アットウィキロゴ

【開けるオルニトの、とある宿にて】

 オルニトの地上は自然のあるがまま。 そこに住む人々は自分達が永遠に空島に昇る事叶わずと心に刻み、慎ましやかに生きる。
 それが“昔”のオルニトの地上であった。
 “今”!まさに時代は開門を経て世界交流時代へ!
 過去の侵攻敗退から斜陽の大帝国と言われ空の島々の栄華はいずこと言われること常であったが、
 異世界の混沌と欲望が集まると言われる新天地を挟んで向こうには海運最大手の海賊の国ドニー・ドニーを臨む立地。繁栄しない理由がない。
 新天地よりの南方から始まった大規模農園と大森林開拓は、やがてゲートのある天空橋山にまで道を繋げ
 今やゲートを越えてオルニトにやって来る観光客が向かうのは、一に空島、二に大森林の中の鳥人の街になっていた。
 持ち主のあってない様な土地だからこその猛スピードの開拓を成し得たのは、他国から追われてきたり商売で失敗などして再起を図ろうとする者達あってこそであった。
 一種一極の技術ではなく、石工木工金工と様々な要素が試験的に革新的に混ざり合いながら土地を開き道を敷き建物を並べたのである。
 そんなオルニトの地上、その街に今日も多くの人波が押寄せていた。


「森の中だからどんな荒れた道なのかと思ったけども、中々どうして立派な石道じゃないのさ」
「走竜の足も荷車もほとんど傷まなかった。これなら修理せずにすぐ出発できる」
大きな荷袋を背負う後ろ脚太い翼無しの竜に跨る屈強かつ豊満な人間の女性が大森林の中を通ってきた道を讃える。
荷車にどんと腰を降ろした頑強そうなオークが庇だけになった帽子を持ち上げ街並みを見渡す。
ニシューネン市ほどではないにしろ、行き交う獣や人の種も様々だ。
「むむ!感じるのだ匂うのだ!」
「辰乃、彼女が目を覚ました」
オークの頭上、荷物の頂上で食べかけの“火踊り弾け豆”の袋を抱えてぐーすか寝ていた狐人、褐色の少女が飛び起きる。
心なしか風精霊が多く集まってきたかと思えば、一行に囁き纏わりつき遊び踊る。
やがて竜荷車は目的の店、宿に到着する。
四階?五階建てはありそうな縦長の宿は編み枝葉の外装が施され、水気を発散させる水精霊に呼応した光精霊がそこかしこに虹を架ける。
「“かごめどり(籠目鳥)”、日本語でもそう書いてあるし間違いないね。 さて、通用口はどこかしら」
走竜から飛び降りた辰乃の胸が揺れると、次いで狐人の少女がそのクッションの上にぽよんと跳ね降り抱き抱えられる。
「無賃乗車のお客様は本当に元気だねぇ」
「美味しい匂いはここからするのだ!」
褐色のもろ手が揚がると、階上の窓からハーピーの給仕が羽ばたきと共に降りてくる。
「お泊りでしょうか?お乗り物もご一緒でしょうか?」
「あ、すみません。サンダードラゴン運送のマグナム申します。 新天地の満満食園から食材運んできました」
「お疲れ様です。それでは荷を確認させてもらいます」
オーク、マグナムがしどろもどろに対応すると更に階上から数人のハーピーが舞い降り解かれた荷の確認を始める。

 がちゃり ぎぃぃいい
「いやぁまさかオルニトまできて“あのような料理”に出会えるとは予想もしませんでした」
「俺…私も驚きましたよ。 異世界にもレトルトの需要はありますけども、“あれ”はそこいらのものよりも本格的でした。
後、それに加えて…」
「あの豆酒も美味かった」
「少しきついかな?という顔をすれば違う種の豆酒がすぐに出されたのもサービスが行き届いていい。ハーピーの気配りは素晴らしかったですね」
「給仕が、“羽が大仰で料理を隠す”と言って鳥足で酌をしてくれた時は驚きましたが」
「品書きに絵が添えられているのも分かり易くて良かったですよ。 エリスタリアでは品書きを読めずに四苦八苦した思い出がありまして」
「はは、それは大変でしたね。 それはそうとこれからどうします?」
「そうですね~、市場調査という名目でもう一軒…今宵楽しんでみようかと」
「流石、輸入業でも個人で異世界を股にかける人はお元気だ。 あちらに甘い肴と辛い酒を出すラ・ムールの酒屋を見つけておいたのですが、どうでしょう?」
「おお!異世界を飲み巡っているだけありますね、素晴らしい、御一緒させていただきますよ」
開いた扉から出てきた人間男性二人、宿を満喫した面持ちで次を目指し人混みの中へと。

