えない。
あんたが馬鹿みたいに信じてる幸福な未来なんて、この穢らわしい世界のどこにも見当たらない!」
叫ぶと同時に、梨花は悔やまずにはいられなかった。
此処が、沙都子の描いた世界だというのなら。
この子は一体、どれだけ追い詰められてきたのだ。
こんなに壊れてしまうほど、あの学園での日々は辛かったのか。
こうなる前に、いくらでもやりようはあった筈なのに。
手を引っ張って、無理やりにでも連れ出して。
膝を突き合わせて話しでもしていれば、こんな――自分で自分の宝物を穢してしまったみたいな、悲しい領域(カケラ)なんか見なくても済んだ筈なのに。
「……一緒に帰るわよ、沙都子」
……、それは。
きっと、もう叶わない話だ。
それでも梨花は、沙都子にそう言った。
もっとも嘘をついたつもりなんて毛頭ない。
絶対の運命に百年殺され続けて、それでも折れなかった女だ。
死の運命なんて、なんとかしてねじ伏せてやる。
そんでもって、二人揃って本物の雛見沢に帰るのだ。
そのために。そんな夢を叶えるために、今、古手梨花は此処に立っている。
神を名乗る、すっかり悪役が板に付いてしまった馬鹿な幼馴染を一発引っ叩いてやるために、こうして咲いている!
「あんたが馬鹿なことはよく分かった。
だから、心ゆくまで付き合ってあげる。
あんたが嫌になっても離れてなんてあげないんだから。観念して、私の手を取りなさい」
「――、――――ふ。
手を取れ、と言っているのは私の方ですのに。梨花ったら、相変わらずの頑固者で困りますわね」
「当たり前でしょ。鷹野とあんたが寄越してくる性格悪い惨劇に、こっちは何百何千と殺されてきたのよ。
普通の人間なら、とっくに諦めて運命に屈してるわ。
こんな頑固でわからず屋な私を、どうしても頷かせてやりたいっていうのなら」
「ええ、そうですわね。相手に言うこと聞かせたい時にやることなんて、私達には一つしかありませんわ」
互いに、今や徒花。
神を名乗る異界の食虫花と、神に挑む夜桜。
身も心も人ではなくなった、雛見沢という箱庭の虜囚ふたり。
けれど。
されど。
彼女達はそんな大層な存在である以前に、雛見沢分校の部活メンバーなのだ。
「決着をつけましょう、沙都子」
「もちろん望むところですわ、梨花」
勝敗を決めるなら、やるべきことはただ一つ。
部活だ。それで雌雄を決し、負けたら罰ゲーム。
時間が動いていようが、止まっていようが。
ひぐらしが鳴いていようが、鳴いていまいが。
過去に囚われていようが、未来を見据えていようが、関係などない。
部活メンバーが集まって、睨み合ったのならそれ即ち勝負の合図。
少女達は――――鬼へと変わる。
「此処は私のホームグラウンド。
私の夢と、希望と、あなたへの想いが詰まった幸福の箱庭。
をーっほっほっほ! 此処で負けるようなことがあればその時は、勉強でもお説教でも、梨花が満足行くまで付き合ってあげますわ!!」
「……ええ、そうね。
自分の庭なら特殊部隊さえ圧倒できるあんたに挑むなんて、我ながら正気の沙汰じゃないと思うわ。
けれど部活は部活。魅音の決めた
ルールに従って、負けたら私もあんたに従ってあげる。
いつまでも一緒にいてあげれば、それで満足なんでしょう? 付き合おうじゃないの、心行くまで」
「あら。怖気づきましたの?」
「まさか」
梨花の右手に、花吹雪が渦を巻く。
そこから姿を現したのは、双方にとって見覚えのある剣だった。
神剣・鬼狩柳桜。繰り返す者を殺す一振り。
もちろん、これは単なる贋作。記憶を頼りに形作らせた張りぼてでしかない。
けれど――
「燃えているのよ。言ったでしょう? 私だって、あんたや皆としのぎを削った部活メンバーなんだから」
今、此処で。
沙都子と相対するには、これが一番相応しいと思った。
勝負をするなら、相手に負けを認めさせなければならない。
だからこそ、繰り返す者を殺す……北条沙都子にとっての敗北条件そのものな神剣の形を選んだ。
そんな梨花に、応えるように。
沙都子が生み出したのは――拳銃。
「さあ」
「さあ」
神剣と。
拳銃が。
今、向かい合って――
「「私達の部活を、始めましょう」」
――少女達の勝負が、始まった。
【品川区・奈落の夢=『禁忌停滞庭園 雛見沢』/一日目・午前】
【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に業】
[状態]:『異界の巫女』
[令呪]:残り二画
[装備]:トカレフ@現実
[道具]:トカレフの予備弾薬、地獄への回数券
[所持金]:十数万円(極道の屋敷を襲撃した際に奪ったもの)
[思考・状況]
基本方針:理想のカケラに辿り着くため界聖杯を手に入れる。
0:――勝つのは私ですわ。
[備考]
