自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

245 外伝45

最終更新:

tapper

- view
だれでも歓迎! 編集
※投稿者は作者とは別人です

85 :外パラサイト:2010/01/01(金) 21:39:41 ID:GB.Z00rQ0
月明かりすらない漆黒の海を、奇妙な形の船が進んでいた。
鋭角的な艦首を突き出し、なだらかな曲面で構成された装甲甲板で船体の大部分を覆った
その船は、深海魚か朝鮮水軍が使用した亀甲船を思わせる。
その船の名はガメラン。
カレアント海軍が建造したガメラン級強襲艦のネームシップである。
ここで貴君はこう考えるだろう。
「強襲艦とは何ぞや?」
それは分厚い装甲で敵弾をハネ返しつつ肉薄し、距離が詰まったら艦首と舷側の射出孔か
ら打ち出したアンカーで敵艦を捕まえ、体当たりで動きを止めて斬り込み隊を乗り込ませ
るという帆船時代の戦法を近代的軍艦でやらかすための、脳筋集団カレアント軍しか思い
つかない軍艦である。
とかく肉体言語を信奉し、剣と弓矢と木造船の時代にはその精強さを南北両大陸に轟かせ
た海兵隊の伝統を持つカレアントにしてみれば夢よもう一度と言ったところなのであろう
が、現実は非情で容赦無かった。
第一次世界大戦で成功を収めた単発複座戦闘機というカテゴリーを1930年代の技術を
用いたうえ、斜め上な方向の仕様で復活させたボールトンポール・デファイアントが名誉
ある駄作の殿堂入りを果たしたように、シホールアンル軍との戦闘に投入されたガメラン
級は、姉妹艦のグランガランとゴルギランが一方的に撃ち沈められるという結果に終わっ
たため、ただ一隻生き残ったガメランは後方に下げられ、船団護衛や哨戒といった二線級
の任務に甘んじていた。
そのガメランが北大陸沖に出撃してきた理由とは-

『こちらハリーホーク、目標を発見した』
上空哨戒機が闇に紛れて高速で北上するシホールアンル船団の位置と針路、そして速度を
伝えてくる。
「予想通りだな。流石シホールアンル海軍、時間に正確だ」
アナキン艦長は上機嫌だった。
今回の作戦では彼の指揮するガメランが間違いなく主演女優であり、最新型のAN/AP
S-4レーダーを搭載したTBM-3Eを擁する夜間戦闘飛行隊も、その母艦である空母
ラングレーもカレアントの強襲艦を支援する脇役に過ぎない。
まさに我が世の春であった。
「それにしても敵は何を考えているんでしょうかね?」
アナキンの後ろに控えるテラポット副長が言った。
「今までは捕まえたその場で嬲り殺しにするか収容所で拷問したあとやっぱり処刑してい
たアメリカ人の捕虜を、いきなり貴重な高速輸送船を使って本国に輸送するなんて」
「こいつはOSSに出向してる義理の弟に聞いた話なんだがな、シホールアンル国内では
造船所や兵器工場の周囲に新しい収容所を作ってるらしい」
「どういうことです?」
テラポットに向けられる視線が出来の悪い生徒に対するそれに変わった。

86 :外パラサイト:2010/01/01(金) 21:41:01 ID:GB.Z00rQ0
「例のBナントカいうでかい飛行挺がシホールアンルの隅から隅まで飛んでいけるとして
もだ、目標のすぐ隣りに仲間が捕まってるとなれば兵隊の命を大事にするアメリカさんと
しては爆弾を落とすわけにはいかんだろ」
「それで捕虜が海上を輸送されている間に奪回しようと…」
「その手の仕事となればこのガメラン以上にうってつけの艦は無いというわけだ」
子供が見たら泣き出しそうな笑みを浮かべるアナキンに、敵船団が視認距離に入ったとの
連絡が入る。
艦長は直ちに照明弾発射の命令を下した。
「おう、レゲイ級にガテ級か」
照明弾の明かりの下で中央に高速輸送船を配し、その前後を駆逐艦一隻ずつが固める単縦
陣で航行していたシホールアンル船団から、二隻の駆逐艦が慌てて回頭を始める。
アメリカ、カレアント、ミスリアルの三国協同で行われたこの作戦には、ミスリアル軍魔
道士部隊の協力によって参加艦艇に対しマジック・ステルス処理が施されていたため、シ
ホールアンル船団は自分たちの頭上に照明弾が炸裂するまでガメランの存在に気付かなか
った。
「一番砲塔二番砲塔射撃用意!」
体当たりと斬り込みが主戦術とはいえ、ガメランにも対艦火器は備えられている。
艦首両舷に配置された背の低いドーム形の連装砲塔が、ガメランに向って突撃してくる二
隻の駆逐艦に指向される。
だがガメランの5.5ネルリ連装砲が火を吹くよりも早く、エンジン音も高らかに飛来し
たVF(N)-91のヘルキャットが斉射した直径5インチの航空機用高速ロケット弾“ホ
ーリーモーゼス”が直撃し、駆逐艦はたちまち浮かぶ松明と化してしまった。
「おのれ罰あたりな吸血鬼ども!人の獲物を横取りするとは!」
援護に感謝するよりも水上砲戦の機会を奪われたことに激怒するアナキン。
だが唯一隻残された輸送船は全速で遁走を計りながらも、ガメランに向って猛烈な銃火を
浴びせてきた。
「相手は防空艦に改装されたもののようです。武装は単装高角砲6基に連装式魔道銃12
基といったところですね」
焦る様子も無く識別帖に記載された仮装防空艦のデータを読み上げるテラポット
対8ネルリ砲防御が施されたガメランの装甲艦橋に対して、FLAK艦が装備する4ネル
リ砲では至近距離からの直撃さえハネ返してしまう。
遂にガメランの艦首射出孔から発射された鎖付きのアンカーがレゲイ級の船腹に突き刺さ
り、艦の推進力と鎖を巻き取るウインチの牽引力が強襲艦の鋭く尖った鼻先を輸送船の船
腹にめり込ませた。
「では副長、後は任せたぞ」
「いつの間に!?!」
気がつくとアナキンは軽装鎧を着込み、何処から入手したのか装弾数100発の馬鹿でか
いドラムマガジンを装着した禁酒法時代の旧型トンプソンを抱えている。
「ジェロニモ――――――――――ッ!」
雄叫びを上げて艦橋からダイブする艦長に向って、テラポットは声を限りに叫んだ。
「ノー、アナキン!ノ―――――ッ!」
+ タグ編集
  • タグ:
  • 星がはためく時
  • アメリカ軍
  • アメリカ
ウィキ募集バナー