「はい。確認しました。 これは代金です」
「貴女達だけでは運ぶのは大変でしょう?手伝いますよ?」
受け取った通商組合貨幣(高級)の小袋を胸の谷間に仕舞い込んだ辰乃が腕をめくり進言するが、ハーピーは鉤爪を上へと指し示す。
「ご厚意に感謝します。 が、私共の宿の倉庫は上階にありまして、運ぶのはこちらにお任せ下さい」
一礼をすると給仕の代表が透き通った声で旋律を紡ぐ。
すると後ろの給仕達も次々と合わせる様に声を響かせる。
 ふわっ ふわわっ
木々のざわめき、風の揺らぎ。 あっという間に旋風となった集まりし風精霊が大きな荷物を上空へと舞い上がらせる。
「うわわっ!辰乃~!」
「あらあら、あんたも食材と思われちゃったかねぇ」
荷物と一緒に空に舞い上がるオーク。 腕組し笑う辰乃、周囲を行く人もそれを見て微笑をもよおす。

「たのもーぅなのだ!」
「まぁこれは可愛らしいお嬢様。 お泊りでしょうか?」
勢いよく扉をぎぃとも鳴らさず開け入った狐人の少女と鉢合わせになったのは、しなやかで美しい黒髪と黒真珠の如く瞳のハーピー、この宿の女将。
「この宿から美味しい匂いがしたのだ! 美味しい料理を食べにきたのだ!」
「これはこれは良い鼻利きを。 これから夕餉、丁度料理をお運びしている最中なのです」
 ぴょこんっ
金色の耳と尾が立つと、キラキラと瞳を輝かせ涎を垂れ流す少女。
「そうですわね…お食事だけのお客様も少なくはありませんので、お断りする理由はないのですが…
お嬢様、勿論お代の方は大丈夫なのでしょうか?」
あくまで上品にそれとなく、察するように問いかける。
「お代! そう言われたらこれの出番ですぞと渡されたのだ!」
少女はどこからともなく取り出した小さな壷。 それをぽむぽむと叩くと独りでに蓋が開き閉じ開き。
「そうですそうです。大延の神たる者が無銭飲食はいけませんいけません」
「あら、壷の中から声が… 小人でも入っているのでしょうか?」
「いえいえ!私“星壷”が一精“差月壷”、主の食の対価を払う者でございます」
既に少女は給仕がホールへと運んでくる料理の数々を食い入る様に見つめており、壷と女将だけが話している不思議な風景。
「今宵、主が求む求む食への対価、これでこれで御容赦願いたい」
突如壷から煌びやかな赤と青の拳大の珠石ころりころり。
「これは…さぞ素晴らしい石なのでしょう?よろしいのでしょうか?」
「どうぞどうぞ。 主が見初められたる食を持つ店ならば、皇印の入りたる宝が対価で丁度よいとの道人が教え。受け取り下さい受け取り下さい」
「ありがとうございます。 これは最上の御持て成しで応えなければいけませんね。 皆、急ぎ料理を倍、いやその倍御作りして!」
「「「ウィ!マダム!!」」」

女将の一声でさらにホール、宿全体が賑やかに活気に溢れていく。
少女は目を爛々とさせたまま、丁寧にハーピーと風精霊によって特等席へと運ばれていく。
さぁ、今宵は特上の宴。 一層膨らむ刺激的な香りが厨房より押寄せてくる。


各所SSよりシェアとお拝借
オルニトの宿にて広がる宴はどの様な事になっていくのか…
このひと時が夢でないのであれば、また続くことと相成りましょう


  • 金羅様はどこにでも現れるな!色んなシェア登場で思わず元SS読みたくなる -- (名無しさん) 2014-07-23 20:35:20
  • 名無しでもSSエピを持ってくると誰だか分かるのか参考になる。かなり繁盛している宿になってるな -- (名無しさん) 2014-07-23 23:51:55
  • 賑やかにキャラが登場して舞台を彩るいいね。料理ネタからこのままカレー三昧になるのかな -- (名無しさん) 2014-07-24 23:37:07
  • シェア元を表記するのって実は初めてのスタイルなんじゃないの?グルメと酒好きだったんだな -- (名無しさん) 2014-07-29 20:48:02
  • 人間の異世界流入や地球文化の伝来以上に大きな意識変化が起こっている雰囲気があります。種族や地域の生活環境の賑やかな変化はこれからも注目していきたいですね -- (名無しさん) 2018-02-02 22:27:38
名前:
コメント:

すべてのコメントを見る

タグ:

i
+ タグ編集
  • タグ:
  • i
最終更新:2014年07月28日 23:26