※龍脈の欠片、アビゲイルの触手を呪的加工して埋め込まれました。何が起こるは未知数。
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に業】
[状態]:夜桜の瞳、右腕に不治(アンリペア)、念話使用不能(不治)、夜桜つぼみとの接続
[令呪]:全損
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:数万円程度
[思考・状況]
基本方針:生還を目指す。もし無ければ…
0:――いいえ、私よ。
1:沙都子を完膚なきまでに負かして連れ帰る。
2:白瀬咲耶との最後の約束を果たす。
3:ライダー(
アシュレイ・ホライゾン)達と組む。
4:咲耶を襲ったかもしれない主従を警戒、もし好戦的な相手なら打倒しておきたい。
5:
櫻木真乃とアーチャーについては保留。現状では同盟を組むことはできない。
6:戦う事を、恐れはしないわ。
7:私の、勝利条件は……?
[備考]
※ソメイニンを大量に投与されました。
古手家の血筋の影響か即死には至っていませんが、命を脅かす規模の莫大な負荷と肉体変容が進行中です。
皮下の見立てでは半日未満で肉体が崩壊し死に至るとの事です。
※拒絶反応は数時間の内には収まると思われます。
※念話阻害の正体はシュヴィによる外的処置に
リップの不治を合わせた物のようです
※瞳に夜桜の紋様が浮かんでいます。"開花"の能力に目覚めているのかは不明です。
【品川区・奈落の夢=『屍山血河舞台 雛見沢』/一日目・午前】
【アルタ―エゴ・リンボ(蘆屋道満/本体)@Fate/Grand Order】
[状態]:『禍津日神・九頭竜新皇蘆屋道満』
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:この東京に新たな地獄を具現させる。
0:いざ、いざ! ――昏き陽の下に!!
[備考]
※龍脈の力を沙都子経由で取り込み、霊基再臨を果たしました。
【セイバー(
宮本武蔵)@Fate/Grand Order】
[状態]:"真打柳桜"、ダメージ(大)、魔力充実、令呪『リップと、そのサーヴァントの命令に従いなさい』、第三再臨、右眼失明
[装備]:計5振りの刀(数本破損)
[道具]:
[所持金]:
[思考・状況]基本方針:マスターである古手梨花の意向を優先。強い奴を見たら鯉口チャキチャキ
0:かかってきなさい、悪縁!
1:梨花を助ける。そのために、方舟に与する
2:宿業、両断なく解放、か。
3:アシュレイ・ホライゾンの中にいるヘリオスの存在を認識しました。武蔵ちゃん「アレ斬りたいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ。でもアレだしたらダメな奴なのでは????」
4:アルターエゴ・リンボ(蘆屋道満)は斬る。今度こそは逃さない。
※古手梨花との念話は機能していません。
※アーチャー(ガンヴォルト)に方舟組への連絡先を伝えました。
また
松坂さとうの連絡先も受け取りました。
※梨花に過剰投与されたソメイニンと梨花自身の素質が作用し、パスを通して流れてくる魔力が変質しています。
影響は以下の通りです。
①瞳が夜桜の"開花"に酷似した形状となり、魔力の出力が向上しています。
②魔力の急激な変質が霊基にも作用し、霊骸の汚染が食い止められています。
③魔力の昂りと呼応することで、魔力が桜の花弁のような形で噴出することがあります。
【フォーリナー(アビゲイル・ウィリアムズ)@Fate/Grand Order】
[状態]:霊基再臨(第二)、狂気、令呪『空魚を。私の好きな人を、助けてあげて』
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]基本方針:マスターを守り、元の世界に帰す
0:マスター。私は、ずっとあなたのサーヴァント。何があっても、ずっと……
1:導いてあげるわ、美しい獣さん。
2:空魚さんを助ける。それはマスターの遺命(ことば)で、マスターのため。
[備考]※
紙越空魚と再契約しました。
【アサシン(伏黒甚爾)@呪術廻戦】
[状態]:全身にダメージ(小)、腹部にダメージ(小)、肋骨数本骨折、マスター不在(行動に支障なし)
[装備]:『天逆鉾』、『釈魂刀』、武器庫呪霊(体内に格納)
[道具]:拳銃等(拳銃はまだある)
[所持金]:数十万円
[思考・状況]基本方針:サーヴァントとしての仕事をする
0:オマエはそう選んだんだな。なら、俺もやるべきことをやるだけだ。
1:正念場だな。
2:あの『チェンソーの悪魔』は、本物の"呪い"だ。……こいつ(アビゲイル)もそうか?
