自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

305 外伝67

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861 :陸士長:2011/06/27(月) 09:11:13 ID:eW4IB1ds0
その香りはまさに世界を跨ぐ。

「ほう……これが米国の料理で好評なものか」

後方の捕虜収容所で1人の男が支給された食事を食べていた。
普段は捕虜の給食班が支給された食材を使用しシホールアンル風の料理を作るのだが、その日は特別に米国の料理が出された。
これは定期的に行われており、所謂映画や小説などと同じく米国文化へのカルチャー教育のようなものだったのだ。
彼は魔術師であり同時に学者でもあった。
彼は複雑な味わいを見せる食事……即ちカレーに驚いていた。
北大陸を支配するシホールアンルには沢山の香辛料が集まるし、それを活かした料理も存在する。
しかし、これ程の複雑な味わいを持つ料理は有り得ない。
元々製薬の調合が趣味だった彼の興味はカレーへと向けられる事になる。

「おお、これ程の香辛料で作られているとはな。驚きだ!」

米軍に対する協力的態度を取る事で、彼は特別にカレー粉の成分について教えて貰う事になった。
料理人が使うブレンドと、各種スパイスを少しずつ貰い彼は色々な組み合わせを試す。
彼のスパイスへかける情熱は彼が思った以上に燃え上がり、段々とのめり込んでいく事になる。
「ええい、普段の匂いなんて嗅いで居られるか。スパイスを見極める嗅覚が駄目になる」
鼻マスクを付け、自分の仕事の割り当てを終えれば自室でスパイスの調合を行う。
他の捕虜達はそんな行動を訝しんだが、別に害は無いと思っていたので放っておかれた。

「ふふふ、出来た。出来たぞぉ。これだ、これ程の恐ろしいものが魔術も無しに作れるとは。
しかも、これは食材だ。カレーを作る食材だ! 誰もこれを咎める事なんて出来るものかぁ!」

数ヶ月後、彼は1つの極みに達していた。
彼は、まさに究極のスパイスを、カレーを作り出して見せたのだ。
給食班にごり押しし、その日の夕食はカレーとなった。
そして、彼らの前に出されたものは……。

「ま、真っ黒い、なんだこれ。カレーなのに真っ黒だ!!」

まるでアスファルトかコールタールの如く、真っ黒なカレーのルー。
これ、食えるの? な感じでシホールアンル兵達はお互いの顔を窺った。
でも、夕食はこれだけだし、空きっ腹を抱えて我慢するのは勘弁願いたい。
勿論、これで食えたものじゃなかったらあの魔術師に責任おっ被せて米軍からパンでも貰おう。
そんな事を考えた捕虜達は、恐る恐る最初の一口を口にしたのだった。

何時まで経っても、捕虜達が食堂から出て来ない。そんな報告を受け乗り込んだ憲兵隊達が見た物は。

「どうだ! 私の作り出した世界最高の、オリジナルすら凌駕したスパイスで作り出したカレーの味はぁ!?
そうだ、私は勝利したのだ、戦いでは負けたが、スパイスの味わい、カレーの味わいでは米国に勝利したのだ!!
この味わいを知れば私のカレー以外は食べれなくなる! そうだ、最高のカレーを知れば、神のカレーを知ればそうともなる!!
それ即ち、私はカレー神!! どうだ、平伏せよ、我らが至高、黒・カレーに!!」

薬物にトリップしたような形相でカレーを猛然と食べる捕虜達と、食堂の机の上で哄笑する魔術師の姿だった。



尚、この黒・カレーが戦後のシホールアンル、米国で食べられたかどうかは確かではない。

終わり
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