[備考]※櫻木真乃がマスターであることを把握しました。
※甚爾の協力者はデトネラット社長"四ツ橋力也@僕のヒーローアカデミア"です。彼にはモリアーティの息がかかっています。
※櫻木真乃、
幽谷霧子を始めとするアイドル周辺の情報はデトネラットからの情報提供と自前の調査によって掴んでいました。
※モリアーティ経由で仁科鳥子の存在、および周辺の事態の概要を聞きました。
※天逆鉾により紙越空魚との契約を解除し、現在マスター不在の状態です。
ただしスキル『天与呪縛』の影響により、現界に支障は一切出ていません
【渋谷区(中心部)/二日目・午前】
【セイバー(
黒死牟)@鬼滅の刃】
[状態]:武装色習得、融陽、陽光克服、???
[装備]:虚哭神去
[道具]:
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:不明
0:来るか――
猗窩座。
1:私は、お前達が嫌いだ……。
[備考]
※鬼同士の情報共有の要領でマスターと感覚を共有できます。交感には互いの同意が必要です。
記憶・精神の共有は黒死牟の方から拒否しています。
※武装色の覇気を習得しました。
※陽光を克服しました。感覚器が常態より鋭敏になっています。他にも変化が現れている可能性があります。
【猗窩座@鬼滅の刃】
[状態]:新生、覇気による残留ダメージ(程度不明)
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]基本方針:マスターを聖杯戦争に優勝させる。自分達の勝利は――――。
0:殺す
[備考]
※武装色の覇気に覚醒しました。呪力に合わせて纏うことも可能となっています
※頸の弱点を克服し、新生しました。今の猗窩座はより
鬼舞辻無惨に近い存在です。
【渋谷区(西部)/二日目・午前】
【松坂さとう@ハッピーシュガーライフ】
[状態]:疲労(中)、全身にダメージ(小)、ガンヴォルトと再契約
[令呪]:残り1画
[装備]:"割れた子供達"の短刀
[道具]:最低限の荷物、ヘルズクーポン複数枚
[所持金]:数千円程度
[思考・状況]
基本方針:しおちゃんと、永遠のハッピーシュガーライフを。
0:こいつは、確か――
1:どんな手を使ってでも勝ち残る。
2:
皮下真に対する強い警戒。
[備考]
※ガンヴォルト(オルタ)と再契約しました。
※
神戸あさひの死体から複数枚のヘルズクーポンを回収しています。
【アーチャー(ガンヴォルト(オルタ))@蒼き雷霆ガンヴォルト爪】
[状態]:胴体にダメージ(小)、斬撃の傷跡(複数)、疲労(中)、クードス蓄積(現在8騎分)、さとうと再契約、令呪の縛り
[装備]:ダートリーダー
[道具]:なし
[所持金]:札束
[思考・状況]
基本方針:彼女"シアン"の声を、もう一度聞きたい。
0:――キミは。
1:方舟には与しない。しかし、手を組める場面では共闘する。
2:さとうを護るという、しょうこの願いを護る。今度こそ、必ず。
3:皮下真とライダー(
カイドウ)への非常に強い危機感。
[備考]
※"自身のマスター及び敵連合の人員に生命の危機が及ばない、並びに伏黒甚爾が主従に危害を加えない範疇"という条件で、甚爾へ協力する令呪を課されました。
※松坂さとうと再契約しました。
※
シュヴィ・ドーラとの接触で星杯大戦の記憶が一部流れ込んでいます。
※新宿区に落ちてたミラーピースを回収してます。
※セイバー(宮本武蔵)に松坂さとうへの連絡先を伝えました。
また方舟組の連絡先も受け取りました。
※方舟陣営とどの程度情報を交換し合ったかは後のリレーに御任せします。
[ステータス関連備考]
※クードスの蓄積とミラーピースを介した"遺志の継承"によって霊基が変化しました。
①『鎖環』での能力が限定的に再現されています。
②クードスに関連して解放された能力が『電子の謡精』を除いて自由に発動できます。
これに伴い『グロリアスストライザー』もクードスを消費せず、魔力消費によって行使できるようになりました。
③強化形態への擬似的な変身も可能となりますが、魔力消費が大きいため連続発動は難しいです。
『電子の謡精』による強化形態との差異は現時点では不明です。
④シュヴィ・ドーラから受信した『大戦の記憶』により、解析能力と出力の向上が生じています。 ※New!
【アーチャー(シュヴィ・ドーラ)@ノーゲーム・ノーライフ】
[状態]:『謡精の歌』(解析が進行中)
[装備]:機凱種としての武装
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:叶うなら、もう一度リクに会いたい。
0:――もう大丈夫。手を汚せる
1:"蒼き雷霆"の抹殺。
2:戦場を監視し、状況の変化に即応できるようにしておく。
3:マスターが心配。殺しはしたくないけと、彼が裏で暗躍していることにも薄々気づいている。
4:フォーリナー(アビゲイル)への恐怖。
5:皮下真とそのサーヴァント(カイドウ)達に警戒。
6:セイバー(宮本武蔵)を逃してしまったことに負い目。
※聖杯へのアクセスは現在干渉不可能となっています。
※梨花から奪った令呪一画分の魔力により、修復機能の向上させ損傷を治癒しました。
※『蒼き雷霆』とのせめぎ合いの影響で、ガンヴォルトの記憶が一部流入しました。
※歌が聞こえました。GVのスキル、宝具の一部を模倣、習得しつつあります。現在は解析能力の向上などに表れています
【中央区・廃墟/二日目・午前】
【皮下真@夜桜さんちの大作戦】
[状態]:万花繚乱
[令呪]:残り一画
[装備]:?
[道具]:?
[所持金]:纏まった金額を所持(『葉桜』流通によっては更に利益を得ている可能性も有)
[思考・状況]
基本方針:つぼみの夢を叶える。
0:さあ、始めようぜ。
1:綺麗だよ、クソガキが。
2:クソ坊主の好きにさせるつもりはない。手始めに対抗策を一つ、だ。
[備考]
※咲耶の行方不明報道と霧子の態度から、咲耶がマスターであったことを推測しています。
※会場の各所に、協力者と彼等が用意した隠れ家を配備しています。掌握している設備としては皮下医院が最大です。
※ハクジャから
田中摩美々、七草にちかについての情報と所感を受け取りました。
※峰津院財閥のICカード@デビルサバイバー2、風野灯織と八宮めぐるのスマートフォンを所持しています。
※虹花@夜桜さんちの大作戦 のメンバーの「アオヌマ」は皮下医院付近を監視しています。「アカイ」は
星野アイの調査で現世に出ました
※皮下医院の崩壊に伴い「チャチャ」が死亡しました。「アオヌマ」の行方は後続の書き手様にお任せします
※複数の可能性の器の中途喪失とともに聖杯戦争が破綻する情報を得ました。
※キングに持たせた監視カメラから、沙都子と梨花の因縁について大体把握しました。結構ドン引きしています。主に前者に
※『万花繚乱』を習得しました。
夜桜つぼみの血を掌握したことにより、以前までと比べてあらゆる能力値が格段に向上しています。
作中で夜桜百が用いた空間からの消失および出現能力、神秘及び特定の性質を有さない物理攻撃に対する完全な耐性も獲得したようです。
"再生"の開花の他者適用が可能かどうかは後の話にお任せします。
【リップ@アンデッドアンラック】
[状態]:健康、魔力消費(小)
[令呪]:残り二画
[装備]:走刃脚、医療用メス数本、峰津院大和の名刺
[道具]:ヘルズクーポン(紙片)
[所持金]:数万円
[思考・状況]
基本方針:聖杯の力で"あの日"をやり直す。
0:もう迷いはしない。
1:敵主従の排除。
[備考]
※『ヘルズ・クーポン@忍者と極道』の製造方法を知りましたが、物資の都合から大量生産や完璧な再現は難しいと判断しました。
※ロールは非合法の薬物を売る元医者となっています。医者時代は"記憶"として知覚しています。皮下医院も何度か訪れていたことになっていますが、皮下真とは殆ど交流していないようです。
【???/二日目・午前】
【
プロデューサー@アイドルマスターシャイニーカラーズ】
[状態]:覚悟、魂への言葉による魂喪失、魔力消費(大)、疲労(大)幻覚(一時的に収まった)
[令呪]:全損
[装備]:なし
[道具]:リンボの護符×8枚、連絡用のガラケー(グラス・チルドレンからの支給)
[所持金]:そこそこ
[思考・状況]基本方針:"七草にちか"だけのプロデューサーとして動く。だが―――。
0:勝つ。
1:………きっと最期に戦うのは、『彼』だ
2:次の戦いへ。どうあれ、闘わなければ。
3:もしも"七草にちか"なら、聖杯を獲ってにちかの幸せを願う。
[備考]プロデューサーが見ている幻覚は、GRADにおけるにちかが見たルカの幻覚と同等のものです。あくまでプロデューサーが精神的に追い詰められた産物であり、魔術的関与はありません。(現在はなりをひそめています。一時的なものかは不明)
【中野区・デトネラットのビル→???/二日目・午前】
【
死柄木弔@僕のヒーローアカデミア】
[状態]:継承、サーヴァント消滅、肉体の齟齬(9割方解消)
[令呪]:全損
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:数万円程度
[思考・状況]基本方針:界聖杯を手に入れ、全てをブッ壊す力を得る。
0:さあ、行こうか。
1:勝つのは連合(俺達)だ。
2:全て殺す
3:禪院への連絡。……取り込み中か?
4:峰津院財閥の解体。既に片付けた。
5:以上二つは最低限次の荒事の前に済ませておきたい。
[備考]
※個性の出力が大きく上昇しました。
※ライダー(シャーロット・リンリン)の心臓を喰らい、龍脈の力を継承しました。
全能力値が格段に上昇し、更に本来所持していない異能を複数使用可能となっています。
イメージとしてはヒロアカ原作におけるマスターピース状態、AFOとの融合形態が近いです。
それ以外の能力について継承が行われているかどうかは後の話の扱いに準拠します。
※ソルソルの実の能力を継承しました。
炎のホーミーズを使役しています。見た目は荼毘@僕のヒーローアカデミアをモデルに形成されています。
血(偶像)のホーミーズを造りました。見た目と人格は星野アイ@推しの子をモデルに形成されています。今は田中に預けています
※細胞の急激な変化に肉体が追いつかず不具合が出ています。後少しで完調します。
※峰津院財閥の主要な拠点を複数壊滅させました。
【
神戸しお@ハッピーシュガーライフ】
[状態]:疲労(小)、決意
[令呪]:残り二画
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:数千円程度
[思考・状況]
基本方針:さとちゃんと、永遠のハッピーシュガーライフを。
0:永遠なのは、きっと愛だけ。
1:――いってきます。
2:とむらくんについても今は着いていく。
3:最後に戦うのは。とむらくんたちがいいな。
4:ばいばい、お兄ちゃん。おつかれさま、えむさん。
[備考]
【ライダー(
デンジ)@チェンソーマン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:数万円(しおよりも多い)
[思考・状況]
基本方針:しおと共に往く。聖杯が手に入ったら女と美味い食い物に囲まれて幸せになりたい。
0:帰ってスマブラがしたい
1:今は敵連合に身を置くけど、死柄木はいけ好かない。
2:こいつ、マジでな……人の心とかねえのか?
[備考]
※令呪一画で命令することで霊基を変質させ、チェンソーマンに代わることが可能です。
※元のデンジに戻るタイミングはしおの一存ですが、一度の令呪で一時間程の変身が可能なようです。
【
田中一@オッドタクシー】
[状態]:サーヴァント喪失、半身に火傷痕(回復済)、精神的動揺(大)
[令呪]:残り三画
[装備]:なし
[道具]:スマートフォン(私用)、ナイフ、拳銃(4発、予備弾薬なし)、蘆屋道満の護符×3
[所持金]:数千円程度
[思考・状況]基本方針:『田中■■(プルス・ケイオス)』。
0:?????
1:敵連合に全てを捧げる。死柄木弔は、俺の王だ。
[備考]
※界聖杯東京の境界を認識しました。景色は変わらずに続いているものの、どれだけ進もうと永遠に「23区外へと辿り着けない」ようになっています。
※アルターエゴ(蘆屋道満)から護符を受け取りました。使い捨てですが身を守るのに使えます。
※血(偶像)のホーミーズを死柄木から譲渡されました。見た目と人格は星野アイ@推しの子をモデルに形成されています。
死柄木曰く「それなりに魂を入れた」とのことなので、性能はだいぶ強めです。
実際に契約関係にあるわけではありません。
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最終更新:2023年08月27日 23:54